借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~

わんた

文字の大きさ
40 / 64

第40話 ばーちゃんが残したレシピ

しおりを挟む
 ドラゴン討伐から半月が経過した。

 人工神霊については箝口令かんこうれいが敷かれたみたいで、メディアは報道していない。SNS上でも情報は一切出ていないので、参加していた探索者たちからも情報は漏れていないようだ。

 探索者ギルドが存在を隠した理由はいくつか思い浮かぶけど、確証はないし興味もなかった。

 それよりも重要なのは、俺の活躍が大幅にカットされたことだろう。知晴さんとばーちゃんの力によって、絶刃やミスラムの実力はギルド側に隠蔽できている。

 目撃者が久我さんと誠パーティぐらいなので、こちらも情報は漏れていない。今まで通り自由に活動できているため、回復ポーションの代金を全て使って、【時空石】を買い漁ってしまった。

 マジックバッグの素材として使う物で、市場にはそこそこ流通している。今は滅多に流れないドラゴンの素材で市場が盛り上がっていることもあって、ライバルは少なく全て購入できた。

 合計で100個。それを自宅に置いて、今は加工をしている。

「マスター、素材を購入したせいで資金はなくなっちゃいました……。借金は残ったままですよ」

 欲しい素材が出てきたんだから仕方がないよ。

 計画なんて予定でしかなく、現実にあわせてコロコロ変わるものなんだ!

「返済期限は、かなり先なんだから大丈夫だって。行商で稼ごうよ」
「また稼げるか分かりません。できれば先に完済したかったのですが……」
「もし本当にダメそうなら、土下座すればなんとかなるよ。俺に任せて!」

 なんたって相手は知晴さんだからね。大抵のことは土下座で乗り切れる。だから今は、錬金術の方を優先するんだ。うん。何も問題はない。

 ばーちゃんの倉庫で手に入れた転移門のレシピを見ながら、空間を繋ぐ【時空石】を半分に割って、指定された素材を複数混ぜていく。その中には、空間を固定するために使う魔力伝導率の高い【ミスリル合金】と【ドラゴンの骨】や、行き先を映して安定化させる【ミラークリスタル】といった貴重な素材もあった。

 これらは、ばーちゃんの倉庫にあったので購入はしていない。

 どうやら素材までは集めたけど、何らかの理由によって途中で止めてしまったみたいなんだよね。

「転移門なんてできたら、マジックバッグが登場した時みたいに世界がひっくり返りますよ」

 ユミには何を錬成するのか伝えていたので、成功した先のことを懸念しているようだ。

 俺が今日、転移門を作成したら物流は大きく変わり、ありとあらゆる犯罪が容易にできてしまうだろう。

 それほど革新的な技術なのである。だから俺は、絶対に広めることはしない。

「完成しても誰にも教えない。個人的に使うだけだから」
「でしたら、いいんですけど……」

 不安そうな顔をしている。

 あれかな、お金が気になっているのかな?

