嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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30.今そんなことどうでもよくない!?

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 もうすでに僕は話どころじゃない。だって話している間、殿下は全然手を止めてくれない。いいようにされて、動けなくなりそう。

「コレリイジャインのあの部屋、鍵の魔法だけがかかっていると思っていたけど、結界の魔法もかかっていたんだ。君が渡してくれた鍵には、それを同時に打ち破る魔法がかかっている。結界を打ち破る魔法も得意なんだね…………その魔法の弱点を熟知しているからかな?」
「そんなこ……と……たまたま開いただけです」
「そんなわけないだろ?」
「ひっっ!!!!」

 今度は、首元にキスされた。ほんの少し、服から出たところを、チュッて吸われて、刺激で腰が動く。驚いたはずなのに、たった一瞬のその刺激が、恐ろしいくらいに気持ちいい。

「ひっ…………! あっ…………」

 僕が怖がることをしないっていう約束を覚えていてくれたのか、殿下は少し、唇で触れるだけ。ちょっとだけ触れたキスは、すぐ離れていくのに、ほんの少しのキスが、気持ちよくてたまらない。声を上げてよがってるみたいじゃないか。こんなの、恥ずかしすぎるのに、今度は、腹の辺りがくすぐったい。

「やあああっっ…………!!」

 服の中に手を入れられてる!! 腹の辺りに触れたくすぐったいもの、殿下の手だっっ!!

「やっ……やだっっ……やめてっ!!」

 僕が叫ぶと、殿下の手は、すぐに止まった。だけど、服の下から手を引き抜いてはくれない。されたことのない触れ方をされて、ひどくドキドキしてきた。緊張したせいか、息が荒い。体が震えている。

「うっ…………」
「怖い? じゃあ、ここでとめておくね?」

 言って、殿下は僕の脇腹のあたりにおいた手を止めてくれた。その手から体温が伝わって、ますます気持ちいい。

「う…………ぁっ……」

 触れられて、だんだん体がその感触に慣れてきた。だけどそれでも、その快感には慣れない。触られただけなのに、こんなに気持ちいいなんて……

「…………気持ちいい?」
「は?!!!」
「だって、俺が触れただけで、そんなふうになってる」
「…………ちがっ…………そんなことっ……」
「気持ち悪かったら、触るのやめるけど……」
「違うっっ……!! き、気持ちいい…………」
「……じゃあ、もっと触れていていい?」
「え………………」

 つい、僕は頷いてしまったけど、少し殿下の手が動いただけで、背中が反る。
 殿下の手が僕の腹の辺りを撫でて、全身がゾクゾクする。触れられているだけで気持ちよくてたまらない。

「あっ……んっ…………んんっっ……!! はぁっ……! あっ…………ぁっ……」
「あの扉……」
「え?」
「あのコレリイジャインの扉、俺や兄上たちや、従者の優秀な魔法使いたちが開けようとしても、あの扉はびくともしなかったんだ」
「ふぇ? あっ……!! あぁっ……!!」

 びくんと体を跳ねさせる僕。だって、殿下の手が、だんだん上がってきてるから……

 腹から胸の辺りを撫でられて、優しいのに快感を煽られていくみたいだ。

「あっ……ん!!」
「すごいよね。あの扉が開いた時、俺、本当に驚いていたんだけど……伝わってた?」

 今、扉のことなんかどうでもよくない!?

 だって今は、ヴェイロクッド殿下が僕に触れるその感触に夢中になっているのに!!

 それなのに、扉のことなんかもう頭に入らない。
 僕は殿下の手がほんの少し動いただけで、こんなに殿下に夢中なのに、殿下の口からは、ムカつく貴族の名前が出てくるなんて……嫌だ。

 僕のことばかりに夢中になればいい。そうじゃないと、フェアじゃないじゃないか!

「……殿下……あ、あのっ……!」
「……どうしたの?」
「もう少しくらいなら…………触れてもいい」
「……本当?」
「う、うん…………んっ!!」

 触れたまま、今度はキスされて、唇を包むように甘噛みされて、手だけの時とは比べ物にならないくらいの快感に襲われた。

 胸を撫で回していた手の先が、乳首の辺りに近づいて、ピクっと身体が震えた。せっかく和らいでいた緊張が、また蘇ってくるかのようだ。

「うっ…………」
「……大丈夫。怖いことは、しないから……」

 言って殿下は、そこから手を遠ざけてくれた。あくまで、僕が少しでも怯えるところには、触れないつもりなんだろう。

 触れられて、キスされて、すっかり快楽に夢中になって喘ぐ僕を、殿下が見下ろしている。恥ずかしくてたまらないのに、殿下はじっと僕を見つめていて、目を離してくれない。

「…………ぁ……あぁっ…………」
「可愛い…………昨日、魔法で俺を導いてくれた時は、あんなに凛々しかったのに」
「……ぅっ…………!」
「王城にある部屋の扉なのに、俺たちは束になってかかっても、あの扉を開くことができなかった。それを、君はいとも簡単にやってのけたんだよ?」
「……だ、だってそれは、殿下のためにっ……!」

 殿下のためだから、あの扉を開こうとした。殿下が俺を頼りにしてくれたんだと舞い上がっていたから。
 あの屋敷に殿下が来てくれた時みたいに、僕はずっと、殿下の力になりたかったんだ。

「俺のために用意してくれたんだ…………」
「…………」

 こんなこと、言うはずなかったのに。くそ……快楽に負けた。こんな時にそんな話をするなんて、ずるい。
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