三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

文字の大きさ
108 / 190
サンタさん、学生になる

108 西地区の闇(4)

しおりを挟む
「デスタート教官から養子縁組の話を聞いていると思うが、君たちは貴族になりたくないのか?」

 ベルクラ子息と名乗った男は、馬車が城壁の外に出たところで声を掛けてきた。
 きっと悪人じゃないんだろうけど、デスタート教官に金を払った時点で善人じゃなくなってる。

「うちに養子に入れば、初級学校でも中級学校でも行かせてやれるぞ。養子縁組承諾書にサインして、親の所に案内してくれたらの話しだが」

 アレス君を養子にしたがっているモーリー子爵は、悪い話じゃないし今より贅沢な暮らしだってできるんだから、よく考えた方がいいと説得しにかかる。
 
「僕もサンタさんも、家庭教師がいたから中級学校までの勉強は終わってる。
 養子になんてならなくても、中位・魔術師に合格すれば王立能力学園に無試験で入学できるって、魔術師学校の学生は全員知ってる」

 アレス君は、子ども扱いする2人の子爵に不機嫌な顔をして言う。

「それに中位・魔術師に合格したら、最低でも準男爵になれるって知ってるわよ」

 何も知らない無知な子供だと思っている2人に、私たちは相手の顔を見ることもなく淡々と言う。

「中位・魔術師に合格できる程に優秀らしいが、後ろ盾がないと準男爵止まりだ。だが、親が子爵だったら男爵にだってなれるぞ」

 モーリー子爵は、そこから準男爵は貴族とは言えないとか、準男爵如き身分で王立能力学園に入学したら、高位貴族に虐められ酷い目に遭うぞと脅してきた。

 でも私もアレス君も全く興味を示さず、馬車の窓から外を見て口をつぐむ。
 馬車はどんどん王都から離れていくようで、この後の展開を知っている私とアレス君は、自分たちが生き残るための作戦を開始する。

「親切そうにしてるけど、善人は子供の手を縛ったままになんてしないわ」

「そうだねサンタさん。もう手が痺れてペンなんて持てないね」

 私たちは、守護霊5人が集めてくれた情報で、盗賊を装った【闇烏】の奴等に、林の奥に連れていかれて殺される予定であると知っている。
 その作戦を立てたのが誰で、全てを命じているボスの名前も、あの西地区が再開発地域と呼ばれていることも知っていた。

『こんな場所があるから悪人がはびこるのね。指揮を執っている王太子も役に立たないわね』

『そうねマーガレットさん。5倍返しは当然だけど、200人近い数の悪党を一掃するのは骨が折れそうだわ』

 マーガレットさんとパトリシアさんは、調べれば調べる程に汚い極悪人だって怒ってた。

『依頼する奴らがいるから成り立つ商売なんやろうけど、女子供まで売ったり殺したりって・・・絶対にあかんやろう』

 私たちを殺す計画を立てたデビーランという悪党に張り付いていたトキニさんは、アイツだけは生かしておけないと、トキニさんにしては過激な発言をしてたから、子供の私たちには言えない悪行を聞いてしまったんだろう。

『あのボスも相当だ。盗みに恐喝、誘拐に殺し、放火なんてもんも平気でやるクズだ。依頼するクズにも鉄槌を下す必要がある』

 ダイトンさんは低い声で言いながら、自分に体さえあれば、あの廃墟を粉々にしてクズどもを生き埋めにし、依頼者は社会的に抹殺するのにと怒り心頭だった。

『しっかり生き延びたら、サンタは上級魔法を、アレスは中級魔法の練習をすればいいじゃろう。どうせ壊す予定の廃墟じゃ。好きにしたらええ』

「えっ、本当に? 上級魔法を試してもいいのサーク爺? アレス君、サーク爺がこの廃墟で魔法の練習をしてもいいって」

「本当に? それじゃあ僕は、逃げ場を塞ぐために入り口辺りの建物から破壊しようかな」

 なんて会話を、あの監禁部屋で話していた私たちは、目の前の子爵なんかには全く興味もなかった。
 でも、嫌がる子供をお金で買おうとした罰は受けて貰わなくちゃいけない。
 もう二度と同じことをしないように。



「ところでオジサンたち、私たちの名前をちゃんと確認してないでしょう?
 あの無能教官は、私を準男爵家の娘で、アレス君を平民だと思ってるみたいだけど、それ、間違ってるから」

