嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
9 / 33

9.なんでそんなことを

しおりを挟む
 結局大人しくジュースを受け取った僕。魔力で毒が入ってないか調べても、やっぱり何も入ってない。

 何してるんだろう……僕……

 こんなことしなくても、断ればいいのに……今日は早朝から忙しかったから、魔力だってあんまり残ってないのに、僕は本当に一体、何をしているんだ……

「そんなことしなくても、こっちの媚薬にすればいいのに」
「…………いりません」

 殿下はさっきから媚薬を進めてくるし……

 なんでここで媚薬が出てくるんだよ。訳がわからない。媚薬と見せかけて毒が入ってないか調べたけど、本当に、ただの媚薬だ。

 なんで僕に媚薬を飲ませようとしてるんだよ……それを使って僕をどうするつもりなんだよ。それでやりたくなった僕に襲われたら、殿下はどうするつもりなんだろう。

 しばらく会わないうちに、訳わからなくなったな……殿下。

 毒が入ってないって分かったのに、なんだか怖くて、あんまりジュースも飲みたくない。

 じっとワイングラスを見下ろしていたら、急に腕が軽くなった。回復の魔法をかけられたんだ。正面に座った殿下に。

「……なんの真似ですか?」
「痛そうにしていたから。炎の魔法で負った火傷、もう痛くない?」
「………………え?」
「火傷。したんだろ? この先にある砦で」
「………………なんで……」

 なんで、砦のことまで知ってるんだ? だってそれ、今朝のことだ。殿下はまだ僕の屋敷にだって到着してない時間のことだぞ。それなのに……

「今日は約束の時間に来るのが遅かったみたいだけど……なんで?」
「…………そんなこと……どうでもいいですよね?」

 確かに僕は、殿下が来ると言っていた時間に、あの屋敷に帰ることができなかった。だけど、なんで今さらそんなこと言うんだ?

「その件なら謝りましたよね? 遅れたことは申し訳ございません。罰があると言うなら受けますよ?」
「そうじゃない……砦の魔法使いに、足止めされていたんだろ?」
「………………え?」

 驚いて、顔を上げた。

 殿下はじっと、僕の方を見つめている。特に怒っているような顔じゃなくて、ただじっと見つめられて、僕は怖くなりそうだった。

「この先の砦で、頼まれていた結界の道具を渡す時に、難癖をつけられて、砦から出してもらえなかったんだよね?」
「…………」

 確かにそうだが……なぜそれを、王子殿下が知っているんだ?

 だって、ここについたばかりだろ?

 砦に来ていたのか?

 いや……そんなはずない。あの砦には、確かに僕と、砦を管理する貴族、そいつの従者たちしかいなかった。殿下があそこであったことを知っているはずがない。

 これまでも、たまにそう言うことされていたし、貴族たちの噂で聞いたのかな? 王都の貴族に逆らった馬鹿な魔法使いが嫌がらせされてるぞーって。

 別にいいけど。だけど、そんなことは殿下に関係ないだろう。

 それなのに殿下は、首を傾げて言う。

「違うの? 砦に行って聞いて来たんだけど?」
「……砦に? なんでわざわざそんなことしてるんですか……」
「…………王城で、色々聞いていたから」
「…………」

 色々? あ、僕の噂をか。

 聞いたの? あれを?

 だったらますます、僕になんか会いにくるなよ。だって、どうせひどい噂だったはずだ。王都の貴族たちが、僕のことを口汚く罵ってるの、全部知ってるんだからな。

 それなのに……よく僕と同じ馬車に乗ったな……どう言うつもりだ?

 だって多分、すぐに魔法で攻撃してくるわがままな役立たず……くらいのことを言われているはず。やってもいない僕の悪事の数々だって、広まっているはずだ。

 それなのに、僕と同じ馬車に乗ったりして、怖くないのか? 悪人と恐れられた僕が、拘束されたことに腹を立てて、魔法を撃つかもしれないのに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

ガラスの靴を作ったのは俺ですが、執着されるなんて聞いてません!

或波夏
BL
「探せ!この靴を作った者を!」 *** 日々、大量注文に追われるガラス職人、リヨ。 疲労の末倒れた彼が目を開くと、そこには見知らぬ世界が広がっていた。 彼が転移した世界は《ガラス》がキーアイテムになる『シンデレラ』の世界! リヨは魔女から童話通りの結末に導くため、ガラスの靴を作ってくれと依頼される。 しかし、王子様はなぜかシンデレラではなく、リヨの作ったガラスの靴に夢中になってしまった?! さらにシンデレラも魔女も何やらリヨに特別な感情を抱いていているようで……? 執着系王子様+訳ありシンデレラ+謎だらけの魔女?×夢に真っ直ぐな職人 ガラス職人リヨによって、童話の歯車が狂い出すーー ※素人調べ、知識のためガラス細工描写は現実とは異なる場合があります。あたたかく見守って頂けると嬉しいです🙇‍♀️ ※受けと女性キャラのカップリングはありません。シンデレラも魔女もワケありです ※執着王子様攻めがメインですが、総受け、愛され要素多分に含みます 隔日更新予定に変更させていただきます。 ♡、お気に入り、しおり、エールありがとうございます!とても励みになっております! 感想も頂けると泣いて喜びます! 第13回BL大賞55位!応援ありがとうございました!

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます

天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。 広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。 「は?」 「嫁に行って来い」 そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。 現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる! ……って、言ったら大袈裟かな? ※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。

処理中です...