62 / 68
第七章 決戦
第六十二話 心友
しおりを挟む
ずっと、扉の前で考えてた。
レスターの事、俺の魔力暴走の事、それからあいつが今までどう生きてきたか……。あいつは腐敗した大地で右半身を失いながらも、生きるために自分の両親を殺したクロレシアに土下座までしたらしい。しかもあいつの右半身を奪ったのは親友であるはずの俺だ。
正直言ってあの時の事はほとんど覚えていない。けどあいつが嘘をつくはずもないし、半分機械になってしまっている体だって冗談で出来るわけじゃないだろう。間違いなく俺がやったんだ。
俺は自身の手のひらをじっと見つめていたが、覚悟を決めて握り込むと顔を上げて扉を見据えた。
「謝って許される事じゃないのは分かってる。だけど、あいつとの関係をここで終わらせたくはないんだ」
やや汗ばむ手で扉のノブを握ると、そっと開けて一歩踏み込んだ。
辺りにはレンガのブロックで覆われた床と壁、それ以外は何もないガランとした空間の中央に、緑色の髪、黒い瞳をした半分機械姿の幼馴染が笑う事もなくただ黙ってこちらを見つめていた。俺は一歩、二歩と、戸惑いながらもレスターとの距離を縮める。
「警戒でもしているのか? お前らしくもないな、ウッドシーヴェル」
俺の戸惑いがレスターにも伝わったんだろう、あいつは笑う事もせず俺を見つめたままそう口を開いた。
「レスター……。俺が来るって分かってたんだろ? そうじゃなきゃお前がコタロウの考えたゲームなんかに参加するはずないよな」
俺の言葉に、レスターは蔑むように笑った。そのまま自身の右手を剣の形に変形させていく。
「随分知った風な口を利くな? 未だ親友気取りか。たかだか幼少期の数年、共に過ごしただけだというのに」
「時間じゃねーだろ」
分かり合うのに必要なのは時間じゃねーよ。俺は数年だろうが、数時間だろうが、お前とともに過ごした日々はかけがえのないものだと思ってる。だから親友だって思ってるんだ、こうして敵対している今も。
そうは思っていても、俺の気持ちがレスターに通じることはないんだろう。その証拠にあいつは嘲笑した。
「は。口ではどうとでも言える」
あと数歩でレスターの前に辿り着く、というあたりでレスターが剣の形をした右手を俺に振るってきた。覚悟はしてたし話し合うだけで済むとは思ってなかったよ。俺はすぐに自身の紋章に触れると、魔法を発動してレスターの攻撃を防いだ。
「貴様は運がいい。こうして孤独に逝かないような死に場所を作ってもらえたのだからな」
レスターが左手を振り、風の魔法を発動した。とっさに体勢を低くして前のめりになり踏ん張ったが、俺の皮膚を切り刻みながら後退させてくる。そのうち支えきれなくなり吹き飛ばされて壁に打ち付けられた。レンガのブロックが脆くも数個崩れ去る。
「お前が死ぬか、オレが死ぬか、どちらにせよオレ達の関係はここで終わりだ」
近づいて来るレスターより先に魔法を発動して土の剣を作り上げた。終わりになんてするかよ、その一心で右手に剣を持ったまま左手で再び紋章に触れる。魔法で自身の前に土の壁を作り上げた。俺はレスターを殺すつもりなんてないんだ。どうにか分かり合えるはずだって思ったからこそ、ここに来た。だから話を聞いてもらおうと、俺は必死に話しかけたんだ。
「俺はお前を敵だなんて思ったことはないし、あの暴走でお前を攻撃したなんて何かの間違いなんだ!! なぁ、もっと話し合えば原因が分かるかもしれないだろ!? あの時のこと、俺何も覚えてねーんだからさ!」
覚えていれば何か分かったかもしれないし、レスターの体をあんな風にすることもなかったかもしれない。原因が分かれば憎み合う事もないんだって思ってた。そんな甘い考えが余計にレスターの怒りを煽ったんだろう、レスターは俺に斬りかかってきた。
「くだらない言い訳などせずかかって来い!! 十年前、オレを殺すつもりだったのならできるだろう?」
