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サンタさん、人助けをする
47 遺跡調査(6)
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◇◇ ヒバド伯爵 ◇◇
全ての計画は順調だが、次期公爵となる予定だった兄の息子ホロルが、死んだという報告は届いていない。
「どんな解毒薬も役に立たないと聞いていたが、まさか回復しているなどということはないだろうな?」
「ヒバド伯爵、そのような心配は必要ありません。
あの毒草の生息地はザルツ帝国の死の谷です。しかも、特殊な魔力が漏れ出ている場所ですから、同じく魔力を含む植物でなければ解毒できません。
金貨50枚という大枚はたいて呪術師仲間から購入した毒です。万が一という可能性さえないのです」
一見すると普通の執事のように見えるこの男ヨカランは、3年前に敵国であるザルツ帝国から来た呪術師だ。
本当の歳など分からないが50歳くらいに見える。元貴族であることは間違いないが、ザルツ帝国は貴族間の争いや王族間の争いも多いと聞いている。
きっと爵位争いに敗れ、この国に流れてきたのだろう。
「私は、血族の中で最も優れた職業を持つ者、または、最も実力のある魔術師がアロー公爵家を継ぐべきではないかと思うのですが、ヒバド伯爵の次男ナックル様は中位・魔術師ですよね。
もしも、次期当主のホロル様に何かあれば、まだ初級学校に通うような孫より、ナックル様の方が相応しいのではないですか?」
汚れ役として雇ったヨカランが、私にお茶を注ぎながら何気なく言ったこの言葉が、兄より下に見られている私の劣等感を刺激した。
私を公爵にするため、持てる力を使いお手伝いしましょうと言われ、伯爵という地位で満足するしかないと諦めていた私の野心に火がついた。
我が国には呪術師という職業は存在していない。
だからヨカランの呪術を始めて見た時は驚いたが、直ぐにその有用性に気付き、上手く利用すれば邪魔者の暗殺など容易いと気付いた。
呪術を使えば公爵になることも可能だと、確信めいた何かが私を後押しし、ヨカランを片腕的存在として起用し始めた。
私の野望を果たすため、最初にヨカランが呪術を仕掛けたのは、アロー公爵である兄の孫だった。
嫡男ホロルの側室が産んだ男児は、職業選別で中位・魔術師を授かっていた。
呪術を仕掛けて直ぐ、その子供トーラスは体調を崩して寝込むようになった。
ヨカラン曰く、アロー公爵家に居ればいる程、体調が悪化する呪術らしい。
2年もするとベッドから起き上がることもできないほど、トーラスは病弱になったが、ヨカランは私の介入を疑われないよう、慎重に3年計画で殺す方がいいと提案した。
残念ながらトーラスは、いつの間にか屋敷から別の場所に静養に出掛けたようで、その行方は現在調査中だ。
……まあいい。多少回復したところで、家に戻れば死に近付くのだから。
私生児のアンタレスとかいう子供も、職業選別で魔術師を授かったらしいとの報告を受け、私は直ぐに送り込んでいたスパイに所在を調べさせた。
なんとか所在を探り当て、面倒なことにならないよう母子共々処分するよう私兵に命じた。
残念ながら、子供は取り逃がしたが母親は殺せた。
親である嫡男のホロルが死んでしまえば、現時点でホロルの養子になっていない平民の私生児など、相続権もないから放置していても問題はない。
もしも頭角を現し魔術の才に長けていれば、親族の準男爵家あたりの養子に迎えてやり、息子の手足として使い捨てればいい。
……まあ殺し損ねはしたが、既にヨカランが呪術を仕込んでいる。
……この国に呪術師が居ないということは、解呪できる者も居ないということだ。
嫡男ホロルの死を確認できずイライラしていたら、現アロー公爵である兄が、古代都市ロルツで発見された古代遺跡の、調査団責任者になったとの情報を得た。
