46 / 57
第二章 支配地
第46話 支配地
しおりを挟む
「お帰りなさいませ! ランカ様!」
オルコッドで一日程お買い物を楽しんでニールキャニオンに帰ってきた。峡谷が無くなって、大きな赤土の城壁の前でリトルが迎えてくれる。城門を付ければ立派な城壁だよね……見栄えは悪いけど。
「ふむ、アンナさんや。アンデッドを少し貸してくれ、城壁をレンガ造りに見えるように加工する」
「え? 出来るの?」
「赤土は粘土質じゃからな。少し魔法で焼き入れれば今よりは幾分かましにできるぞ」
僕と同じように見栄えが良くないと思ったのかルドマンが城壁を加工してくれるみたいだ。アンナさんに僕からもお願いすると早速作業に取り掛かってくれる。
「ランカ様! 果物もたくさんとれていますよ」
「リトル、果物はみんなで自由に食べていいよ。そんなになくてもお金になるって分かったから」
「そ、そうなのですか?」
まさかミレドさんに内訳を聞くとモモが一番高価な果物だった。寿命が延びると言われている貴族の食べ物として知られているらしい。昔話で聞いたような話だよな。
「我々にはもったいないものですが嬉しいです。みなも喜びます。ありがとうございます!」
リトルは涙を流して深くお辞儀してくれる。ワイバーンなのに礼儀作法がしっかりしてる子だな。
「あ、あのランカさん? その子は魔物ですよね?」
「ああ、アビゲール。そうだよ。僕の友達」
リトルと話しているとアビゲールが馬車から出てきて聞いてくる。答えを聞くと少し戸惑ってる。魔物と仲良くできるなんて知らないんだろうな。僕も知らなかったんだから。
「魔物なんですよね?」
「うん、でもいい魔物だよ」
「……」
目隠しで見えないけど、殺意がにじみ出てきてる様に感じるアビゲール。リトルには彼女にあまり近づかないように言っておこう。と、その前にアビゲールにも言い聞かせないと。
「魔物に恨みを持つのは仕方ない事だと思うけど、いい魔物もいるって言う事は覚えておいて」
「……」
「対話が出来れば無駄な犠牲は生まれない。まずは対話だよアビゲール」
「……(知らないくせに)」
アビゲールは僕の言葉を聞いて無言で頷くと城壁の方へと歩いていった。うっすらと聞こえた声に悲しくなる。
「君以上に君を知ってるよ」
彼女以上に歴史を知ってる。魔物に家族を奪われた人は多い。それを無くすことも今の僕の使命だと思ってる。
それを根本から無くすにはリトルのような魔物の味方が必要だ。対話のできる魔物、セリスもまたその一人。
「セリスを呼ぶの?」
「ん、依頼だからね」
「危険だと思うよ。アビゲールの本心は」
レッドが心配して話しかけてくる。彼女の心配もわかる。
アビゲールから依頼を受けた時に話した時は理解してくれたと思ったけど、何日かしてすぐに彼女の憎しみが復活してるのが分かった。
魔物への憎悪、街道の魔物は僕らが倒してきたけど、その魔物に向ける殺意が漏れていた。すぐにでも飛び出して僕らの代わりに倒したいといった雰囲気だった。
「いざとなったらこれを使うから安心して」
「箱?」
レッドに装飾された箱を見せる。オルコッドでの買い物は服だけじゃない。マネーマネーでも買い物をしてきた。【装飾された箱】と言われるアイテムでオルゴールになっている。
ノンの時に使った【手紙】のようにある対象のキャラクターに対して効果が発揮される。【装飾された箱】は睡眠効果を付与させる。アビゲールは乳飲み子の頃に孤児となった。家族がいたころから家族の音楽を聴いていて、孤児院でも音楽を聴いていた。
そのため、オルゴールの音楽を聴くと心が落ち着いて目を瞑ってしまう。まあ、それは僕の憶測、【装飾された箱】の本来の効果は【子供】に対して効果を及ぼす。アスノ君やノンにも効果が及ぼされるだろう。音の聞こえる範囲にいると睡眠状態になってしまうはずだ。
「……ほんとランカって凄いわね」
