三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

文字の大きさ
26 / 190
サンタさん、目標を決める

26 勉強と魔核

しおりを挟む
 魔術と魔法の練習は順調に進み、5日目からは午前が勉強で、午後から荒れ地に行って魔法の練習をすることになった。
 魔術の方は、正しい詠唱文を覚えれば発動するので、魔法陣についてだけ学べばいいだろうってファーズさんが言うから、私が6歳になったら改めてファーズさんから教えてもらうことになった。

 本部で魔術師の教官もして忙しいファーズさんだけど、月のうち最低でも3日はゲートルの町にやって来て、私から魔法攻撃を学ぶって張り切っている。
 私はその時に、魔核を使う方法を教えてもらう約束だ。
【最速踏破者】のリーダーが、サンタさんが倒した巨大トカゲの魔核だから、サンタさんの戦利品だと言ってくれたから、私も杖を作ってみたい。

 サーク爺の時代にも魔核はあったらしく、魔法使いの多くは魔核付きの杖を使って足りない魔力を補っていたそうだ。
 私は足らない魔力を補うのではなく、ロードを照らす灯りにしたり、新しい攻撃魔法を放つために使いたいと思っている。
 

 今日から私とアレス君は、家庭教師による勉強が始まる。
 教師の名前はシロクマッテさん19歳で、アロー公爵家が管理している飛び地のモエナ伯爵家の三男で、昨年、王立高学園の教育学部を卒業していた。
 こげ茶の長い髪を後ろで束ね、茶色い瞳は少し吊り気味だけど、優しくて優秀らしい。

 もちろん、公爵家の乗っ取りを企んでいる公爵の弟ヒバド伯爵派ではないって、ホッパーさんが笑いながら教えてくれた。
 どうしてホッパーさんは、そんなにアロー公爵家の秘密を知っていたり、深く関わっているのかって質問したら、ホッパーさんのお母さんと、アロー公爵のお母さんは姉妹だったらしい。

『いわゆる、母方の従兄弟というやつじゃな』

『うん、びっくり。ホッパーさんのお母さんは伯爵令嬢だったけど、商売が好きで格下の男爵家に嫁入りしたらしい。男爵家の3男だったよホッパーさん』

『まあ確かに、この時代は母方ではなく、父方の親族との繋がりを重要視するようじゃし、準貴族のホッパーは、気位の高いアロー公爵家の親族には、目を付けられ難いのかもしれんのう』 

 

「はじめまして、今日から君たちを教えることになったシロクマッテだ。
 まず最初に、2人の学力を調べるために、簡単なテストを受けてもらうよ」

 先生は優しく微笑みながら、アレス君には5歳から通う初級学校の1年生と2年生の問題を書いた試験用紙を配り、私には文字配列表と数字が書かれた紙を配って、名前が書けるなら書いてみてねと言った。

 ……う~ん、普通の3歳児とか4歳児は、文字を習うレベルなんだ・・・

 アレス君の暗殺されたお母さんは、王立中級学校の教師だったらしく、5歳から入学し3年間学ぶ初級学校のカリキュラムを、ほぼ教え終わっていた。
 だからシロクマッテ先生は解答内容を見て、優秀なアレス君に凄く驚いた。

 ……うんうん、私の2人目のにいには、優秀なんだよ。


 次に私の前に来た先生は、白紙のままの用紙を見て、「難しかったかな?」って訊いたから、私はにっこり笑って、最近読み始めた【古代魔術具発見の歴史】という本を先生に見せて、これが今の愛読書ですと言った。
 私の学力を知りたいってことだから、隠す必要もないよね。

 ……そもそも私は、初級学校とか中級学校のレベルが分からない。教科書なんて見たことないから。

 はい?って首を捻っているシロクマッテ先生に、私の語学力を分かってもらうため、本を開いて3ページくらい読んでみせた。

「サンタさん、その本の内容というか意味が分かるの?」

「はい先生、私は祖父の書斎にあった魔術具関係の本は何冊か読んだし、分からないことは祖父に直接訊いたりしていたので、私なりに理解しているつもりです。
 もちろん、字を読んだり書いたりするのは問題ないと思います」

