三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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王立能力学園・講師、発明家編

141 サンタさん、イオナロードに苦戦する(3)

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 放ったのは尖った氷柱で、なんとかアースドラゴンの口の中に刺さり、10分ほどのたうち回って事切れた。
 素材を無視すれば上級魔法で討伐できるんだけど、どうしても貧乏根性が優先し、いや、トレジャーハンターとして素材を考慮し苦戦してしまった。

 アレス君も私も動き回って攻撃したから疲労困憊。
 ハアハア肩で息をして、体力不足と体の小ささを思い知らされた。
 私は小休止でへたり込んでいるけど、アレス君とシリスは復活して、アースドラゴンの検証に向かう。
 最速踏破者の皆も、ウオーッ!って叫びながらアースドラゴンに向かっていく。

「ファイヤーボールは殆ど効果がなかったけど、次の攻撃に繋げられて良かった。
 サンタさん、この異常に固い素材って、金属と皮の間の素材としてどう?  空間拡張ボックスの素材に良さそうじゃない?」

 アースドラゴンの背びれ?部分の、岩のように固い場所をコンコンと叩きながら、アレス君が意外なことを言った。

「空間拡張ボックス? ん? その長方形の背びれみたいな部分?」

 よっこらしょと言いながら、私もなんとか立ち上がって移動する。

 ……う~ん、確かに堅いわね。金属じゃないけど、金属より加工が簡単かも。

 そう考えたら、アースドラゴンのごつごつが、素晴らしい素材に見えてきた。
 バッグは腹や尻尾で充分だし、リュックは大蛇くらいが丁度いい。
 コンコンと叩くと、中は空洞のような音がする。

「いけるかも」って呟いて、ニヤリと笑う。

 あれだけ苦戦したのに、つい他にも居ないかと辺りを見回してしまう。
 そんな私の思惑なんか最速踏破者の仲間にはバレバレで、「無理は禁物だぞ」とか「せめて休憩しろ」って叱られた。
 もちろん、守護霊の皆にも怒られました。はい。

『ドラゴン素材かぁ・・・思っても見なかったが、アリかもな』

『そうですねダイトンさん。私の時代には空飛ぶドラゴンしか見ませんでしたが、古代の金属が無いなら、挑戦してみる価値はありそうです』

「ええっ? 高度文明紀には空飛ぶドラゴンが居たのショーニスさん!」

「なんだって! 空飛ぶドラゴン?」

 つい声に出してしまったので、アレス君を含む全員が驚いて私を見る。
 確かに【聖なる地】の柱や扉の一部には、それらしい絵が描いてあった。
 でも、伝説とか神話の話だと誰もが思ってたから、驚くのは無理もない。

「これぞロマン。空は飛ばないけど、私もアレス君もドラゴンスレイヤーよ」

 にまにましながら胸を張って、どや顔で竜殺しを名乗ってみる。
 空飛ぶドラゴンは体長10メートルを超えていたらしいけど、このアースドラゴンだって尻尾の先まで計ったら、きっと7メートルはあるはず。

「王様に見せたりしたら、きっと剝製にして王城に飾るとか言いそうだね」

 アレス君は素材用の空間拡張リュックにアースドラゴンを収納して、悪戯っぽく笑ってそう言った。

「うん、有り得る。でも、これは私とアレス君の素材。もしも再び遭遇して討伐できたら、白金貨10枚で売ってもいいかな」

「いやいやサンタさん、競売に掛けたらもっと高く売れると思うぞ。その時は、少しだけ俺たちにも分け前をよろしく」

「勿論だよリーダー。確かに競売の方が高く売れるね。次はハンター協会に売らず競売に掛ける。来週もう一回挑戦させて。倒し方が分かったから」

 大物を討伐し全員にっこにこでセーフティルームに戻り、早目の夕食を食べてぐっすり眠った。
 翌日は、ロードを戻りながら地底生物を討伐した。
 運よく毒を吐かないタイプの大蛇に遭遇し、予定の素材はなんとか確保できた。


 1.5キロ地点まで戻った時、初日に会った金級パーティーがぼろぼろになって大トカゲと戦っていた。
 もちろん私たちは無視して通り過ぎようとする。助ける義理も義務もないし。
 下手に手を貸したら、獲物を奪われたとか言いそうだし、面倒ごとはゴメンよ。

「た、頼む、助けて、助けてくれないか?」って、あの嫌な男が頼んできた。

「えっ? 大トカゲくらい5分もあれば倒せるでしょう? 子供の私だって3分あれば倒せるんだから」

 大人しく助けるつもりなんてないから、嫌味の1つや2つは言っておかないと。

「こんな状況で、よくも、よくもそんな嘘が言えるな!」

 嫌な男は額の血を拭いながら、怒りの形相で文句を言う。

「嘘? ふ~ん、じゃあ、もしも3分で私が倒したら、うちの取り分は7割にしてもらうわ」

「勝手にしろ! お前が、お前たちが死んでも俺たちの責任じゃないからな!」

 全く信じてないリーダーらしき嫌な男は、そう言うとその場にへたり込んだ。
 どうやら既に限界だったみたい。魔術師の男なんて完全に意識を失っている。
 他にも4人居るけど、全員が満身創痍で血塗れ。
 でも大トカゲのダメージは・・・ほぼない。きっと初めて大トカゲに遭遇したんだろう。


「では、サンタ行きまーす!」

 私の掛け声と同時に、シリスが大トカゲの前に飛び出し威嚇を始める。
 私はポケットから石礫を2個取り出し、いつものように最初に目を潰すと、大きくジャンプして大トカゲの後頭部に着地し、両手を当てて念破をお見舞いする。
 大トカゲはグホッと血を吐いて、ドーンと大きな音を立てて倒れた。

「う~ん、3分も必要なかったかな。それじゃあ、7割は頂くね。その代わり、これを支部まで運んであげるわ。とても運べそうにないでしょう?」

「先に支部に戻ってるから、ゆっくり帰ってこい。お前ら、ゲートル支部の天使様に喧嘩を売ったことを後悔するなよ」

 サブリーダーが嫌な男の前に立って、憐れむように言う。そして空間拡張リュックじゃなくて、何も載せていないリヤカーにオオトカゲを積んだ。
 500メートルくらい離れた所で、私の素材用リュックに収納し直した。


 1時間遅れで戻ってきた嫌な奴等は、私たちが素材置き場に出していたアースドラゴンを見て腰を抜かした。
 まあ、他のハンターたちも驚いて逃げだしそうになったり、ギャーッ!っと叫んだりして、支部は大興奮の大騒ぎになったけど。
 私とアレス君は、王子とセイエス先輩が待ってるから、さっさと帰った。

 翌日、支部でアースドラゴンを見た王子とセイエス先輩が絶句していた。

「今回は、私もアレス君も死にかけた。やっぱりドラゴン系は最強!」
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