僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

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16.これ、すごくおいしいんです!

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 護衛の方ならもういるし、以前までと比べて、こうして物資も直接僕がもらえるようになった。ここじゃ手に入れられないパンまであるんだ。
 僕は、これで十分だ。あの王都での恐ろしい暮らしのことを考えたら、今の生活は最高だ!

「宰相様は、僕が魔法が苦手だから、僕の身を案じてくださるのだと思います。でも、僕だって最近、魔法も上達してきたんです! どうか王国の戦力は、僕のためではなく、王国を守るために使ってください」
「そうか……分かった。宰相様に、そう伝える……それと、デペンフィトのことだが、ここに送られたはずなのにあいつらに奪われたものの回収と、魔法の道具の暴走に関して、王国でも調査隊が組まれることになった。近いうちに、詳細な調査が開始されることになったらしい」
「王国で……調査が?」
「ああ。ここにも、聞き取りの奴らが来ると思う。その時は、悪いが協力してもらうぞ」
「はい。お任せください。僕もまだ王国の貴族で、王家に仕える魔法使いですから」
「助かる……それで…………その、鍋の中のものはなんだ? キノコと……草?」
「僕の朝ごはんです! 塩で味をつけてスープにするんです!!」
「……スープはいいが、変な色になってるぞ。それに、塩しかないのか?」
「美味しいですよ? 塩」
「おい、馬鹿っ……! やめろっ!! どう考えても入れすぎだろ! 俺がやる!!」

 彼は僕から塩が入った袋を取り上げてしまう。

「俺がやるから……見ていろ……」
「料理ができるんですか??」
「ああ……部隊で出かけた時に、よく作っていた」
「そうなんですか……」

 彼は、僕が頼んで持って来てくれた調味料を使って、スープに味をつけてくれる。

 すごいな……僕の料理は、僕がなんとなくやっているだけで、こうやって誰かがしているのをそばで見るのは、初めてだ。

 どうやって味をつけるんだろう。他にも、どんな料理が作れるのかとか、聞きたいことはたくさんある。

 聞いてみたいけど……そ、そんなこと、聞いてもいいのかな??

 迷っていると、レオトウェルラレット様は、食事を作りながら口を開いた。

「……それより、宰相様が近いうちにいらっしゃる。用意しておけ」
「え…………?」
「この砦に、ちゃんと物資が届いているか、確認したいらしい」
「わ、分かりました!! あ、あのっ……!」
「どうした?」
「えっ……と…………」

 料理教えて! って……言いにくい……だって、僕に料理を教えるなんて、彼にしてみれば、報告や物資を送る任務とまるで関係ないことだから。

「え……えっと……あ、あの晩、宰相様からお借りした服と装備があって……お返ししたいのですが、お願いできませんか?」
「装備? 持ってて構わないと思うぞ。宰相様だって、そのつもりで渡したんだろ」
「でも……そんなわけには…………僕は幽閉されている身で、必要以上の物をいただけば、宰相様だって王城で貴族たちに責められるはずです。もう婚約もしていないし、部隊の魔法使いでもないのに……宰相様にそんなものをいただく理由がありません。必要なものは調達できているので……」
「…………そうかもしれないが……分かった。宰相様にはそう話しておく。だが、受け取るかは分からないぞ」
「え…………?」
「宰相様は、お前のことが心配らしい。なんだか最近、宰相様の様子がおかしいんだよな……王城で暴力事件を起こしてから……」
「ぼっっ……暴力事件っっ!!??」
「あ……お前は気にしなくていい。カッとなって殴りかかっただけだ。よくあることだ」
「…………そうですか?」

 レオトウェルラレット様、軽い口調で話しているけど、い、いいのかな……??

 暴力事件って、宰相様が王城で暴力を振るったってこと?? そんなの、これまで聞いたことない。冷たいようにも見えるけど、冷静な人っていう印象だったのに……何があったんだろう。

 戸惑う僕だけど、レオトウェルラレット様は、そんなことはどうでもいいとばかりに続ける。

「それより、近いうちに、ここで行われたことについて宰相様が確認に来る。あいつらの部屋は、ここに残しておいてほしい」
「……承知しました……お任せください」
「それと、これからもたまにここにいらっしゃるらしいから、その時は、ここの護衛も増える。準備はこっちでするから、お前は何もしなくていいが、砦の中にも警備の魔法使いが入るから、そのつもりでいてくれ」
「……え………………」
「そんな顔をするな。警備の人数が増えるの、そんなに嫌か?」
「…………嫌というか……緊張します。警備の方がそこまで増えたことないし、宰相様も来るなんて……調査が終わっても、何かまだしなければならないことがあるのですか?」
「魔法の暴走があった後の安全確認はしばらく続けるし、お前が幽閉先で理不尽な目に遭っていないか、確認しておきたいらしい」
「…………」

 ……僕、もしかして、相当心配されちゃっている?

 僕の幽閉の手続きをしたのは宰相様らしいし、その手続きが邪魔されて、ここへ送られた僕が半裸で傷だらけで自分の前に現れて、手枷と足枷をつけたままお腹を空かせていたら、罪悪感とか怒りとか後悔を感じるだろう。多分、それで、もう二度とそんなことがないようにと気にかけてくれているんだろうけど……

 だけど、僕の心配をするなんて、そんな必要、全然ない。宰相様だって忙しいだろうに、そんなことをしてもらうのも悪い。

「とにかく、食材も必要なら言えよ? なんでお前、食材取るのはうまいのに、料理は下手なんだよ……」

 レオトウェルラレット様が、キノコを焼きながらそう言ってくれる。いい匂いがして来た……

 陣営でお肉をたくさんもらった時のことを思い出す。お肉も最高だけど、ここのキノコも美味しいんだ。

 もしかして……宰相様、ここで取れるキノコがこれだけ美味しいって知らないのかな?? 王都にいたら、ここのキノコを焼いて食べる機会なんてないだろうし……そうか!!

 だからそんなに、僕のことが心配になっちゃうんだ!!

 そうだよな……枷の件と食事の件、相当気にしていたみたいだし……

 枷は困るけど、食事は全然困ってない。ここでの生活だって気に入っていて、最高なんだ。

 宰相様は、それを知らないんだ……

 そうだ!! ここのきのこがすっごく美味しいって分かってもらえたら、もしかしたらもう心配しなくてもいいかもしれない!!

 今度来た時は、美味しいキノコを渡そう!! そうしたら宰相様だって、自分のことに集中できるよね!!

「よーし!! 今日は任務に行って、それと一緒に美味しいキノコ探しだ!!」
「お前……まだキノコ探す気か?」
「はい! 宰相様にも食べていただこうと思って!!」
「……宰相様に?? なんでそうなるんだよ!! 宰相様はそんなの食べないと思うぞ!」
「それならそれで構いません! 僕はただ、僕は毎日楽しいって、それを分かって欲しいだけです!!」

 そしたら宰相様だって、僕のことで気を揉まなくて済むはず! だったら、今日の任務の途中、たくさんきのこをとってくるぞ!!
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