 シロクマッテ先生は驚愕の表情で私を見て、差し出された本をめくり、う~んと呟いてから、「少し質問するね」と言った。

「魔術具について知っていることを、僕に話してくれるかなサンタさん」

「はい、魔術具の多くは古代都市ロルツから採掘されたもので、市場に出回っているモノは、古代都市で発見された魔術具を、複製または改良したモノになります。
 その本には、魔術具を起動させるためには、魔術師の存在や魔核が必要なのだと書いてあり、そのことを発見した人の苦労話が書いてあります」

 私は早く古代都市に潜りたいな~って思いながら、本の内容を少しだけ先生に話してみた。

「市場・・・複製、改良・・・え~っと、サンタさんは、もしかして職業選別で【高位職】の【学者・経済】とかを授かったのかな?」

 はははと力なく笑って、シロクマッテ先生は変な質問をしてきた。

「いいえ、私が授かったのは中位職の【過去】です。奇怪な職業ですが、大昔の知識なら誰にも負けない気がします」

「なんだって【過去】? いや私の友人も、珍しい【過去・体術】だったが、彼は専門職だった。そして彼の仕事は体術だったから、警備隊に就職した。
 そういえば【過去】は稀に【記憶】という仕事を授かる者がいると、図書館の本で読んだことがある。
 しかし【記憶】を授かった者は、歴史の教師になると書いてあった」

 ……へ~っ、そうなんだ。確かに過去の知識を与えられるんだから、その時代の歴史は誰よりも詳しかもね。


「先生、サンタさんは私に魔法や魔術を教える師匠なんです。私より遥かに賢いと思います。  
 なので、サンタさんを3歳だと思うのは止めた方がいいですよ。
 ホッパーさんなんて、サンタさんを18歳だと思うことにしてるみたいです。
 職業【過去】だけど、既に魔術は中位レベルですから」

「はい? 魔術師? 中位レベルって・・・でも【過去】だよね。あれ?」

 なんだかアレス君が、先生に憐みの視線を向けているような気がするんだけど、私の気のせいかな? 

 ……あぁ、先生の思考が停止しちゃった。
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
ファンタジー
公爵令嬢として生まれながら、子ども時代からメイドや周囲の陰謀で、次々と濡れ衣を着せられ、「悪女」扱いされてきたミリアム。 第3王子との婚約を聖女に奪われ、聖女への嫌がらせの冤罪で国外追放された後、平民として生き延びる中で、何度も5年前へのロールバック(逆行)を繰り返すことに。 生計をたてる為に、追放後の平民生活で極めた針仕事が、ロールバックが繰り返されることで、針仕事の能力だけは引き継がれ、天才的な実力を手に入れる。 その時女神「アテナ」の加護を得て、2つの力を手にすることに。 「加護縫い」 (縫った布に強力な祝福を込められる) 「嘘のほころびを見抜く力」 (相手の嘘を布のほころびとして視覚的に捉え、引き抜く、または繕うことで、真実を暴いたり修正したりする) を手にしたミリアムは、5歳の幼女時代まで遡り、2つの力で悪評をぬりかえ、仲違いしていた家族も、加護の力を与えることで協力な味方へと変貌。 さらに、女神から可愛いしもべ「アリアドネ」を授かり、元婚約者と聖女にザマァを狙う中、加護縫いの能力が最も高い人間を王太子妃に迎える決まりのある大国、ルーパート王国の王太子が近付いて来て……?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

領主にならないとダメかなぁ。冒険者が良いんです本当は。

さっちさん
ファンタジー
アズベリー領のミーナはとある事情により両親と旅をしてきた。 しかし、事故で両親を亡くし、実は領主だった両親の意志を幼いながらに受け継ぐため、一人旅を続ける事に。 7歳になると同時に叔父様を通して王都を拠点に領地の事ととある事情の為に学園に通い、知識と情報を得る様に言われた。 ミーナも仕方なく、王都に向かい、コレからの事を叔父と話をしようと動き出したところから始まります。 ★作品を読んでくださった方ありがとうございます。不定期投稿とはなりますが一生懸命進めていく予定です。 皆様応援よろしくお願いします

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...