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秀頼ルート 黒幕捜査3
羅山との対面(エロ度☆☆☆☆☆)
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そして、林羅山が俺の前に現れる。
見れば天下人の前だと言うのに涼しい顔で屹然としている。
天下人批判と取れる説を堂々と述べるだけはあると言う事か。
「お前が林羅山だな?」
「はっ! 仰る通りで、お目通りが叶いました事、恐悦至極にございます」
お互いがお互いを観察するように、しばらくは無言で見つめる。
「俺の治世を批判しているとか?」
「いいえ」
俺の質問にはキッパリと否定してくる。その様子に焦りも何もなく、ただ真っすぐに。
「『上下定分の理』は天地の別になぞらえて君臣の別を唱えたもの。それはその生まれから発生いたします。すなわち富貴に産まれた者はそうあり、そうでない者はそうあらねばならない。富めるように努力を怠ってはならないが、君臣の別を越えようとしてはならぬと説いた理にございます」
「その理から行けば、まさに俺はその君臣の別を越えたのではないか?」
そう、俺も元は天皇陛下の配下であったのだ。実質的な意味合いでは逆になったとしてもだ。
「然り。ただし、陛下は生まれつきの天下人にございます。ともすればそれは皇族であるよりも尊い。そして、藤原の姓を持つ関白殿下を父に持つ陛下は、孫を天皇にすることも可能です。つまり、本当の天下人にあらせられます」
孫を天皇に? 確かに摂関家であれば、皇族に嫁を出すことが出来る。それこそお梅を・・・・・・。うん、無い。
「ですが、それではご満足されず、陛下は皇帝と言う新しい御身分に就かれた。・・・・・・ただし、豊臣の姓を捨てぬままに」
豊臣は近衛の猶子となった父上が朝臣として名乗った姓。つまり、これを名乗る以上は表向き俺はまだ朝臣であると言う事、天皇陛下の臣であると言う事だ。
「それを捨てぬから『上下定分の理』に反さぬと?」
「逆でございます。朝廷は数百年も昔から、疾うに実社会と別の世界。有名無実であるなら、それを残すべきではないかと」
「つまり、豊臣の姓を未だ名乗る事には批判がある、と?」
「ははっ!」
言うことが分からないわけではない。二元制を取ってから、俺はずっと天皇と同列と言う形になっている。むしろ、豊臣の姓だけが浮いているのだ。おもむろに立ち上がり、背後の床の間に飾られた刀を見れば、その鞘には金の五七桐が輝いている。
「・・・・・・俺は豊臣が好きなんだよ」
「は?」
「父が農民から少しずつ命を懸け、必死に。そうして上り詰めた立場が豊臣だ。この姓を名乗る時、何時も父上が見守っていてくれる気がする。だからな、この姓を手放すつもりはない。この姓はそれこそ俺が天下人として産まれた証だ」
結局はただの感傷。それでも、必要なことなのだ。
「さて、それについてはもうそれで良い。だが、お前の『上下定分の理』は世の反乱分子達にとってとても都合の良いものだ」
「・・・・・・某を罰しますかな?」
「お前を罰したところで、書いた本は既に出回っている。大した数ではないが、同時に反乱分子どもに火を点けるには十分」
今の時代、印刷技術はないので人力による写本がその全てになる。労力と費用が掛かるが、それでもそれなりの数になると言う事は人気があると言う事だ。
「お前の処に出入りしている者が多くなっているそうだな?」
「皆、学を求めているだけにございます」
此処までは予想していたのか、その表情にはやはり焦りは見えない。
「そういった者にどのような学を与えるのだ?」
「私は朱子学者なれば、やはりそれしかお教えすることは出来ません」
儒学者とは名乗らない、か。正史では羅山は儒学の一体系である朱子学を主導し、他の諸派を非難するような行動を取っている。そして、それが江戸幕府の指針となった。
「それは是非俺も聞いてみたいな。しばらくこの大阪に留まるが良い」
「・・・・・・それは、某を幽閉すると言う事ですかな?」
「いいや、軟禁だ。それに罪を裁こうと言うんじゃない。俺の教師としての滞在だからな」
そうすることで天海たちの動きを速めることが出来るはず。まず間違いなく、羅山は彼等のブレーンとなっているはずなのだ。
「・・・・・・それとな、永田徳本を知っているか?」
「ははっ! かつて某が医の道を目指した際の師であれば」
「此処に呼びたい」
羅山を軟禁する理由は此処にもある。権威を気にしない徳本を呼び出すのに師弟の情を用いるために。
「ふむ、御典医様がおわしますのに何故でございますか?」
「医者を呼ぶ理由など、そう多くはないだろう?」
ギロリと睨みつける。一体何が弱みに取られるか分からない以上は、下手にばらすわけにもいかないのだ。
「どなたを?」
