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サンタさん、学生になる
107 西地区の闇(3)
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◇◇ 闇烏 ジーガイン ◇◇
「わざと昼食を抜いてある。ガキは食い物で釣れることもあるから、せいぜい優しい言葉でも掛けて、うちが用意した弁当を食べさせればいい。
先に約束の金を頂こう。それから、子供を別々の馬車に乗せると不安がるだろうから、養子縁組承諾書にサインさせるまで1台の馬車で移動した方がいいぞ」
俺は悪人らしくないことを言いながら、依頼主に金を要求する。
「もちろん金は渡すが、2人のガキを引き渡してからだ。取引が完了する前に金を渡すほど、私もバカではない」
偉そうに分かった風な口を利く男に、わざとフンと悪態をつく。
こういう輩との取引は、依頼主の方が格上なんだと自己満足させておくことが必要だから、都合悪そうに悪態をついてみせる。
2人の客は建物の中には入らず、乗ってきた馬車とは違う馬車に乗り換えて待たせてあるから、ガキ2人を連れていくのは依頼主だ。
攫ったガキは魔術師だと聞いていたが、泣き喚くこともなくぼそぼそと会話していたようで、1人より2人の方が精神的に安定するのかもしれない。
まあ大事な商品だから手荒なことをせずに済んだが、妙に大人しいガキっていうのも不気味だ。
部下の話では、教会のバザーで売っていた菓子は完売したらしいし、態度や言葉遣いは平民とは何か違う気がすると言っていた。
……まあいい、もう直ぐ1つ目の依頼は完了し、2つ目の依頼も完璧にこなせるだろう。
……まさか同じガキ2人に、同時に依頼人が2人もくるなんて偶然、裏家業を長くやっている俺でも初めてだ。
誘拐と殺し、どちらも1人白金貨1枚で合計白金貨4枚の依頼なんて、貴族相手じゃないと有り得ない。
ガキの殺しなんて依頼、貴族の相続争いくらいだが・・・俺には関係ない。
俺はとっくに貴族なんて面倒臭い身分は捨てたし、今は貴族を利用して儲ける側の人間だ。
「さあ、迎えが来たぞ。さっさと立って移動しろ」
ずっと頭に袋を被せているから、俺の顔も知らぬまま死んでいくガキどもだ。
最後くらいは優しく? なんてするはずないだろう。
どうしたらいいのか分からず立ちすくんでいる2人を、引き摺るように監禁部屋から出し、俺の顔が見えないよう依頼主の方に顔を向けて、一瞬だけ頭に被せている袋を取り、確認させたら再び袋を被せる。
「間違いない。ほら、依頼料だ。分かっているとは思うが・・・」
「フッ、口止め料も入ってるんだろう? 馬車代はサービスしてやる」
「分かっていればいい。まあ、また依頼することもあるだろう」
依頼人であるデスタート男爵は、満足そうにそう言って、養子縁組をする貴族が待つ馬車にガキを乗せると、自分は違う馬車で帰っていった。
偽名でトーラスと名乗っていたが、依頼主の正体なんて簡単に調べられる。
依頼に来たら必ず手下が尾行するし、警備隊の回し者かどうか調査するのは当然のことだ。
……何かあれば、簡単に脅せるカモだから、丁寧に見送ってやろう。
……あのガキども、デスタートを見ても何も言わなかった。自分たちの教官なのになんでだ? フッ、何を気にしてるんだ、俺らしくもない。
「ボス、出口でガキの乗った馬車が、ハンターらしき者に貸してくれと止められましたが、貸し切りだと言って追い払いました。
貸し馬車を装っているんで無視もできず、まあ、何の問題もありません。
殺し担当の7人も、直ぐ後を追います」
再開発地域の出口で見張っていた幹部のデビーランが経過報告する。
「ガキを乗せた馬車の御者には、城壁を出たら古代遺跡の近くの林に向い、林の中で暫く待てと命じてあります。
書類にサインした頃合いをみて、盗賊を装い7人で馬車を襲います。
殺されたくなかったらガキを寄越せと脅し、貴族を傷付けることなくガキだけを連れ去り、林の奥で殺すよう命じてあります。
ガキを奪ったら直ぐに、貴族を乗せた馬車は王都に戻します」
