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第一章 ゲームの世界へ
第31話 甘酸っぱい
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「う~ひどいですよ、ししょ~。僕だって! 僕だって~……むにゃむにゃ」
ドーシャさんに掴まって冒険者ギルドに併設されている酒場に連行された。すでにアスノ君は泥酔状態。まだ未成年なのにお酒を飲んだのかと驚いたけど、実は飲んでいない。彼の飲み物はフルーツジュース、場の雰囲気とにおいだけで泥酔している。前回もそうだったんだよな。
「ふふ、本当に愛されてるねランカは」
「ははは、恥ずかしい」
アスノ君の寝言を聞いてレッドが揶揄ってくる。ノンナちゃんとアンナさんも来てくれたんだけど、二人で楽しそうに微笑む。
「またこうして平和な時間を過ごすことが出来るなんて……本当にありがとうございます」
「いえいえ、当たり前のことをしているだけですよ。それにまだお礼には早いですよ。ノンナちゃんの呪いもまだですしね」
アンナさんがお礼を言ってくる。でもまだ終わっていないんだよな。ノンナちゃんの呪いを終わらしてしまうと彼女のお父さんを救うことができなくなっちゃうからまだ治さない。クエストを途中で終わらせたらどうなるかもわからないしね。
「よ~、飲んでるかランカ~。飲んでなかったら私が口移しで~」
「わ~、やめてください!」
別の席で飲んでいたドーシャさんが乱入してきて口を突きつけてくる。ステータスでは勝っているはずなのに引きはがせない。
「やめなさいドーシャ。ランカは嫌がっているでしょ」
「じゃあ、あんたでいいわ」
「え!?」
レッドがドーシャさんを抑えるとドーシャさんがレッドに熱烈キッスを食らわせた。口移しでエールをレッドに注いでいく。美女と美女がキスをしてる、なんか見てはいけないものを見せられている気がして目を背けた。
「は、初めてなのに……」
口が離れると崩れ落ちるレッド。僕もしたことがない……逃げよう。
「ランカ~ってどこに行った~?」
ギルドの受付に裏に隠れた。ドーシャさんの声に恐怖を覚える。
「こら! ドーシャさん! みんなが怖がってるでしょ!」
「ミレド~。あんたにも飲ませてあげる~」
「にゃ!?」
僕を探し回るドーシャさんの餌食になるミレドさん。彼女を皮切りに次々と犠牲者が増えていく。あのアドラーさんもやられて涙を流してる。ドーシャさんは見境がないな。
「おはようランカ……」
「おはようレッド、災難だったね」
ドーシャさんの魔の手から逃れて朝を迎えた。ドーシャさんが酔いつぶれるまでギルドの外に避難していたおかげだ。僕の貞操は守られた。
レッドが悲しい表情で起きると僕と挨拶を交わす。
「師匠~、むにゃむにゃ」
「まだみんな寝てるね」
アスノ君の寝言にクスッと笑うレッド。ドーシャさんはもちろんのこと、ワッカさんやルッカさんも寝てる。僕とレッド以外はみんな起きてないな。
「……ランカは好きな人とかいるの?」
「え?」
顔を赤くさせて聞いてくるレッド。僕も思わず顔が熱くなっていく。
「私はね。いるよ……」
僕に背を向けて呟くレッド。僕は緊張して生唾を飲み込む。
「お兄ちゃんおしっこ~」
静寂をぶち破る声が聞こえて振り向くと、ノンナちゃんが眠そうに目を擦りながらお願いしてくる。
「私が連れてくよ」
「あ、ありがとうレッド」
楽しそうに微笑むレッドがノンナちゃんを連れて行く。レッドの好きな人か……僕だといいな。
「甘酸っぱいですね」
「あ、アンナさん!?」
レッドとノンナちゃんを見送っているとアンナさんが顔を赤くさせて言ってくる。全部みられてた?
「私と夫もそんな時期がありました」
「は、はぁ?」
驚いているとアンナさんが話し出す。
「夫、ノイシュはとても奥手で私からプロポーズをしたんですよ」
「そうなんですね」
アンナさんは嬉しそうに話してくれる。本当に嬉しそうに言うものだから、僕も嬉しくなって聞き入ってしまう。
「でも、付き合い始めて結婚しようって言ってくれたのはノイシュで。左手の薬指に嵌めるはずの指輪を右手の薬指にはめてきて。ふふ、あれは本当に笑ったな~」
本当に幸せそうに語るアンナさん。そんな幸せな時があったんだな。ゲームでしかしらないアンナさん達じゃ想像もできない。
「アンナさん。ノイシュさんは絶対に助けます。もちろん、ノンナちゃんも」
「ありがとうございますランカ様……。私が出来るお礼は限られていますが、なんでも命じてください。死霊術なら得意ですので」
「はは、そうでしょうね」
「ふふ、はい!」
アンナさんと顔を見合って笑う。死霊術に長けている人だって、分かっているから思わず笑ってしまった。リトルのところに拠点を作る予定だからアンナさんに治めてもらおうかな。いい案かもしれないな。
「ゾンビやスケルトンを作れる?」
「もちろん!」
「なるほど」
少し考えて提案すると大きく頷くアンナさん。それならニールキャニオンで採掘をしてくれたら助かるな。オリハルコンやアダマンタイトがほれたら最高だ。
「何だかワクワクしてきた」
ノンナちゃんのお父さんを救う前の下準備でワクワクしてしまう。装備を整えて万全を期すぞ!