ホロルの死を確認してから兄を殺す予定だったが、先に兄を殺すことができれば、病に倒れたホロルに代わり、私がアロー公爵代理として動くことが可能になる。
発見された遺跡に通じたロードは、かなり危険で難易度の高いロードらしい。
トレジャーハンターも金級パーティーを同行させるらしいが、ここはゴリ押しでもいいから、我が王宮魔術師団からも護衛として調査に同行させれば、殺すチャンスがでてくる。
……どうやら運まで私に味方しているようだ。
やや不安はあるが、将来公爵になりたければ、己の才覚を見せてみろと次男のナックルを鼓舞し、ゲートルの町に向かわせ兄を始末させるのもいいだろう。
折角だから、残っていた超希少な遅効性の毒を使わせよう。
手を汚すのは私の派閥ではない、新人あたりを上手く使えば問題ない。
そろそろナックルにも、人の使い方を学ばせる必要があるからな。
時間が過ぎるのは早く、昨日兄が調査団を率いて王都を出発した。
ナックルは、傭兵2人と私の子飼いの王宮魔術師団の部下と一緒に、先行して現地に入っている。
調査する遺跡に行き、毒入りの飲み物を飲ませる場所やタイミングを調べ、実行する王宮魔術師団の新人に指示を出すよう命じてある。
ロードのセイフティールームや目的地で飲食するだろうから、トレジャーハンターに金貨をちらつかせれば、喜んで案内するだろうし有益な情報も喋るだろう。
欲を言えばヨカランに同行を頼みたかったが、この時期にしか手に入らない貴重な毒を買い付けに行くと言ってザルツ帝国に向かった。
このまま帰ってこないのではと一抹の不安が過ったが、私が公爵になったら子爵にしてやると約束しているから、必ず戻ってくるだろう。
野心を持ち、望みを叶えるために貪欲な者は役に立つ。
ヨカランは、全てを綿密に計画し実行する完璧主義者だ。
ナックルに渡す指示書を読んだが、毒の分量や混ぜる茶葉の種類など、神経質過ぎると思う程に、緻密で抜かりない内容だった。
下準備さえ抜かりなくやれば、2週間後、いや、一カ月後には兄は死ぬだろう。
念のため、私もゲートルの町に行くことにしよう。
公爵になれば、欲しい魔術具など何でも買えるようになるから、下見と考えれば楽しい旅になるだろう。
全ての計画は順調だが、次期公爵となる予定だった兄の息子ホロルが、死んだという報告は届いていない。
「どんな解毒薬も役に立たないと聞いていたが、まさか回復しているなどということはないだろうな?」
「ヒバド伯爵、そのような心配は必要ありません。
あの毒草の生息地はザルツ帝国の死の谷です。しかも、特殊な魔力が漏れ出ている場所ですから、同じく魔力を含む植物でなければ解毒できません。
金貨50枚という大枚はたいて呪術師仲間から購入した毒です。万が一という可能性さえないのです」
一見すると普通の執事のように見えるこの男ヨカランは、3年前に敵国であるザルツ帝国から来た呪術師だ。
本当の歳など分からないが50歳くらいに見える。元貴族であることは間違いないが、ザルツ帝国は貴族間の争いや王族間の争いも多いと聞いている。
きっと爵位争いに敗れ、この国に流れてきたのだろう。
「私は、血族の中で最も優れた職業を持つ者、または、最も実力のある魔術師がアロー公爵家を継ぐべきではないかと思うのですが、ヒバド伯爵の次男ナックル様は中位・魔術師ですよね。
もしも、次期当主のホロル様に何かあれば、まだ初級学校に通うような孫より、ナックル様の方が相応しいのではないですか?」
汚れ役として雇ったヨカランが、私にお茶を注ぎながら何気なく言ったこの言葉が、兄より下に見られている私の劣等感を刺激した。
私を公爵にするため、持てる力を使いお手伝いしましょうと言われ、伯爵という地位で満足するしかないと諦めていた私の野心に火がついた。
我が国には呪術師という職業は存在していない。
だからヨカランの呪術を始めて見た時は驚いたが、直ぐにその有用性に気付き、上手く利用すれば邪魔者の暗殺など容易いと気付いた。