自分の立てた作戦に変更はないと、デビーランがニヤリと笑って言う。
この後デビーランは依頼人を連れ、林の奥まで依頼達成の確認しに行く。
30分後、予定通り次の依頼人を手下が案内してきた。
この男も依頼は2度目だ。悪い奴っていうのは何処にでもいる。
前の依頼は確か、どこぞの私生児と母親を殺してくれって依頼だったが、あの時は母親しか殺せず、依頼料が半分になってしまった。
教えられた家に深夜侵入したが、闇に紛れて子供には逃げられてしまった。
子供を殺すのを躊躇ったらしい手下は、口封じをも兼ねて処分した。
そう言えば、あの時のガキの名前も今回と似た名だった気がする。
またしてもガキ殺しの依頼とは・・・前回は上司の尻拭いだと言っていたが、今回は殺す理由を言わなかった。
……もっと金の取れる依頼だが、前回の失敗で足元を見られた。
……いわく付きじゃなかったら、俺が魔術師のガキを手下にしても良かったが、教会に関係していたら不味い。
「今回こそは、予定通りに殺せるんだろうな?」
たかが子爵如きが偉そうに問う。
「ああ、もう直ぐ依頼は達成される。今回は自分の目で確認したいとのことだから、部下と一緒に古代遺跡の近くの林に行ってくれ。確認が済んだら、依頼料の白金貨2枚を部下に渡せ」
アロー公爵領の子爵だが、これといった役職にも就けず、威張ることしかできない憐れな奴だが、こういう奴は上得意先になる可能性が高いから、今回は失敗できない。
手下が集めた情報では、アロー公爵家の嫡男は毒にやられて死にかけて、公爵の弟が台頭したと聞いている。
今は回復して仕事もしているようだが、孫まで病に倒れていたというから、かなりきな臭い相続争いでも起こっているんだろう。
裏家業は情報が命綱にもなるから、主要貴族家の情報は大枚はたいてでも買っている。
……10歳にも満たないガキの魔術師を殺すって・・・まさかアロー公爵家の血族なのか?
……いや、魔術師だが平民と準男爵家の娘だ。アロー公爵家の家門なら、魔術師学校で学んだりしない。
依頼人を別室に案内させ、妙な胸騒ぎを自分で否定し深く息を吐く。
「ボス、そろそろ出ます」と、デビーランが報告に来たので、柄にもなく「気を付けろ」と声を掛けた。
「わざと昼食を抜いてある。ガキは食い物で釣れることもあるから、せいぜい優しい言葉でも掛けて、うちが用意した弁当を食べさせればいい。
先に約束の金を頂こう。それから、子供を別々の馬車に乗せると不安がるだろうから、養子縁組承諾書にサインさせるまで1台の馬車で移動した方がいいぞ」
俺は悪人らしくないことを言いながら、依頼主に金を要求する。
「もちろん金は渡すが、2人のガキを引き渡してからだ。取引が完了する前に金を渡すほど、私もバカではない」
偉そうに分かった風な口を利く男に、わざとフンと悪態をつく。
こういう輩との取引は、依頼主の方が格上なんだと自己満足させておくことが必要だから、都合悪そうに悪態をついてみせる。
2人の客は建物の中には入らず、乗ってきた馬車とは違う馬車に乗り換えて待たせてあるから、ガキ2人を連れていくのは依頼主だ。
攫ったガキは魔術師だと聞いていたが、泣き喚くこともなくぼそぼそと会話していたようで、1人より2人の方が精神的に安定するのかもしれない。
まあ大事な商品だから手荒なことをせずに済んだが、妙に大人しいガキっていうのも不気味だ。
部下の話では、教会のバザーで売っていた菓子は完売したらしいし、態度や言葉遣いは平民とは何か違う気がすると言っていた。
……まあいい、もう直ぐ1つ目の依頼は完了し、2つ目の依頼も完璧にこなせるだろう。
……まさか同じガキ2人に、同時に依頼人が2人もくるなんて偶然、裏家業を長くやっている俺でも初めてだ。
誘拐と殺し、どちらも1人白金貨1枚で合計白金貨4枚の依頼なんて、貴族相手じゃないと有り得ない。
ガキの殺しなんて依頼、貴族の相続争いくらいだが・・・俺には関係ない。
俺はとっくに貴族なんて面倒臭い身分は捨てたし、今は貴族を利用して儲ける側の人間だ。
「さあ、迎えが来たぞ。さっさと立って移動しろ」