「だから! 違うって言ってんだろ!!」
レスターの剣が俺の頬をかすめる。右手の剣に気を取られている隙に左から蹴り飛ばされた。立ち上がる間もなく右足を剣で貫かれる。
「う、あぁ! レスター、俺はっ……」
「話し合いの時間などとうに終わった。オレはこの心の中の靄を晴らしたくてここに居るだけだ。貴様を殺してな!!」
風の魔法が俺を切り刻む。俺の右足から引き抜かれた剣が心臓へ向けて突き出されるのをかろうじて転がって避けると、すぐに自身を回復した。レスターを見上げれば眉間にシワを寄せたまま俺を見据えている。そこでようやく気が付いたんだ。
話し合えば分かり合えるなんて甘い考えをしていたら、俺はレスターに殺される。こいつにとって俺は人生を狂わせた敵なんだ。本気で俺を憎んで、本気で殺そうとしてる。もしかしたら例え原因が分かったのだとしても、二度と解り合う事など出来ないのかもしれないと思った。
レスターはもう、俺と親友に戻る事なんて望んでないんだ。
「ほんっと……俺バカだよな。今までずっと昔に戻りたいからって言い訳ばっかしてさ、覚えてないとか、やってないとか、そんなのお前が聞きたかった事じゃないのに。これじゃマジで親友だなんて言えないよ」
持っていた土の剣を強く握り直し、俺はレスターに向き直った。どうすればいいのかなんて分からなかったけど、レスターの気持ちを真剣に考えてみようと思ったんだ。あいつが今何をしたいのか。何を求めているのか……。
俺の隙を突いてレスターが腕の剣で襲い掛かってくる。とっさに土の剣で受ければ、甲高い音が響き渡った。直後放たれた風の魔法はすぐに地の壁を作って防ぐ。
そうだ、レスターはずっと孤独を恐れてた。一人になるのが嫌だって、遊びですら一つ残されるのを嫌がってた。こいつはいつも一人だったから……。
右から上段蹴りで壁を破壊されると、すぐに風の刃が飛んできた。それをしゃがんで避けると左から来た蹴りを腕で防ぐ。そこでまた考えた。
俺と居る事が多くなってからは一人を怖がらなくなってたっけ。『明日になればウッドシーヴェルが来てくれるでしょ? ウッドシーヴェルが僕のここに居てくれてるから怖くないんだ』って心臓の辺りに触れて笑ってた。
レスターの剣が俺の心臓めがけて迫ってくる。魔法で横から岩を突き出し、防いだ。俺の思考はまだ十年前の腐敗した大地を走ってた所にある。あの時、俺の魔力が暴走してレスターを攻撃したのだとしたら……。魔法は潜在意識で敵味方を判別するから、自分で意識しない限り味方は攻撃できないはずなんだ。なのに俺は……。
レスターの右半身を奪った。
孤独を恐れてたレスターの想いを裏切って、俺はまた一人にしてしまったんだ。心までずたずたに傷つけて……。
そこまで考えて辛くて苦しくなった。もし俺だったらきっと耐えられなかっただろう。レスターの剣を受けながらこのまま力を抜いたらどうなるだろう、なんて事まで考えた。
「くっ……! ただのらりくらりと暮らしていた貴様とオレ、なぜ力の差が出ない!?」
レスターが息を切らし悔しそうに吐き捨てる。俺も魔力切れが近いせいか、かなり息が上がっていた。さすがに魔法、使いすぎたみたいだ。だけど力を抜くこともできなかったんだ。
恐らくあいつらと出会ってなければ、俺はレスターの望む通り自らあいつの剣をこの心臓に突き立てていただろう。だけど今は……。
右からきた上段蹴りは腰を落として避け、回転するように放たれた剣は土の剣で受けた。すぐに風の魔法で吹き飛ばされる。ハァハァと息をつきながらも、とっさに地の魔法でつぶてを放ち立ち上がった。苦しいけど、レスターの思う通りにするわけにはいかなかったから。
「俺はまだ、死ぬわけにはいかないんだよ」
