ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
7 / 57
第一章 ゲームの世界へ

第7話 更なる高みへ

しおりを挟む
「にゃ? また薬草の依頼を受けるの?」

「はい、ミレドさん」

 冒険者ギルドに戻ってきて再度薬草の依頼を受ける。ずっと薬草取りをしてるのでミレドさんが首を傾げる。

「スライムの核を沢山入れてくれるのは助かるけど……。もっとレベルの上がる鉱山とかの魔物と戦ったほうがいいんじゃない? アドラー達はそこで経験値を貯めてるよ」

 ミレドさんがスライムの核を手に持って話す。確かに鉱山の敵は経験値が高い。だけど、今の装備で行くのは危険だ。ビッグスライムを狙って近くの森で戦っていたほうが安全で高い経験値を見込める。聖水も今の段階じゃ手に入らないアイテムだしね。

「アドラーさん達の足を引っ張っちゃうんでダメですよ。僕らには近くの森がお似合いです」

「にゃ? ランカ君がそれでいいならいいけど」

 謙遜して言葉を濁す。ミレドさんはそれを聞いて再度首を傾げる。

「お~お~。先輩の足を引っ張らないように考えてるなんて偉いじゃねえか!」

 オスターがそれを聞いていたみたいで、併設されている酒場から大きな声で現れる。

「誤解してたぜ……。ん? お前、その剣……」

 オスターは嬉しそうに僕の肩に手を置いてくる。そして、気づいてしまう。僕の腰に差している剣が強いことに。

「ちょっとその剣を見せろ」

「いいよ」

 少し不安だけど、喧嘩を売られているわけじゃない。剣を差し出すと、冷や汗をかきながら剣と僕に視線を反復させる。

「これ、Dランクの剣か?」

「そうだけど、よくわかったね」

「ああ、俺もベテランの大剣士だからな。分かるんだよ。俺の大剣よりも強い武器だってな」

 オスターはそういって輝く瞳で剣を返してきた。剣を返してきた手で僕の手を力強く握ってくる。

「この剣をどこで手に入れたんだ。俺の剣も作って欲しいんだ」

「え、えっと~。とにかく離してくれます?」

「あ、すまねえ」

 オスターは本当に大剣が欲しいみたいだ。熱心な視線を僕に向けてくる。手も言ったらちゃんと離してくれたし、実は良い人?

「師匠。作ってあげるんですか?」

「ん~」

 アスノ君が耳打ちをしてくる。僕は悩んで首を傾げる。するとオスターは金貨の入った革袋を見せてきた。

「金はこれだけある。どうかお願いだ」

 懇願して頭を下げてくるオスター。それだけ武器が不足してるってことか。

「鉄は用意できますか?」

「鉄? ああ、鉱山に行ってるからな。今はもってないが少しは手に入るぞ」

 やっぱり鉄は鉱山で手に入るのか。でもこれは大量に鉄を手に入れられるチャンスだな。

「そうですが、鉄をもって来てくれれば考えますよ」

「本当か! あ! 俺の仲間達のもお願いできるか?」

「みんな鉄をもって来てくれれば考えますよ」

「やったぜ! 本当に頼むぞ。早速仲間と一緒に行ってくるぜ。本当にありがとうな!」

 オスターはニッコリと満面の笑顔でギルドを後にした。これで大量に鉄が手に入るぞ! そうすれば、ミスリルも……。それをやるにも錬金術師レベルをあげないとな。

「師匠のお友達、嬉しそうでしたね」

「友達じゃないよ。さて、依頼も受けたし、ルドマンさんのところに行こうか」

「ルドマンさん?」

 アスノ君が笑顔でそういうものだから否定しておいた。初対面でいちゃもんつけてきた人だからな。友達ではない。
 アスノ君と共にルドマンさんのお店に向かう。リズムのいいハンマーの音が外まで響いてる。

