【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫

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 いずれにせよ俺は、あのハイスペモンスターからイザベラ嬢のハートを守りきらなきゃいけないわけだ。
 よしんば婚約破棄を回避したとして、イザベラ嬢の心がウェリナに奪われてしまうのはまずい。というのも、そうなると俺は、今度はヒロインの恋路を妨害するクソお邪魔虫へとクラスチェンジ。別の破滅ルートが発動してしまうからだ。
 避ける方法はひとつ。
 これまでの所業を改め、イザベラに愛されるにふさわしい婚約者へと生まれ変わる。要は、〝脱☆バカ王子〟である。




「えーと、これからは心を入れ替えて、王子として真面目にやっていきたいと思います」

 そう俺が宣言したときの、宮廷の驚きといったらなかった。
 宰相のおっちゃんは腰を抜かし、近衛騎士たちは目玉をひん剥き、メイドの皆さんは「あたしたちの油断を誘う罠かも」と逆に身構え、乳母のリリアンに至っては、血相を変えて医者やらまじない師を呼びつける始末。

「つい最近も大変な目に遭ったばかりですのに!」

 確かに。俺が初めてこの世界で目覚めたとき、この身体はひどい高熱で寝込んでいたっけ。その意味で、リリアンが俺の異変をことさらに案じる気持ちはわかる。ただ、いくら何でも心配の方向性がおかしくない? せっかくまともになろうって言ってんのにさ!




 ともあれ、俺の脱バカ王子作戦はこんな感じで始まった。
 が、それは決して易しい道ではなかった。まずは語学。隣国の王家と接することも多い王族は、そりゃもういろんな言語を嗜んでいなくちゃならない。前世では大学入試用の受験英語だけでお腹一杯だった俺は、最初のハードルで早くも心が折れそうになった。
 ちなみに、勝手に自国語に訳してくれる(グーグル翻訳的な)魔法はありませんかねとリリアンに訊くと、そんな便利な魔法はございませんと真顔で返された。

 幸いだったのは、語学の勉強自体はさほど難しくなかったことだ。
 この大陸の人々は、もともと一つの言語のみを用いて暮らしていたらしい。それが次第にローカライズされ、独自の言語として発展したとのこと。根を同じにするせいか、いずれの言語も文法や単語がほぼ共通している。要は、国ごとに自領の方言を自国語と称している状態で、東京人が関西弁に馴染む感覚でいけたのはラッキーだった。

 一方、意外とハードだったのが地理のお勉強だ。
 何せ、未知の世界のあれこれをゼロから覚えさせられるのだ。これが前世なら、テレビやネットを通じて得られる情報によって、現地の様子を比較的容易にイメージできる。その点、この異世界では、王城から一歩外に出ればもう未知の空間だ。どこにどんな町があり、どんな人々がどんな暮らしを営んでいるのか。何を食って暮らしているのか。産業は。文化は。
 そうした知識をノーヒントのまま丸暗記させられるのは、俺にしてみれば大学受験以上にハードな苦行だった。

 ほかにも、器楽演奏やダンスのレッスン、テーブルマナーのトレーニングなど、こなすべきタスクは尽きなかった。
 それでも俺は文句も言わず愚痴も吐かず、死ぬ気でこなしていった。
 まぁ、ちょっとでもサボったら破滅確定だからね。




 そうした苦労の甲斐もあって、一か月も過ぎる頃には俺の王子っぷりはだいぶ板についてきた。
 以前はアルカディア君のセクハラに怯えていたメイドたちも、近頃は随分と警戒を緩めてくれているようだ。それもこれも、俺が自分に課した「セルフおさわり禁止令」の賜物である。
 まぁ、裏では相変わらず彼の悪口に花を咲かせているらしいが……





 そんな〝脱☆バカ王子〟ライフを送っていたある日。
 俺は、宮殿で意外な人物と鉢合わせする。
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