「借金が重なってもレシピは売らないから安心して」
「マスターが錬金術師の魂でもあるレシピを売るとは思っていませんが、うっかりバレてしまいません?」

 それは……あり得る。

 転移しているところ見られちゃうなんて、普通に起こりそうだ。

「ユミが気をつけるとかで回避できないかな」
「……全力を尽くしますが、マスターも気をつけてください」

 半目になった上に、ため息までつかれてしまった。

 苦労をかけるねって意味を込めて、軽く手を合わせて謝っても態度は変わらない。むしろ深刻になっているようにも見える。

「マスターが転移門を使うときは、私と一緒です。それを約束してくれるなら頑張ります」
「いいよ!」

 そんな約束で、転移門の存在がバレるのを防げるのであれば、安いものだ。

 ユミの機嫌は良くなったみたいだし、快諾してよかった。

「それじゃ、そろそろスキルを使うから、ユミも準備してくれる?」
「わかりました」

 ニコニコと笑みを浮かべながら、ユミは部屋で保管しているエーテルポーションを持ってきてくれた。

 素材の配置は全て終わっている。

 下準備は完璧だ。

「錬金術スキル起動」

 キーワードを唱えると両手が光って、目の前に本が浮かんだので、空白のページまでめくる。

 ばーちゃんのレシピを見ながら、材料を書き込んでいく。

「時空石100個、ミスリル合金10kg、ドラゴンの骨2本、ミラークリスタル2個、魔石100個……注ぐ魔力量は1000%」

 レシピの一部を口に出すと、本に詳細が記入される。

「新規レシピ作成」

 魔法陣に多大な魔力が吸われていく。

 すぐに枯渇寸前までいったんだけど、ユミが魔力を回復させるエーテルポーションを飲ませてくれたので、即座に回復する。しかしまたすぐ枯渇状態になったので、追加のもう一本を飲まされた。

 わんこそばみたいに、次から次へとエーテルポーションを飲みながら、魔力を補充しているので魔法陣は消えない。

 このまま完成させるぞ! と気合いを入れ直すと、今度はスキルが暴走しそうになった。

 魔法陣がぐわんと歪んだのだ。

 慌てて制御に専念するけど、不安定な状況は続く。

 何度も錬金術スキルを使ってきたけど、これほど維持が難しいのは初めてだ。

 ばーちゃんがレシピまで作って、断念した理由が分かる。

 スキルの操作――熟練度もそうだけど、第一世代では魔力が圧倒的に足りなかったのだ。

 だから倉庫に残して俺に託したんだろう。

「絶対に成功させ――んぐっ」

 エーテルポーションを入れられて、慌てて飲み込んだ。

 これで11本目だ。使用する魔力量から逆算すると、もうそろそろ完成するはずなんだけど、魔法陣は消えない。

 それでも油断することなく、スキルを維持している。

 額に汗が浮かんだのでユミがハンカチで拭き取ってくれた。

 ありがたい。これで集中できる。

 目の前の魔法陣が消えるまでスキルを使い続けていると、12回満タンになった俺の魔力を半分ほど残して魔法陣が消えた。

 本には転移門のレシピが記載されている。

「完成した……?」

 薄い円形の板が二つ錬成されただけだった。大きさは直径二メートルぐらいだろうか。

 見慣れない文字が書かれていて俺は読めないけど、転移を補助するよう内容だろう。

 スキルのレシピ本には転移門が記載されているけど、本当に転移できるのか不安は残る。いきなり自分で試すのは怖いな。

「まずは、動物で試してみようか」
「マスター、私が乗ります」
「え?」

 驚いている間に、ユミが転移門の上に乗った。

 一瞬にして姿が消えると、もう一方の転移門に姿が現れる。

「大丈夫!?」

 ユミの体を触って、欠損している箇所がないか確認していく。とりあえず怪我はなさそうだ。

 物質的な移動は成功したと思っていい。

「マスター、問題はありません。成功しているみたいですね」
「ユミは俺のこと覚えている?」
「ええ。記憶や意識も変わりありません」
「よかった~~」

 緊張が抜けて座り込んでしまった。

 失敗して何かが抜けてしまったのであれば、取り返しの付かないことになっていた。

 本当に成功して良かった。

「マスターが錬成したんですから、失敗するはずがありません」

 迷いなく言われてしまった。俺への信頼がひしひしと伝わってくる。

 出会った頃から、ずっとこうだ。

 文句を言われることもあるけど、錬金術師として尊敬までしてくれている。

 苦労ばかりかけているのにね。

「マスター、これで師匠の家と往復が楽になりました。渋谷ダンジョンでの行商も続けられそうですね」
「お金はなくなって借金は残っているけど、また一緒に頑張ってくれる?」
「もちろんです。マスターは私がいないと生活できないんですから、どこまでも付いていきますよ」

 お店を追い出され、お金がなくなっても、俺とユミの関係は変わらない。

 これからどんな問題が起こっても一緒にいると確信している。

 きっと、どちらかが死ぬまで続くだろう。



======
【あとがき】
本章はここで終わりです。

楽しんでいただけたのでしたら、
お気に入り登録等をお願いします!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

処理中です...