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マジか。
てっきり上手いこと立ち回っているものと思っていた。悪役令嬢とイチャコラしながら破滅ルートを回避、やがて王様に即位して、リッチな異世界ライフをエンジョイする気満々だったんだわ俺は。
それが全部、裏目に出るとはな。
いや、まだまだ生き延びる目は残されている! 今すぐバカ王子に戻ってイザベラとの婚約を破棄、そんで追放後は田舎でスローライフでハーレムチートをやっちゃいますか!
……なんてね。
こう見えて俺、マジで怖かったんだぜ? このままじゃ世界に殺される、運良く生き延びたとしても幽閉だとか、身ぐるみ剥がされて追放とか、とにかくエグい末路が待ってるって。だからこそ、立派な王子になれるよう死ぬ気で努力したんだぜ?
それを、全部無意味でした、むしろ逆効果でしたなんて言われてみ?
さすがに萎えるぜマジで。
「アル?」
名を呼ばれ、俺は我に返る。手元では、俺の右手に握られたスプーンが延々とスープを掻き回している。
そんな俺を、ウェリナは心配顔で見つめている。こいつもこいつで色々ショックだろうに、それでも俺を気遣ってくれる。根はいい奴なんだろう。
「すまない。君も‥‥…記憶がないなりに精一杯王子らしく振舞ってくれたんだろう。そんな君をがっかりさせる物言いになってしまったことは……その、謝る」
「いや……いいんだ。気にしないでくれ」
本音を言えば、そういう事情なら早く言ってくれと思わなくもなかったが、それこそ後の祭りというやつだ。
「ただ……これだけは信じてほしい。たとえ君が忘れても、交わした約束は有効だ。この心臓が動く限り、俺は、君を護り続ける」
ウェリナの長い腕が伸び、俺の手を引き留めるように強く握る。
その手が悔しいほどに優しくて、俺は、ほんの少し居たたまれなくなる。
――愛してた。ずっと。
違うんだよ。
お前がいま握ってるのは、お前が愛するアルカディアの手じゃない。見知らぬ異世界人の手なんだよ。アルカディアのガワを纏っているだけの。いっそ正直に打ち明けてしまおうか。
いや、それは俺ひとりが楽になりたいだけの逃げだ。ウェリナは何も救われない。
何もわからないまま守るべき相手を失って、こいつは。
「……わかった。で、俺はどうすればいい?」
「とりあえず、しばらくは療養と称してここに留まってくれ。うちの使用人は皆、身辺がはっきりしているし、各種マナーもぬかりなく仕込んである。宮殿ほどではないが、それなりに快適に過ごせるはずだ」
で、俺の安全を確保したうえで、今回の黒幕を探すってか。
確かに、効率としてはその方が良いのだろう。ただ、全てがウェリナ任せというのも気が進まない。……と、いうより、アルカディアのふりをしながらただ守られるというのは、やはり後ろめたいのだ。
所詮、赤の他人なのに。
「俺にも、何か手伝えることはないか。何でも言ってくれ。大した手伝いは出来ないかもだが……」
するとウェリナは、なぜか意地悪く笑う。
えっ、ここ笑うところか?
「そうだな。君には重要な仕事がある」
俺の右手に置かれたままのウェリナの手が、する、と妖しげに蠢く。絡みつく指先は、何となく捕食生物の触手を思わせる。
「君には……これからたくさんのことを思い出してもらう必要がある。わかるだろ、アル?」
てっきり上手いこと立ち回っているものと思っていた。悪役令嬢とイチャコラしながら破滅ルートを回避、やがて王様に即位して、リッチな異世界ライフをエンジョイする気満々だったんだわ俺は。
それが全部、裏目に出るとはな。
いや、まだまだ生き延びる目は残されている! 今すぐバカ王子に戻ってイザベラとの婚約を破棄、そんで追放後は田舎でスローライフでハーレムチートをやっちゃいますか!
……なんてね。
こう見えて俺、マジで怖かったんだぜ? このままじゃ世界に殺される、運良く生き延びたとしても幽閉だとか、身ぐるみ剥がされて追放とか、とにかくエグい末路が待ってるって。だからこそ、立派な王子になれるよう死ぬ気で努力したんだぜ?
それを、全部無意味でした、むしろ逆効果でしたなんて言われてみ?
さすがに萎えるぜマジで。
「アル?」
名を呼ばれ、俺は我に返る。手元では、俺の右手に握られたスプーンが延々とスープを掻き回している。
そんな俺を、ウェリナは心配顔で見つめている。こいつもこいつで色々ショックだろうに、それでも俺を気遣ってくれる。根はいい奴なんだろう。
「すまない。君も‥‥…記憶がないなりに精一杯王子らしく振舞ってくれたんだろう。そんな君をがっかりさせる物言いになってしまったことは……その、謝る」
「いや……いいんだ。気にしないでくれ」
本音を言えば、そういう事情なら早く言ってくれと思わなくもなかったが、それこそ後の祭りというやつだ。
「ただ……これだけは信じてほしい。たとえ君が忘れても、交わした約束は有効だ。この心臓が動く限り、俺は、君を護り続ける」
ウェリナの長い腕が伸び、俺の手を引き留めるように強く握る。
その手が悔しいほどに優しくて、俺は、ほんの少し居たたまれなくなる。
――愛してた。ずっと。
違うんだよ。
お前がいま握ってるのは、お前が愛するアルカディアの手じゃない。見知らぬ異世界人の手なんだよ。アルカディアのガワを纏っているだけの。いっそ正直に打ち明けてしまおうか。
いや、それは俺ひとりが楽になりたいだけの逃げだ。ウェリナは何も救われない。
何もわからないまま守るべき相手を失って、こいつは。
「……わかった。で、俺はどうすればいい?」
「とりあえず、しばらくは療養と称してここに留まってくれ。うちの使用人は皆、身辺がはっきりしているし、各種マナーもぬかりなく仕込んである。宮殿ほどではないが、それなりに快適に過ごせるはずだ」
で、俺の安全を確保したうえで、今回の黒幕を探すってか。
確かに、効率としてはその方が良いのだろう。ただ、全てがウェリナ任せというのも気が進まない。……と、いうより、アルカディアのふりをしながらただ守られるというのは、やはり後ろめたいのだ。
所詮、赤の他人なのに。
「俺にも、何か手伝えることはないか。何でも言ってくれ。大した手伝いは出来ないかもだが……」
するとウェリナは、なぜか意地悪く笑う。
えっ、ここ笑うところか?
「そうだな。君には重要な仕事がある」
俺の右手に置かれたままのウェリナの手が、する、と妖しげに蠢く。絡みつく指先は、何となく捕食生物の触手を思わせる。
「君には……これからたくさんのことを思い出してもらう必要がある。わかるだろ、アル?」
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