異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 新しい世界

第36話 二度目のサヨナラ

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「ジェラル!」

 ブレイドを急かして声をあげる。兵士の剣はジェラルの腕を切りつけている。太い腕のおかげで欠損までは行かないが半分まで刃が届いている。

「武器を納めよといったであろう! 王の命に背くか!」

「へ、へへ。ゴブリンジェネラルを俺が仕留めた」

 ジェラルに刃を落とした兵士、目が虚ろの兵士に肉薄するゼックウ様。胸ぐらを掴んでも正気に戻らない。

「ジェラル!」

「え、エルク様。すみません」

 凶刃に倒れるジェラル。ブレイドと一緒に支えると謝ってくる。

「だ、大丈夫だよ。すぐに治す」

 光の球を作り出して患部に当てる。思ったよりも深い傷だ。血がとめどなく流れてくる。

「エルク様。多分無理だ。分かるんです。無駄なことはやめて聞いて下さい」

「やめないよ!? 何を言ってるんだ、僕に無理なことなんてないよ」

 ジェラルが諦めの声をあげて微笑む。光の球をいくら重ねても傷はふさがらない。流れる血も戻らない。

「我らはこの世界に嫌われていると思っていました。あなたに会うまでは」

「……」

 ジェラルは苦しい中、声を紡ぐ。

「人の中にもあなたのように魔物に心を開く方がいる。とても嬉しかった。死ぬ前にあなたと会えて、話せて良かった……王をお願いいたします」

 ジェラルは最後の言葉を言い終わると目を閉じた。

「これが最後なんて僕は許さない」

 ジェラルを抱き上げて掲げる。

「な、何をするつもりじゃエルク!」

「こんな最後は認めない! この子達は殺させない!」

 ゼックウ様の声に答えながら無数の光の球を作り出す。
 光の球をすべてジェラルの体に集める。何十何百の光の球が流星の様に彼の体に集まり、煌々と光を放つ。

「こ、この光はまさか!?」

「死なせないよジェラル!【リザレクション】」

 お母さんの本から学んだ光魔法の頂点【リザレクション】。死者をよみがえらせる魔法だ。唱えられた人はいないと語り継がれている魔法。MPの消費がすさまじいからだろうな。凄い力が抜ける。
 切れかかった腕、血。その全てがジェラルの体に集まっていき、すべてが元に戻って行く。

「ん? ど、どうなって……エルク様?」

 地面にジェラルを下ろすと驚いた表情で僕を見つめてくる。

「ふふ、あんなすぐに諦めちゃダメだよジェラル」

「え、エルク様」

 ジェラルの頭を撫でてあげると彼は嬉しそうに涙を流す。

「レード様、ゼックウ様。この子達をお願いしますね。それとお父さん達のことも」

 ブレイドとジェラルに触れて二人に声をあげた。

「……声が聞こえたか」

「はい」

 ゼックウ様の問いかけに頷いて答える。
 リザレクションと僕が唱えた刹那の瞬間、はっきりと聞こえた。『別れをしなさい』と往年の男性の声が聞こえてきた。それが精霊の地への合図だと直感で気がついた。

「はは、妹達が生まれる時に居られないと思うと残念です」

「そうじゃな……」

 声をもらすとゼックウ様が悲しそうに頷いてくれた。

「あ、ロトナやネイアさんやリッカさん、それにミアちゃんにもよろしく言っておいてください。大丈夫だって」

「分かっておる。儂と同じとなると10年は帰ってこれんじゃろうな。儂が精霊の地に行った時は30歳じゃったがな」

 冒険者のみんなとの別れも悲しいな。それにミアちゃんとの別れも。

「あ! 爵位の話は」

「分かってる。君のお父さんに爵位をつける」

 爵位をもらうって言っていたのにどっかにいっちゃったら出来ないもんな。レード様は分かっててくれたみたい。

「お願いしますレード様。お父さんには謝っておいてください」

「ふんっ。ディアには良いことかもしれん。それなりの立場に居たもののくせにいつまでも子供で」

「はは、ほんとそうですね。でも、お父さんもお母さんも最高の両親でしたよ」

 前世の親父と比べたら雲泥の差だ。

「そろそろ時間みたい。じゃあねブレイド、ジェラル。あっ!? 一応言っておくけれど……僕の友達を傷つけたら僕が帰ってきた時覚えておいてね」

「ひぃ!?」

 ブレイドとジェラルの頭を一撫でして兵士達へと睨みを利かせる。ついでにジェラルを傷つけた男に電撃の球を張り付けた。静電気程度の電撃だって言うのにすっごい驚いてる。面白いな。

「はは、あれみて、凄い怖がってる」

「儂も少ししたらそちらに行く」

「そうなんですか? 僕を心配してくるならいいですよ来なくて」

「可愛くないガキじゃな。まったく、お前はディアの子じゃ」

「はは、嬉しいです。じゃあ、行ってきます」

 僕の言葉を最後に風景が一瞬で真っ暗な空間に変わった。暗いのにずっと先が不思議と見える。
 
「あなたが声をかけてくれた人?」

 ずっと先に見える往年の男性。自分の身長よりも長い白い髭を撫でながら僕を見つめてきてる。

「そうじゃよエルク」

「!? いつの間に!?」

 暗闇のずっと先にいたのに一瞬で僕の後ろに立ってるお爺さん。驚いて飛びのくとお爺さんは感心するように口笛を吹いた。

「この”時の空間”でそれだけ動けるとは感心感心」

「”時の空間”?」

 お爺さんはそういって座禅をくんだ。

「さあ、私の前で同じように座禅を組みなさい」

 不思議に思いながらもお爺さんに言われるまま座禅を組む。目を瞑ると思い出したくもない過去の記憶が呼び覚まされる。
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