三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

文字の大きさ
176 / 190
王立能力学園・金級ハンター編

176 新たな戦い(1)

しおりを挟む
「はい? ツクルデ教授とエバル教授が倒れた? 呪符で?」

「そうだサンタさん。他にも数人の教授や学生が倒れた。狙われたのは発明学科と魔術師学部だけだが、ツクルデ教授は危険な状態で、エバル教授は王様と同じで眠ったまま目覚めない」

 アレス君は疲れた表情で、4月中旬頃から始まった学園の混乱を語っていく。

 最初に教授が倒れたのは4月15日で、ツクルデ教授だったらしい。
 その次に魔術師学部の教授や講師が倒れ、疫病なのではと大騒ぎになったけど、エバル教授の症状が王様と同じだったから、アレス君と学園長が呪符のせいではと気付いたらしい。

 でも、呪符を発見できるよう指導した学生たちの殆どが実家に帰っており、同じく呪符を発見できる王宮騎士団員は、全員が戦地に行って戻ってなかった。
 アレス君とエルドラ王子が頑張って探したけど、広大な学園の中で発見できた呪符は、僅か2枚だけだったそうだ。

 そうこうしている内に、ぽつぽつ戻ってきた学生も倒れたりケガをするようになり、現在学園は再び臨時休園し、関係者以外立ち入り禁止になっている。
 警備隊は4月以降に来園した者を調査中だけど、犯人が偽名を使っていた可能性もあり、捜査はなかなか進んでいない。
 戦時下で臨時休園中ということもあり、学園内の警備は手薄だった。

 今のところ王宮内で体調を崩したりする者はおらず、今回の呪符攻撃は完全に王立能力学園を狙った犯行だと王様は考えているらしい。
 それでも、もしもということがあるから、呪符を見付けられる魔術師たちを、大至急王都へ戻るよう命令を出したとか。

 戦争に2か月以上参加した者は、本来なら1か月間の休暇が与えられるところだけど、王立能力学園を呪符で攻撃するのは、戦争を仕掛ける行為と同じであると、王都内に緊急事態宣言を発令し、不自然に倒れたりケガをする者があれば、警備隊に届け出るよう公布した。


 アレス君の話を聞いてすぐ、私はイオナロードに潜り【聖なる地】へイオナの葉を採取しに向かった。
 私は病み上がりで体力が半分くらいしか戻っていないので、話を聞いたチーフがサブチーフと最速踏破者を抱っこ要員として付けてくれた。
 アレス君が国王の依頼書を持参していたので、問題なく【聖なる地】に行ける。

 シリスは体長が2メートル近くなり、サブチーフが疲れたら私を背中に乗せてくれる。シリスが先頭を行くと、地底生物にほぼ遭遇しないから早く進めた。
 アレス君は、魔法の身体強化で自力でついてくる。
 久し振りの【聖なる地】には、ブラックウルフと思われる足跡がたくさん残っていたけど、時間が無いので討伐は次回まで我慢だ。


 翌日の夕方、まだ体力は戻ってないけど、大事な教授の命を救うためアレス君と馬車に飛び乗った。今回は急ぐ旅なので叔父さんとポートさんが御者台だ。
 馬車での移動中、私とアレス君は会えなかった1ヶ月以上の期間の出来事を報告し合った。

「なんですって! 危篤? 死にかけたんですか・・・」

 アレス君は馬車の中で立ち上がり、大きく目を見開いて私を見る。

「教会の大司教様が助けに来てくださったから助かったけど、凄く叱られた」

「それはそうでしょう。大事な大事な大賢者様を戦争に使うなど、あってはならないことです。大司教様のお怒りはごもっともです。
 お爺様も王太子様も、きっと頭が空っぽだったのでしょう。責任者としても立場のある大人としても失格です」

 アレス君は黒く微笑みながら、善意をそのまま利用するとは情けないと呟き、フフフと悪い顔をして何かを考え始めた。大丈夫だろうか?

