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第一章 ゲームの世界へ
第12話 王都【セントラルアルステード】
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◇
「どうなっているんだ!」
私の名はステファン。王都【セントラルアルステード】の第一騎士団団長を務めている。
王都内の武具がすべてEランクの武具になってしまった。それだけならまだどうにかなった。ことはかなり重大な状況だ。
「すべての鍛冶職人がEランクの武具しか作れないのです。どうしようもありません」
団員の報告を聞いて机に拳を打ち込む。怯える団員達。
「すべての町へと知らせを。Aランク、Sランクの鍛冶職人を探すのだ!」
『はっ!』
「く……」
すべての町を調べれば一人くらいはいるだろう。Eランクの装備ではすぐに壊れてしまう。Bランク以上の魔物と対峙する我々には必須装備。最低でもCランクの装備くらいは揃えなくては。
「私の団員だけでは足りないな。レッドにも知らせておくか」
そう思い、王都の騎士団の双璧を担う第二騎士団長の部屋へと向かう。
「ん? ステファンか。どうした?」
部屋に入ると呑気に紅茶を飲んでいるレッド。彼女は赤い髪を背中まで伸ばしていてとても美しい。赤い瞳がまっすぐに私を捉えて離さない。
実力も私の次に秀でていて頼もしい限りだ。
「武具の話しだ」
「すべてEランクになってしまったな。噂では生産者のすべてがレベル1になってしまったらしいぞ」
向かいの椅子に座って呟く。すると彼女は白い紙を読みだした。すでに調べているとは流石だな。頼もしい。
「生産者の成長を待つしかないだろう」
「な!? そんな悠長にしている場合ではないだろ。いつ魔物の群れが来るか、分からないのだぞ!」
レッドがあまりにも呑気なことを言うものだから声を荒らげる。すると彼女は鋭い視線を向けてきた。
「では聞くが。戦闘能力しかない我々に何が出来る? 生産者を痛めつけて無理やり働かせるか?」
「い、いやそう言うことを言ってるわけでは」
「冒険者達も色々と足で情報を稼いでいる状況だ。彼らからの話ではダンジョンの宝箱からは武具は出ないらしいぞ」
レッドの情報収集能力は計り知れないな。すでにそんな情報まで。しかし、これは由々しき事態だ。ダンジョン報酬でも武具が手に入らないとなると生産者に頼るほかなくなる。
「この話の気に食わないところは魔物の武器もEランクというところだ。ミスリルでも鉄でも、Eランクの武器では耐久値が頼りない。10回の攻撃で壊れてしまうような装備では騎士団も冒険者もなりたたない」
レッドは冷静に見えていたが焦っている様子がうかがえる。私の【白銀の剣】もすぐに壊れてしまうのか……。高かったというのに。
「神の悪戯とはこういうことを言うんだろうな」
「……そうだな」
レッドの言葉に失笑する。
今、この瞬間に魔物の群れが現れ、王都を襲ったら。ふと、そんなことを考えてしまう。そうなったら最後、騎士団は武器、防具がなくなり魔物の波に飲まれるだろう。
「黙って待っていても仕方ないな。私はオルコッドに向かう。ステファンは王都を守っていてくれ。王様、セントラル様がいなくなられたら我らはおしまいだからな」
「了解した。吉報を待つ」
「ああ、腕のいい職人か武器を見つけたらすぐに王都に戻ってくる」
レッドは真剣な表情で部屋を出て行く。しばらくすると馬の鳴き声と共に駆ける音が聞こえてくる。
「頼んだぞレッド……。私は鍛冶場を見て回るか」
生産者を少しでも成長させられるのならば、ねぎらいの言葉をかけることも厭わない。たとえそれが平民でも……。私は優れた騎士団長だ。
◇
「さあ、お楽しみのお時間だ」
「……。ほんとにやるんですか?」
飲み会を終えて次の日。ルドマンさんの鍛冶場を一つ借りてアスノ君にミスリルを手渡す。酔っ払っていない状態でもトラウマが発生しているみたいだ。僕は怒らないから心配はいらないのにな。
「何も心配せずにやらないと、僕に弟子入りした意味がなくなるよ」
「べ、別に鍛冶師になりたくて弟子入りしたわけじゃ」
「ええ!? そうだったの? 冒険者になりたかったってこと?」
剣を見て弟子入りしてきたから鍛冶師として弟子入りしたいと思っていた。勝手に勘違いしていたな。でも、この子は【ミスリルのアスノ】だ。鍛冶師にならずに何になるって言うんだ。
「……もうつべこべ言わずにやる! 君は誰よりも優れた鍛冶師になれるんだから!」
「がはは、それは大きく出たな」
僕の声がルドマンさんにも聞こえたみたい。豪快に笑って僕の肩に手を置く。顔は笑っているけど圧が凄いな。
「まあ、見ててくださいよルドマンさん」
「し、師匠~」
「早く始める!」
アスノ君に圧をかける。彼は泣きそうな顔になりながらミスリルを溶かしていく。
「ほ~、基礎は出来ているな」
彼の所作にルドマンさんが感心して声をあげる。僕はそれを聞いて自慢げに頷く。僕はインベントリ内で完結してしまうからできませんけどね。
「しかし、ミスリルなどどこにあったんじゃ?」
「ルドマンさんには鍛冶場を借りていますし、教えます。僕が作りました」
「はぁ~? 作ったじゃと?」
驚くルドマンさん。そりゃ驚くよな~。この初心者の町でミスリルなんて絶対に手に入らないって言われているからね。僕らが長年プレイをして得たビッグスライムの戦利品から導き出した答え。そして、ルドマンさんは更に驚くことになる。
「で、出来ました……。師匠のためにロングソードにして見ましたけど……。」
「な、なんじゃこれは……」
ミスリルのロングソードを完成させるアスノ君。それを見たルドマンさんがカタカタと震えながらロングソードを見つめる。驚くのも無理はない。等級はDランクと僕よりも下になってしまうが付与されている内容が驚愕の内容となる。
【Dミスリルのロングソード】攻撃力50 【付与】聖属性 STR3倍 DEF30 DEX30 INT30 MND30
「凄いでしょ?」
「……凄いなんてもんじゃねえ。これは神の加護レベルだ」
大きく狼狽えるルドマンさんに自慢げに声をかける。聖属性はもともとミスリルにつく付与だから他の付与されている効果がアスノ君の力だ。
STR特化のプレイヤーにとって彼は絶対に手放せないNPCだった。武器のみの特殊技能だが、すべてのステータスに影響を及ぼす効果。こんなもの知ってしまったら別の装備を着ようとは思わない。伝説の武具は別だけど。
「こ、これ。僕が作ったんですよね……」
アスノ君自身も信じられない様子で呟く。これでトラウマが払しょくされればいいんだけどね。
「アスノ! 儂の工房で働かないか? 冒険者にしておくのはもったいない」
「え!? え~!?」
ルドマンさんがアスノ君の両肩を掴んで勧誘。彼は僕とルドマンさんで視線を反復させる。
「アスノ君の思うままに決めていいよ」
一人になるのは寂しいけど、アスノ君は鍛冶師になるために生まれたような子だ。彼の未来は彼の物。僕に左右されるべきじゃない。
「ぼ、僕は師匠の横に立ちたい! ルドマンさんごめんなさい!」
ルドマンさんに頭を下げるアスノ君。どうやら、僕は彼の未来を変えてしまったみたいだ。嬉しいけど、複雑な気持ちだな。
「よし! 次は君の武器だ。短剣を作ろう!」
「ええ!? まだあったんですか!?」
「がはは、若い奴らは元気でいいな! 俺も精進しなくちゃな!」
アスノ君に再度ミスリルインゴットを手渡す。驚く彼に続いてルドマンさんが声をあげた。
ルドマンさんもこの後大変な作業をしないといけないんだけどね。
「どうなっているんだ!」
私の名はステファン。王都【セントラルアルステード】の第一騎士団団長を務めている。
王都内の武具がすべてEランクの武具になってしまった。それだけならまだどうにかなった。ことはかなり重大な状況だ。
「すべての鍛冶職人がEランクの武具しか作れないのです。どうしようもありません」
団員の報告を聞いて机に拳を打ち込む。怯える団員達。
「すべての町へと知らせを。Aランク、Sランクの鍛冶職人を探すのだ!」
『はっ!』
「く……」
すべての町を調べれば一人くらいはいるだろう。Eランクの装備ではすぐに壊れてしまう。Bランク以上の魔物と対峙する我々には必須装備。最低でもCランクの装備くらいは揃えなくては。
「私の団員だけでは足りないな。レッドにも知らせておくか」
そう思い、王都の騎士団の双璧を担う第二騎士団長の部屋へと向かう。
「ん? ステファンか。どうした?」
部屋に入ると呑気に紅茶を飲んでいるレッド。彼女は赤い髪を背中まで伸ばしていてとても美しい。赤い瞳がまっすぐに私を捉えて離さない。
実力も私の次に秀でていて頼もしい限りだ。
「武具の話しだ」
「すべてEランクになってしまったな。噂では生産者のすべてがレベル1になってしまったらしいぞ」
向かいの椅子に座って呟く。すると彼女は白い紙を読みだした。すでに調べているとは流石だな。頼もしい。
「生産者の成長を待つしかないだろう」
「な!? そんな悠長にしている場合ではないだろ。いつ魔物の群れが来るか、分からないのだぞ!」
レッドがあまりにも呑気なことを言うものだから声を荒らげる。すると彼女は鋭い視線を向けてきた。
「では聞くが。戦闘能力しかない我々に何が出来る? 生産者を痛めつけて無理やり働かせるか?」
「い、いやそう言うことを言ってるわけでは」
「冒険者達も色々と足で情報を稼いでいる状況だ。彼らからの話ではダンジョンの宝箱からは武具は出ないらしいぞ」
レッドの情報収集能力は計り知れないな。すでにそんな情報まで。しかし、これは由々しき事態だ。ダンジョン報酬でも武具が手に入らないとなると生産者に頼るほかなくなる。
「この話の気に食わないところは魔物の武器もEランクというところだ。ミスリルでも鉄でも、Eランクの武器では耐久値が頼りない。10回の攻撃で壊れてしまうような装備では騎士団も冒険者もなりたたない」
レッドは冷静に見えていたが焦っている様子がうかがえる。私の【白銀の剣】もすぐに壊れてしまうのか……。高かったというのに。
「神の悪戯とはこういうことを言うんだろうな」
「……そうだな」
レッドの言葉に失笑する。
今、この瞬間に魔物の群れが現れ、王都を襲ったら。ふと、そんなことを考えてしまう。そうなったら最後、騎士団は武器、防具がなくなり魔物の波に飲まれるだろう。
「黙って待っていても仕方ないな。私はオルコッドに向かう。ステファンは王都を守っていてくれ。王様、セントラル様がいなくなられたら我らはおしまいだからな」
「了解した。吉報を待つ」
「ああ、腕のいい職人か武器を見つけたらすぐに王都に戻ってくる」
レッドは真剣な表情で部屋を出て行く。しばらくすると馬の鳴き声と共に駆ける音が聞こえてくる。
「頼んだぞレッド……。私は鍛冶場を見て回るか」
生産者を少しでも成長させられるのならば、ねぎらいの言葉をかけることも厭わない。たとえそれが平民でも……。私は優れた騎士団長だ。
◇
「さあ、お楽しみのお時間だ」
「……。ほんとにやるんですか?」
