三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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王立能力学園・大賢者編

184 呪術と魔法(2)

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 残念だけど私には似顔絵を描ける画力がなかったから、警備隊の専門家を呼んでもらった。
 守護霊のショーニスさんが私に男のイメージを伝えて、私が説明しながら出来上がった絵は、結構似ているらしい。大至急警備隊本部の印刷機で印刷した。

 教会関係者、王宮騎士団、警備隊の全員に似顔絵を配り終えた頃には、参列希望者が教会の正門で長い列を作っていた。
 あまりに人数が多いので、ザルツ帝国の残党が教会を襲撃する可能性があるから、学園関係者以外の参列は控えて欲しいと、王宮騎士団が人員整理をしてくれた。

 それでも参列を希望した者は、王宮騎士団が厳しく身分や名前をチェックする。
 身内だと名乗る者がいれば親族代表者がチックする。学園の卒業生だと名乗れば、卒業名簿で確認し同期生の名前を答えさせるので、列はなかなか短くならない。

 ……危険だと言われても、ツクルデ教授の葬儀に参列したい教え子は多いよね。

 そこで教会長と学園長と私が協議し、現在学園に在籍している学生(制服着用者のみ)と教師と職員、各協会のトップ以外は、教会の葬儀ではなく葬儀後に行われる埋葬に立ち会うことを許可すると決めた。
 本来埋葬は身内のみで行われるけど、怪しい者を教会に入れたくないから、奥様と親族に呪符のことを話し、異例ではあるが王子が決定したことにして、葬儀参列者と墓地に向かう者とに列を分け、墓地用の受付を作った。

 墓地は教会の裏手にあり、馬車置き場から2分歩いた場所にある。
 教会の墓地に埋葬できるのは貴族のみなので、一般人は滅多と立ち入ることはなかった。
 墓地で呪符を貼られないよう、戦地から戻って来たばかりの、呪符を発見できる魔術師協会の魔術師と騎士団員が急遽配置された。

 もしも教会で呪術師の呪符が発動し、国の重要人物たちが倒れるようなことになれば、国の威信にも関わることになると、王様が人員を送ってくれたのだ。
 まあ王様は1月に呪符で死にかけているので、意地でも犯人を捕らえたいのだろう。呪術師に復讐したい者は相当数いる。


「どうやら王様は、似顔絵を国中に貼って懸賞金を懸けるらしいよ。その時は、ヨカランの似顔絵も一緒に貼ることになるね。
 父上も家令のコーシヒクもヨカランの顔を見てるから、最低2人の似顔絵は国中に貼れる」

 教会内の呪符を剝がして処理したアレス君が戻って来て、私と一緒に怪しい者がいないか受付でチェックしながら、懸賞金の情報を教えてくれた。
 どうやら、家令のコーシヒクさん情報らしい。
 コーシヒクさんはヨカランの顔を知っているから、アレス君が急遽教会に呼び出し、今は向かいにあるレストランの2階から様子を探ってくれている。

「コーシヒクさんを呼んでくれてありがとう。その懸賞金、絶対に貰いたい。教授のために毎日お墓に花を供えたいもん」

「そうだね。喧嘩に勝利し、この手で仇をとって、墓前で報告しよう」

「うん、そうしよう!」

 私にとっては父親の敵討ちでもある。
 アレス君と顔を見合わせ、互いに誓いを新たにしながら頷き合う。
 
 コーシヒクさんには、私の守護霊が一緒に見守ってくれるから、もしもヨカランを見付けたら、見えないけど側に居ると思って守護霊に情報を教えるようお願いしてある。
 コーシヒクさんに付いてくれるのは、パトリシアさんとマーガレットさんだ。
 守護霊の皆が、絶対に敵は教会の様子をみに来ると言っているから、逃さないよう頑張ってくれると思う。



 葬儀開始予定時刻を過ぎること1時間。礼拝堂で悲しみの葬儀が始まった。
 私はもうお別れしたから、葬儀には参列しない。
 受付に座ったまま、教授の仇をとるため敵が来るのを待っている。
 受付で怪しいと判断された者は10人くらい居て、現在警備隊詰め所に監禁されている。

 貴族や金持ちの葬儀では、稀に参列者にお礼として何か配られることがあるので、それを目当てに教会にくる厚顔無恥な奴が居るらしい。
 正門前に長い行列ができていたから、さぞかし有名な貴族の葬儀だろうと期待して列に並んでいたという。
 でも見知らぬ者に金を貰って、葬儀の様子を伝える予定だったという者が2人いた。間違いなく犯人に頼まれたのだろう。

 ……さあ来い! 絶対に逃がしはしない。絶対に許しはしない!

 葬儀時間はだいたい1時間くらいだから、本来の開始時間で葬儀が始まっていれば、そろそろ終わる時刻となる。
 犯人たちが自分の呪符の成果をみるため、教会に足を運ぶ時間だ。
 応援部隊としてやって来た警備隊員の他にも、犯人捕縛のために身を潜ませている私服の警備隊幹部も、今か今かと犯人を待っている。

 こちらは万全の態勢だが、制服を着た警備隊員も大勢いるから、もしかしたら教会前を素通りするかもしれない。
 馬車で素通りされたら捕らえるのは難しい。それでも窓から様子は窺うだろう。
 そんな奴が馬車で来たときのために、サーク爺が私と一緒に待機している。


 ◇◇ 呪術師 ヨカラン ◇◇

 ……どういうことだ? 教会の正門の門柱に貼った呪符は何処へ行った?

 馬車をゆっくりと走らせ、教会前を素通りしようとして、門柱の呪符が無くなっているのを見た私は動揺してしまった。

 ……まさか、邪魔な教会長が気付いたのか? はあ?

 いや、教会内に潜入しているネイシアから、そんな報告はきていない。
 仮に門柱の呪符に気付かれたとしても、教会内部に仕込んだ呪符の数は10枚を超えている。
 ネイシアが教会内部に潜入した後で、門柱の呪符に気付かれたと思った方がいいだろう。

 恐らく参列者に異常が現れ、焦った教会長が呪符を探し、門柱の呪符を剝がしたのだ。
 いや違う。ネイシアに持たせた教会長用の呪符は発動しているから、教会長以外の者が呪符を剝がしたんだ。
 忌々しい教会め! 教会本部が誰か寄越した可能性がある。

 それにしても、もう葬儀は終わっている時刻なのに、何故誰も出てこない?
 まさか参列者が多すぎて、葬儀がまだ終わっていないのか?
 仕方ない。教会裏の馬車置き場に向かい、裏から様子をみるか。

「止まれ! 警備隊だ。教会の裏通りは現在通行禁止だ。葬儀の参列者は正門で受付をして、墓地へと向かえ」

 馬車が止まり、警備隊員の偉そうな声が聞こえた。

 ……はあ? 墓地だと。  
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