いつも役立たずで迷惑だと言われてきた僕、ちょっとヤンデレな魔法使いに執着された。嫉妬? 独占? そんなことより二人で気ままに過ごしたいです!

迷路を跳ぶ狐

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13.忘れていいよね?

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 ヴァソレリューズ様が屋敷をあけてしまい、僕は、仕事が終わってから、彼が帰るのを部屋で待っていた。

 もうすぐ夕飯の時間。

 だけど……まだ、ヴァソレリューズ様が帰ってきていない。

 ヴァソレリューズ様に会いたい。

 それに、昼のことが気になって…………

 好きって……あれ……一体、どう言うことなんだろう…………ヴァソレリューズ様、どこに行っちゃったんだろう…………僕はどうすればいいんだっ……!??

 まだ、ヴァソレリューズ様を好きってことだって気づいたばかりで、しかも、相手は僕が仕える人で、そもそもそれだって期間限定。領主様のところに帰るまでの間……多分、ほんの少しの間だけなのに!!

 ……どうしよう…………

 僕だってヴァソレリューズ様のこと、好きだけどっ……彼が僕を好きって、そんなことあるのか!? そもそも、好きって聞いたのも、もしかして聞き間違いかもしれないっ……! それに、恋人に対する好き、じゃなくて友情とか、従者に対する親愛とか、そんな類いのものかもしれない。

 ……従者に対する親愛っていうのが、一番可能性高そうだな…………ヴァソレリューズ様、僕に優しいし……

 一人で色々考えながら、窓から空を見上げてヴァソレリューズ様の帰りを待つ。

 どこに行ってるんだろう……そんなに忙しいのに、僕のせいでドアを閉めて足止めしちゃって、申し訳なかったな……

 どうしてもずっと、ヴァソレリューズ様のことばかり考えてしまう。

 彼の屋敷に来ることができて、そのそばで仕えることができて、僕は嬉しくてたまらないのに、今度はちょっと離れただけで、寂しい。
 領主様の城で少し会えるだけで、嬉しかったはずなのに……

 そんなことを考えながら窓を開けて、彼の帰りを待っていたら、空からヴァソレリューズ様が飛んでくるのが見えた。

 つい、思いっきり手を振ってしまう。こんなことしたら、ずっと待っていたのがバレてしまうのに。

 手を振るだけで、ひどくドキドキする。落ち着かなくて少し苦しいくらいなのに、そうせずにはいられない。
 ヴァソレリューズ様の顔を見たら、我慢できなかった。

 彼もこっちに振り向いて、手を振ってくれる。

 ヴァソレリューズ様……気づいてくれたんだ……

 だけど、まさか窓から入ってくるなんて。

「わっ…………」

 驚く僕を尻目に、彼は窓から部屋に飛び込んできて、床に降り立つ。そして僕に振り向いた。

「……俺のこと、待っていてくれたの?」
「え!? あ……は、はい!! あのっ…………お、お帰りなさいませ……!」

 顔を見ただけで、ひどく緊張する。
 ヴァソレリューズ様が帰ってきてくれたことが嬉しくて、つい舞い上がってしまったみたいだ。

 彼は、僕に振り向いて微笑んでくれた。

「待っていてくれて、ありがとう」
「え…………あ……そ、そんなっ…………ただ僕は……ヴァソレリューズ様にお会いしたかっただけで……」

 見上げていたら、やっぱりドキドキする。また……変な顔をしている気がする。

 すぐに顔を背けると、彼は「どうしたの?」って、不思議そうに聞いてきた。

「あ、いえ……えっと…………な、なんでもないんです…………」
「そう? 帰って来てすぐに君に会えて、俺は嬉しいのに」
「え…………」
「だってフェイヴェレルに会いたくて戻ってきたんだし」
「…………」

 そんなことを言われると……僕だって、そうですって言いたくなる。

 だって、僕もずっと会えなくて寂しかった。本当はもっと早く会いたかったけど、我慢していただけだ。

「……あ、あの…………今日はどちらに行かれていたのですか?」
「……今日? あの領主のところ」
「えっっ!? 領主様のっ……!?」

 驚いて、つい聞き返してしまう。すると、またヴァソレリューズ様の目が恐ろしくなった。

「また…………領主様?」
「え……? えっと…………」
「…………あいつ、もう君を返さなくていいって」
「へ!!??」
「だから……君はずっと、俺だけの魔法使いね?」

 そう言われて、しばらく僕は立ち尽くしてしまう。

 ……いいの……? 帰らなくて。

 いつか帰らなきゃいけないって聞いて、本当はずっと怯えてた。
 帰らなくていいって知ったら、それはすごく嬉しい……けど……
 い、いいのか? ……だって、領主様は貸しただけのつもりだろうし……

「あっ…………!! も、もしかして、この話をするために、領主様に会いに行ってたんですか?」
「うん。もちろん」

 ヴァソレリューズ様は微笑んでそう言うけど……

 ……まさか、今日は交渉に行ってくれていたなんて……

 どうしよう…………すごく嬉しい。

 僕は、深々と彼に頭を下げた。

「あっ……ありがとう……ございます。本当に……そんなことをしていただいているなんて、僕……ずっと気づきもしなくて……」
「だって、俺が君を欲しかったから」

 そう言って、彼は微笑む。

 その顔を見たら、ひどく心臓が高鳴った。

「もう、あの領主には返さない。だからもう、領主様…………のことは忘れていいよね?」
「……」

 もしかして、昼間僕が領主様のことを話したこと、まだ怒っているのかな??
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