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第1章 成長
第22話 レイブン
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「はぁ~、疲れた……」
嫌なものばかりを見せられてラッセルの家を出る。ビルさんに任せていれば大丈夫そうだ。
なんで彼が目覚めたのかは、話を聞かせてもらった。エルフの奴隷さんにホの字だったみたいで、大事にしてあげたかったとか。でも、別にお嫁さんがいるらしいんだよね。……まあいい人になってくれればなんでもいいんだけど。
奴隷の改善は前から声を上げていたみたいで、ラッセルも言ってた。
初めて会った時はダメな大人だと思っていたけど、ダメだと分かっていて建前でやっていた人だったみたい。
まあ、それでもダメだけどね。
「ただいま~」
ネネさんの宿屋に帰ってくる。食事のいい匂いが迎えてくれてお腹がぐ~となる。
「いい匂い~」
『お帰りなさ~い』
匂いに誘われて食堂にやってくるとみんなが迎えてくれる。黒髪の少女は綺麗な黒いワンピースを着てる。黒髪に白い肌、そして黒ワンピース。わかってる人がいるみたいね。
「どうだい? 昔の私の服だけど、丁度いいサイズがあったよ」
「ええ!? ネネさんの昔の服!?」
わかってる人はネネさんだった。あんなにスラッとした服……今のネネさんからは想像もできない。
「昔は綺麗で可愛かったな~」
「なんだいあんた? 今は可愛くないってか?」
「何言ってんだよ! 今は可愛いんじゃなくて綺麗が増したんだよ」
「ふんっ、口が上手いね~。許してあげるよ」
トトさんも帰ってきていたみたいで愚痴をこぼしてる。ネネさんが睨みつけるのを口で誤魔化してる。
屋台で鍛えた話術が光ってるな~。ホッと胸を撫でおろすトトさん、いい顔してる。
「ファム様。私のご主人様になってください」
「あ、その話ね」
黒髪の少女が綺麗になって私に首輪を手渡してくる。私はそれを首を振ってこたえる。
「ラッセルに話をつけてきた。あなたを私の物にするつもりはない」
「え? 困る。ラッセル様の命令」
「大丈夫。これからは自由だよ」
この子の処遇もちゃんと話した。『奴隷にするなり自由にするなり、自由にしろ』とラッセルに言われた。ビルさんも納得してくれた。
この子は街道に捨てられていた子らしい。タダで手に入れた赤ん坊をここまで育ててアサシンにしようとしてた。育ての親になるんだろうけど、ラッセルは愛を持っていなかったみたい。ホントに悲しい。
「自由? 自由ってなに?」
「自分で考えてやりたいことをやるの。お金を稼いで食べたいものを食べれるんだよ」
「……」
少女が首を傾げる。私の言葉に彼女は考えられないみたいで無言で俯く。
「あなた5歳くらい?」
「たぶん6歳。ラッセル様に拾われたのが6年前って言ってた」
私と背丈が変わらない少女。同い年だと思ったら1歳上だった。
「ファム。流石にもう一人は働かせられないよ。仕事がない」
「そうですよね」
ラッセルの元に返すのも可哀そうだと思ってしまった私は、ネネさんを見つめた。すると彼女は小声でそう言ってくる。
今でも3人を働かせてもらってる。これ以上は望めない。
「やりたいこと……。私、訓練してくれた人に言われた。才能あるって。冒険者やってみたい」
「「え!?」」
少女はそう言ってニッコリと笑う。その言葉でラッドと顔を見合う。
「魔物と戦ったりできるのか?」
「うん。ゴブリンは3歳の時に倒したことある。初めて稼いだのゴブリン」
「へ、へ~」
ラッドが質問すると驚きの答えが返ってきた。ゴブリンを3歳の時に倒したのか。凄い子だな~。
でも、それだけ壮絶な人生をおくってきたんだろう。食事も満足にもらえなくて3歳で魔物を倒しているんだから。
「ファム様には勝てない。素手で魔物は倒せない」
『え?』
少女はなぜかそんなことを口走る。私は大きく手を叩いて誤魔化す。
「あ~、あああ~。えっと? あなたの名前は何ですか~?」
「私? 私の名前は一番。一番才能があるって言われてつけられた」
「……」
誤魔化して聞いた名前はとても悲しい理由でついた名前だった。本当にラッセルは愛をもって接していなかったんだな。
「ははは、俺達とほとんど一緒だな」
「うん! ナナとムムとも同じ~」
少女の自己紹介にラッドとナナちゃんが共感して声を上げる。
みんな親からの愛を知らない子達。だけど、みんな優しくて人を敬える子達。
「一番じゃ言いにくいよラッド兄さん」
「あ~、そうだな~。それじゃ名前を考えよう。ってファムがつけるべきじゃないか? ”ファム様”なんだから」
「ちょっとやめてよね」
ユマ君が声を上げるとラッドが同意しながら私をからかってくる。
様なんていうガラじゃない。でも、名前は大切だよね。
「黒い髪で黒い瞳、でも力強いっか」
痩せこけて居ても生きる意志を感じる瞳。私は少女を見つめて一生懸命考える。
「レイブン……。いや、女の子っぽくないか」
「レイブン! カッコいい! それほしい!」
私の思いついた声に彼女が大いに反応を示す。カッコいいけど、女の子っぽくない。なんだか私の黒歴史になりそうなんだけど。