村を出てから色々あった。やりたい事、やらなければいけない事、救いたい人、救えなかった人、共に居たい奴ら……。タケルと出会った頃から俺は変わったんだ。あの村でタケルに誓った。本当の英雄になるって。だからまだここで終わるわけにはいかない。
そんな俺の覚悟の想いなどお構いなく、レスターは再び風の魔法を放ってきた。その魔法で腕を斬られたと同時に鋼鉄の拳が襲い掛かってくる。気が付けばレスターの右手がいつの間にか剣から普通の手の形へと変わっていた。もしかしたらあいつの機械は自身の魔力で変形していたのかもしれないと気が付いた。
「何だよお前、魔力切れか?」
はぁはぁと息をつきながら問いかけた俺に、図星だったのかレスターも息を切らせながら不愉快な顔をする。これならまだ話が出来るかもしれない、と急いで腕を回復しようとして、俺の魔力も途中で切れた。
「は。お前もじゃないか。オレより立派な紋章を持っておきながら情けない男だ」
言いながら俺に向かって鋼鉄の拳を振るう。油断していた俺は殴られた衝撃のまま床に倒れた。さらに殴りつけようと胸ぐらを掴んできたレスターの生身の方の左腕を掴んでひっくり返す。もう生きるとか死ぬとかそんな事すら考えられなくなって、ただ昔のように思うままの怒りをレスターにぶつけた。
「うるせーよ!」
馬乗りになって開いていた方の手でレスターの右頬を殴りつける。バカなことをした、とすぐに後悔した。
「いってぇぇ~」
レスターの頬を形作ってた機械の角が当たり、傷ついたのは俺の拳だ。痛みに悶えている俺を見てレスターが嘲笑った。
「貴様は相変わらずバカだな」
言いながらも俺の下から機械の拳で二度三度と殴りつけてきた。この、鉄の塊は反則だろっ……! 押さえつけようと思ったけど機械と生身じゃ力の差が歴然すぎて、すぐに押し戻された。敵うわけねーって、こんな機械の腕じゃ……。そこまで考えて、レスターの機械で出来た腕を反対の手でつい握りしめた。
「……ごめん」
たった一言だけ、こぼれる。
改めて考えてしまったんだ。こんな風にしてしまったのは俺だったんだって。馬乗りになったままうつむいてレスターの腕を握り締める俺に、あいつはキョトンとした表情になる。いきなり何を言うんだって顔に書いてあった。
「これ、やったの……俺なんだよな。俺が、お前の人生をめちゃくちゃにした」
「ウッドシーヴェル……」
呆けたままのレスターに向かって更に言葉をつなげる。言い訳でもいい、レスターが昔、俺を信じてくれてた想いだけは裏切りたくないって思った。
「でもこれだけは信じてくれ。本当に俺、お前を殺そうと思った事なんて一度だってないんだよ。今だって、これからだって。本当はさ、命を懸けて証明するべきなんだろうけど、俺は今やらなきゃいけない事があって、死ぬわけにはいかねーんだ。だから……だから俺はお前を裏切ってないって、一生かけて証明する。……頼む。見ててくれ」
言い終わった所でレスターがいきなり笑い声をあげた。今度は俺の方がキョトンとなる。
「は。どうせお前の事だからオレの為に復讐を果たさせてやりたいとか、戦いながら馬鹿なことをずっと考えていたんだろう?」
「それはっ……!」
図星を指され恥ずかしくなり、慌てて手を離す。レスターが上半身を起き上がらせながら、機械の右手で左側の顔を、生身の左手で心臓を押さえて何かを呟いた。
「まったく……。どうして未だにお前の気持ちが分かってしまうんだろう。ここにまだ、お前が居たというのか……」
何を言ったのか俺には聞き取れなかったし表情すら見えなくて、もっとよく聞こうと近づいたら左手で殴り飛ばされた。
「顔を近づけるな、気持ちの悪い男だ。だいたい貴様、どこのプロポーズの言葉だ。一生かけて証明する? オレに貴様と一生付き合えというのか、バカが」
そのままもう一度俺の顔を今度は右の鉄の拳で殴り飛ばすと、押しのけて立ち上がり見下ろしてきた。口元が笑んで見えるのは気のせいだろうか?
