6 / 55
6
しおりを挟む
いずれにせよ俺は、あのハイスペモンスターからイザベラ嬢のハートを守りきらなきゃいけないわけだ。
よしんば婚約破棄を回避したとして、イザベラ嬢の心がウェリナに奪われてしまうのはまずい。というのも、そうなると俺は、今度はヒロインの恋路を妨害するクソお邪魔虫へとクラスチェンジ。別の破滅ルートが発動してしまうからだ。
避ける方法はひとつ。
これまでの所業を改め、イザベラに愛されるにふさわしい婚約者へと生まれ変わる。要は、〝脱☆バカ王子〟である。
「えーと、これからは心を入れ替えて、王子として真面目にやっていきたいと思います」
そう俺が宣言したときの、宮廷の驚きといったらなかった。
宰相のおっちゃんは腰を抜かし、近衛騎士たちは目玉をひん剥き、メイドの皆さんは「あたしたちの油断を誘う罠かも」と逆に身構え、乳母のリリアンに至っては、血相を変えて医者やらまじない師を呼びつける始末。
「つい最近も大変な目に遭ったばかりですのに!」
確かに。俺が初めてこの世界で目覚めたとき、この身体はひどい高熱で寝込んでいたっけ。その意味で、リリアンが俺の異変をことさらに案じる気持ちはわかる。ただ、いくら何でも心配の方向性がおかしくない? せっかくまともになろうって言ってんのにさ!
ともあれ、俺の脱バカ王子作戦はこんな感じで始まった。
が、それは決して易しい道ではなかった。まずは語学。隣国の王家と接することも多い王族は、そりゃもういろんな言語を嗜んでいなくちゃならない。前世では大学入試用の受験英語だけでお腹一杯だった俺は、最初のハードルで早くも心が折れそうになった。
ちなみに、勝手に自国語に訳してくれる(グーグル翻訳的な)魔法はありませんかねとリリアンに訊くと、そんな便利な魔法はございませんと真顔で返された。
幸いだったのは、語学の勉強自体はさほど難しくなかったことだ。
この大陸の人々は、もともと一つの言語のみを用いて暮らしていたらしい。それが次第にローカライズされ、独自の言語として発展したとのこと。根を同じにするせいか、いずれの言語も文法や単語がほぼ共通している。要は、国ごとに自領の方言を自国語と称している状態で、東京人が関西弁に馴染む感覚でいけたのはラッキーだった。
一方、意外とハードだったのが地理のお勉強だ。
何せ、未知の世界のあれこれをゼロから覚えさせられるのだ。これが前世なら、テレビやネットを通じて得られる情報によって、現地の様子を比較的容易にイメージできる。その点、この異世界では、王城から一歩外に出ればもう未知の空間だ。どこにどんな町があり、どんな人々がどんな暮らしを営んでいるのか。何を食って暮らしているのか。産業は。文化は。
そうした知識をノーヒントのまま丸暗記させられるのは、俺にしてみれば大学受験以上にハードな苦行だった。
ほかにも、器楽演奏やダンスのレッスン、テーブルマナーのトレーニングなど、こなすべきタスクは尽きなかった。
それでも俺は文句も言わず愚痴も吐かず、死ぬ気でこなしていった。
まぁ、ちょっとでもサボったら破滅確定だからね。
そうした苦労の甲斐もあって、一か月も過ぎる頃には俺の王子っぷりはだいぶ板についてきた。
以前はアルカディア君のセクハラに怯えていたメイドたちも、近頃は随分と警戒を緩めてくれているようだ。それもこれも、俺が自分に課した「セルフおさわり禁止令」の賜物である。
まぁ、裏では相変わらず彼の悪口に花を咲かせているらしいが……
そんな〝脱☆バカ王子〟ライフを送っていたある日。
俺は、宮殿で意外な人物と鉢合わせする。
よしんば婚約破棄を回避したとして、イザベラ嬢の心がウェリナに奪われてしまうのはまずい。というのも、そうなると俺は、今度はヒロインの恋路を妨害するクソお邪魔虫へとクラスチェンジ。別の破滅ルートが発動してしまうからだ。
避ける方法はひとつ。
これまでの所業を改め、イザベラに愛されるにふさわしい婚約者へと生まれ変わる。要は、〝脱☆バカ王子〟である。
「えーと、これからは心を入れ替えて、王子として真面目にやっていきたいと思います」
そう俺が宣言したときの、宮廷の驚きといったらなかった。
宰相のおっちゃんは腰を抜かし、近衛騎士たちは目玉をひん剥き、メイドの皆さんは「あたしたちの油断を誘う罠かも」と逆に身構え、乳母のリリアンに至っては、血相を変えて医者やらまじない師を呼びつける始末。
「つい最近も大変な目に遭ったばかりですのに!」
確かに。俺が初めてこの世界で目覚めたとき、この身体はひどい高熱で寝込んでいたっけ。その意味で、リリアンが俺の異変をことさらに案じる気持ちはわかる。ただ、いくら何でも心配の方向性がおかしくない? せっかくまともになろうって言ってんのにさ!
