三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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サンタさん、学生になる

99 予期せぬ結末

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 私が少女だから侮られるのか、男爵だから侮られるのか、どちらにしてもトレジャーハンター協会本部は、受付嬢の感じが悪い。

「ねえアレス君、トレジャーハンター協会本部って、男爵如きは受付嬢の判断で面会を断るのが当然の凄い所なんだね。
 王宮でさえ身分証を出したら、王子様との面会もできるのに、トレジャーハンター協会は、面会する価値無しと受付嬢が判断するんだ。
 貸した物を取りに来たのに、返そうとしないなんて、訴えてもいいよね?」

「勿論だよ。きっと返したくないから、受付で拒否してるんだ。
 トレジャーハンター協会は、約束も守らないし、男爵程度じゃ面会も拒否するところだと、エルドラ王子に友人として教える必要があるな」

 私の話を聞いたアレス君が、王城の入場許可証をこれ見よがしにウエストポーチから取り出して言う。
 私たちの声は、子供だからちょっと高くて声も大きいから、立派なホール内によく響く。
 今日は人が少ない方だけど、何事だと視線を向ける者は多い。

「いったい何の騒ぎだ」と言いながら、受付嬢の上司らしき男性が出てきた。
 そしてカウンターの上に置かれた身分証を見て、怪訝そうな顔で私を見る。

「お嬢さん、此処はトレジャーハンター協会本部だが、場所を間違えてないかな? 魔術具という言葉も聞こえたが、魔術具協会は4階だよ?」

 上司らしき30代の男性は、幾分穏やかな口調で話すけど、やっぱり私の話を聞く気がない。

「よく知ってるわよ。私、ゲートル支部所属の準銀級ハンターだから。
 直ぐに私の魔力属性判別魔術具を返さないなら、追加の使用料を取るわ。
 そしてトレジャーハンター協会本部で門前払いされたと、ゲートルの町の【聖なる地の調査団】の皆さんに、騙されたと訴えるわ」

 アレス君が出した王宮入場許可証の横に、準銀級ハンター証を置いて私は啖呵を切った。

「・・・ゲートル支部のサンタさん? 何処かで聞いたような・・・あっ!」

 上司の男性が何かを思い出したようだけど、私はカウンターの上に出した身分証を素早く回収し、2人を睨んで「帰ります!」と言って背を向けた。
 アレス君も同じように王城の入場許可証を回収し、「父上に報告しよう」と言って、私に続いて背を向けた。

「いや、あの、お待ちください」と、声が聞こえたけど無視。

「直ぐに協会長を呼んで来い!」と、叫ぶ声も聞こえるけどスルー。


『まあ子供だけで来る場所じゃないよな』と言って、ダイトンさんは溜息を吐く。

『あれから2年近く経ってるし、前回は3階の鑑定士協会で受付したから、此処の受付はサンタさんを知らないんでしょうね。まあ、態度は確かに悪いけど』

『子供の男爵ってのも珍しいから、からかわれたと思ってる可能性もあるわ。許してあげたらどう?』

 パトリシアさんとマーガレットさんも、仕方ないよって感じで私を慰めつつ、許してあげたらって勧めてくる。

『このまま帰ったら、あの娘は責任をとらされるじゃろうな。サンタは、感じの悪い威張った魔法使いになりたいのか?』

 サーク爺は寛大な心を持つことも必要だし、己の行動を顧みろと注意する。

『あのくらい脅せば十分やと思うで。今度から直ぐに応接室に案内されるやろう』

 トキニさんも、ここらで折れた方がいいと言う。

『うん、分かった。威張った貴族の魔術師と同じにはなりたくない』

 協会本部の玄関を一歩出たところで、私は足を止めてフーッと息を吐いた。

「いつの間にか、威張った嫌な貴族と同じになってた。ごめんねアレス君」

「そんなことないよサンタさん。僕たちは今までずっと2人で行動してきたから、世間の感覚とズレちゃったのかもしれない。
 それにトレジャーハンター協会は、サンタさんを1回裏切ってるから、このくらい当然だよ。
 あの時協会長は、サンタさんは攫われて遠くに連れ去られた可能性が高いとか言って、学園内を探そうともしなかった。僕は今でも怒ってるんだ」

 アレス君はそう言って、優しく笑ってくれた。

『弱者じゃなく、強者にはガツガツガンガンやってやればいいのよ』

 下っ端だと、サンタさんが嫌な人間だと思われるけど、強者の協会長になら、言いたいことを言ってやればいいわってパトリシアさんが言ってくれる。



 通された応接室のテーブルの上には、いい香りのお茶と高級そうなお菓子が並んでいる。
 テーブルの横には、私の魔術具が木箱に入れられ置いてあった。

「あのまま攫われて行方不明になっていたら、私の魔術具はトレジャーハンター協会の物になったのかな? ああ、だから協会長は私を探さなかったのね。
 協会長は知らないと思うけど、私を助けてくれたのは王太子様よ。
 今では王子様や王女様の友人として、王城に招かれるの。人生って不思議ね」

 私とアレス君の前に座って気まずそうにしている協会長に、これぞ嫌味という言葉を吐く。
 もう直ぐハウエン辺境伯領を継ぐ偉いご領主様だけど、カラ魔核に魔力充填する契約を勝手にして王都に呼び出したんだから、これくらい言わないと自分を特別だと思ってる偉い人は、反省さえしない気がする。

「いや、決してそういうつもりではなかった。魔術具も直ぐに返す。
 だが、他国から貸して欲しいとの打診もあるが・・・どうする?」

 ばつの悪そうな顔をしているけれど、反省はしてもらえなかったみたい。

「どうする? 何故私の所有物の貸し借りを、協会が勝手に決めようとされるのでしょう?」

「いや、サンタさんはトレジャーハンターで、協会に所属しているじゃないか」

 ……へ~っ、びっくり。そういう価値観なんだ。

「サンタさん、僕は今日限りでトレジャーハンターを辞める。ハンターの財産を好き勝手するような組織は信じられない。サンタさんはどうする?」

「そうねアレス君。今日限り、いえ、今直ぐ辞めるわ。このままじゃ、新しい魔術具なんて怖くて採掘できないもの。お世話になりました。さようなら」

 私は魔術具をリュックに回収し、無表情で部屋を出ていく。

「はっ? ちょっとサンタさん? えっ? ハンターを辞める?」

 後ろなんて絶対に見ないで、すたすた歩いて受付に向かう。

「ハンターを辞めるから大至急手続きして」と、先程の受付嬢に再び声を掛けた。
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