「出来るものならやってみろ。もしもお前が本当に裏切っていたのだと分かった時は、すぐに殺してやる。ずっと見ていてやるから、いつか証明しろ」
レスターの言葉を聞いて安心した。魔力切れだと思ってたし。
……だから油断してたんだ。レスターは風の魔法を放って魔導砲側のドアを切り刻むと、そこに向かって俺を機械の足で蹴り飛ばした。体が吹き飛ぶほどの衝撃だ。一瞬意識が飛んだ。
「まずはやるべき事を果たせ、……我が親友」
意識が戻った時にはレスターを中に残したまま、崩壊する音が聞こえてくる。俺は慌てて扉の方へと近づいた。やめろ、もう誰も失いたくないんだよ。
恐る恐る中を確認して俺は唇を歪めた。
「バカ……やろうが。お前知ってんだろ、俺バカだからお空の向こうから見てるって言われても分かんねーんだよ! それに、すぐ殺すっていうならちゃんと俺のそばで、見えるところで監視してなきゃダメだろ!!」
崩落した床の下、俺が地の魔法で作り上げた瓦礫の塊の上に居るレスターに向かって叫んだ。レスターはカッコまでつけて死ぬつもりだったのが今さら恥ずかしくなったのか、少し頬を赤らめながらしきりに髪をすいていた。
「そういえばお前、昔から穴の中に何かを仕掛けるのが好きだったな」
レスターの奴は苦笑して嫌味ったらしく言いやがったけど、照れ隠しだって分かったから再び唇を歪めてニヤリと笑ってやる。
「そうだよ。お前もとっととこっちへ来い」
手を差し出したらなんだかんだ言いながらも俺の手を握ってくれた。なんだか、久しぶりにレスターとこうして話せた気がする。嬉しくてニヤニヤする俺とは別に、レスターは未だにぶつぶつ言っていた。
「まったく……。オレより紋章が大きい癖に魔力切れしてたのはこのせいか。相変わらずバカな奴だ」
うるせーよ、と反論する前にいきなり俺の背中に衝撃がはしる。蹴り飛ばされたって気づくより先にテンの声が降ってきた。
「バカーーーーー! このバカー!! 魔力切れって正気!? まだ何があるか分からないんだよ!? こんな所で魔力切らしてどーすんのさ!? あーもー、ホンット考えなしのバカ! バカオブバカ!! キングオブバカ!!」
「ああ!? お前、人の事バカバカ言いすぎだろ!!」
怒りのままに立ち上がろうとしたらテンに押し戻された。そのままぶーぶー言いながらも回復してくれる。なんだよ、文句言う割に心配してくれちゃってんの? 可愛い奴め~。嬉しくなってテンの頭をぐちゃぐちゃにかき回しながら、今更だけどきょろきょろ辺りを見回した。ナナセや桔梗と目が合って俺は無言でうなずく。ヤエもどうやら無事だったらしい。桔梗の腕の中に居る赤ん坊の事は後で聞くとして……。
「やっぱお前らしぶといな」
冗談交じりに言ったらナナセに盛大なため息をつかれた。まるで、お前こそって言ってるみたいだ。なんなんだよ、俺、そんな扱いなワケ? 少しショックを受けてた俺に桔梗が止めを刺してきた。
「バカは死なないっていうだろう」
お前まで言うのかよ!? ってかなんかその言葉ちょっと違わねーか?
三対一……いや、レスターも言いやがったから四対一か。それじゃ敵うわけないと、こいつらとの戦闘を放棄して魔導砲を見上げた。
どうやらここは城の屋上らしい。円形になっている半分には俺達が出てきた扉があり、一つを残して全部開いていた。中央には魔導砲があり、その上には青い空が広がっている。扉の反対側は海側の崖だ。俺達の身長ぐらいの壁しかないから、気をつけないと落ちたら間違いなく死ぬだろう。城の窓からレスターに突き落とされた事を思い出し、少し身震いした。
「さて、どうやら俺達の勝ちらしいし、核を頂いていこう……」
言葉の途中で一つだけ残っていた扉が開く。恐らくコタロウがいた部屋だろう。俺たち全員何事かとそちらに注目した。
「なんだ、誰も死んでいないとは予想外だったね。だけど面白い事になってしまったからねぇ。途中放棄はボクの意志に反するし、勝ちは君達に譲るとしてゲームはこの扉で終了としよう」
何を言っているのか分からないうちに、いきなり俺達の周囲に透明な幕が張り巡らされた。これは何だと触れようと思ったら、途端体中に衝撃と痺れがはしる。