ともあれ、俺の脱バカ王子作戦はこんな感じで始まった。
が、それは決して易しい道ではなかった。まずは語学。隣国の王家と接することも多い王族は、そりゃもういろんな言語を嗜んでいなくちゃならない。前世では大学入試用の受験英語だけでお腹一杯だった俺は、最初のハードルで早くも心が折れそうになった。
ちなみに、勝手に自国語に訳してくれる(グーグル翻訳的な)魔法はありませんかねとリリアンに訊くと、そんな便利な魔法はございませんと真顔で返された。
幸いだったのは、語学の勉強自体はさほど難しくなかったことだ。
この大陸の人々は、もともと一つの言語のみを用いて暮らしていたらしい。それが次第にローカライズされ、独自の言語として発展したとのこと。根を同じにするせいか、いずれの言語も文法や単語がほぼ共通している。要は、国ごとに自領の方言を自国語と称している状態で、東京人が関西弁に馴染む感覚でいけたのはラッキーだった。
一方、意外とハードだったのが地理のお勉強だ。
何せ、未知の世界のあれこれをゼロから覚えさせられるのだ。これが前世なら、テレビやネットを通じて得られる情報によって、現地の様子を比較的容易にイメージできる。その点、この異世界では、王城から一歩外に出ればもう未知の空間だ。どこにどんな町があり、どんな人々がどんな暮らしを営んでいるのか。何を食って暮らしているのか。産業は。文化は。
そうした知識をノーヒントのまま丸暗記させられるのは、俺にしてみれば大学受験以上にハードな苦行だった。
ほかにも、器楽演奏やダンスのレッスン、テーブルマナーのトレーニングなど、こなすべきタスクは尽きなかった。
それでも俺は文句も言わず愚痴も吐かず、死ぬ気でこなしていった。
まぁ、ちょっとでもサボったら破滅確定だからね。
そうした苦労の甲斐もあって、一か月も過ぎる頃には俺の王子っぷりはだいぶ板についてきた。
以前はアルカディア君のセクハラに怯えていたメイドたちも、近頃は随分と警戒を緩めてくれているようだ。それもこれも、俺が自分に課した「セルフおさわり禁止令」の賜物である。
まぁ、裏では相変わらず彼の悪口に花を咲かせているらしいが……
そんな〝脱☆バカ王子〟ライフを送っていたある日。
俺は、宮殿で意外な人物と鉢合わせする。
944
あなたにおすすめの小説
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
妹に婚約者を取られるなんてよくある話
龍の御寮さん
BL
ノエルは義母と妹をひいきする父の代わりに子爵家を支えていた。
そんなノエルの心のよりどころは婚約者のトマスだけだったが、仕事ばかりのノエルより明るくて甘え上手な妹キーラといるほうが楽しそうなトマス。
結婚したら搾取されるだけの家から出ていけると思っていたのに、父からトマスの婚約者は妹と交換すると告げられる。そしてノエルには父たちを養うためにずっと子爵家で働き続けることを求められた。
さすがのノエルもついに我慢できず、事業を片付け、資産を持って家出する。
家族と婚約者に見切りをつけたノエルを慌てて追いかける婚約者や家族。
いろんな事件に巻き込まれながらも幸せになっていくノエルの物語。
*ご都合主義です
*更新は不定期です。複数話更新する日とできない日との差がありますm(__)m
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる