三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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王立能力学園・金級ハンター編

171 金級ハンターサンタさん動く(5)

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 中間地点に到着するまで、何故か大蛇と2匹も遭遇した。
 時間もないから、私がサクッと討伐したので、私にいい格好をしたかったハンターたちから大ブーイングされた。
 仕方ないのでガス抜きも兼ねて、宿泊場所付近で遭遇した巨大蜘蛛はお任せした。私、ムカデとか蜘蛛は苦手なんだよね。

 討伐した地底生物は、渋々私のリュックに収納する。
 このままじゃリュック不足になるから、こっそり新しい空間拡張バッグを作ることにした。
 魔術師のヘンリーさんに、新しいセイフティールームを2部屋作ってもらい、そこで皆が夕食を作っている間に、私はヘンリーさんと空間拡張バッグを作る。

「なるほど、空間拡張バッグを作るには【空間】属性が必要なんですね。しかも既に商業連合に特許申請済み。魔法は本当に奥が深い」

 空間拡張バッグ作りを見学していたヘンリーさんが、特大の溜め息を吐きながら自分も【空間】属性が欲しいと言う。

「此処だけの話、実は空間拡張バッグを使用していると、極稀に【空間】属性が生える人が居るんです。でも、作り方を知らなければ作れないし、特許権を私が持ってるから勝手に作って売ることはできませんけど」

「な、なんですって! 空間属性が生える?」

 驚きと喜びが混じった顔で、ヘンリーさんは目を大きく見開きパチパチさせる。

「今回の作戦が成功して、無事にアルバの町を奪還できたら、ヘンリーさんに4センチのカラ魔核に魔力充填できたら使用できる、2メートル四方の空間拡張バッグをプレゼントしましょう」

「えっ、本当ですか? それは、何が何でも負けるわけにはいきませんね。
 私もここだけの話なんですが、今回の戦争で手柄を立てた家には、アースドラゴン素材の空間拡張バッグが下賜されるという噂があります。
 なので我が家は、何が何でも手柄を立てるぞと張り切っています。
 商業連合に注文していますが、1年待ちだと言われていますから」

 ヘンリーさんが嬉しそうに、絶対に勝利しましょうと言ってくれた。
 さすが王太子だ。高位貴族たちが喉から手が出るほどに欲しがっている空間拡張バッグを、褒賞にちらつかせるとは。
 しかも市販されることのない、アースドラゴン素材の空間拡張バッグを使って。
 売るなら白金貨10枚以上は取るし、最低でも8メートル四方の物が収納できるからなぁ・・・アレ。

「今回の戦争で、我が軍が素早くミルデ辺境伯領を奪還できたのは、大賢者様が作られた空間拡張バッグのお陰です。
 もちろん凄い魔術具の功績も大きいですが、物資部隊がほぼ必要なかったので、敵軍に本隊だと気付かれなかったんです」

 ……へぇ~、そうなんだ。まあ確かに以前までは、荷車を何台も連ねて行軍しなきゃいけなかったよね。


 夕食時間、明日からの大まかな作戦を全員に説明する。
 雨の場合の作戦と、雨が降っていない場合の作戦は全く違うので、よく聞いて役割分担をリーダーに決めてもらう。
 雨が降れば、主に地上戦に力を入れるし、降ってなかったらロードの中から敵を制圧していく。

 いろんな質問に答えて、どこまで敵兵を攻撃していいのかってところで意見が2つに分かれたので、「私の目標は、多少のケガをしても、自国にお帰り願うことです」と伝えた。

「まあ、8歳の指揮官が殺せーって叫んでたら怖いわな。
 そもそも8歳は戦争に参加せんやろう。今回は戦争じゃなくて奪還作戦だから、敵を町から追い出すことが目的って胆に銘じろよお前ら」

 ゲートル支部のサブチーフが、怖い顔で皆を睨みながら殺すなと念を押す。



 翌日、昼頃に目的地であるアルバの町を見下ろす絶壁に到着した。
 私は双眼鏡で、エイバル軍100人が無事に到着してることを確認し微笑んだ。
 順番に絶壁の上まで登り、アルバの町までの下り道やゲートの場所、襲撃する建物の場所等を、先に登ったモエナ支部のサブチーフが順次説明していく。

 雨が降り続いているから作戦開始まで2人の見張りを残し、登りの側道の途中にあった広い空間まで一旦戻り、より詳細な作戦の説明を始める。
 A・B・C・Dと4つに分けた班のリーダーとサブリーダーが、土魔法で簡易的に作ったテーブルに集まり、真剣な表情で説明を聞く。
 私は要点を書いた紙をリーダーに渡し、テーブルの上に置いた地図を指さして、何度も確認しながら作戦手順を叩き込む。

 A班11人はゲートル支部のハンターで、午後5時に、ハンターの交代要員を装いゲートに侵入する。
 ロード内で働いている南ゲートのハンターから状況を聞き、遭遇した敵兵を漏れなく拘束し、奥まで進み完全制圧する。
 ハンターや住民は、朝までロード内のセイフティールームで待機させる。

 A班のリーダーはゲートル支部のサブチーフで、新しく作った空間拡張バッグに50人分の食料と水を入れ渡してある。
 

 B班10人は午後7時から夜陰と雨に紛れて、今夜は何があっても家の外に出ないよう町中を回って住民たちに知らせる。
 もしも敵兵に遭遇したら、絶対に声を出させないよう気を付けて捕える。
 B班のリーダーは、モエナ支部の【ロードの悪魔】のドットルさんだ。B班はモエナ支部のハンターが担当する。


 C班11人は、午後8時にトレジャーハンター南ゲート支部に突入し奪還する。
 その後、役場や付近に見張りがいたら制圧し、支部の中で監禁する。
 極力音を出さず迅速に作戦本部を設置し、作戦後に戻るB班の仲間と町の被害状況を確認する。
 C班のリーダーは、モエナ支部のサブチーフで、モエナ支部のハンターが担当する。


 D班13人の内11人は、日が沈んだ午後6時半に出発し、町の端を通りながら街道近くに設置された敵の検問所を制圧する。
 モエナ伯爵家のヘンリーさんがリーダーで、残り10人はゲートル支部のハンターだ。
 マリネラ侯爵家のドレイプさん率いる軍100人と合流し、町に侵入後、午後9時にホテルを取り囲む。
 
 私とカーレイル叔父さんとシリスは、完全別行動で魔術具を起動させる。


 雨脚が一段と強くなった午後5時前、A班が出発した。
 視界は悪いけど、見張りをしていた2人の話では、雨の中を真面目に巡回している敵兵は極僅からしい。

 午後9時、激しく降っていた雨が少し弱くなった。

 ……さあ、仕上げの時間だ。
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