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40.何があった?
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僕に背を向け部屋から出て行こうとするベリレフェク様に、僕はその背後から慌てて声をかけた。
「……あ、あのっ…………ベリレフェク様っ……!!」
けれど、彼を追おうとした僕は、領主様に腕を掴まれて止められてしまう。
「え……り、領主様?」
「…………」
領主様は、目で周りの人たちに合図を送った。すると医務室にいた人たちは、オフィガタス様が出て行った方に走って行く。
こうして、部屋に残ったのは、僕とベリレフェク様、領主様だけ。
領主様は、僕を見下ろしてたずねた。
「………………何があった? ……あいつに……何か言われたのか?」
「……それは…………その……」
言い淀む僕に、今度はベリレフェク様がたずねる。
「ここへ来て二人で喚いていたこと……あれは、なんだ?」
「………………」
そう……だよな。
いきなりあんなこと言い出して、変に思っただろう。
……それに…………みんなの前で、領主様やベリレフェク様を困らせたりして…………
悪役になることを回避するにしても、他にやり方はあった。勝手に領主様のそばにいるなんて言って、勝手な宣言をして迷惑をかけたんだ。
どうしよう……
ちゃんと謝らなきゃ……
だけど、なぜか言葉が出てこない。領主様のこと、絶対に傷つけてしまったのに。
……言ったら、嫌われる。
それが嫌なんだ。
「もっ…………申し訳ございませんっっ……!!」
僕は、ほとんど叫ぶように言って、その場に平伏して謝罪した。
もう、絶対に頭を上げられそうになかった。
どうしよう……そればかり考えて、苦しい。
……領主様に………迷惑をかけちゃった…………
こんなつもりじゃなかったのに……
思い出すだけで、苦しくなる。息ができなくなりそうだった。こんな風に迷惑かけたくなかったのに…………
「ほ、本当にっ……ごめんっ……なさいっ…………馬鹿なことをしてっ…………か、勝手なことを……申し上げてしまい……も、申し訳ございませんでした……僕は、その……領主様にかけられた冤罪を晴らしたくて…………それ……だけ…………」
僕の声は、どんどん消えそうになっていく。
だって、誤解を解きたかっただけじゃない。もちろんそう言う目的もあったけど…………領主様に愛されるのは僕です! って叫んだら、本当に、そうなりたいと思ってしまったんだ。
何してるんだ、僕……
領主様のためって言いながら、自分がそうしたかっただけだ。それで、こんな勝手なことを……
……僕なんて、もう断罪された方がいいんじゃないかな…………
そう考えたら、指先まで震えていた。だって、もう絶対に、領主様に嫌われた。
そう思ったら怖くて堪らなかった。それなのに、領主様は僕の手を握って立たせて、背中に手を回す。
「え…………領主様……?」
「何を謝る必要があるんだ?」
「だ、だって…………ご迷惑をお掛けして……」
「ご迷惑?」
「…………っ!!」
ぐっと強く引き寄せられたら、もう動けなくなりそうだ。僕の体と領主様の体が触れ合って、心臓がひどく強く打っていた。
「……あ、あのっ…………ベリレフェク様っ……!!」
けれど、彼を追おうとした僕は、領主様に腕を掴まれて止められてしまう。
「え……り、領主様?」
「…………」
領主様は、目で周りの人たちに合図を送った。すると医務室にいた人たちは、オフィガタス様が出て行った方に走って行く。
こうして、部屋に残ったのは、僕とベリレフェク様、領主様だけ。
領主様は、僕を見下ろしてたずねた。
「………………何があった? ……あいつに……何か言われたのか?」
「……それは…………その……」
言い淀む僕に、今度はベリレフェク様がたずねる。
「ここへ来て二人で喚いていたこと……あれは、なんだ?」
「………………」
そう……だよな。
いきなりあんなこと言い出して、変に思っただろう。
……それに…………みんなの前で、領主様やベリレフェク様を困らせたりして…………
悪役になることを回避するにしても、他にやり方はあった。勝手に領主様のそばにいるなんて言って、勝手な宣言をして迷惑をかけたんだ。
どうしよう……
ちゃんと謝らなきゃ……
だけど、なぜか言葉が出てこない。領主様のこと、絶対に傷つけてしまったのに。
……言ったら、嫌われる。
それが嫌なんだ。
「もっ…………申し訳ございませんっっ……!!」
僕は、ほとんど叫ぶように言って、その場に平伏して謝罪した。
もう、絶対に頭を上げられそうになかった。
どうしよう……そればかり考えて、苦しい。
……領主様に………迷惑をかけちゃった…………
こんなつもりじゃなかったのに……
思い出すだけで、苦しくなる。息ができなくなりそうだった。こんな風に迷惑かけたくなかったのに…………
「ほ、本当にっ……ごめんっ……なさいっ…………馬鹿なことをしてっ…………か、勝手なことを……申し上げてしまい……も、申し訳ございませんでした……僕は、その……領主様にかけられた冤罪を晴らしたくて…………それ……だけ…………」
僕の声は、どんどん消えそうになっていく。
だって、誤解を解きたかっただけじゃない。もちろんそう言う目的もあったけど…………領主様に愛されるのは僕です! って叫んだら、本当に、そうなりたいと思ってしまったんだ。
何してるんだ、僕……
領主様のためって言いながら、自分がそうしたかっただけだ。それで、こんな勝手なことを……
……僕なんて、もう断罪された方がいいんじゃないかな…………
そう考えたら、指先まで震えていた。だって、もう絶対に、領主様に嫌われた。
そう思ったら怖くて堪らなかった。それなのに、領主様は僕の手を握って立たせて、背中に手を回す。
「え…………領主様……?」
「何を謝る必要があるんだ?」
「だ、だって…………ご迷惑をお掛けして……」
「ご迷惑?」
「…………っ!!」
ぐっと強く引き寄せられたら、もう動けなくなりそうだ。僕の体と領主様の体が触れ合って、心臓がひどく強く打っていた。
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