関白の息子!

アイム

文字の大きさ
307 / 323
岳鶯ルート 金軍撃退戦

金軍撃退戦2

しおりを挟む
「この粉は、胡椒と花椒(山椒と近いもの)を粉末にしたものだ。これを敵軍めがけて風に乗せる。そのために強弩と火薬、それに導火線を用意しろ」

 胡椒も花椒も高価な漢方ではあるが、この明の都であれば大量にある。それを粉にしてやるだけで良い。

「出来れば敵と平原で会敵し、騎兵の混乱に乗じて一息に突き崩す。楊再雲!」

「応!」

「その際はお前がヌルハチを狙え、牛憲は副将となり補佐を頼む」

「むぅ、またこの方とですか・・・・・・」

「なんだと、てめぇ」

 牛憲の一声に楊再雲が噛み付く。

 もう毎度のことなので誰も止めようとはしない。苦笑交じりに見守るだけだ。それに少なくとも彼等が組めば百戦百将、二人同時であればこの俺でさえ敵わないかもしれない。極端に性格の違う二人はそのおかげで互いの端緒を補い合い、長所を引き立たせているのだ。

「いえ、何時も一人突っ走ってしまわれるので、私はその尻を拭かされてばかり。たまには別の方と組ませてもらえると有り難いのですが」

「俺だっててめぇみてぇな奴と組みたかねぇよ!」

 もっとも、普段は犬猿の仲という奴だ。・・・・・・が、わりと頻繁に連れ立って酒を呑みに行くなど、結局仲が良いのか悪いのか良く分からない。

「牛憲、楊再雲、頼む。この国のためにこの戦は勝つ必要がある」

「応!」「承知!」

 そして、俺が念を押せば何時も通り二人とも応じてくれる。もしかすると、初めての大規模戦闘に緊張する諸将に何時も通りで良いのだと伝えるための演技だったのかもしれない。

「兄者、それは無いかと」

「クク、高布よ、その方が夢があるじゃないか」

 俺の考えを読んだ高布が間違いを訂正してくる。

「さて、高布よ。お前には遊軍として騎馬隊を率いてもらう」

「フム、役目は?」

「任せる。状況を見、自身の判断で自由に行動しろ」

 正直に言えば高布は敢えて事前の指示で動かすのではなく、実際の戦況に合わせて柔軟に対応させる方がより強力な軍となる。そして、これは全幅の信頼を置く高布にしか出来ないことであり、これによりこの軍の軍略は俺の軍略を超えることが出来る。

「心得ました」

「張憲、お前は強弩隊の指揮を取れ。それと、今のうちに兵達にしっかり訓練させておけ、出発まであと二日、その間にこの胡椒を自在に空中散布できるようにな」

「ははっ!」

「俺は残りの歩兵を率い、敵の攻撃を引き付ける。概略は以上だ。今回は互いの連携が非常に重要だ。その事を肝に刻んでおけ!」

「「「「「はっ!」」」」」

 俺の軍の核になる人材はとても少ない。だが、この者達とならばどのような敵とも戦える。それだけの信頼関係と力を長年の戦で培ってきた。
 
「では、俺達も春風酒家に向かおうか」

「応、兄者! そうこなくてはな!」

「・・・・・・全く、楊兄者まで連れて行けばまた奥方にどやされてしまう」

 二人の義弟は全く違う反応を返す。だが、どちらも顔は朗らかだ。今夜は夜深くまで呑み明かすことになるだろう。

「ただ兄者。倭軍にはどう対応します」

「いや、あちらの方はしばらく攻めてきまい」

 その分防衛線を固められると言う事だが、一度に二ヶ所では戦えない以上考えても仕方ない。

「早く鋭いが脆い槍と、遅くても重く頑強な斧。どちらも恐ろしい敵ですな」

「ああ。そして、俺達は斧との戦いを経験したことがない。はたしてどんな相手か」

 まだ見ぬ倭軍を想像することは俺にも出来ない。情報が余りにも少なすぎるのだ。

「実は岳安に南に潜入させることにした」

「なんと!?」

「あいつももう16だ。役に立って見せるさ」

 ・・・・・・それに、若い方が純粋な目で見ることが出来るかもしれない。何せ、南京では味方から降将が出た。祖国を裏切り言葉も通じぬ他国に走る。俺には理解できないが、もしもそこに何かがあるのなら、次代の者まで俺に付き合わせる必要はない。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...