三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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サンタさん、人助けをする

44 遺跡調査(3)

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 すぐ目の前が1キロ地点という所で、幾つかのパーティーが地底生物と対峙していた。
「ワーッ、避けろ!」とか「絶対に仕留めろ!」って声が聞こえてくる。
 どうやら中型のトカゲみたいで、懸命に倒そうと頑張っている。

「皆さん、前方でハンターが戦闘中のようです。
 この部屋はセイフティールームになっているので、討伐するまで中で休憩してください。水分補給を忘れずに」

 チーフは皆の前に出て、広めのセイフティールームの扉を開けて案内する。
 イオナロードは特に危険視てされているので、採掘済みの部屋の幾つかをセイフティールームに指定し、ハンターがピンチの時に逃げ込めるようにしてある。
 特に1キロと2キロ付近では、協会の職員が入場を制限する関所を作っているので、広いセイフティールームが設けてある。

「とうとう1キロ未満の距離にもトカゲが出たか」

「そうですねチーフ、でもこれで、もっと先まで進ませろとごねる連中が、少しは大人しくなるでしょう。
 どうやら左の側道から現れたようです。様子を見に行った【選ばれし勇者】の斥候が出てきて、リーダーに何か伝えていますね」

 私を抱っこしているサブチーフがそう言うので、私も側道に目を向ける。
 するとリーダーのボイルがこちらに視線を向け、最速踏破者を睨んでから全員で側道に駆け込んでいった。

「どうやら側道にもトカゲが居たみたいね。調査隊より目先の獲物ってところ?」

「ああ、そうだなサンタさん」と、目障りな連中が消えてサブチーフは嬉しそうだ。

「こりゃ時間が掛りそうだ。戦ってる3組の銀級パーティーの内2組は、巨大トカゲと対戦したことがないからな」

 チーフが言うように、尻尾に弾き飛ばされるのを恐れて攻撃ができなでいる。

「巨大じゃないよ中型だよチーフ。しょうがない、いつもので倒していい?」

「止めとけサンタさん、今日は調査隊が一緒だ」と、リーダーが首を振る。

「でもリーダー、このままじゃ【聖なる地】に辿り着けないよ。うちのパーティーが参戦するのは依頼がなきゃダメでも、私なら単独で嫌がられないよ?」

 私の提案を聞いたリーダーは、チーフとサブチーフとごにょごにょと相談して、凄く仕方なさそうに「訊いてみろ」と言ってくれた。
 面倒臭い【選ばれし勇者】は側道へ行ったし、調査隊の護衛らしい【王宮魔術師団】の2人もセイフティールームに入っている。
 アロー公爵だけは外で待機してるけど問題ない。

「ねえねえ、孤児院にパン30個と、お菓子30個で手を貸そうか?」
 
 ゼイハーゼイハーと呼吸も荒い銀級パーティーの皆さんに向かって、私は緊張感の欠片もない少し大きな声で質問した。

「えっ? もしかして噂の天使様?」
「本当に孤児院のパンとお菓子で、取り分は要らないのか?」
「討伐履歴も残らないけどいいのか?」

 3つの銀級パーティーのリーダーが、突然現れた私に向かって質問する。

「うん、特別にサービスしてあげる」

 私は両手を腰に当て、光猫のシリスを御供ににっこり笑顔で了解する。


 そこからは手慣れたもので、シリスが中型トカゲの前に出て動きを攪乱し、私はタイミングを見て石礫でトカゲの目を潰す。
 そしてエアーアタックで宙を飛び、トカゲの後ろ頭に飛び乗り手を当て、念破をお見舞いする。
 完全討伐してはいけないので、ぎりぎり死なない程度で止めておく。

 グハッとトカゲが血を吐いたところで、「今よ!」と叫んで飛び降りる。
 そこからは総力戦で、3つのパーティーが一気に討伐していく。
 絶命したトカゲを見て、歓喜の雄たけびを上げながらリヤカーに載せる姿を見ると、まあ、まんざらでもない気がしてくる。

 最近私は【孤児院の救世主】とか【天使様】と、一部のハンターたちから噂されているらしい。
 地底生物を討伐する場合、もしも他のパーティーに助っ人を頼むと、頼まれたパーティーの方が取り分が多くなる決まりだ。
 だから私は【最速踏破者】ではなく、一個人の魔法使いとして手を貸している。

「甘やかすのは良くないが、まあ、今回は仕方ないな」と、チーフが諦めたように言う。

「あの中の銀級パーティー【ロードの申し子】はね、ちゃんと約束を守って孤児院にパンやお菓子を届けてくれるのよチーフ。
 そして私には沢山のお菓子を会う度にくれて、シリスにもお肉をくれる好い人たち」

「ああ、リーダーは子供好きで、元々孤児院にも支援していた好い奴だ」

 うちのリーダーは【ロードの申し子】のリーダーとは友達で、私が居ない時は合同で活動している仲間みたいなものだ。
 今月から、1キロまでなら金級パーティーは単独で、銀級パーティーなら2つ以上のパーティーが合同であれば、魔術師の同行は必要ない。


「信じられない。あ、あれが魔法? 確かに中位・魔術師でも真似できない」

 ボソッと呟いたのはアロー公爵だ。私をまじまじと見て首を横に振っている。
 昨夜の会談で、休日には魔法を見せて欲しいと頼まれちゃったんだよね。
 お誕生日に【高位・魔術師大鑑】という高価な本を貰ったから、笑顔で了承しておいた。

 わいわい騒いでいた3つの銀級パーティーの皆さんは、直ぐ後ろに調査団が来ていたと分かると、慌ててリヤカーを牽いて帰路につく。
 私はサブチーフの隣で小さく手を振り、皆は小声で「約束は守る」と言いながら通り過ぎていった。

「孤児院へのパンや菓子くらいのごますりじゃあ、全く割りに合わんだろう?」

 私が時々助っ人をしていると知らなかった魔術師のファーズさんが、呆れたように私とサブチーフの顔を見て言う。

「まあ中層部もイオナロードも、お陰で死者数は激減し、ゲートル支部の収益は上がったがな」

 勝手にやっているので止めようがないと、サブチーフは言い訳しながら付け加える。


 光猫のシリスが「にゃう~ん」と鳴いて、頑張ったよ褒めてって足にすり寄ってきたので、ワシワシと撫でて褒める。
 最近急に中型犬くらいの大きさになって、抱っこするのは難しい。
 金色の毛並みは更に美しくなったし、家では自分でブラシを口にくわえ、ブラッシングを強請りにくる賢い甘えん坊だ。

「さあ、先に進もう」と、アロー公爵が皆に号令を掛けた。
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