三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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サンタさん、トレジャーハンターになる

6 運命の出会い(1)

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 オバサンさんの優し気な言葉も胡散臭い笑顔も、明らかに普段と違っていて怪しい。怪し過ぎてドン引きだよ。

『間違いなく何か企んでおるようじゃな』と、サーク爺も不審がる。

『まさか殺しはしないと思うけど・・・変な服を買うとかの嫌がらせ?』

 私だって良いことが待っているとは思わないけど、本当に隣の領地に行くのなら行ってみたい。
 隣のゲートルの町にはトレジャーハンター協会があるし、古代都市ロルツの入場ゲートがある。
 絶対に行ってみたいけど、1人で行動するのは無理だろうな。


 翌日、オバサンは本当にゲートルの町に私を連れてきた。何故か意地悪ナリスティアも一緒だ。
 移動する馬車の中で親子の会話を聞いていたら、ゲートルの町に行く目的が、ナリスティアが使う楽器を買うためだと分かった。
 ナリスティアは専門職【芸術・音楽】を授かった、お金のかかるお子様だった。

 到着したゲートルの町は、トレジャーハンターらしき人たちがたくさん歩いていて、古代都市から採掘された古代魔術具や一般器具、生活用品や楽器など様々な遺物を売る店が並んでいた。
 侯爵領の領都とは違い、服装も着飾っている者は少なく、上品じゃないけど活気のある町みたいで心が躍った。

「サンタナリア、私たちは楽器店に行ってくるから、アナタはこの噴水の前で待っていなさい。分かった?」

 オバサンが小声で、人通りの凄く多い噴水の前で私に命令する。

「う~ん、わかっちゃ?」と、私は首をコテンと傾げて答えた。

「嫌だ、この子絶対に理解してないわよお母さま。きっとお腹が空けば勝手に居なくなるわ。人攫いだって居るかもしれないしフフフ」

 嬉しそうに私を見下すナリスティアは、こんなみすぼらしい服装じゃ貴族の子だと気付かれることはないしねと付け加え、オバサンと一緒に何処かへ行ってしまった。

『もしかして置き去り?』

『本当に分かり易い奴等じゃ。じゃから馬車の中でフルネームとか住所を言ってみろと、しつこくしておったのじゃな』

『間抜けな私じゃ、絶対に帰ってこられないって思ってるわよね。どうしようかなぁ。そうだ、予防線をはっておこう』

 2人が姿を消してから1時間後、隠し持っていてお金を持って近くの屋台へと移動した。

「おばあちゃん、パンくだしゃい。じゅっとオバシャンとニャリシュテアを待ってるけど、にゃかにゃか帰ってこにゃいの。お腹すいたのよ」

「なんだって、こんな小さな子を1人で待たせて帰ってこないのかい?」

「うん、ふんしゅいの前にいにゃしゃいって、ゆってた」

 そう言ってパンの代金を優しそうなおばあちゃんに渡すと、おばあちゃんはパンを手渡してくれ、両隣の屋台の人に私の状況を話し相談を始めた。

「ああ、私もずっと気になって見てたんだよ。小さな子が1人でいたからね」

 串肉屋のおばさんは、どうやらずっと私を見ていたらしく「置き去りかも」って顔を曇らせた。

「買い物なら普通は一緒に連れて行くだろう? もう少し待っても迎えが来なかったら、警備隊に連絡しよう」

 ちょっと怖い顔をした果物売りのおじさんは、私を不憫そうに見て言った。

 ……この町の人たちって良い人みたいね。なんだか嬉しくなるわ。

 結局その後も迎えは来ず、最初に声を掛けたパン屋のおばあちゃんが、もう完売したからと警備隊に連れて行ってくれることになった。


 警備隊詰め所への近道だという細い路地を歩いていると、前方から人の争うような声が聞こえてきた。

「ホッパーの旦那、有り金を全て出しな!」
「悪いことは言わねえ、命が大事ならそのカバンと内ポケットの財布を出しな」

 滅茶苦茶人相の悪い大柄の男2人が細い路地を塞ぐように立ち、誰かを脅している現場に出くわしてしまった。
 後ろ姿の男性は、どうやらホッパーさんという人らしい。
 こっちを向いて脅している2人は、私たちの姿を視線に捉えたようで「早くしろ殺すぞ!」と声を荒らげる。

「どうしよう、ホッパー商会の旦那さんだ。善人と有名な旦那さんを襲うなんて」

 どうやらおばあちゃんの知人だったみたいで、助けたいけど足が竦んで動けないと震え始めてしまった。

「任せて、おばあちゃん」と私は小声で言って、繋いでいた手を放して前に走り出る。

「危ないよ、戻っておいでー!」と、おばあちゃんの必死な声がするけど、ここで逃げたら絶対に後悔する。


『サンタ、そこらの石を拾ってウインドシュートだ』
『分かった。やっと実戦できる』

「ホッパーさん、しゃがんでー!」と大声で叫び、私は急いで拾った拳大の石を2個握って、悪い奴らの眉間目掛け「ウインドシュート」と唱えて石を投げた。

 凄い勢いで石は飛んでいき、2人の男の額に命中しゴンと鈍い音をたてた。

「やったー、命中した」という私の声と「ギャーッ!」と叫ぶ悪人の声が重なる。
 強盗犯2人は、額を押さえてしゃがみ込み「何なんだー!」と文句を言う。

「おじさん今の内に、早くこっちへ。逃げるわよ」

 振り向いて何が起こったのか分からないって顔をしているホッパーさんに、私は手招きしながら指示だしする。
 困惑顔のホッパーさんは、我に返って私の方に移動を始めるけれど、強盗犯もこのまま見逃してはくれず「逃がすか!」と怒鳴って追ってくる。

 ……うわー、顔面血だらけで気持ち悪い。

『ウインドバーストじゃ』
『了解サーク爺』

 ホッパーさんが私の所まで辿り着いたところで、私は「ウインドバースト」と叫んで両手の掌を悪人の方に向け魔法を放った。

 石が飛んだ速度と同じくらいの速さで、圧縮された空気の塊が飛んでいく。
 目に見えない空気の塊を正面から受けた2人の強盗は吹っ飛び、8メートルくらい先に積まれていた木の箱に激突した。

 ドーン、ガラガラと大きな音がして、2人の強盗は気を失った。

「お嬢ちゃん、今のはいったい何だい?」

 信じられない光景を見たって顔で、おばあちゃんが尻もちをついて私に質問する。

 ……あっ、魔法を見られちゃった。
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