飲み会を終えて次の日。ルドマンさんの鍛冶場を一つ借りてアスノ君にミスリルを手渡す。酔っ払っていない状態でもトラウマが発生しているみたいだ。僕は怒らないから心配はいらないのにな。
「何も心配せずにやらないと、僕に弟子入りした意味がなくなるよ」
「べ、別に鍛冶師になりたくて弟子入りしたわけじゃ」
「ええ!? そうだったの? 冒険者になりたかったってこと?」
剣を見て弟子入りしてきたから鍛冶師として弟子入りしたいと思っていた。勝手に勘違いしていたな。でも、この子は【ミスリルのアスノ】だ。鍛冶師にならずに何になるって言うんだ。
「……もうつべこべ言わずにやる! 君は誰よりも優れた鍛冶師になれるんだから!」
「がはは、それは大きく出たな」
僕の声がルドマンさんにも聞こえたみたい。豪快に笑って僕の肩に手を置く。顔は笑っているけど圧が凄いな。
「まあ、見ててくださいよルドマンさん」
「し、師匠~」
「早く始める!」
アスノ君に圧をかける。彼は泣きそうな顔になりながらミスリルを溶かしていく。
「ほ~、基礎は出来ているな」
彼の所作にルドマンさんが感心して声をあげる。僕はそれを聞いて自慢げに頷く。僕はインベントリ内で完結してしまうからできませんけどね。
「しかし、ミスリルなどどこにあったんじゃ?」
「ルドマンさんには鍛冶場を借りていますし、教えます。僕が作りました」
「はぁ~? 作ったじゃと?」
驚くルドマンさん。そりゃ驚くよな~。この初心者の町でミスリルなんて絶対に手に入らないって言われているからね。僕らが長年プレイをして得たビッグスライムの戦利品から導き出した答え。そして、ルドマンさんは更に驚くことになる。
「で、出来ました……。師匠のためにロングソードにして見ましたけど……。」
「な、なんじゃこれは……」
ミスリルのロングソードを完成させるアスノ君。それを見たルドマンさんがカタカタと震えながらロングソードを見つめる。驚くのも無理はない。等級はDランクと僕よりも下になってしまうが付与されている内容が驚愕の内容となる。
【Dミスリルのロングソード】攻撃力50 【付与】聖属性 STR3倍 DEF30 DEX30 INT30 MND30
「凄いでしょ?」
「……凄いなんてもんじゃねえ。これは神の加護レベルだ」
大きく狼狽えるルドマンさんに自慢げに声をかける。聖属性はもともとミスリルにつく付与だから他の付与されている効果がアスノ君の力だ。
STR特化のプレイヤーにとって彼は絶対に手放せないNPCだった。武器のみの特殊技能だが、すべてのステータスに影響を及ぼす効果。こんなもの知ってしまったら別の装備を着ようとは思わない。伝説の武具は別だけど。
「こ、これ。僕が作ったんですよね……」
アスノ君自身も信じられない様子で呟く。これでトラウマが払しょくされればいいんだけどね。
「アスノ! 儂の工房で働かないか? 冒険者にしておくのはもったいない」
「え!? え~!?」
ルドマンさんがアスノ君の両肩を掴んで勧誘。彼は僕とルドマンさんで視線を反復させる。
「アスノ君の思うままに決めていいよ」
一人になるのは寂しいけど、アスノ君は鍛冶師になるために生まれたような子だ。彼の未来は彼の物。僕に左右されるべきじゃない。
「ぼ、僕は師匠の横に立ちたい! ルドマンさんごめんなさい!」
ルドマンさんに頭を下げるアスノ君。どうやら、僕は彼の未来を変えてしまったみたいだ。嬉しいけど、複雑な気持ちだな。
「よし! 次は君の武器だ。短剣を作ろう!」
「ええ!? まだあったんですか!?」
「がはは、若い奴らは元気でいいな! 俺も精進しなくちゃな!」
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