ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
49 / 57
第二章 支配地

第49話 安心

しおりを挟む
「ランカ! 生き返って!」

「!?」

 意識が戻ると声が聞こえて口が塞がれる。なぜかレッドがキスしてきてる。僕は驚いて目を見開く。

「レッドさん! 師匠が蘇りました!」

「き、奇跡じゃ!」

 アスノ君とルドマンが大喜びで抱き着いてくる。そ、そんなことよりもレッドの唇が……。

「お兄ちゃんよかった~!」

「ランカ様! 息をしていなくて心配していました」

 ノンとアンナさんが声をあげる。彼女たちだけじゃない。みんな僕の心配をしてくれていたみたいだ。凄く嬉しいんだけど。レッドの事が頭から離れない。なんでキスを?

「人工呼吸というものをさせていただきました。とても美味しくいただきましたランカ様」

「人工呼吸? セリスが?」

 セリスの声に首を傾げる。ってことは彼女もキスをしてきたってことなのか!? 
 でも、なんでキスをされていたのかは分かった。息をしてなかったから人工呼吸を知っていたセリスがやってレッドもやってくれたんだ。

「レッドは?」

「ふふ、あの小娘は恥ずかしそうに城壁の外に行きましたよ。うぶな子ですね」

 レッドがいなくなっていることに気が付いて声をあげるとセリスが教えてくれた。僕はすぐに追いかける。

「レッド!」

「あ、ランカ」

 涙を拭っていたレッド。僕の声で気が付いて真っ赤な顔で抱き着いてくる。

「ランカ良かった。また私は大切なものを無くすところだった」

「レッド……」

 抱きしめる力を強めながら呟くレッド。そうか、彼女は僕を弟として見てる。”また”彼女を悲しませてしまう所だったってわけか。そりゃ必死になって人工呼吸するよな~。

「怪我をしてるわけでもなかったからエリクサーも無駄になっちゃうと思って必死で。セリスが人工呼吸っていうのを聞いて」

「な、なるほど」

 レッドが必死に説明してくれる。顔がどんどん赤くなって言って耳まで真っ赤っか。なんか可愛いな。

「ありがとうレッド」

「……ううん。役に立てなくてごめんね」

「いや、レッドは役にたってるよ」

 お礼を言うと俯くレッド。彼女が役に立ってなかったら僕だって役に立ってない。

「とにかく、みんなの所に戻ろう」

「うん」

 レッドの手を取って城壁の中へ。

「敵がまさか味方にいたとはね」

「教会が敵か」

 ドーシャさんとワッカさんの声に振り向くとそこには縛られたアビゲールが。

「敵じゃないですよ! ドーシャさん、ワッカさん。早く縄を解いてあげてください」

「はぁ~? 何言ってんだよランカ。あんたやあの嬢ちゃんがやられただろ?」

 嬢ちゃん? ああ、セリスのことか。彼女の事を話していないからただやられただけだと思ってるんだな。

「ってレッドとお手て繋いじゃって妬けるね~。ランカ、私の手も握ってほしいな~」

「「あっ!?」」

 ドーシャさんに揶揄われて手を離す。ついつないだままにしてしまった。変に思われてしまったら嫌われちゃう、気をつけないとな。

「僕の中の天使が悪さをしてしまったみたいですね。すみませんでした」

「アビゲール、君のせいじゃないよ。それよりも孤児院の話をしよ」

「え?」

 アビゲールを救う話を進める。彼女の守りたいものをすべてここに連れてくる。
 セントラルを敵に回しても勝てるように準備しないといけないな。

「僕はここに町を作ろうと思ってるんだ」

「ええ!?」

 驚くアビゲール。彼女だけじゃなくてみんな驚いてるな。

「孤児院を街の中に作ってそこに住んでもらおうと思うんだ」

「で、でも家なんてどこにも」

「だからこれから作るんだ。今の孤児院じゃ安心して子供たちを守れないでしょ?」

 僕の声に頷いて答えるアビゲール。納得したように頷いているけど、不思議そうに僕を見つめてくる。

「何でも知ってるんですねランカさんは」

 アビゲールは口角をあげてそういうと目隠しを取る。虹色に輝く瞳が綺麗でつい見惚れてしまう。決意めいた視線で見つめてくる。

「すみません。私の感じたものはすべて教会の者達に知られてしまいます。私はあなたの仲間にはなれません」

「……知ってるよ。でも必ず救ってあげるからね」

「ほんとに不思議な人ですね」

 話ながら目隠しを切り破るアビゲール。あの目隠しは魔道具としての性能も有していたみたいだ。
 一瞬で彼女の姿が消える。これは町やホームに飛べる魔道具だな。確か名前は【帰紙(キシ)】だ。帰紙を目隠しに使っていたのか、これはゲームの設定でも知らなかったな。

「あの子は大丈夫なの?」

「今のところは大丈夫だよ。それよりも準備が整ったら王都に行くよ。レッド、手伝ってくれる?」

「もちろん、何でも言って!」

 心配するレッドにお願いすると元気に答えてくれる。何でもなんていわれるとお願いしたくなってしまうけど、そこは無言で通したぞ。レッドは僕に特別な感情を持っているけど、それは弟に似てるっていう特別な感情だ。それに胡坐をかいて甘えちゃだめだ。

「ステファンに知らせても大丈夫かしら?」

「ああ、第一騎士団長の。手伝ってもらえるとありがたいな」

 ステファンは王都騎士団の団長の名だな。人柄もよくて平民にも優しいいい人のはずだ。あの人が仲間になってくれたらありがたいな。

「武具調査の結果も知らせてあるから、今頃王都でも生産者のレベル上げをしているんでしょうね」

 レッドが感慨深く呟く。そうか、彼が王都で指揮をとってくれてるのか。それなら安心だな。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...