 手の縄を解かせた私たちは、林の中で馬車が止まったのを確認し、生き残るための作戦を開始する。

「はあ、なんだと!」

 私の話を聞いた子爵2人は、怪訝そうな顔で私を見ながら叫んだ。

「笑っちゃうよね。王宮に顔パスで入場できる僕たちを平民だなんてさ」

 アレス君は上着の下に隠していたウエストポーチから、王宮入場許可証と王太子宮入場許可証を取り出し、2人の子爵にチラリとみせて顔の前でピラピラ振る。

「王宮入場許可証? いや、そんな・・・まさか、貴族の子なのか?」

 モーリー子爵は狼狽えながら、アレス君の身分を確かめようとする。

「私ね、魔術師学校に入学する前は、ガリア教会大学で働いてたの。これ、教会本部が発行してくれた身分証なんだけど・・・私たち教会の保護対象なんだよね。
 もしも報告したら、オジサンたち破門されちゃうね。警備隊に捕まるより、教会を怒らせる方が怖いと思うよ。私、名誉教授だから」

 私もウエストポーチから教会が発行してくれた身分証を取り出し、「取り返しのつかないことをしちゃったね」って、にっこり笑ってあげた。

「教会の保護対象だと? そんなバカな・・・私たちはデスタート教官に騙されたのか? あ、有り得ない!」

 ベルクラ子爵は可哀相なくらいに狼狽え、教会の紋章がババーンって刻印された証明書を見て、化け物でも見るような視線を私に向けた。

「でも、私たちを【闇烏】に攫わせたことも知ってるし、強引に養子縁組させようとしたよね?」

「まあまあサンタさん。まだ未遂、まだ養子縁組承諾書にサインさせられてないから、僕たちの親に、騙されて誘拐しましたと謝ってくれたら許してあげようよ」

 あら、優しい顔をしたアレス君ったら、アドリブで怖いことを言うのね。
 もしもアレス君の親に会ったりしたら、貴族社会から抹殺されかねないと思うんだけど・・・まあ、やらかした責任は取ってもらわなきゃいけないもんね。

「そ、そうしてくれると有難い。我々は騙されたんだから、親御さんにしっかり説明させてくれ」

「分かったよベルクラ子爵。今から盗賊に襲われるから、お互い命があったら僕が親に会わせてあげるよ」   
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
ファンタジー
公爵令嬢として生まれながら、子ども時代からメイドや周囲の陰謀で、次々と濡れ衣を着せられ、「悪女」扱いされてきたミリアム。 第3王子との婚約を聖女に奪われ、聖女への嫌がらせの冤罪で国外追放された後、平民として生き延びる中で、何度も5年前へのロールバック(逆行)を繰り返すことに。 生計をたてる為に、追放後の平民生活で極めた針仕事が、ロールバックが繰り返されることで、針仕事の能力だけは引き継がれ、天才的な実力を手に入れる。 その時女神「アテナ」の加護を得て、2つの力を手にすることに。 「加護縫い」 (縫った布に強力な祝福を込められる) 「嘘のほころびを見抜く力」 (相手の嘘を布のほころびとして視覚的に捉え、引き抜く、または繕うことで、真実を暴いたり修正したりする) を手にしたミリアムは、5歳の幼女時代まで遡り、2つの力で悪評をぬりかえ、仲違いしていた家族も、加護の力を与えることで協力な味方へと変貌。 さらに、女神から可愛いしもべ「アリアドネ」を授かり、元婚約者と聖女にザマァを狙う中、加護縫いの能力が最も高い人間を王太子妃に迎える決まりのある大国、ルーパート王国の王太子が近付いて来て……?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

領主にならないとダメかなぁ。冒険者が良いんです本当は。

さっちさん
ファンタジー
アズベリー領のミーナはとある事情により両親と旅をしてきた。 しかし、事故で両親を亡くし、実は領主だった両親の意志を幼いながらに受け継ぐため、一人旅を続ける事に。 7歳になると同時に叔父様を通して王都を拠点に領地の事ととある事情の為に学園に通い、知識と情報を得る様に言われた。 ミーナも仕方なく、王都に向かい、コレからの事を叔父と話をしようと動き出したところから始まります。 ★作品を読んでくださった方ありがとうございます。不定期投稿とはなりますが一生懸命進めていく予定です。 皆様応援よろしくお願いします

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...