ドーシャさんに掴まって冒険者ギルドに併設されている酒場に連行された。すでにアスノ君は泥酔状態。まだ未成年なのにお酒を飲んだのかと驚いたけど、実は飲んでいない。彼の飲み物はフルーツジュース、場の雰囲気とにおいだけで泥酔している。前回もそうだったんだよな。
「ふふ、本当に愛されてるねランカは」
「ははは、恥ずかしい」
アスノ君の寝言を聞いてレッドが揶揄ってくる。ノンナちゃんとアンナさんも来てくれたんだけど、二人で楽しそうに微笑む。
「またこうして平和な時間を過ごすことが出来るなんて……本当にありがとうございます」
「いえいえ、当たり前のことをしているだけですよ。それにまだお礼には早いですよ。ノンナちゃんの呪いもまだですしね」
アンナさんがお礼を言ってくる。でもまだ終わっていないんだよな。ノンナちゃんの呪いを終わらしてしまうと彼女のお父さんを救うことができなくなっちゃうからまだ治さない。クエストを途中で終わらせたらどうなるかもわからないしね。
「よ~、飲んでるかランカ~。飲んでなかったら私が口移しで~」
「わ~、やめてください!」
別の席で飲んでいたドーシャさんが乱入してきて口を突きつけてくる。ステータスでは勝っているはずなのに引きはがせない。
「やめなさいドーシャ。ランカは嫌がっているでしょ」
「じゃあ、あんたでいいわ」
「え!?」
レッドがドーシャさんを抑えるとドーシャさんがレッドに熱烈キッスを食らわせた。口移しでエールをレッドに注いでいく。美女と美女がキスをしてる、なんか見てはいけないものを見せられている気がして目を背けた。
「は、初めてなのに……」
口が離れると崩れ落ちるレッド。僕もしたことがない……逃げよう。
「ランカ~ってどこに行った~?」
ギルドの受付に裏に隠れた。ドーシャさんの声に恐怖を覚える。
「こら! ドーシャさん! みんなが怖がってるでしょ!」
「ミレド~。あんたにも飲ませてあげる~」
「にゃ!?」
僕を探し回るドーシャさんの餌食になるミレドさん。彼女を皮切りに次々と犠牲者が増えていく。あのアドラーさんもやられて涙を流してる。ドーシャさんは見境がないな。
「おはようランカ……」
「おはようレッド、災難だったね」
ドーシャさんの魔の手から逃れて朝を迎えた。ドーシャさんが酔いつぶれるまでギルドの外に避難していたおかげだ。僕の貞操は守られた。
レッドが悲しい表情で起きると僕と挨拶を交わす。
「師匠~、むにゃむにゃ」
「まだみんな寝てるね」
アスノ君の寝言にクスッと笑うレッド。ドーシャさんはもちろんのこと、ワッカさんやルッカさんも寝てる。僕とレッド以外はみんな起きてないな。
「……ランカは好きな人とかいるの?」
「え?」
顔を赤くさせて聞いてくるレッド。僕も思わず顔が熱くなっていく。
「私はね。いるよ……」
僕に背を向けて呟くレッド。僕は緊張して生唾を飲み込む。
「お兄ちゃんおしっこ~」
静寂をぶち破る声が聞こえて振り向くと、ノンナちゃんが眠そうに目を擦りながらお願いしてくる。
「私が連れてくよ」
「あ、ありがとうレッド」
楽しそうに微笑むレッドがノンナちゃんを連れて行く。レッドの好きな人か……僕だといいな。
「甘酸っぱいですね」
「あ、アンナさん!?」
レッドとノンナちゃんを見送っているとアンナさんが顔を赤くさせて言ってくる。全部みられてた?
「私と夫もそんな時期がありました」
「は、はぁ?」
驚いているとアンナさんが話し出す。
「夫、ノイシュはとても奥手で私からプロポーズをしたんですよ」
「そうなんですね」
アンナさんは嬉しそうに話してくれる。本当に嬉しそうに言うものだから、僕も嬉しくなって聞き入ってしまう。
「でも、付き合い始めて結婚しようって言ってくれたのはノイシュで。左手の薬指に嵌めるはずの指輪を右手の薬指にはめてきて。ふふ、あれは本当に笑ったな~」
本当に幸せそうに語るアンナさん。そんな幸せな時があったんだな。ゲームでしかしらないアンナさん達じゃ想像もできない。
「アンナさん。ノイシュさんは絶対に助けます。もちろん、ノンナちゃんも」
「ありがとうございますランカ様……。私が出来るお礼は限られていますが、なんでも命じてください。死霊術なら得意ですので」
「はは、そうでしょうね」
「ふふ、はい!」
アンナさんと顔を見合って笑う。死霊術に長けている人だって、分かっているから思わず笑ってしまった。リトルのところに拠点を作る予定だからアンナさんに治めてもらおうかな。いい案かもしれないな。
「ゾンビやスケルトンを作れる?」
「もちろん!」
「なるほど」
少し考えて提案すると大きく頷くアンナさん。それならニールキャニオンで採掘をしてくれたら助かるな。オリハルコンやアダマンタイトがほれたら最高だ。
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