「羅山。好奇心は猫を殺すと言う言葉を知っているか?」
「いえ」
「南蛮の諺だそうだ。覚えておくと良い」
それだけを言い残し、評定の間を出る。次は浪人達を明で役立てるための法整備。中々に忙しい。
見れば天下人の前だと言うのに涼しい顔で屹然としている。
天下人批判と取れる説を堂々と述べるだけはあると言う事か。
「お前が林羅山だな?」
「はっ! 仰る通りで、お目通りが叶いました事、恐悦至極にございます」
お互いがお互いを観察するように、しばらくは無言で見つめる。
「俺の治世を批判しているとか?」
「いいえ」
俺の質問にはキッパリと否定してくる。その様子に焦りも何もなく、ただ真っすぐに。
「『上下定分の理』は天地の別になぞらえて君臣の別を唱えたもの。それはその生まれから発生いたします。すなわち富貴に産まれた者はそうあり、そうでない者はそうあらねばならない。富めるように努力を怠ってはならないが、君臣の別を越えようとしてはならぬと説いた理にございます」
「その理から行けば、まさに俺はその君臣の別を越えたのではないか?」
そう、俺も元は天皇陛下の配下であったのだ。実質的な意味合いでは逆になったとしてもだ。
「然り。ただし、陛下は生まれつきの天下人にございます。ともすればそれは皇族であるよりも尊い。そして、藤原の姓を持つ関白殿下を父に持つ陛下は、孫を天皇にすることも可能です。つまり、本当の天下人にあらせられます」
孫を天皇に? 確かに摂関家であれば、皇族に嫁を出すことが出来る。それこそお梅を・・・・・・。うん、無い。
「ですが、それではご満足されず、陛下は皇帝と言う新しい御身分に就かれた。・・・・・・ただし、豊臣の姓を捨てぬままに」
豊臣は近衛の猶子となった父上が朝臣として名乗った姓。つまり、これを名乗る以上は表向き俺はまだ朝臣であると言う事、天皇陛下の臣であると言う事だ。
「それを捨てぬから『上下定分の理』に反さぬと?」
「逆でございます。朝廷は数百年も昔から、疾うに実社会と別の世界。有名無実であるなら、それを残すべきではないかと」
「つまり、豊臣の姓を未だ名乗る事には批判がある、と?」
「ははっ!」
言うことが分からないわけではない。二元制を取ってから、俺はずっと天皇と同列と言う形になっている。むしろ、豊臣の姓だけが浮いているのだ。おもむろに立ち上がり、背後の床の間に飾られた刀を見れば、その鞘には金の五七桐が輝いている。
「・・・・・・俺は豊臣が好きなんだよ」
「は?」
「父が農民から少しずつ命を懸け、必死に。そうして上り詰めた立場が豊臣だ。この姓を名乗る時、何時も父上が見守っていてくれる気がする。だからな、この姓を手放すつもりはない。この姓はそれこそ俺が天下人として産まれた証だ」
結局はただの感傷。それでも、必要なことなのだ。
「さて、それについてはもうそれで良い。だが、お前の『上下定分の理』は世の反乱分子達にとってとても都合の良いものだ」
「・・・・・・某を罰しますかな?」
「お前を罰したところで、書いた本は既に出回っている。大した数ではないが、同時に反乱分子どもに火を点けるには十分」
今の時代、印刷技術はないので人力による写本がその全てになる。労力と費用が掛かるが、それでもそれなりの数になると言う事は人気があると言う事だ。
「お前の処に出入りしている者が多くなっているそうだな?」
「皆、学を求めているだけにございます」
此処までは予想していたのか、その表情にはやはり焦りは見えない。
「そういった者にどのような学を与えるのだ?」
「私は朱子学者なれば、やはりそれしかお教えすることは出来ません」
儒学者とは名乗らない、か。正史では羅山は儒学の一体系である朱子学を主導し、他の諸派を非難するような行動を取っている。そして、それが江戸幕府の指針となった。
「それは是非俺も聞いてみたいな。しばらくこの大阪に留まるが良い」
「・・・・・・それは、某を幽閉すると言う事ですかな?」
「いいや、軟禁だ。それに罪を裁こうと言うんじゃない。俺の教師としての滞在だからな」
そうすることで天海たちの動きを速めることが出来るはず。まず間違いなく、羅山は彼等のブレーンとなっているはずなのだ。
「・・・・・・それとな、永田徳本を知っているか?」
「ははっ! かつて某が医の道を目指した際の師であれば」
「此処に呼びたい」
羅山を軟禁する理由は此処にもある。権威を気にしない徳本を呼び出すのに師弟の情を用いるために。
「ふむ、御典医様がおわしますのに何故でございますか?」
「医者を呼ぶ理由など、そう多くはないだろう?」
ギロリと睨みつける。一体何が弱みに取られるか分からない以上は、下手にばらすわけにもいかないのだ。
「どなたを?」
「羅山。好奇心は猫を殺すと言う言葉を知っているか?」
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