ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 ゲームの世界へ

第26話 知識

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「ルガーさん!」

「おお、ランカ君。おかえり」

 ノンナちゃんと出会って街道を一日ほど進んでオルコッドに帰ってきた。傷ついている様子のルガーさんに声をかけると疲れた表情で答えてくれる。やっぱりここにもゾンビの大群が来たんだな。よく見ると城門や壁が傷ついてる。

「ゾンビですか?」

「ああ、よくわかったな。でも安心してくれ。すべて冒険者達と一緒に始末した。アドラーの獅子奮迅の戦うぶりを見せてやりたかった」

 僕の疑問に楽しそうに答えるルガーさん。アドラーさんの戦い方は鉱山で見たから知ってる。動きの遅いゾンビ達じゃ一方的だっただろうな。

「ん? おお、ランカ達は外にいたのか。どおりで見かけなかったわけだ」

 ルガーさんと話していると松葉づえをついて歩いてくるオスターが声をかけてきた。弓を肩にかけて自信が満ち満ちてる。ゾンビ達を沢山倒したのかな?

「ルドマンの弓でゾンビどもを蹴散らしたんだぜ! 結構様になってるだろ?」

「ふむ、自慢しなければ一人前なんじゃがな」

 ルドマンさんに弓を構えて報告するオスター。彼の言葉に頭を掻くオスターは恥ずかしそうに弓をしまった。

「手厳しいな~。流石は職人だ。おっと、ギルドに帰って魔物はいなくなったって報告してこないとな。じゃあなランカ。みんなも無事でよかったぜ。アドラーもミレドも心配してたから無事だって伝えておくからな」

 オスターはそう言って冒険者ギルドへ歩いていく。行く手間が省けたな。

「お母さんやお父さんがいる?」

 ルガーさんに別れを告げて町の中に入る。
 馬車から降りてくるノンナちゃんが、心配そうにあたりを見回して呟く。三人が集まると今以上の死霊が集まっちゃうんだよな。という事はこの町には既にいないかもな。

「悲しすぎるわ。親子が会えないような呪いなんて。どうにかならないの?」

「ん~、できなくもないんだけど」

 レッドが悲しそうに話す。僕は考え込んで呟く。
 ノンナちゃんの呪い【死霊体】はエリクサーで治る。ラストエリクサーでも治るはずだ。だけど、根本的な解決にならない。

「……私の一族は死霊術を使って地位を築きました。沢山の死霊を操って私利私欲の限りを尽くしたらしいです。そして、呪われました……。おじいちゃんもその前のおじいちゃんもずっと呪われてて」

「難儀じゃな」

 ノンナちゃんの説明を聞いてルドマンさんがため息をつく。

「とりあえず、ガーフさんの宿屋に行こう」

「うむ、では儂は店に戻るぞ。早速Aランクの装備を沢山こさえておく。兵士達や冒険者達に作ってやっておかんといかんからな」

 立ち話もなんだから宿屋に戻る。ルドマンさんは早速装備を作るみたいだな。彼も40レベルになったからな。これでまた町の防衛力が上がるな。
 ノンナちゃんの強制クエストには必須だ。すぐにでもやってもらいたいことだな。

「おお、おかえり。どうだった?」

「ただいま戻りました。いや、大変でしたよ……」

 ガーフさんの宿屋について、心配そうに聞いてくるガーフさんに話す。話を聞くとスズさんも心配してくれてアスノ君の頭を撫でてくれる。

「大変だったね~。早速ご飯にするかい?」

「じゃあ、お願いします。それとこの子も泊まる予定なので」

「あいよ」

 銅貨を手渡してノンナちゃんに視線を向ける。スズさんは頷いて受け取るとすぐに厨房に入っていく。
 僕らの部屋は予め多めにお金を払っている。別の部屋になるのも面倒だもんな。一度、部屋に戻って荷物や軽く体を拭う。服の中にも返り血が入っていたみたいで所々赤黒くなってる。

「ランカ。入るわよ」

「あ!? ちょっと!?」

 もう着替えてきたレッドが急に入ってくる。彼女は半裸状態な僕に構わずにベッドに座る。

「ノンナちゃんの呪いはラストエリクサーで治るの?」

「レッドは気づいちゃったか」

 レッドは少し顔を赤くしながら聞いてくる。綺麗な服に着替えながら答えると僕は大きなため息をついた。

「治さないの?」

「治るけど、治らないんだ」

「治らない?」

 レッドの疑問に答えると彼女は首を傾げる。

「あの呪いは一族にかけられているものなんだ。ノンナちゃん達に今もなおかけている者がいる。それを倒さないと少しすると呪いが復活しちゃうんだよ」

「なるほど、ラストエリクサーが無駄になるだけってことね」

 察しのいい彼女に頷いて答える。

「その呪いをかけている者っていうのはどこにいるの?」

「……倒したい?」

「倒したいわ。ダメなの?」

 レッドが握りこぶしを作りながら聞いてくる。僕は表情を歪めて聞き返すと彼女は当たり前と言わんばかりに応えた。僕の表情を見て首を傾げてくる彼女は可愛らしい。
 僕はなんでけげんな表情かというと、その魔物と戦いたくないからだ。まず、経験値が入らない。さらに報酬がもらえないし、戦利品ももらえない。そして、最大の難点がその呪いをかけてきている者だ。

「あと二度の防衛線をしないといけないんだ」

「え? あと二回戦わないといけないってこと?」

 ルドマンさんに早く武具を作ってほしいと思ったのはこのことだ。ルガーさん達兵士達とアドラーさん達冒険者、みんなの装備を強くして僕が戦わなくてもいいくらいの力をつけてほしかった。人死にを出さないようにね。

「でも、それなら簡単じゃない? 私とアドラーが」

「……そんな単純じゃないんだ」

 ただ倒すだけなら僕たちだけで1万のゾンビを倒して見せる。だけど違う……、プレイヤーがみんなこの強制クエストを嫌った理由がここにある。僕もトラウマになってる。

「彼女の一族があの中にいるんだ」

「え!? 一族って……両親?」

「いや、その前の一族だよ」

 僕の言葉に驚くレッド。
 おじいちゃんやその前のおじいちゃんやおばあちゃん。ノンナちゃんの一族に関わった者達の亡骸があのゾンビやグール達。そのゾンビやグールを探し出して倒す。そうすると親玉の、呪いをかけてきている張本人が出てくる。こいつが曲者だ。

「すべてのノンナちゃんの一族のゾンビやグールを倒すと現れるんだ。【グレーターリッチ】がね」

「グレーターリッチ!?」

 驚くレッドを他所に僕は考え込む。今の装備でグレーターリッチを倒せるだろうか? 僕らもすぐに装備を整えた方がいいかもしれないな。特にレッドの装備を、

「……ランカはなんでそんなことまで知っているの?」

「あ!?」

 レッドが僕を見つめて疑問を投げかけてくる。彼女を信頼するあまり、知ってることを全部話してしまった。まるでプレイヤー同士みたいに。

「か、勘だよ勘。だから信じなくていいよ~。さぁ~って食堂に行こう。みんなが待ってるよ~。あぁ~お腹空いた~」

「……」

 冷や汗をかきながら呟く僕。ジト目で見つめてくるレッドを他所に食堂に戻る。食事をしている間もずっと見てきてた。完全に怪しまれてる。どうしよう。
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