呪術を使えば公爵になることも可能だと、確信めいた何かが私を後押しし、ヨカランを片腕的存在として起用し始めた。
私の野望を果たすため、最初にヨカランが呪術を仕掛けたのは、アロー公爵である兄の孫だった。
嫡男ホロルの側室が産んだ男児は、職業選別で中位・魔術師を授かっていた。
呪術を仕掛けて直ぐ、その子供トーラスは体調を崩して寝込むようになった。
ヨカラン曰く、アロー公爵家に居ればいる程、体調が悪化する呪術らしい。
2年もするとベッドから起き上がることもできないほど、トーラスは病弱になったが、ヨカランは私の介入を疑われないよう、慎重に3年計画で殺す方がいいと提案した。
残念ながらトーラスは、いつの間にか屋敷から別の場所に静養に出掛けたようで、その行方は現在調査中だ。
……まあいい。多少回復したところで、家に戻れば死に近付くのだから。
私生児のアンタレスとかいう子供も、職業選別で魔術師を授かったらしいとの報告を受け、私は直ぐに送り込んでいたスパイに所在を調べさせた。
なんとか所在を探り当て、面倒なことにならないよう母子共々処分するよう私兵に命じた。
残念ながら、子供は取り逃がしたが母親は殺せた。
親である嫡男のホロルが死んでしまえば、現時点でホロルの養子になっていない平民の私生児など、相続権もないから放置していても問題はない。
もしも頭角を現し魔術の才に長けていれば、親族の準男爵家あたりの養子に迎えてやり、息子の手足として使い捨てればいい。
……まあ殺し損ねはしたが、既にヨカランが呪術を仕込んでいる。
……この国に呪術師が居ないということは、解呪できる者も居ないということだ。
嫡男ホロルの死を確認できずイライラしていたら、現アロー公爵である兄が、古代都市ロルツで発見された古代遺跡の、調査団責任者になったとの情報を得た。
ホロルの死を確認してから兄を殺す予定だったが、先に兄を殺すことができれば、病に倒れたホロルに代わり、私がアロー公爵代理として動くことが可能になる。
発見された遺跡に通じたロードは、かなり危険で難易度の高いロードらしい。
トレジャーハンターも金級パーティーを同行させるらしいが、ここはゴリ押しでもいいから、我が王宮魔術師団からも護衛として調査に同行させれば、殺すチャンスがでてくる。
……どうやら運まで私に味方しているようだ。
やや不安はあるが、将来公爵になりたければ、己の才覚を見せてみろと次男のナックルを鼓舞し、ゲートルの町に向かわせ兄を始末させるのもいいだろう。
折角だから、残っていた超希少な遅効性の毒を使わせよう。
手を汚すのは私の派閥ではない、新人あたりを上手く使えば問題ない。
そろそろナックルにも、人の使い方を学ばせる必要があるからな。
時間が過ぎるのは早く、昨日兄が調査団を率いて王都を出発した。
ナックルは、傭兵2人と私の子飼いの王宮魔術師団の部下と一緒に、先行して現地に入っている。
調査する遺跡に行き、毒入りの飲み物を飲ませる場所やタイミングを調べ、実行する王宮魔術師団の新人に指示を出すよう命じてある。
ロードのセイフティールームや目的地で飲食するだろうから、トレジャーハンターに金貨をちらつかせれば、喜んで案内するだろうし有益な情報も喋るだろう。
欲を言えばヨカランに同行を頼みたかったが、この時期にしか手に入らない貴重な毒を買い付けに行くと言ってザルツ帝国に向かった。
このまま帰ってこないのではと一抹の不安が過ったが、私が公爵になったら子爵にしてやると約束しているから、必ず戻ってくるだろう。
野心を持ち、望みを叶えるために貪欲な者は役に立つ。
ヨカランは、全てを綿密に計画し実行する完璧主義者だ。
ナックルに渡す指示書を読んだが、毒の分量や混ぜる茶葉の種類など、神経質過ぎると思う程に、緻密で抜かりない内容だった。
下準備さえ抜かりなくやれば、2週間後、いや、一カ月後には兄は死ぬだろう。
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