「何なんだよ、これ!?」
「防御壁か!? この魔力量、半端ないな」
桔梗ですら怯えるほどのものらしい。だけどコタロウは扉から出ることはせず、一歩体を横にずらした。
「扉は開放しておいてあげよう。ギャラリーも居た方が楽しいしねぇ?」
防御壁は透明で、扉の向こうまでよく見えた。だからコタロウのいる部屋の……扉の奥に居た人物もすぐに確認できたんだ。信じられない、信じたくない。だけど、あいつはそこに居た。
「タケル!?」
あいつからも俺の姿が見えたんだろう。一瞬だけ微笑んで、すぐにコタロウに向き直った。バカ、何やってんだよ!? 何でコタロウがいる部屋なんかに……。
訳が分からないまま俺達は二人の戦いを見守るしかなかった。
レスターの事、俺の魔力暴走の事、それからあいつが今までどう生きてきたか……。あいつは腐敗した大地で右半身を失いながらも、生きるために自分の両親を殺したクロレシアに土下座までしたらしい。しかもあいつの右半身を奪ったのは親友であるはずの俺だ。
正直言ってあの時の事はほとんど覚えていない。けどあいつが嘘をつくはずもないし、半分機械になってしまっている体だって冗談で出来るわけじゃないだろう。間違いなく俺がやったんだ。
俺は自身の手のひらをじっと見つめていたが、覚悟を決めて握り込むと顔を上げて扉を見据えた。
「謝って許される事じゃないのは分かってる。だけど、あいつとの関係をここで終わらせたくはないんだ」
やや汗ばむ手で扉のノブを握ると、そっと開けて一歩踏み込んだ。
辺りにはレンガのブロックで覆われた床と壁、それ以外は何もないガランとした空間の中央に、緑色の髪、黒い瞳をした半分機械姿の幼馴染が笑う事もなくただ黙ってこちらを見つめていた。俺は一歩、二歩と、戸惑いながらもレスターとの距離を縮める。
「警戒でもしているのか? お前らしくもないな、ウッドシーヴェル」
俺の戸惑いがレスターにも伝わったんだろう、あいつは笑う事もせず俺を見つめたままそう口を開いた。
「レスター……。俺が来るって分かってたんだろ? そうじゃなきゃお前がコタロウの考えたゲームなんかに参加するはずないよな」
俺の言葉に、レスターは蔑むように笑った。そのまま自身の右手を剣の形に変形させていく。
「随分知った風な口を利くな? 未だ親友気取りか。たかだか幼少期の数年、共に過ごしただけだというのに」
「時間じゃねーだろ」
分かり合うのに必要なのは時間じゃねーよ。俺は数年だろうが、数時間だろうが、お前とともに過ごした日々はかけがえのないものだと思ってる。だから親友だって思ってるんだ、こうして敵対している今も。
そうは思っていても、俺の気持ちがレスターに通じることはないんだろう。その証拠にあいつは嘲笑した。
「は。口ではどうとでも言える」
あと数歩でレスターの前に辿り着く、というあたりでレスターが剣の形をした右手を俺に振るってきた。覚悟はしてたし話し合うだけで済むとは思ってなかったよ。俺はすぐに自身の紋章に触れると、魔法を発動してレスターの攻撃を防いだ。
「貴様は運がいい。こうして孤独に逝かないような死に場所を作ってもらえたのだからな」
レスターが左手を振り、風の魔法を発動した。とっさに体勢を低くして前のめりになり踏ん張ったが、俺の皮膚を切り刻みながら後退させてくる。そのうち支えきれなくなり吹き飛ばされて壁に打ち付けられた。レンガのブロックが脆くも数個崩れ去る。
「お前が死ぬか、オレが死ぬか、どちらにせよオレ達の関係はここで終わりだ」
近づいて来るレスターより先に魔法を発動して土の剣を作り上げた。終わりになんてするかよ、その一心で右手に剣を持ったまま左手で再び紋章に触れる。魔法で自身の前に土の壁を作り上げた。俺はレスターを殺すつもりなんてないんだ。どうにか分かり合えるはずだって思ったからこそ、ここに来た。だから話を聞いてもらおうと、俺は必死に話しかけたんだ。
「俺はお前を敵だなんて思ったことはないし、あの暴走でお前を攻撃したなんて何かの間違いなんだ!! なぁ、もっと話し合えば原因が分かるかもしれないだろ!? あの時のこと、俺何も覚えてねーんだからさ!」
覚えていれば何か分かったかもしれないし、レスターの体をあんな風にすることもなかったかもしれない。原因が分かれば憎み合う事もないんだって思ってた。そんな甘い考えが余計にレスターの怒りを煽ったんだろう、レスターは俺に斬りかかってきた。
「くだらない言い訳などせずかかって来い!! 十年前、オレを殺すつもりだったのならできるだろう?」
「だから! 違うって言ってんだろ!!」
レスターの剣が俺の頬をかすめる。右手の剣に気を取られている隙に左から蹴り飛ばされた。立ち上がる間もなく右足を剣で貫かれる。
「う、あぁ! レスター、俺はっ……」
「話し合いの時間などとうに終わった。オレはこの心の中の靄を晴らしたくてここに居るだけだ。貴様を殺してな!!」
風の魔法が俺を切り刻む。俺の右足から引き抜かれた剣が心臓へ向けて突き出されるのをかろうじて転がって避けると、すぐに自身を回復した。レスターを見上げれば眉間にシワを寄せたまま俺を見据えている。そこでようやく気が付いたんだ。
話し合えば分かり合えるなんて甘い考えをしていたら、俺はレスターに殺される。こいつにとって俺は人生を狂わせた敵なんだ。本気で俺を憎んで、本気で殺そうとしてる。もしかしたら例え原因が分かったのだとしても、二度と解り合う事など出来ないのかもしれないと思った。
レスターはもう、俺と親友に戻る事なんて望んでないんだ。
「ほんっと……俺バカだよな。今までずっと昔に戻りたいからって言い訳ばっかしてさ、覚えてないとか、やってないとか、そんなのお前が聞きたかった事じゃないのに。これじゃマジで親友だなんて言えないよ」
持っていた土の剣を強く握り直し、俺はレスターに向き直った。どうすればいいのかなんて分からなかったけど、レスターの気持ちを真剣に考えてみようと思ったんだ。あいつが今何をしたいのか。何を求めているのか……。
俺の隙を突いてレスターが腕の剣で襲い掛かってくる。とっさに土の剣で受ければ、甲高い音が響き渡った。直後放たれた風の魔法はすぐに地の壁を作って防ぐ。
そうだ、レスターはずっと孤独を恐れてた。一人になるのが嫌だって、遊びですら一つ残されるのを嫌がってた。こいつはいつも一人だったから……。
右から上段蹴りで壁を破壊されると、すぐに風の刃が飛んできた。それをしゃがんで避けると左から来た蹴りを腕で防ぐ。そこでまた考えた。
俺と居る事が多くなってからは一人を怖がらなくなってたっけ。『明日になればウッドシーヴェルが来てくれるでしょ? ウッドシーヴェルが僕のここに居てくれてるから怖くないんだ』って心臓の辺りに触れて笑ってた。
レスターの剣が俺の心臓めがけて迫ってくる。魔法で横から岩を突き出し、防いだ。俺の思考はまだ十年前の腐敗した大地を走ってた所にある。あの時、俺の魔力が暴走してレスターを攻撃したのだとしたら……。魔法は潜在意識で敵味方を判別するから、自分で意識しない限り味方は攻撃できないはずなんだ。なのに俺は……。
レスターの右半身を奪った。
孤独を恐れてたレスターの想いを裏切って、俺はまた一人にしてしまったんだ。心までずたずたに傷つけて……。
そこまで考えて辛くて苦しくなった。もし俺だったらきっと耐えられなかっただろう。レスターの剣を受けながらこのまま力を抜いたらどうなるだろう、なんて事まで考えた。
「くっ……! ただのらりくらりと暮らしていた貴様とオレ、なぜ力の差が出ない!?」
レスターが息を切らし悔しそうに吐き捨てる。俺も魔力切れが近いせいか、かなり息が上がっていた。さすがに魔法、使いすぎたみたいだ。だけど力を抜くこともできなかったんだ。
恐らくあいつらと出会ってなければ、俺はレスターの望む通り自らあいつの剣をこの心臓に突き立てていただろう。だけど今は……。
右からきた上段蹴りは腰を落として避け、回転するように放たれた剣は土の剣で受けた。すぐに風の魔法で吹き飛ばされる。ハァハァと息をつきながらも、とっさに地の魔法でつぶてを放ち立ち上がった。苦しいけど、レスターの思う通りにするわけにはいかなかったから。
