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夢の終わり
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「え……?」
深谷さんの足は、けれど、ユキの体に当たらなかった。足が動いた結果、深谷さんはユキを跨ぐような形じゃなくなっている。
深谷さんの表情に驚きはない。意図的にそうしたんだ。
「……なんで外すの? そうやって私を怖がらせるつもり?」
「このまま消えてなくなれば私が許すとでも思ってるの? 冗談じゃないわ。消えるなら、私にちゃんと償いをしてから消えてよね」
「償い?」
ユキの問いには答えず、深谷さんは僕の方を見る。
「真、あんた何か分からない? 大人しくなったユキに、二度と好き勝手させない方法とか」
「え? いや僕は……」
『あるぞ』
不意に部長の声が響いた。
「どうすればいいの?」
『簡単じゃ。ユキにお主が望むことを伝えれば良い』
「そんなことでいいんですか?」
あまりにも単純な方法に、僕は思わず聞き返してしまった。
『うむ。元々ユキは彩花の強い意思によって生まれたものじゃ。絶対とまではゆかぬが、霊力の大半を失った今、創造主たる彩花の霊力を受ければ逆らえはせぬ。今の記憶と性格を受け継いだまま、彩花の望む存在となる』
「また深谷さんに成り代わろうとすることはないんですか?」
『本人が手綱を引いておれば問題ない。彩花がまた夢に逃げようとすれば話は違うがの』
「その心配はないわ」
深谷さんはもう一度僕の方を見てから、視線の先をユキへと戻す。
「聞いた通りよ。今から貴女は生まれ変わる」
「サンドバッグにでもするつもりかしら?」
「バカじゃないの? そんなくだらないこと望まないわ」
深谷さんは屈むと、倒れているユキの手を取った。
「あんたは今度こそ、ずっと私の傍にいるの」
望みを口にすると、深谷さんの体が淡く光り始めた。その光はゆっくりユキへと流れていき、段々とユキの体が元に戻っていく。あれが霊力なのだろうか。
「……どうして? 私は貴女を裏切ったのよ」
「あんたから霊力を貰って、色々と思い出したのよ。ここは私の夢の中の世界で、私があんたを作ったこともね」
深谷さんが自嘲するように笑う。
「あんたのしたことは許せないけど、それはあんたに全部丸投げしていたあたしのせいでもある。ここであんたを消したら、私はまたあんたに全てを押し付けて、自分は悪くないって言い訳して逃げることになる。それじゃあ前と変わらないから」
深谷さんは、ユキの顔を覗き込むようにして続けた。
「だから、今度は間違えない。私が生み出したあんたに、もう間違いなんて起こさせない。私もあんたを、ユキを二度と一人にさせたりしない」
「彩花……」
ユキが完全に元の姿を取り戻し、同時に光が収まった。ユキは上半身を起こし、深谷さんを見て微笑む。
「まさか貴女がこんなに変わるなんてね。今の貴女になら、付き従ってもいいわ」
「付き従うとか、そういうのはやめて。力関係は私の方が上なのかもしれないけれど、ユキとはできるだけ同等な関係でいたいの。……ダメ?」
「ふふ、ダメなんかじゃないわ、勿論。……これからよろしくね、彩花」
「うん、ユキ!」
二人が両手を握り合う。良かった。これで全部丸く――
『さて、夢の時間は終わりじゃ』
部長の声が遠くに聞こえる。あれ? なんでこんなに視界がぼやけているんだろう? どうして、こんなに眠――
深谷さんの足は、けれど、ユキの体に当たらなかった。足が動いた結果、深谷さんはユキを跨ぐような形じゃなくなっている。
深谷さんの表情に驚きはない。意図的にそうしたんだ。
「……なんで外すの? そうやって私を怖がらせるつもり?」
「このまま消えてなくなれば私が許すとでも思ってるの? 冗談じゃないわ。消えるなら、私にちゃんと償いをしてから消えてよね」
「償い?」
ユキの問いには答えず、深谷さんは僕の方を見る。
「真、あんた何か分からない? 大人しくなったユキに、二度と好き勝手させない方法とか」
「え? いや僕は……」
『あるぞ』
不意に部長の声が響いた。
「どうすればいいの?」
『簡単じゃ。ユキにお主が望むことを伝えれば良い』
「そんなことでいいんですか?」
あまりにも単純な方法に、僕は思わず聞き返してしまった。
『うむ。元々ユキは彩花の強い意思によって生まれたものじゃ。絶対とまではゆかぬが、霊力の大半を失った今、創造主たる彩花の霊力を受ければ逆らえはせぬ。今の記憶と性格を受け継いだまま、彩花の望む存在となる』
「また深谷さんに成り代わろうとすることはないんですか?」
『本人が手綱を引いておれば問題ない。彩花がまた夢に逃げようとすれば話は違うがの』
「その心配はないわ」
深谷さんはもう一度僕の方を見てから、視線の先をユキへと戻す。
「聞いた通りよ。今から貴女は生まれ変わる」
「サンドバッグにでもするつもりかしら?」
「バカじゃないの? そんなくだらないこと望まないわ」
深谷さんは屈むと、倒れているユキの手を取った。
「あんたは今度こそ、ずっと私の傍にいるの」
望みを口にすると、深谷さんの体が淡く光り始めた。その光はゆっくりユキへと流れていき、段々とユキの体が元に戻っていく。あれが霊力なのだろうか。
「……どうして? 私は貴女を裏切ったのよ」
「あんたから霊力を貰って、色々と思い出したのよ。ここは私の夢の中の世界で、私があんたを作ったこともね」
深谷さんが自嘲するように笑う。
「あんたのしたことは許せないけど、それはあんたに全部丸投げしていたあたしのせいでもある。ここであんたを消したら、私はまたあんたに全てを押し付けて、自分は悪くないって言い訳して逃げることになる。それじゃあ前と変わらないから」
深谷さんは、ユキの顔を覗き込むようにして続けた。
「だから、今度は間違えない。私が生み出したあんたに、もう間違いなんて起こさせない。私もあんたを、ユキを二度と一人にさせたりしない」
「彩花……」
ユキが完全に元の姿を取り戻し、同時に光が収まった。ユキは上半身を起こし、深谷さんを見て微笑む。
「まさか貴女がこんなに変わるなんてね。今の貴女になら、付き従ってもいいわ」
「付き従うとか、そういうのはやめて。力関係は私の方が上なのかもしれないけれど、ユキとはできるだけ同等な関係でいたいの。……ダメ?」
「ふふ、ダメなんかじゃないわ、勿論。……これからよろしくね、彩花」
「うん、ユキ!」
二人が両手を握り合う。良かった。これで全部丸く――
『さて、夢の時間は終わりじゃ』
部長の声が遠くに聞こえる。あれ? なんでこんなに視界がぼやけているんだろう? どうして、こんなに眠――
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