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過程
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「だから深谷さんは僕を……って、あれ?」
僕はいくつか疑問を抱く。
「それなら、どうして部長は襲われなかったんですか? 部長の方が、絶対僕より霊力がありますよね」
僕は意識しても、夢現の世界なんて作れっこない、はずだ。僕より部長のほうが霊力が弱いなんて思えない。
「霊力を測るには、色々とやり方があってのう。単純なのが殺意のような意思を乗せた霊力を大多数の人間にぶつけ、反応を見ることじゃな。殆どの人間は気付かず、多少霊力を持つものが反応する。恐らくお主も、いつかは分からぬが彩花の発したそれに反応してしまったのじゃろう。二人きりにもなりやすかったじゃろうし、お主は絶好の獲物だったのじゃ。儂のような人間はそれがどういう意味か分かっておるから、大げさに反応したりせず、気取られぬようさりげなく霊力を発した相手とそれに反応した相手を確認するのじゃ」
「そうだったんですか」
疑問の一つが解決した。けれど疑問はまだ他にもある。
「じゃあ、どうして今になって襲われたんでしょう。深谷さんと知り合ったのは一か月以上前ですし、もっと早くに襲われていてもおかしくなかったと思うのですが」
「今回の問題は、そこじゃ」
空気の質量がより重くなったように感じた。ピリピリと肌がざわつく。時期にそれほど深い意味があるのだろうか。
「霊力は食うことで強くなる。では食われた者はどうなる」
「……それは、霊力が減る、とか」
「そうじゃな。ただ、少し減った程度じゃあまり影響は出ぬ。一時的に感情の起伏が緩やかになる程度で、それも日々の生活を続けていくうちに元通りになる。実際今まではそれで済んでいたのじゃろう。が、全て失われたら、どうなる」
「全て……」
霊力は意思により作用する、誰もが持つ力。それが全て失われたら――
「死ぬ、のですか?」
「ああ。精神的に、じゃが」
こともなげに、部長は言った。
ざわり、と鳥肌が立つ。
「自分の意思が分からず、他人の意思も分からない。何が起きても、そこから情報を受け取れない。全ての事象をただ事実として五感で受け止め、思考に至らない。反射だけで生きる、屍となる」
あの時感じた死の恐怖が蘇る。植物人間になった自分を想像して、怖気が走った。
「精神的な死は、結果ではなく過程のものじゃ。霊力を食われたから死ぬのではない。霊力を食うために殺されたのじゃ。お主たちが食している野菜も肉も、そうじゃろう」
僕は昨日の晩のカレーに入っていた牛肉を思い浮かべた。生き物は食われるために殺される。当たり前のことを聞いただけなのに、肌寒さを感じた。
間接的な捕食者であり続けた僕もまた、被食者になるところだったのか。
「霊力は少なからず意思に結びついておる。全てを喰らおうとすれば、その意思を殺さなければならない」
「意思を、殺す」
今度は深谷さんの行動を思い出す。確かに僕は、死の自覚一歩手前まで追い込まれた。あれが意思を殺すということなのだろうか。
「夢現の世界などで精神を殺せば、意思は死に霊力を失う。失われた霊力は意思という容器を失い大気中に漏れ、それが広がらぬうちに全て喰らうのじゃ」
僕はいくつか疑問を抱く。
「それなら、どうして部長は襲われなかったんですか? 部長の方が、絶対僕より霊力がありますよね」
僕は意識しても、夢現の世界なんて作れっこない、はずだ。僕より部長のほうが霊力が弱いなんて思えない。
「霊力を測るには、色々とやり方があってのう。単純なのが殺意のような意思を乗せた霊力を大多数の人間にぶつけ、反応を見ることじゃな。殆どの人間は気付かず、多少霊力を持つものが反応する。恐らくお主も、いつかは分からぬが彩花の発したそれに反応してしまったのじゃろう。二人きりにもなりやすかったじゃろうし、お主は絶好の獲物だったのじゃ。儂のような人間はそれがどういう意味か分かっておるから、大げさに反応したりせず、気取られぬようさりげなく霊力を発した相手とそれに反応した相手を確認するのじゃ」
「そうだったんですか」
疑問の一つが解決した。けれど疑問はまだ他にもある。
「じゃあ、どうして今になって襲われたんでしょう。深谷さんと知り合ったのは一か月以上前ですし、もっと早くに襲われていてもおかしくなかったと思うのですが」
「今回の問題は、そこじゃ」
空気の質量がより重くなったように感じた。ピリピリと肌がざわつく。時期にそれほど深い意味があるのだろうか。
「霊力は食うことで強くなる。では食われた者はどうなる」
「……それは、霊力が減る、とか」
「そうじゃな。ただ、少し減った程度じゃあまり影響は出ぬ。一時的に感情の起伏が緩やかになる程度で、それも日々の生活を続けていくうちに元通りになる。実際今まではそれで済んでいたのじゃろう。が、全て失われたら、どうなる」
「全て……」
霊力は意思により作用する、誰もが持つ力。それが全て失われたら――
「死ぬ、のですか?」
「ああ。精神的に、じゃが」
こともなげに、部長は言った。
ざわり、と鳥肌が立つ。
「自分の意思が分からず、他人の意思も分からない。何が起きても、そこから情報を受け取れない。全ての事象をただ事実として五感で受け止め、思考に至らない。反射だけで生きる、屍となる」
あの時感じた死の恐怖が蘇る。植物人間になった自分を想像して、怖気が走った。
「精神的な死は、結果ではなく過程のものじゃ。霊力を食われたから死ぬのではない。霊力を食うために殺されたのじゃ。お主たちが食している野菜も肉も、そうじゃろう」
僕は昨日の晩のカレーに入っていた牛肉を思い浮かべた。生き物は食われるために殺される。当たり前のことを聞いただけなのに、肌寒さを感じた。
間接的な捕食者であり続けた僕もまた、被食者になるところだったのか。
「霊力は少なからず意思に結びついておる。全てを喰らおうとすれば、その意思を殺さなければならない」
「意思を、殺す」
今度は深谷さんの行動を思い出す。確かに僕は、死の自覚一歩手前まで追い込まれた。あれが意思を殺すということなのだろうか。
「夢現の世界などで精神を殺せば、意思は死に霊力を失う。失われた霊力は意思という容器を失い大気中に漏れ、それが広がらぬうちに全て喰らうのじゃ」
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