「俺はまだ、死ぬわけにはいかないんだよ」
村を出てから色々あった。やりたい事、やらなければいけない事、救いたい人、救えなかった人、共に居たい奴ら……。タケルと出会った頃から俺は変わったんだ。あの村でタケルに誓った。本当の英雄になるって。だからまだここで終わるわけにはいかない。
そんな俺の覚悟の想いなどお構いなく、レスターは再び風の魔法を放ってきた。その魔法で腕を斬られたと同時に鋼鉄の拳が襲い掛かってくる。気が付けばレスターの右手がいつの間にか剣から普通の手の形へと変わっていた。もしかしたらあいつの機械は自身の魔力で変形していたのかもしれないと気が付いた。
「何だよお前、魔力切れか?」
はぁはぁと息をつきながら問いかけた俺に、図星だったのかレスターも息を切らせながら不愉快な顔をする。これならまだ話が出来るかもしれない、と急いで腕を回復しようとして、俺の魔力も途中で切れた。
「は。お前もじゃないか。オレより立派な紋章を持っておきながら情けない男だ」
言いながら俺に向かって鋼鉄の拳を振るう。油断していた俺は殴られた衝撃のまま床に倒れた。さらに殴りつけようと胸ぐらを掴んできたレスターの生身の方の左腕を掴んでひっくり返す。もう生きるとか死ぬとかそんな事すら考えられなくなって、ただ昔のように思うままの怒りをレスターにぶつけた。
「うるせーよ!」
馬乗りになって開いていた方の手でレスターの右頬を殴りつける。バカなことをした、とすぐに後悔した。
「いってぇぇ~」
レスターの頬を形作ってた機械の角が当たり、傷ついたのは俺の拳だ。痛みに悶えている俺を見てレスターが嘲笑った。
「貴様は相変わらずバカだな」
言いながらも俺の下から機械の拳で二度三度と殴りつけてきた。この、鉄の塊は反則だろっ……! 押さえつけようと思ったけど機械と生身じゃ力の差が歴然すぎて、すぐに押し戻された。敵うわけねーって、こんな機械の腕じゃ……。そこまで考えて、レスターの機械で出来た腕を反対の手でつい握りしめた。
「……ごめん」
たった一言だけ、こぼれる。
改めて考えてしまったんだ。こんな風にしてしまったのは俺だったんだって。馬乗りになったままうつむいてレスターの腕を握り締める俺に、あいつはキョトンとした表情になる。いきなり何を言うんだって顔に書いてあった。
「これ、やったの……俺なんだよな。俺が、お前の人生をめちゃくちゃにした」
「ウッドシーヴェル……」
呆けたままのレスターに向かって更に言葉をつなげる。言い訳でもいい、レスターが昔、俺を信じてくれてた想いだけは裏切りたくないって思った。
「でもこれだけは信じてくれ。本当に俺、お前を殺そうと思った事なんて一度だってないんだよ。今だって、これからだって。本当はさ、命を懸けて証明するべきなんだろうけど、俺は今やらなきゃいけない事があって、死ぬわけにはいかねーんだ。だから……だから俺はお前を裏切ってないって、一生かけて証明する。……頼む。見ててくれ」
言い終わった所でレスターがいきなり笑い声をあげた。今度は俺の方がキョトンとなる。
「は。どうせお前の事だからオレの為に復讐を果たさせてやりたいとか、戦いながら馬鹿なことをずっと考えていたんだろう?」
「それはっ……!」
図星を指され恥ずかしくなり、慌てて手を離す。レスターが上半身を起き上がらせながら、機械の右手で左側の顔を、生身の左手で心臓を押さえて何かを呟いた。
「まったく……。どうして未だにお前の気持ちが分かってしまうんだろう。ここにまだ、お前が居たというのか……」
何を言ったのか俺には聞き取れなかったし表情すら見えなくて、もっとよく聞こうと近づいたら左手で殴り飛ばされた。
「顔を近づけるな、気持ちの悪い男だ。だいたい貴様、どこのプロポーズの言葉だ。一生かけて証明する? オレに貴様と一生付き合えというのか、バカが」
そのままもう一度俺の顔を今度は右の鉄の拳で殴り飛ばすと、押しのけて立ち上がり見下ろしてきた。口元が笑んで見えるのは気のせいだろうか?
「出来るものならやってみろ。もしもお前が本当に裏切っていたのだと分かった時は、すぐに殺してやる。ずっと見ていてやるから、いつか証明しろ」
レスターの言葉を聞いて安心した。魔力切れだと思ってたし。
……だから油断してたんだ。レスターは風の魔法を放って魔導砲側のドアを切り刻むと、そこに向かって俺を機械の足で蹴り飛ばした。体が吹き飛ぶほどの衝撃だ。一瞬意識が飛んだ。
「まずはやるべき事を果たせ、……我が親友」
意識が戻った時にはレスターを中に残したまま、崩壊する音が聞こえてくる。俺は慌てて扉の方へと近づいた。やめろ、もう誰も失いたくないんだよ。
恐る恐る中を確認して俺は唇を歪めた。
「バカ……やろうが。お前知ってんだろ、俺バカだからお空の向こうから見てるって言われても分かんねーんだよ! それに、すぐ殺すっていうならちゃんと俺のそばで、見えるところで監視してなきゃダメだろ!!」
崩落した床の下、俺が地の魔法で作り上げた瓦礫の塊の上に居るレスターに向かって叫んだ。レスターはカッコまでつけて死ぬつもりだったのが今さら恥ずかしくなったのか、少し頬を赤らめながらしきりに髪をすいていた。
「そういえばお前、昔から穴の中に何かを仕掛けるのが好きだったな」
レスターの奴は苦笑して嫌味ったらしく言いやがったけど、照れ隠しだって分かったから再び唇を歪めてニヤリと笑ってやる。
「そうだよ。お前もとっととこっちへ来い」
手を差し出したらなんだかんだ言いながらも俺の手を握ってくれた。なんだか、久しぶりにレスターとこうして話せた気がする。嬉しくてニヤニヤする俺とは別に、レスターは未だにぶつぶつ言っていた。
「まったく……。オレより紋章が大きい癖に魔力切れしてたのはこのせいか。相変わらずバカな奴だ」
うるせーよ、と反論する前にいきなり俺の背中に衝撃がはしる。蹴り飛ばされたって気づくより先にテンの声が降ってきた。
「バカーーーーー! このバカー!! 魔力切れって正気!? まだ何があるか分からないんだよ!? こんな所で魔力切らしてどーすんのさ!? あーもー、ホンット考えなしのバカ! バカオブバカ!! キングオブバカ!!」
「ああ!? お前、人の事バカバカ言いすぎだろ!!」
怒りのままに立ち上がろうとしたらテンに押し戻された。そのままぶーぶー言いながらも回復してくれる。なんだよ、文句言う割に心配してくれちゃってんの? 可愛い奴め~。嬉しくなってテンの頭をぐちゃぐちゃにかき回しながら、今更だけどきょろきょろ辺りを見回した。ナナセや桔梗と目が合って俺は無言でうなずく。ヤエもどうやら無事だったらしい。桔梗の腕の中に居る赤ん坊の事は後で聞くとして……。
「やっぱお前らしぶといな」
冗談交じりに言ったらナナセに盛大なため息をつかれた。まるで、お前こそって言ってるみたいだ。なんなんだよ、俺、そんな扱いなワケ? 少しショックを受けてた俺に桔梗が止めを刺してきた。
「バカは死なないっていうだろう」
お前まで言うのかよ!? ってかなんかその言葉ちょっと違わねーか?
三対一……いや、レスターも言いやがったから四対一か。それじゃ敵うわけないと、こいつらとの戦闘を放棄して魔導砲を見上げた。
どうやらここは城の屋上らしい。円形になっている半分には俺達が出てきた扉があり、一つを残して全部開いていた。中央には魔導砲があり、その上には青い空が広がっている。扉の反対側は海側の崖だ。俺達の身長ぐらいの壁しかないから、気をつけないと落ちたら間違いなく死ぬだろう。城の窓からレスターに突き落とされた事を思い出し、少し身震いした。
「さて、どうやら俺達の勝ちらしいし、核を頂いていこう……」
言葉の途中で一つだけ残っていた扉が開く。恐らくコタロウがいた部屋だろう。俺たち全員何事かとそちらに注目した。
「なんだ、誰も死んでいないとは予想外だったね。だけど面白い事になってしまったからねぇ。途中放棄はボクの意志に反するし、勝ちは君達に譲るとしてゲームはこの扉で終了としよう」
何を言っているのか分からないうちに、いきなり俺達の周囲に透明な幕が張り巡らされた。これは何だと触れようと思ったら、途端体中に衝撃と痺れがはしる。
「何なんだよ、これ!?」
「防御壁か!? この魔力量、半端ないな」
桔梗ですら怯えるほどのものらしい。だけどコタロウは扉から出ることはせず、一歩体を横にずらした。
「扉は開放しておいてあげよう。ギャラリーも居た方が楽しいしねぇ?」
防御壁は透明で、扉の向こうまでよく見えた。だからコタロウのいる部屋の……扉の奥に居た人物もすぐに確認できたんだ。信じられない、信じたくない。だけど、あいつはそこに居た。
「タケル!?」
あいつからも俺の姿が見えたんだろう。一瞬だけ微笑んで、すぐにコタロウに向き直った。バカ、何やってんだよ!? 何でコタロウがいる部屋なんかに……。
訳が分からないまま俺達は二人の戦いを見守るしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