【装飾された箱】の効果を説明すると顔を引きつらせて褒めてくれる。改めて考えると恐ろしい効果だな。
「師匠! レベル上げしましょ!」
「おっと丁度いいタイミング」
レッドと話しているとアスノ君が元気よく馬車から降りてくる。【装飾された箱】を開けた。オルゴールが動き出して静かな音色を奏で始める。
「あれ? 師匠……。ス~ス~」
「ちゃんと動くな。ってレッド!?」
アスノ君が眠るのを確認して【装飾された箱】を閉じる。効果がしっかりと発揮されるのを確認して頷いているとレッドが抱き着いてきた。どうしたとかと思って抱き支えると彼女の寝息が聞こえてくる。
「は、ははは。確かに彼女もまだまだ子供だけどさ……」
レッドも大人とは言えないけど、まさか子ども扱いだとは思わなかった。僕が眠らないんだから効かないと思ったけど、ゲームのキャラクターはしっかりと年齢で区別されてるみたいだな。20歳か18歳で分けられているのかもしれない。という事は大体のキャラクターに効果を及ぼすな。中世ヨーロッパの時代背景だから、みんな若いからな~。
絶対に人に取られないようにしないと、悪用するような奴に取られたらたまったものじゃないぞ。
「だ、大丈夫か? どうしたんだよ?」
「ああ、ドーシャさん。丁度良かった二人とも眠かったのが限界に来たみたいで、馬車に寝かせてあげてください」
「わ、わかった」
ドーシャさん達が駆けつけてきてくれる。レッドとアスノ君を任せると城壁の中へと向かう。誰も城壁の中にはいない。僕だけだ。
「セリス」
彼女の名前を呼ぶと僕の前に魔法陣が描かれる。そして、魔法陣から彼女が姿を現した。
オルコッドで一日程お買い物を楽しんでニールキャニオンに帰ってきた。峡谷が無くなって、大きな赤土の城壁の前でリトルが迎えてくれる。城門を付ければ立派な城壁だよね……見栄えは悪いけど。
「ふむ、アンナさんや。アンデッドを少し貸してくれ、城壁をレンガ造りに見えるように加工する」
「え? 出来るの?」
「赤土は粘土質じゃからな。少し魔法で焼き入れれば今よりは幾分かましにできるぞ」
僕と同じように見栄えが良くないと思ったのかルドマンが城壁を加工してくれるみたいだ。アンナさんに僕からもお願いすると早速作業に取り掛かってくれる。
「ランカ様! 果物もたくさんとれていますよ」
「リトル、果物はみんなで自由に食べていいよ。そんなになくてもお金になるって分かったから」
「そ、そうなのですか?」
まさかミレドさんに内訳を聞くとモモが一番高価な果物だった。寿命が延びると言われている貴族の食べ物として知られているらしい。昔話で聞いたような話だよな。
「我々にはもったいないものですが嬉しいです。みなも喜びます。ありがとうございます!」
リトルは涙を流して深くお辞儀してくれる。ワイバーンなのに礼儀作法がしっかりしてる子だな。
「あ、あのランカさん? その子は魔物ですよね?」
「ああ、アビゲール。そうだよ。僕の友達」
リトルと話しているとアビゲールが馬車から出てきて聞いてくる。答えを聞くと少し戸惑ってる。魔物と仲良くできるなんて知らないんだろうな。僕も知らなかったんだから。
「魔物なんですよね?」
「うん、でもいい魔物だよ」
「……」
目隠しで見えないけど、殺意がにじみ出てきてる様に感じるアビゲール。リトルには彼女にあまり近づかないように言っておこう。と、その前にアビゲールにも言い聞かせないと。
「魔物に恨みを持つのは仕方ない事だと思うけど、いい魔物もいるって言う事は覚えておいて」
「……」
「対話が出来れば無駄な犠牲は生まれない。まずは対話だよアビゲール」
「……(知らないくせに)」
アビゲールは僕の言葉を聞いて無言で頷くと城壁の方へと歩いていった。うっすらと聞こえた声に悲しくなる。
「君以上に君を知ってるよ」
彼女以上に歴史を知ってる。魔物に家族を奪われた人は多い。それを無くすことも今の僕の使命だと思ってる。
