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第一章 ゲームの世界へ
第29話 開戦
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ドーシャさんに誘われて冒険者ギルドに併設された酒場で飲んだ。お酒の飲めないノンナちゃんは退屈してると思ったらアドラーさんに高い高いされて喜んでいた。
アスノ君はまたドーシャさんに飲まされていたな。今回はレッドもいたから賑やかだったな。
「ルガーさん達も新しい武具が行き渡ったな」
みんなと飲んだ次の日。街を歩く兵士さん達を見て呟く。準備は整った。
「ノンナちゃん。この手紙が落ちてたよ」
「お母さんからの手紙だ!」
マネーマネーから買った手紙を手渡す。すると嬉しそうに中身に目を通すノンナちゃん。手紙は白紙だったのに彼女がもった途端に文字が描かれていく。不思議な光景だな。
「……お母さんはもう」
「……」
僕は結末を知っている。悲しく呟くノンナちゃんを見ていられない。
「ゾンビだ! グールもいるぞ!」
城壁上から声が上がる。警報の鐘がならされて一斉に冒険者や兵士が城壁に集まる。
「わ、私のせい。私のせいで……」
声を聞いて涙を流すノンナちゃん。僕は彼女を抱きしめる。
「大丈夫だよノンナちゃん。君のせいじゃない。すぐに僕らが黙らせるから待っていて。さあ、行こうみんな」
「「はい」」おう」
ゾンビ大行進の二回目だ。今回は前回と違うぞ。親玉がいる。
「リッチだ」
城壁上に上って城壁に向かってくる大行進に目を向ける。ざっと見て前回の5倍、5000以上の量だ。その中央に紫に光る骨の魔物が見える。
魔法使いのローブに身を包んでいて怪しく目を光らせている。
「やあ、ランカ君」
「アドラーさん」
城壁上にみんなでいるとアドラーさんが声をかけてくる。大行進へと視線を向けるアドラーさんはため息をついた。
「また来るとはな。君の見立て通りなら、あれはリッチなのだろう。前のようにはいかんな」
「はい。リッチはゾンビ達をMPが続く限り作り続けます。ゾンビをいくら倒しても意味がないんです」
アドラーさんに答えると彼は顎を触りながら考え込む。
「ではあのリッチを倒せばいいんだな」
「はい」
リッチがあの群れの核となる存在。リッチを倒せばすべてのゾンビが霧散して消えていく。召喚された存在という設定何だろう。そのせいで経験値が入らないわけだ。まったく、迷惑だな~。
「リッチは僕とレッドが倒します」
「君の事だ。何か策があるのだろう。頼りにしている」
「ありがとうございます」
僕の提案を受け入れてくれるアドラーさん。冒険者ランクを上げていないのに信用してくれてる。ゲームだとランクがすべてだった。ランクが低いと不愛想とか普通だったから、なんか嬉しいな~。
「皆さんが前で戦っている間に後ろに回ります」
「なるほど、奇襲というわけか」
アドラーさんに説明するとポンと手を叩いて納得してくれる。リッチさえ倒してしまえば消えちゃうからね。アドラーさんがやればいいと思うんだけど、それじゃノンナちゃんの為にならない。
「君たちでは危険ではないか? 私が」
「ダメです。僕らがやります。アドラーさんはこの町に必要な人ですから」
アドラーさんの提案に首を横に振りながら答える。もっともな理由をつけてやめてもらうと彼は笑顔で僕の肩に手を置く。
「何を言っているんだ。君の方がこの町に必要な人じゃないか。君のおかげでオルコッドが活気づいている。知っているだろ?」
嬉しそうに話すアドラーさん。ルドマンさんを鍛えてあげただけだけど、それだけでみんなが元気になってくれた。確かに僕も気が付いてた。でも、守護者のアドラーさんほどじゃないと思うけどな。
「それでもですよ。僕らが適任です」
「はは、頑なだな。ではお言葉に甘えさせてもらうよ。レッドも一緒ならば安心感もますからな」
アドラーさんはそう言って城壁を下っていく。納得してくれたかな。
さて、レッドと二人で近くの森へ。森から回り込むようにいかないと気付かれるだろうから。
アスノ君達には申し訳ないけど、オルコッドに残ってもらう。経験値ももらえないし、危険を侵すメリットがないからね。死んでしまう事はないけど、人数は少ない方が奇襲は成功しやすい。
「ふふ、アスノ君泣いてたわよ?」
「はは……下手な魔物を相手にするよりも大変だよ」
ついてくるというアスノ君を説得して、レッドと共に近くの森にやってきた。揶揄うように言ってくるレッドはかなり楽しそうだ。
「相手はリッチだからね。装備が強いとはいえ危険」
「ふ~ん、大事だから連れてこなかったってわけね~」
僕の言葉を聞いてレッドがジト目を向けてくる。大事じゃないから彼女を連れてきたと思われたか? 単純に彼女なら強いし、こういう状況を多く経験してるから連れてきてるんだけどな。
「はぁ~、それで? 作戦は?」
僕が無言で歩いているとレッドが小さくため息をついて聞いてくる。
「一つハッキリさせておかないと危ないから言っておくね。リッチは倒さない」
「はぁ?」
レッドが呆れた声をあげる。それなるのもしょうがない。
リッチを倒さないとゾンビ達はいなくならないといってるのに倒さないなんておかしな話だもんな。
「僕はノンナちゃんを助けたいんだ」
「それがリッチを倒さないことに関係があるのね」
「そういうこと」
リッチがノンナちゃんをハッピーエンドにする鍵の一つだ。本来は絶対にハッピーにできない理由の一つでもある。
「レッドには邪魔されないように周りのゾンビの相手をしてほしいんだ」
「……分かった。任せて」
準備万端。あとはリッチ達が油断してくれれば僕らの勝利だ。
アスノ君はまたドーシャさんに飲まされていたな。今回はレッドもいたから賑やかだったな。
「ルガーさん達も新しい武具が行き渡ったな」
みんなと飲んだ次の日。街を歩く兵士さん達を見て呟く。準備は整った。
「ノンナちゃん。この手紙が落ちてたよ」
「お母さんからの手紙だ!」
マネーマネーから買った手紙を手渡す。すると嬉しそうに中身に目を通すノンナちゃん。手紙は白紙だったのに彼女がもった途端に文字が描かれていく。不思議な光景だな。
「……お母さんはもう」
「……」
僕は結末を知っている。悲しく呟くノンナちゃんを見ていられない。
「ゾンビだ! グールもいるぞ!」
城壁上から声が上がる。警報の鐘がならされて一斉に冒険者や兵士が城壁に集まる。
「わ、私のせい。私のせいで……」
声を聞いて涙を流すノンナちゃん。僕は彼女を抱きしめる。
「大丈夫だよノンナちゃん。君のせいじゃない。すぐに僕らが黙らせるから待っていて。さあ、行こうみんな」
「「はい」」おう」
ゾンビ大行進の二回目だ。今回は前回と違うぞ。親玉がいる。
「リッチだ」
城壁上に上って城壁に向かってくる大行進に目を向ける。ざっと見て前回の5倍、5000以上の量だ。その中央に紫に光る骨の魔物が見える。
魔法使いのローブに身を包んでいて怪しく目を光らせている。
「やあ、ランカ君」
「アドラーさん」
城壁上にみんなでいるとアドラーさんが声をかけてくる。大行進へと視線を向けるアドラーさんはため息をついた。
「また来るとはな。君の見立て通りなら、あれはリッチなのだろう。前のようにはいかんな」
「はい。リッチはゾンビ達をMPが続く限り作り続けます。ゾンビをいくら倒しても意味がないんです」
アドラーさんに答えると彼は顎を触りながら考え込む。
「ではあのリッチを倒せばいいんだな」
「はい」
リッチがあの群れの核となる存在。リッチを倒せばすべてのゾンビが霧散して消えていく。召喚された存在という設定何だろう。そのせいで経験値が入らないわけだ。まったく、迷惑だな~。
「リッチは僕とレッドが倒します」
「君の事だ。何か策があるのだろう。頼りにしている」
「ありがとうございます」
僕の提案を受け入れてくれるアドラーさん。冒険者ランクを上げていないのに信用してくれてる。ゲームだとランクがすべてだった。ランクが低いと不愛想とか普通だったから、なんか嬉しいな~。
「皆さんが前で戦っている間に後ろに回ります」
「なるほど、奇襲というわけか」
アドラーさんに説明するとポンと手を叩いて納得してくれる。リッチさえ倒してしまえば消えちゃうからね。アドラーさんがやればいいと思うんだけど、それじゃノンナちゃんの為にならない。
「君たちでは危険ではないか? 私が」
「ダメです。僕らがやります。アドラーさんはこの町に必要な人ですから」
アドラーさんの提案に首を横に振りながら答える。もっともな理由をつけてやめてもらうと彼は笑顔で僕の肩に手を置く。
「何を言っているんだ。君の方がこの町に必要な人じゃないか。君のおかげでオルコッドが活気づいている。知っているだろ?」
嬉しそうに話すアドラーさん。ルドマンさんを鍛えてあげただけだけど、それだけでみんなが元気になってくれた。確かに僕も気が付いてた。でも、守護者のアドラーさんほどじゃないと思うけどな。
「それでもですよ。僕らが適任です」
「はは、頑なだな。ではお言葉に甘えさせてもらうよ。レッドも一緒ならば安心感もますからな」
アドラーさんはそう言って城壁を下っていく。納得してくれたかな。
さて、レッドと二人で近くの森へ。森から回り込むようにいかないと気付かれるだろうから。
アスノ君達には申し訳ないけど、オルコッドに残ってもらう。経験値ももらえないし、危険を侵すメリットがないからね。死んでしまう事はないけど、人数は少ない方が奇襲は成功しやすい。
「ふふ、アスノ君泣いてたわよ?」
「はは……下手な魔物を相手にするよりも大変だよ」
ついてくるというアスノ君を説得して、レッドと共に近くの森にやってきた。揶揄うように言ってくるレッドはかなり楽しそうだ。
「相手はリッチだからね。装備が強いとはいえ危険」
「ふ~ん、大事だから連れてこなかったってわけね~」
僕の言葉を聞いてレッドがジト目を向けてくる。大事じゃないから彼女を連れてきたと思われたか? 単純に彼女なら強いし、こういう状況を多く経験してるから連れてきてるんだけどな。
「はぁ~、それで? 作戦は?」
僕が無言で歩いているとレッドが小さくため息をついて聞いてくる。
「一つハッキリさせておかないと危ないから言っておくね。リッチは倒さない」
「はぁ?」
レッドが呆れた声をあげる。それなるのもしょうがない。
リッチを倒さないとゾンビ達はいなくならないといってるのに倒さないなんておかしな話だもんな。
「僕はノンナちゃんを助けたいんだ」
「それがリッチを倒さないことに関係があるのね」
「そういうこと」
リッチがノンナちゃんをハッピーエンドにする鍵の一つだ。本来は絶対にハッピーにできない理由の一つでもある。
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