嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
19 / 33

19.もう二度と、戻る気なんてない

しおりを挟む
「じゃあ、行こうか。中は、俺が案内するから」

 そう言って殿下が僕を引き寄せられるから、なんだか落ち着かない。

 王子が帰ってきたことが知れてしまう前に、結界の魔法の道具を探し出さなきゃならないのに、何をしているんだ……

 殿下が戻ってきたことが発覚したら、恐らくこここにある魔法の道具が一番に壊されてしまうだろう。だから急ぎたいのに、これじゃなかなか進まない。

 そして、殿下と会った時のことを本当は全部覚えてるって、なかなか言い出せない僕。

 だって、言ったら何で言わなかったんだって話になるだろうし、そしたら、再会できて話せてすごく嬉しくて、でもそれがそんなに嬉しい自分に戸惑って言い出せなかった……って、白状しなきゃならない。そんなこと言えるか…………!

 こうして、結局何も言えなくて、仕方なく二人で歩き出す。

 今は深夜だ。

 こんな時間に王子が帰ってくるとは誰も思わないだろう。こんな風に動けるとしたら今だけ。

 殿下が歩きながらたずねてくる。

「この先の部屋が怪しいと思ってる?」
「……そこしかありません」

 今回の件で最も疑わしいのは、最もここで力を持っている大臣のコレリイジャイン様だ。

 あー……嫌だなぁ……会いたくない。

 何しろ、僕を馬鹿にしていた貴族の筆頭だ。僕のことをひどく蔑んでいたし、正直、二度と会いたくないと思っていた。

 だけど……別に会わなくたっていいのか。結界の魔法の道具を探し出せれば、それでいい。

「この奥にある、連中が管理する部屋の中ですよ。普段は魔法の研究のためと閉ざされていますが、奴らがしているのは、魔法の研究というより、自分達のために必要な魔法の道具の管理です……あの連中は、すでに王城まで自分達のものにしたような気でいます」
「……ふーーん…………ふざけた連中が城にいたんだな……」

 そう言う殿下は、平然としているようなふりをしていたけど、残念そうにしていた。奪ったものを自分の城に隠されたら落ち込みもする。まるでここが、殿下たちの城じゃなくなってしまったようで。

 そもそも、深夜にこうして忍び込んでいるんだ。これじゃまるで、殿下の城じゃないみたいじゃないか。そんな風に居場所がなくなっていく辛さなら、僕にも分かる。

「……そんな顔をしないでください」
「え……?」
「王城がそんな状況にあることは、僕にとっても、由々しき事態です。これが終わってからも……僕が……その…………」

 言いづらいままでいると、怒鳴り声がした。

 廊下の向こうからだ。

 何かと思って振り向けば、数人の魔法使いがこっちに向かって走ってくる。

「おいっ……! お前たちっ……何をしている!」

 あいつら……コレリイジャイン様の手駒になって動く魔法使いじゃないか。多分、あいつに命じられて、道具を守っているんだろう。

 なんだよ。まだ、話の途中だったのに。

 僕は、そいつらに振り向いた。魔力を使い、走ってくる奴らが自らを守るためにかけた防御の魔法を確認する。

 一人一人、かけた魔法が違うが……あのくらいなら、破れそうだ。

 駆け寄って来る一人一人を狙って、眠りの魔法をかける。

 あっさり眠り倒れていく男たちを見て、殿下は感心したように言った。

「すごいね……相手も、防御の魔法で身を守っているはずなのに」
「そんなもの、貫き方を知っていれば、簡単に打ち破れます。それより、僕の前に出ないでください。何が出てくるのか分からないので」
「…………うん。分かってるよ」
「手も出さないでください。王子殿下が手を出すと、後々面倒なことになります」
「うん」

 ……本当に、分かっているのか……?

 殿下、かなり軽く答えていているけど、僕は真剣に話しているんだぞ!

 殿下は王位には全く無頓着だけど、僕はそんなの勿体ないと思う。彼はすでに王位を継承する気はないようだけど、それなら、ここで他の王子殿下たちの力になって、国を守っていってほしい。これは、あの屋敷で僕が、ずっと感じていたことだ。

 だから、殿下がここで第一王子殿下たちの補佐をしていると聞いた時は嬉しかった。それを……こんなところで壊されたりしてたまるか!

 そう思って歩いていると、殿下の方が、口を開いた。

「…………ねえ……ダスフィレト……」
「はい?」
「王城に戻る気はない?」
「…………え?」
「もちろん、あの屋敷が気に入っていることは知っている。あの屋敷に帰ることを止めるつもりないけど…………ダスフィレトには、俺のそばにいて欲しい」
「……」

 そんなの、僕だって。

 殿下のそばにいて、彼を支えられたら嬉しいだろうって思う。

 だけど僕は、ここにいない方がいい。

 僕、かなり他の貴族たちに嫌われているし、いずれ殿下たちにとって、邪魔な存在になるだろう。

 殿下たちはいずれ、王国を動かしていく。それには、貴族たちの協力が絶対に必要になる。有力貴族は、敵に回さない方がいい。

「…………ウィクレンクト様は?」
「信頼できる人に預けてある。一人で置いておくと、彼を使っていた貴族の手駒が来て、唆そうとする可能性があるからね」
「…………そうですね」

 それが分かっているなら……大丈夫か。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

ガラスの靴を作ったのは俺ですが、執着されるなんて聞いてません!

或波夏
BL
「探せ!この靴を作った者を!」 *** 日々、大量注文に追われるガラス職人、リヨ。 疲労の末倒れた彼が目を開くと、そこには見知らぬ世界が広がっていた。 彼が転移した世界は《ガラス》がキーアイテムになる『シンデレラ』の世界! リヨは魔女から童話通りの結末に導くため、ガラスの靴を作ってくれと依頼される。 しかし、王子様はなぜかシンデレラではなく、リヨの作ったガラスの靴に夢中になってしまった?! さらにシンデレラも魔女も何やらリヨに特別な感情を抱いていているようで……? 執着系王子様+訳ありシンデレラ+謎だらけの魔女?×夢に真っ直ぐな職人 ガラス職人リヨによって、童話の歯車が狂い出すーー ※素人調べ、知識のためガラス細工描写は現実とは異なる場合があります。あたたかく見守って頂けると嬉しいです🙇‍♀️ ※受けと女性キャラのカップリングはありません。シンデレラも魔女もワケありです ※執着王子様攻めがメインですが、総受け、愛され要素多分に含みます 隔日更新予定に変更させていただきます。 ♡、お気に入り、しおり、エールありがとうございます!とても励みになっております! 感想も頂けると泣いて喜びます! 第13回BL大賞55位!応援ありがとうございました!

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます

天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。 広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。 「は?」 「嫁に行って来い」 そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。 現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる! ……って、言ったら大袈裟かな? ※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。

処理中です...