墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 誕生

第7話 仕留めた獲物は大きい

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「アレアさん似合ってるよ~」

「うん。カッコいい」

「そ、そうかな……」

 ミレットさんの服屋をでて隣のリコさん達の泊まってる宿屋にはいった。
 早速、ミレットさんの選んでくれた服を着るとリコさんとマーヤさんが褒めてくれる。

「リコさん。本当に貰っていいの?」

「うん! お礼だもん」

「でもな~」

「そんなことより」

 リコさんに確認を取ると彼女は腕を組んで首を傾げる。僕を睨みつけてくるんだけど、何かあったのかな?

「そのリコさんって言うのやめてください。私達の方が年下なんだから」

 ムスッと頬を膨らませて言ってくるリコさん。やっぱり年下なのか。

「私達12歳ですよ。成人したばっかりなんです。アレアさんは14歳ですよね」

「え? なんで知ってるの? 年齢言ったっけ?」

「……そんなことはどうでもいいんですよ。それよりも」

 ルテナさんの言葉に疑問を感じたので問いかけると話を逸らされた。もしかしてギルドで聞いたのかな?

「さんって言うのはやめてほしいの。呼び捨てでいいよ」

 マーヤさんがそういってくる。しかし、呼び捨ては流石に……。

「呼び捨ていいね」

「うん。呼んでみてください」

 マーヤさんの提案にリコさんとルテナさんが飛びつく。キラキラした目でお願いしてくる二人、マーヤさんもワクワクしてる様子だ。まだまだ子供って感じだな。
 でも、そんなに親しくないしな~。

「……。リコ……さん」

「おしい! もう一回」

「次は私~」

 僕の言葉に一喜一憂、リコさんが人差し指を立てるとルテナさんがお願いしてくる。
 うん、にげよう。

「あっ!? 逃げた~!」

「服ありがとうね! じゃあ~」

 窓から飛び出して三人に手を振る。マーヤさんだけが手を振ってくれて二人は頬を膨らませて怒ってるね。
 今度会った時が怖いな。

「しかし、いい服だな~。動きを邪魔しない」

 そんな感想を呟いて服を確認する。今まで着ていたボロボロな服と違ってサラサラで綺麗。
 こんな服が着れるようになるとはな~。お金を持ってるわけじゃないのにいいのかな~……あっ、そういえばお金!?

「ギルドでサラマンダーを卸さないと」

 城壁の外の土地にじいちゃんの結界で暮らしてるから家賃や土地でお金がかかることはないけど、食べ物を買わないといけない。ハザードさん達に雇われていた時は何とか食いつないでいたけど、それもなくなっちゃったからな。

「おお、アレア。なんだ? 貴族みたいなサラサラな服着て」

 ギルドについてツィンさんの受付に座る。からかうように言う彼に苦笑いを浮かべる。

「買ってもらっちゃいました」

「ほ~。あの可愛い子達にか。いいご身分だ」

「他人事だと思って……」

 助けたとは言え、こんな高価な服をもらう間柄ではないからな~。恐縮しちゃうよ。

「それで? 何か用か?」

「ダンジョンの獲物を卸そうと思って」

「おお、そうか。丁度いい、ハザード達の遺体の確認も終わったからな。それの報酬も一緒に渡すぞ」

 ダンジョンで死んだ冒険者の遺体をギルドに届けると謝礼が贈られる。
 冒険者のランクを示すタブには死んだ時の記憶が刻まれているので人に殺された場合はすぐにわかる。仲間として入って殺して謝礼を受け取ることはできないわけだ。よくできてるよな~。

「獲物は何だ? オークか? ゴブリンならいらないぞ」

「えっと……」

「なんだ? 言いにくい獲物なのか?」

 ツィンさんの追及に口ごもる。出してもいいものなのか。一人で狩ったなんて言ったら驚かれそうだな。

「まずこれなんですが」

「リザードマン!? 一人で狩ったのか? 一体か?」

「あっ、はい。下層から上がってくるときに出会って」

 思った通り驚くツィンさん。小手調べとして出したリザードマンでこの驚きよう。荷物持ちの僕が倒したなんて驚くに決まってるよな。普通は30レベルのパーティーで倒すような魔物だからな~。

「リザードマンは群れで動くことが多い。一体なんてことはないだろ」

「え~っと」

「嘘はつかなくていい。そうだな。奥の部屋に来い」

 ひとめのあるここでは出しにくい。そう思って口ごもるとツィンさんは察してくれて受付奥の部屋へと案内してくれた。
 解体場と言われる魔物を解体する部屋に入ると中にはツィンさん以外いないみたいだ。

「ここなら出せるだろ。部屋も広いしな。どんなもんが出てきても驚かないぜ」

 ツィンさんはそういってどっしりと構える。
 僕はマジックバッグからリザードマンとサラマンダーを一体ずつ取り出した。

「!? さ、サラマンダー!?」

 驚かないと言っていた彼だったけど、流石の獲物に驚いて固まってしまった。しばらく固まったままの彼を見ていると首をブンブン震わせて正気に戻ってくれた。

「下層で仕留めたのか!? お前レベルいくつになった? サラマンダーをソロで倒すには60レベルは必要だぞ!」

「え、えっと~。ははは」

「……言えない程か。まあ、いい。サラマンダーとリザードマンを卸すんだな。マスターには報告しなくちゃいけないからな。本部には黙っておくことにしておこう」

 追及に口ごもるとやれやれといった様子で答えてくれた。ギルドマスターには言わないといけないのか~。厄介ごとに巻き込まれなければいいんだけどな。

「……これでおしまいだろうな?」

「ははは~。実は」

 ツィンさんがジト~っとした目つきで見てくる。僕は二体のサラマンダーを取り出す。本当はもっと入っているんだけど、今はそれだけ取り出した。

「……アレアはいつから金のタグの冒険者になったんだよ」

 ツィンさんはそういって頭を抱えた。下層で死んでいたレリックのグナトとかいう人達ですら勝てなかった魔物を何体も倒しちゃったからな。そう思われても仕方ないか。

「どうする? タグを新しくするか? こんなに強いんじゃ鉄でいるのも馬鹿らしいだろ?」

「え? ランクアップってことですか?」

「ああ、マスターに確認は取るがな。金は実績の数が必要だから無理かもしれないが銀まではいけるんじゃねえかな」

 鉄からいきなり銀か、ステータスはかなり上がっちゃってるから妥当なのかもしれないけど、荷物持ちが昇格したらピッツァさん達みたいのが湧くんじゃないかな……。

「わかった。銅にしておこう」

「そ、そうですね」

 考え込んでいるとツィンさんが察してくれた。銅でも納得しない人は出てくるだろうけど、銀よりはいいよな。

「さて、サラマンダー三体とリザードマン二体の換金だな。あと、ハザード達とグナト達のパーティーの謝礼で……白金貨は町じゃ使えないが仕方ない」

 解体室から出て受付の裏から皮袋を取り出すツィンさん。不穏なことを呟いていたけど、まさか……。

「白金貨1枚と金貨20枚だ」

「……」

 高額な報酬に唖然としてしまった。小声で教えてくれるツぃんさんのおかげで周りにはバレていないな。

「タグは今度渡すからな」

「あっはい。ありがとうございます」

 ツィンさんに手を振ってギルドをそそくさと後にする。マジックバッグに入れているから奪われる心配はないけど、周りの目が気になってしまう。小心者にこんな大金は怖い。
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