「こんにちは~」

 お店に顔を突っ込んで声をかける。音はするけど、ルドマンさんの姿は見えない。仕方なく二人でお店に入って奥の部屋を覗いた。

「ルドマンさん、ルドマンさ~ん!」

「ん? おお、ランカか! すまんすまん。ちょっと集中しちまってた」

 中に入っても気づかないルドマンさんの耳元で声をあげる。やっと気がついて手を止めた。

「見てくれランカ。おめえの剣を見て作った剣達だ。比べちまうとまだまだ見劣りしちまうが中々だろ」
 
 僕の鉄の剣と同じロングソードの部類になる剣を見せてくる。プラスがついていないからまだまだだけど、Dランクの剣だ。見事にルドマンさんは鍛冶屋のレベルをあげたみたいだな。

「Dランクの剣を作れるようになったのはいいんだがな。前のようにAランク、Sランクの武器は作れない……。どうなっちまったんだ儂は」

 落ち込むルドマンさん。そうか、ゲームではルドマンさんはSランクの武具を作れたのか。ストーリーでは語られていなかったけど、今までの彼の言動から察するに伝説の類の武具はこの人が作っていたのかもな。

「……そのうち作れるようになりますよ。それでですね。頼みがあるんですが」

「ん? なんじゃ? すまないが剣は売れないぞ。王国に献上せんと行かんからな」

 ルドマンさんが剣を抱えて話す。無理やり奪わないから心配しないで欲しいんだけどな。

「えっと、知り合いが武器が欲しいって言うんです。それでルドマンさんが作ったってことにして欲しくて」

「ん? なんじゃそれは。おぬしの方が強い武器が作れるのに儂が打ったことにしろということか?」

 僕の言葉を聞いて考え込むルドマンさん。しばらく考えると頷いてくれる。

「何か理由があるんじゃろう。わかったその時はここで手渡そう。ランカは儂の恩人じゃからな」

「ありがとうございます」

「その頼みを聞いてやる代わりにじゃ……」

 ルドマンさんは快く引き受けてくれる。そして、代わりにと言ってニヤッと笑った。

「更に上のランクの武具が作れたら見せてくれ。おぬしの武具は儂に経験値を授けてくれるようでな。調子が良くなるんじゃよ」

 ルドマンさんは嬉しそうに話してくれる。そうか、人の装備を見て成長できる人もいるってことか。でも、結局は戦闘職のレベルをあげないと出来ないんだよな。最終的には僕らがルドマンさんを成長させてあげないとだめかもしれないな。

「わかりましたよ。その時は見せます」

「お~、そうか! その時が待ち遠しいぞ! よ~し、それまで王国への武具を張り切って作るぞ。Dランクの武具をご所望だからな」

 ルドマンさんが顔を高揚させて剣に向き合う。そして、ハンマーのこぎみよい音が鳴り始める。

「ふふ、ルドマンさんは本当に鍛冶が好きなんだな~。僕も好きだからわかるけど」

 鍛冶屋を後にしてアスノ君が楽しそうに話す。

「ほんとだね。あれ? 音が止んだ?」

「お~、忘れて居った。ほれ、鉄じゃ。素材がなかったら作れんだろ? それを使って儂に更なる高みを見せてくれ。ではな」

 音が止んだと思ったらルドマンさんが店から顔を覗かせて僕へと鉄のインゴットを放ってきた。ありがたいな。
 じゃあ、早速、

「これでCランクだ!」

「わ、わ~!?」

 アイテム合成で鉄の剣を作り出す。戦闘職のレベルも10になったことでCランクが解放された。作った武器を手元に出すとアスノ君が目を輝かせて見つめる。

「更に!」

 元々あった+4の鉄の剣を掛け合わせる。Cランクの鉄の剣+5の出来上がりだ!

【D鉄の剣+4】 攻撃力20

【C鉄の剣+5】 攻撃力40

 錬金術師レベルも15にあがったこれで聖水を使った素材が作れる。

「さて、近くの森に行こうか」

「し、師匠……僕のは?」

「あ……」

 勢いに任せて合成してしまった。アスノ君の武器は次の機会ということで。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...