ずっと頭に袋を被せているから、俺の顔も知らぬまま死んでいくガキどもだ。
最後くらいは優しく? なんてするはずないだろう。
どうしたらいいのか分からず立ちすくんでいる2人を、引き摺るように監禁部屋から出し、俺の顔が見えないよう依頼主の方に顔を向けて、一瞬だけ頭に被せている袋を取り、確認させたら再び袋を被せる。
「間違いない。ほら、依頼料だ。分かっているとは思うが・・・」
「フッ、口止め料も入ってるんだろう? 馬車代はサービスしてやる」
「分かっていればいい。まあ、また依頼することもあるだろう」
依頼人であるデスタート男爵は、満足そうにそう言って、養子縁組をする貴族が待つ馬車にガキを乗せると、自分は違う馬車で帰っていった。
偽名でトーラスと名乗っていたが、依頼主の正体なんて簡単に調べられる。
依頼に来たら必ず手下が尾行するし、警備隊の回し者かどうか調査するのは当然のことだ。
……何かあれば、簡単に脅せるカモだから、丁寧に見送ってやろう。
……あのガキども、デスタートを見ても何も言わなかった。自分たちの教官なのになんでだ? フッ、何を気にしてるんだ、俺らしくもない。
「ボス、出口でガキの乗った馬車が、ハンターらしき者に貸してくれと止められましたが、貸し切りだと言って追い払いました。
貸し馬車を装っているんで無視もできず、まあ、何の問題もありません。
殺し担当の7人も、直ぐ後を追います」
再開発地域の出口で見張っていた幹部のデビーランが経過報告する。
「ガキを乗せた馬車の御者には、城壁を出たら古代遺跡の近くの林に向い、林の中で暫く待てと命じてあります。
書類にサインした頃合いをみて、盗賊を装い7人で馬車を襲います。
殺されたくなかったらガキを寄越せと脅し、貴族を傷付けることなくガキだけを連れ去り、林の奥で殺すよう命じてあります。
ガキを奪ったら直ぐに、貴族を乗せた馬車は王都に戻します」
自分の立てた作戦に変更はないと、デビーランがニヤリと笑って言う。
この後デビーランは依頼人を連れ、林の奥まで依頼達成の確認しに行く。
30分後、予定通り次の依頼人を手下が案内してきた。
この男も依頼は2度目だ。悪い奴っていうのは何処にでもいる。
前の依頼は確か、どこぞの私生児と母親を殺してくれって依頼だったが、あの時は母親しか殺せず、依頼料が半分になってしまった。
教えられた家に深夜侵入したが、闇に紛れて子供には逃げられてしまった。
子供を殺すのを躊躇ったらしい手下は、口封じをも兼ねて処分した。
そう言えば、あの時のガキの名前も今回と似た名だった気がする。
またしてもガキ殺しの依頼とは・・・前回は上司の尻拭いだと言っていたが、今回は殺す理由を言わなかった。
……もっと金の取れる依頼だが、前回の失敗で足元を見られた。
……いわく付きじゃなかったら、俺が魔術師のガキを手下にしても良かったが、教会に関係していたら不味い。
「今回こそは、予定通りに殺せるんだろうな?」
たかが子爵如きが偉そうに問う。
「ああ、もう直ぐ依頼は達成される。今回は自分の目で確認したいとのことだから、部下と一緒に古代遺跡の近くの林に行ってくれ。確認が済んだら、依頼料の白金貨2枚を部下に渡せ」
アロー公爵領の子爵だが、これといった役職にも就けず、威張ることしかできない憐れな奴だが、こういう奴は上得意先になる可能性が高いから、今回は失敗できない。
手下が集めた情報では、アロー公爵家の嫡男は毒にやられて死にかけて、公爵の弟が台頭したと聞いている。
今は回復して仕事もしているようだが、孫まで病に倒れていたというから、かなりきな臭い相続争いでも起こっているんだろう。
裏家業は情報が命綱にもなるから、主要貴族家の情報は大枚はたいてでも買っている。
……10歳にも満たないガキの魔術師を殺すって・・・まさかアロー公爵家の血族なのか?
……いや、魔術師だが平民と準男爵家の娘だ。アロー公爵家の家門なら、魔術師学校で学んだりしない。
依頼人を別室に案内させ、妙な胸騒ぎを自分で否定し深く息を吐く。
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