それを根本から無くすにはリトルのような魔物の味方が必要だ。対話のできる魔物、セリスもまたその一人。
「セリスを呼ぶの?」
「ん、依頼だからね」
「危険だと思うよ。アビゲールの本心は」
レッドが心配して話しかけてくる。彼女の心配もわかる。
アビゲールから依頼を受けた時に話した時は理解してくれたと思ったけど、何日かしてすぐに彼女の憎しみが復活してるのが分かった。
魔物への憎悪、街道の魔物は僕らが倒してきたけど、その魔物に向ける殺意が漏れていた。すぐにでも飛び出して僕らの代わりに倒したいといった雰囲気だった。
「いざとなったらこれを使うから安心して」
「箱?」
レッドに装飾された箱を見せる。オルコッドでの買い物は服だけじゃない。マネーマネーでも買い物をしてきた。【装飾された箱】と言われるアイテムでオルゴールになっている。
ノンの時に使った【手紙】のようにある対象のキャラクターに対して効果が発揮される。【装飾された箱】は睡眠効果を付与させる。アビゲールは乳飲み子の頃に孤児となった。家族がいたころから家族の音楽を聴いていて、孤児院でも音楽を聴いていた。
そのため、オルゴールの音楽を聴くと心が落ち着いて目を瞑ってしまう。まあ、それは僕の憶測、【装飾された箱】の本来の効果は【子供】に対して効果を及ぼす。アスノ君やノンにも効果が及ぼされるだろう。音の聞こえる範囲にいると睡眠状態になってしまうはずだ。
「……ほんとランカって凄いわね」
【装飾された箱】の効果を説明すると顔を引きつらせて褒めてくれる。改めて考えると恐ろしい効果だな。
「師匠! レベル上げしましょ!」
「おっと丁度いいタイミング」
レッドと話しているとアスノ君が元気よく馬車から降りてくる。【装飾された箱】を開けた。オルゴールが動き出して静かな音色を奏で始める。
「あれ? 師匠……。ス~ス~」
「ちゃんと動くな。ってレッド!?」
アスノ君が眠るのを確認して【装飾された箱】を閉じる。効果がしっかりと発揮されるのを確認して頷いているとレッドが抱き着いてきた。どうしたとかと思って抱き支えると彼女の寝息が聞こえてくる。
「は、ははは。確かに彼女もまだまだ子供だけどさ……」
レッドも大人とは言えないけど、まさか子ども扱いだとは思わなかった。僕が眠らないんだから効かないと思ったけど、ゲームのキャラクターはしっかりと年齢で区別されてるみたいだな。20歳か18歳で分けられているのかもしれない。という事は大体のキャラクターに効果を及ぼすな。中世ヨーロッパの時代背景だから、みんな若いからな~。
絶対に人に取られないようにしないと、悪用するような奴に取られたらたまったものじゃないぞ。
「だ、大丈夫か? どうしたんだよ?」
「ああ、ドーシャさん。丁度良かった二人とも眠かったのが限界に来たみたいで、馬車に寝かせてあげてください」
「わ、わかった」
ドーシャさん達が駆けつけてきてくれる。レッドとアスノ君を任せると城壁の中へと向かう。誰も城壁の中にはいない。僕だけだ。
「セリス」
彼女の名前を呼ぶと僕の前に魔法陣が描かれる。そして、魔法陣から彼女が姿を現した。
80
あなたにおすすめの小説
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ
ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた
いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう
その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った
だけど仲間に裏切られてしまった
生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい
そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる