三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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王立能力学園・工学部発明学科編

120 2つの受験(5)

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 ◇◇ エルドラ王子 ◇◇

「サンタさん頑張れー」と、アレス君の声がする。
「負けるな嬢ちゃん」と、数人の大人から声援が飛ぶ。

 こんな不平等な対戦を認めてもいいのか?って思案している常識人たちも、間もなく始まる対戦を止めることはできない。
 この対戦は、元はと言えばサンタさんの提案から始まっている。
 しかも、対戦を認め証明しろとデモンズに命じたのは、この国の王子である私だ。異議を唱えてしまうと己の進退を左右する可能性がある。

 ……まあ、サンタ師匠が負けることなんて無いけどさ。 

「始め!」と審判になったエバル教授の声がして、2人が一斉に的に向かって魔術を放つ。

 そこからの光景は、流石は私のサンタ師匠って感じで、見ていてとても面白かった。
 サンタ師匠、デモンズの魔術より僅か2秒ほど速い速度にコントロールして、全ての的に魔術を当てていた。どんだけ余裕があるんだよって感じ。
 会場内の見学者には、僅差で勝っているように見えていたことだろう。

「オォーッ! 嬢ちゃんが勝ってるぞ!」

 誰かが興奮して大きな声で叫ぶと、他の見学者からも驚きの声が上がっていく。

 一番驚いているのは王立能力学園の受験者3人で、サンタ師匠やアレス君を笑い者にするはずの計画が、女子学生なんて完全にサンタ師匠の応援に回っている。
 デモンズの女子軽視発言は、この場に居る女性魔術師全員を、完全に敵に回したと思う。
 他の2人は、現実が受け入れられず口を半開きにして呆けている。

 ……まあ、アレス君の試験を見た時も、3人とも信じられないって顔をしていたし、採点だって君たちより10点満点のアレス君の方が上だったもんな。


 的は全部で15あり、サンタ師匠が全ての的に当て、終了したと審判が旗を上げた時点で、デモンズは13の的に命中させ1つ外していた。

「的当て対戦は、サンタの勝利とする」

 審判のエバル教授が大きな声で結果を発表し、サンタ師匠に向かって10点という札を上げた。
 デモンズを見ると、信じられない結果に目を見開き、そして悔しそうに両手を怒りで震わせている。
 会場内は、まさかの結果に大いに沸き、半数が拍手をしている。

「次は岩を砕く競技だ。岩の大きさは多少違うので、的当て対戦で負けたデモンズ殿が、先に岩を選ぶことができる。これは対戦におけるルールである。
 またこの競技は、岩を砕く時間と、より細かく砕いた方が勝者となる」

 エバル教授は、見学者たちに説明しながらデモンズに岩を選べと促す。

「先程は情けを掛け過ぎたようだ。だが、私が本気を出せば負けることなどあり得ないから、大きい方の岩を選ぶ」

 言わなくていい言い訳をしながら、デモンズはスタスタ歩いてほんの少しだけ大きな岩の方へ歩いていく。
 サンタ師匠は、ニコニコ笑いながら残った方の岩の前に移動する。

「始め!」とエバル教授が開始の号令を掛けた。

 魔術師と魔法使いの差、それは長々とした詠唱をするかしないか。そして魔術は詠唱通りのことしかできないが、魔法はアレンジが可能だ。

「36式の理をもって、目の前の岩を砕く魔法陣よ現れたまえ・・・」

 デモンズは良く響く声で詠唱しながら、岩に向かって魔法陣を形成していく。

「細かく砕けろ、念破!」

 ドゴっと、サンタ師匠の前にある岩から低く鈍い音がする。
 魔術と違い魔法は、命じたら直ぐに発動する。
 デモンズが詠唱を終わらせる前に、サンタ師匠の魔法は発動を終え、みるみる内に大きな岩に亀裂が入っていく。
 大きな亀裂が縦横無尽に伸びていくと、直ぐ後から小さな亀裂が無数に広がり始める。

 ……まるで大樹の大きな幹から、無数に広がっていく小枝のように、そして隅々まで小枝を伸ばしきると、ドゴン! と音を立て崩れていく。

 サンタ師匠の岩は、本日の受験者が見せた岩の破壊力とは比べものにならない程に粉々になり、全く原形を留めず崩れ落ちていく。
 驚愕の表情でサンタ師匠の岩だったものを見ている者たちは、未だ魔法陣を構築しているデモンズにも視線を向け、圧倒的ともいえる実力差を知ることとなる。

 サンタ師匠が服に付いた砂埃を払いながらスタート位置に戻る途中で、デモンズの魔術が発動しドカーン!と大きな音を立てた。
 音はサンタ師匠の3倍くらいの大きさだったけど、砕かれた岩の破壊力は3分の1程度だった。

 ……きっとこれが皆の知る【中位・魔術師】が使用する魔術レベルなんだろうけど、残念ながらサンタ師匠は、既に【高位・魔術師】の最上位レベルに達している。

「勝者、サンタ」と、エバル教授が判定結果を告げ、10点という札を再び上げた。

 会場内はしんと静まり返り、ある者はデモンズに同情し、ある者は目の前で起こったことが信じられずにいる。
 ただ1人、アレス君だけがパチパチと手を叩き、勝利を喜んでいた。
 デモンズはエバル教授を睨み付け、サンタ師匠の砕いた岩を確認しに行く。

「納得できない! こんなこと、こんなガキにできるはずがない!」

 わなわなと体を震わせ、デモンズは文句を言った。

「見苦しいですぞデモンズ殿、例え認めたくなくとも今は競技中だ。
 残りの種目が終了するまで、審判として一切の異議は受け付けない!
 次は最終種目だ。両者、得意な技を披露する準備を開始しなさい」

 この時点でサンタ師匠の勝利は確定している。
 でも、サンタ師匠の目標は3倍返し。よって、最終種目も完膚なきまでに力の差を見せつけねばならない。


 サンタ師匠と比べて、あれほど大きく見えたデモンズの姿だけど、いつの間にか小さくなった気がして皆は首を捻る。

「お先にどうぞ。魔術師協会の幹部であるデモンズさん」と、サンタ師匠は余裕の頬笑みで先を譲る。

「なんだと! 生意気なガキが!」と、デモンズは怒りの表情で睨み付けた。

 先程までと同じような会話内容だけど、見学者たちは不快そうに顔を顰める。
 競技前は生意気な子供を罵倒する大人の発言に聞こえたけれど、今は醜い負け惜しみにしか聞こえない。
 試験を主催している魔術師協会の職員や魔術師たちは、大きな溜息を吐く。

 最終種目でデモンズが選んだ技は、いかにも派手な炎の魔術で、10メートルの高さまで、直系1メートルくらいの炎の玉を打ち上げるというものだった。
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