三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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王立能力学園・講師、発明家編

148 信じられない知らせ(2)

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「なんだと!」と声を上げたのは王太子だ。

 国王が倒れた日に隣国の軍事侵攻の知らせが届くなんて、完全にタイミングを考え練られた作戦だろう。
 呪術師は自信満々で呪符を仕掛け、母国では準備万端で行軍を開始した。
 だが、この国はというと、国境がきな臭いとは思っていても、大胆に軍を配置したり戦争に備えて物資を準備なんてしていない。

 ……読みが甘すぎる。

「ザルツ帝国の帝都から国境までの距離は、我が国の王都から国境までの距離より短い。だから、軍が今直ぐ王都を出発したとしても間に合わない。
 なんということだ! うちは1500人程度しか国境に配置していない。
 辺境伯家は300人の兵を有しているが・・・教会長様、敵の、ザルツ帝国軍の規模はどのくらいなのでしょうか?」

 王太子も騎士副団長も顔面蒼白で、縋るように教会長を見て問う。

「大変申し上げ難いのですが、教会本部からの情報では1万を超えているそうです」

「1万? はあ? これまでの戦争では初めに3000人、10日後に2000人、戦況が悪くなればまた2000人を投入してきたはずだ! それが1万?
 騎士団長、至急緊急事態を告げる鐘を鳴らし緊急招集をかけろ。
 早馬で各領主に開戦を知らせ、領兵を最大限国境に送れと命じ、近隣領地には食料も送らせろ!」

「承知しました王太子様。ご命令に従い直ぐに準備を始めます」

 王妃たちを守っていた騎士団長もやって来て、姿勢を正し返事をする。


 ……大変なことになってしまった。この国は完全に出遅れてる。
 ……しかも、国境に配置されている旧王宮魔術師団の魔術師たちが、役に立つとは思えない。

 これは王様の容態を論じている場合じゃない。
 いや、王様の容態も大事だけど、早ければ5日後には敵が国境を攻めてくる。
 しかし、どれだけ馬車や馬を飛ばしても、エイバル王国は王都から国境まで7日以上必要だ。

「アレス君、軍や警備隊の馬車に呪符が仕掛けられてないか大至急調べよう。
 エルドラ王子は、私たちと一緒に呪符の確認をしてください。
 王太子様、ここは王妃様に任せて、直ぐに応戦の準備をしてください。
 教会長、カラ魔核があれば大きい物も含め、全て私に売ってください」

 私は自分にできることを考えながら、呆然としている王子に指示を出し、王太子には軍本部へ行くよう促す。教会長にもお願いをする。

「承知しました大賢者様。直ぐに準備し戻ってまいります」

「いえ、カラ魔核は王立能力学園のツクルデ教授の研究室にお願いします」

 教会長は大きく頷くと、急いで部屋を出ていく。

「王太子様、5センチのカラ魔核を充填できる魔術師は、何人くらい国境に向かいますか?」

「5センチ? えっ、これから空間拡張バッグを作ってくれるのか?
 それなら5つ、いや、3つでもいいから作って欲しい。
 食料や軍事物資は後から整い次第運んでいく。今回はアロー公爵も出られるだろうから、それらの物資をお願いすることになる。魔核の大きさは8センチまでいける」

「分かりました。呪符を確認したら直ぐにアレス君と一緒に製作に取り掛かります」

 そう答えて、私もアレス君も王子も、もちろん王太子も一緒に王様の寝室から飛び出していく。
 時間がない。ここで馬車に呪符でもあれば、兵士が国境に行けなくなる。


『サンタさん、外門にも漏れなく呪符があったわ。しかも、軍の建物にも幾つか呪符が貼ってあるわ』

「えっ、外門全てに呪符が? 軍の本部にも?」

 移動中の皆にも聞こえるよう、私はパトリシアさんから聞いたことを声に出す。

「エルドラ王子、私とアレス君に騎士団を5人ずつ用意してください。
 私は軍本部と馬車の呪符を解除し、アレス君には外門の呪符をお願いします。
 アレス君、まだ聖水残ってる?」

「大丈夫だよ。エルドラ王子は僕と一緒でいいの?」

「うん、王子が一緒なら通行止めにしても誰も文句を言えないし、王宮騎士団も一緒なら王命だって思うはず。これ以上被害者を出さないためにも頑張ろう」

 自分たちにできる最善を最速で行うため、私とアレス君は王城内に仕掛けられた呪符の解除に向かう。
 もしも犯人が王城内に居たら、呪符を解除できる者がこの国に最低でも2人居ると知られてしまう。

 下手をしたら名前まで曝される危険もあるだろう。
 呪符という存在だって、王城で働く者たちに知られてしまう。 
 だけど、何もしないで自分の身を守るような臆病者・・・いや、卑怯者にはなりたくない。
 私は大賢者。そしてこの国最高の魔法使い。卑怯な国や呪術師になんて負けたくない。


 カーン、カンカンカーン、カーン、カンカンカーンと緊急招集及び緊急事態を知らせる鐘が鐘楼から鳴り始めた。
 直ぐに各地区に設置されている警鐘も鳴り始める。
 緊急招集の鐘が鳴ったら、軍人や警備隊員は急いで其々の本部に駆け付け、魔術師協会や他の協会長や会長も王宮に駆け付けると、先日学園で習ったばかりだ。

 走って走って呪符を探し、サーク爺に助けてもらいながら呪符を引き剥がす。
 呪符は殆ど1階の壁やドアに貼ってあったから、犯人は建物の中には入っていないか、入れなかったと思われる。
 きっと深夜に侵入し、ニヤニヤしながら貼ったんだろう。そう思うと本当に腹が立つ。

「何と書いてあるんですかサンタさん?」

「う~ん軍本部棟のは、この前を20回通ったらケガをする。この壁に寄り掛かたら失明するですね。馬車12台に貼ってあったのは、この馬車に5回乗った者は体力が落ちる。10回乗った者は必ずケガをするですね、騎士副団長」

 剥ぎ取った呪符18枚全てを集め、火魔法で焼きながら呪符の内容を騎士副団長に教える。
 同行してくれた騎士5人が絶句している。呪符を張られた馬車の中には、王宮騎士団の馬車が3台含まれていた。


 午後5時、気付けば空は夕焼けで、城内の混乱は続いている。
 軍の精鋭50人と魔術師協会の魔術師20人からなる先発隊は、1時間前に王城を出発した。
 魔術師の内5人は、私の魔法講義を受けている人で、馬車置き場で私を見付けると、必ず国を護ります先生と手を振ってくれた。

『サンタさん、王城にある魔術具を確認してみよう。使える物があるかもしれない』と、ショーニスさんが言った。  
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