借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~

わんた

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第55話 (誠視点)未開拓エリア

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 沼地の入り口を占拠していたポイズントードを倒したので、卵を破壊してから魔石を取って奥へ進むことにした。

 放置されていた影響で魔物の数が多い。十メートルも進めば二足歩行の蜥蜴――リザードマンやデッドバードの姿が見えてくる。

 本来であれば時間をかけて安全を確保する所なんだが、裕真製マナポーションを飲んだ圭子の力は底上げされたままなので、敵が視界に入ると闇魔法で片っ端から全滅させていた。

 歩くだけで安全が確保できている。

 魔力最大量が上がる上に湧き水のように出てくるらしく、敵を百匹近く倒したというのに消費したマナポーションは2本のみ。

 これでスキルの威力も底上げされているのだから恐ろしい。

 エリクサー級の回復ポーションも規格外だったが、マナポーションもヤバイな。浄化薬をもらってきたけど、瓶一本分流せば、沼地すべて飲料用にできるんじゃないか?

 もったいないから試そうとは思わないけどな。

「天宮さんのポーションって、お店で売ってたときにも買っていたのよね?」

 敵が減って余裕の出た圭子は、疑問をぶつけてきた。

 借金で裕真の店が閉店する前にも、俺は何度か商品を購入している。

 回復ポーションやマナポーションなんて、探索する度に補充していたのだ。他の商品よりも効果が高いことに気づかないなんてあり得ない。可能性があるとしたら……。

「店頭で販売してたのは、ギルド製の商品だったのかもしれない」

 裕真はチェーン店みたいな立ち位置で、ギルドが大量生産していた商品のみを販売していたって考えだ。

 裏側は非公開になっているので推測の域を出ないが、たった1人の錬金術師が毎日大量の商品を錬成できるとは思わないので、大きくは外れてないだろう。

「あー、そういうことね。安定した量と質を提供するためには必要なことだけど、ギルドはもったいないことをしていたわね」

 裕真の実力を錬金術ギルドが知らないというのは少しおかしい。普通はどこかのタイミングでバレるんだが、知晴さんが根回しして隠してるんだろうな。

「ギルドの話はその辺にして、地図を見てくれないか? そろそろ未踏エリアのはずだ」

 先にいた信也が俺の近くにまで戻ってきてた。

 マッパーで地図を見ると、確かにもうすぐ未踏エリアに入る。

 視線を前に向ければ、数キロ先に沼地の終わりが見えていた。

「信也の忠告通りだな。ここから先は未踏エリアだ。何が出てくるかわからない。気を抜くなよ」

 近づいてくる魔物を圭子の闇魔法で倒しながら未踏エリアを進み、沼地を出る。ブーツについた泥を落としてから、小休憩を取って出発した。

 すぐに森林が見えてくる。

 中に入ると視界が悪くなるので迂回しようとしたのだが、その前に大きな鳥の姿を発見した。

「あれって何だろうね?」

 上空を見ながら気が抜けたような発言をした光輝だが、頬は引きつっていた。

 離れているので分かりにくいが、人を簡単に丸呑みできそうなほど大きい鳥型の魔物だ。

 渋谷ダンジョンで討伐したドラゴンは小型だったので戦えたが、あれは人間がどうこうするレベルじゃないぞ。肉体強化ポーションを飲んでも勝てる気がしない。

 放置ダンジョンになった隠された理由がアレだったら、見つかる前に逃げるべきだ。

「森林に入って隠れる」
「異議なし!」

 隊列を崩してでも、俺たちは急いで森林の中へ入った。

 枝が広がっていて太陽を遮っているため、薄暗い。幽霊が出てきそうな不気味さを感じるが、だからこそ空にいる敵から隠れられる。

 俺たちはお互いに背中を向けながら、安全を確認することにした。

「敵はいそうか?」
「姿は見えない」
「こっちもよ~」
「僕も。とりあえず大丈夫っぽいよ」

 どうやら近くに魔物はいないようだ。

 警戒ラインを少し落としてもいいだろう。

「通常どおりの隊列にする。信也は先頭を頼んだぞ」
「おう」

 胸を叩いて自信ありげに言うと、大盾を構えながら奥へ行った。

 見失わないよう、俺たちは数メートル後をついていく。地面を見ると葉は落ちていない。地面がむき出しになっていて痕跡は残りやすいのだが、俺たち以外の足跡は見えなかった。

 沼地にはうんざりするほど魔物はいたが、ここにはいないか、いたとしても少数なんだろう。

「木にもいないね」

 後ろにいる光輝は上の方を警戒してくれていた。

 猿や蛇、鳥型の魔物がいるかもと思ったが、その線もなさそうだ。

 植物は生えているのに、生命の息吹を感じないほど静かであるが、立ち止まるわけにはいかない。森林の広さも分からずひたすら前に進んでいく。

 10分ほどだろうか。歩いていると、信也が立ち止まった。

 様子からして魔物を発見したわけじゃなさそうだ。

 近づいてみると水の流れる音が聞こえてきた。澄んだ川があり、深いところだと、俺の腰ぐらいまではありそうだ。

 近くには真っ赤な花が咲いていて、甘ったるい匂いが漂っている。

 周辺には二足歩行する豚のオーク、ジャイアントスネークといった魔物が倒れている。腐敗している個体もあれば、まだ生きているのもいた。

「みんな離れ……」

 危機感を覚えたのが遅かった。体が痺れて口が動かない。立っているのも厳しく、膝をついてしまった。

 花粉か何かに、痺れ毒が混ざっていたのだろう。

 仲間を見れば三人とも倒れていた。俺まで意識を失えば、魔物と同じ運命をたどってしまう。

 力を振り絞って、腰にぶら下げていた解毒ポーションを手に取り、震える指で蓋を取る。

 こぼしながらも口に付けて飲み込んだ。

 スーッと体の痺れが取れていくと、震えが止まって力が入るようになった。

「すごいな……」

 解毒ポーションは万能ではなく、毒の種類によっては効かない場合もある。また有効だったとしても、毒が抜けるのに時間がかかることもあって、一瞬で元気になるなんてことはあり得ない。

 しかも毒が舞っている空気を吸っても、なんともないのだ。

 解毒ポーションの効果が継続している。初見殺しの毒罠において、これほど心強いアイテムはない。

 俺が生きているのは、裕真のおかげだな。何度も命を救われている。錬金術においては、類を見ないほど頼りになる男だ。もう足を向けて寝られない。

 体の自由がきくようになったので、意識を失っている仲間たちに解毒ポーションを口移しで飲ませる。

 すぐに目覚めることはなかったが、弱っていた呼吸が戻ってきたので、危険は脱したと思っていいだろう。

 これ以上の調査は危険かもしれない。赤い花と周辺にある植物を採取して戻ることにするか。
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