「この際だから、王様に提示されたリースル伯爵領の土地を貰いましょう。
いや、亡くなられたハッシュ辺境伯領の、北ゲートの町と南ゲートの町を含む、古代都市ロルツに沿った土地を頂くのがいいかもしれません。
 ゲート所有領主になれば、収益も見込めるし住民は少ないから管理は難しくありません。最低でも、南ゲートのアルバの町周辺は褒賞として貰うべきです」

 アレス君曰く、ガリア教会本部を怒らせ、大賢者様を見殺しにしようとした事実と、3台の魔術具による戦果を考えたら、少ないくらいの褒賞でしょうがと、カバンからエイバル王国の地図を取り出し、印を付けていく。

 ……確かに大領地なんて要らない。でも、ゲートの町の領主は魅力的かも・・・でも、ねえ、アレス君? なんか怖いよ。

 アレス君は会えなかった間、公爵代理としての責務を果たしながら、王様と王子と3日に一度昼食を共にしていたらしい。
 父親であるホロル様が戻られてからは、学業に遅れが出ないよう王子や兄さまと勉強したり、兄トーラスさんに魔法の個人レッスンをしていたそうだ。

 兄のトーラスさんは長い間呪符に苦しめられ、勉強も魔術も学びが遅れてしまい、魔術が苦手な公爵家の子息など役に立たない存在だと、うじうじ考えて屋敷の部屋に籠っていたらしい。
 呆れたアレス君は、中位・魔術師のくせに甘えるなと一喝し引きずり出したんだとか。

 ……私もアレス君も命を守るために必死だったからなぁ。甘えてるって思ったんだろうな。

 毎日一緒に魔術ではなく魔法の訓練をしていたら、魔術よりも簡単だと言って楽しみながら魔法を使えるようになり、今では魔術に対する苦手意識も克服しつつあるって。
 妹であり、アレス君には姉にあたるビビアさんも魔力があったので、一緒に魔法を練習したことも功を奏したと笑いながら話してくれた。

 ……良かった。母親は違っても兄姉弟なんだから仲良くした方がいい。

「僕はアロー公爵家を継がないと宣言しているんだから、しっかりしてくれないと困る。僕はサンタさんと一緒に世界中を巡るんだから」

 ……ああ、そのために兄と姉を鍛えたんだ。確かに約束したもんね。えへへ。



 ひとまず自分の屋敷に戻った私とアレス君を待っていたのは、恩師であるツクルデ教授が昨日亡くなったという、兄さまからの報告だった。

「なんで、どうして・・・」

 信じられないし信じたくない。涙が次々に溢れてきて胸が苦しい。

「ザルツ帝国の呪術師は、せっかく奪った土地を魔術具や高位魔術師のせいで奪い返され、魔術具活用や復元を阻止したかったんだと思う」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
ファンタジー
公爵令嬢として生まれながら、子ども時代からメイドや周囲の陰謀で、次々と濡れ衣を着せられ、「悪女」扱いされてきたミリアム。 第3王子との婚約を聖女に奪われ、聖女への嫌がらせの冤罪で国外追放された後、平民として生き延びる中で、何度も5年前へのロールバック(逆行)を繰り返すことに。 生計をたてる為に、追放後の平民生活で極めた針仕事が、ロールバックが繰り返されることで、針仕事の能力だけは引き継がれ、天才的な実力を手に入れる。 その時女神「アテナ」の加護を得て、2つの力を手にすることに。 「加護縫い」 (縫った布に強力な祝福を込められる) 「嘘のほころびを見抜く力」 (相手の嘘を布のほころびとして視覚的に捉え、引き抜く、または繕うことで、真実を暴いたり修正したりする) を手にしたミリアムは、5歳の幼女時代まで遡り、2つの力で悪評をぬりかえ、仲違いしていた家族も、加護の力を与えることで協力な味方へと変貌。 さらに、女神から可愛いしもべ「アリアドネ」を授かり、元婚約者と聖女にザマァを狙う中、加護縫いの能力が最も高い人間を王太子妃に迎える決まりのある大国、ルーパート王国の王太子が近付いて来て……?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

領主にならないとダメかなぁ。冒険者が良いんです本当は。

さっちさん
ファンタジー
アズベリー領のミーナはとある事情により両親と旅をしてきた。 しかし、事故で両親を亡くし、実は領主だった両親の意志を幼いながらに受け継ぐため、一人旅を続ける事に。 7歳になると同時に叔父様を通して王都を拠点に領地の事ととある事情の為に学園に通い、知識と情報を得る様に言われた。 ミーナも仕方なく、王都に向かい、コレからの事を叔父と話をしようと動き出したところから始まります。 ★作品を読んでくださった方ありがとうございます。不定期投稿とはなりますが一生懸命進めていく予定です。 皆様応援よろしくお願いします

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...