「私レイブン! よろしくお願いします!」
「おいらはドンタ! よろしく~」
レイブンは名前に喜んでみんなに自己紹介をしてる。嬉しいような悲しいような。複雑な気分。
子供の名づけとかってこんなに難しいんだな~。前世はそんなに考えずによしおとか、かずおとかにしていたけど、ヨーロッパの名前となると難しくなる。
レイブンは大喜びしてくれてる。彼女の喜ぶ姿を見ると私の悩みなんてなくなってしまうな~。
嫌なものばかりを見せられてラッセルの家を出る。ビルさんに任せていれば大丈夫そうだ。
なんで彼が目覚めたのかは、話を聞かせてもらった。エルフの奴隷さんにホの字だったみたいで、大事にしてあげたかったとか。でも、別にお嫁さんがいるらしいんだよね。……まあいい人になってくれればなんでもいいんだけど。
奴隷の改善は前から声を上げていたみたいで、ラッセルも言ってた。
初めて会った時はダメな大人だと思っていたけど、ダメだと分かっていて建前でやっていた人だったみたい。
まあ、それでもダメだけどね。
「ただいま~」
ネネさんの宿屋に帰ってくる。食事のいい匂いが迎えてくれてお腹がぐ~となる。
「いい匂い~」
『お帰りなさ~い』
匂いに誘われて食堂にやってくるとみんなが迎えてくれる。黒髪の少女は綺麗な黒いワンピースを着てる。黒髪に白い肌、そして黒ワンピース。わかってる人がいるみたいね。
「どうだい? 昔の私の服だけど、丁度いいサイズがあったよ」
「ええ!? ネネさんの昔の服!?」
わかってる人はネネさんだった。あんなにスラッとした服……今のネネさんからは想像もできない。
「昔は綺麗で可愛かったな~」
「なんだいあんた? 今は可愛くないってか?」
「何言ってんだよ! 今は可愛いんじゃなくて綺麗が増したんだよ」
「ふんっ、口が上手いね~。許してあげるよ」
トトさんも帰ってきていたみたいで愚痴をこぼしてる。ネネさんが睨みつけるのを口で誤魔化してる。
屋台で鍛えた話術が光ってるな~。ホッと胸を撫でおろすトトさん、いい顔してる。
「ファム様。私のご主人様になってください」
「あ、その話ね」
黒髪の少女が綺麗になって私に首輪を手渡してくる。私はそれを首を振ってこたえる。
「ラッセルに話をつけてきた。あなたを私の物にするつもりはない」
「え? 困る。ラッセル様の命令」
「大丈夫。これからは自由だよ」
この子の処遇もちゃんと話した。『奴隷にするなり自由にするなり、自由にしろ』とラッセルに言われた。ビルさんも納得してくれた。
この子は街道に捨てられていた子らしい。タダで手に入れた赤ん坊をここまで育ててアサシンにしようとしてた。育ての親になるんだろうけど、ラッセルは愛を持っていなかったみたい。ホントに悲しい。
「自由? 自由ってなに?」
「自分で考えてやりたいことをやるの。お金を稼いで食べたいものを食べれるんだよ」
「……」
少女が首を傾げる。私の言葉に彼女は考えられないみたいで無言で俯く。
「あなた5歳くらい?」
「たぶん6歳。ラッセル様に拾われたのが6年前って言ってた」
私と背丈が変わらない少女。同い年だと思ったら1歳上だった。
「ファム。流石にもう一人は働かせられないよ。仕事がない」
「そうですよね」
ラッセルの元に返すのも可哀そうだと思ってしまった私は、ネネさんを見つめた。すると彼女は小声でそう言ってくる。
今でも3人を働かせてもらってる。これ以上は望めない。
「やりたいこと……。私、訓練してくれた人に言われた。才能あるって。冒険者やってみたい」
「「え!?」」
少女はそう言ってニッコリと笑う。その言葉でラッドと顔を見合う。
「魔物と戦ったりできるのか?」
「うん。ゴブリンは3歳の時に倒したことある。初めて稼いだのゴブリン」
「へ、へ~」
ラッドが質問すると驚きの答えが返ってきた。ゴブリンを3歳の時に倒したのか。凄い子だな~。
でも、それだけ壮絶な人生をおくってきたんだろう。食事も満足にもらえなくて3歳で魔物を倒しているんだから。
「ファム様には勝てない。素手で魔物は倒せない」
『え?』
少女はなぜかそんなことを口走る。私は大きく手を叩いて誤魔化す。
「あ~、あああ~。えっと? あなたの名前は何ですか~?」
「私? 私の名前は一番。一番才能があるって言われてつけられた」
「……」
誤魔化して聞いた名前はとても悲しい理由でついた名前だった。本当にラッセルは愛をもって接していなかったんだな。
「ははは、俺達とほとんど一緒だな」
「うん! ナナとムムとも同じ~」
少女の自己紹介にラッドとナナちゃんが共感して声を上げる。
みんな親からの愛を知らない子達。だけど、みんな優しくて人を敬える子達。
「一番じゃ言いにくいよラッド兄さん」
「あ~、そうだな~。それじゃ名前を考えよう。ってファムがつけるべきじゃないか? ”ファム様”なんだから」
「ちょっとやめてよね」
ユマ君が声を上げるとラッドが同意しながら私をからかってくる。
様なんていうガラじゃない。でも、名前は大切だよね。
「黒い髪で黒い瞳、でも力強いっか」
痩せこけて居ても生きる意志を感じる瞳。私は少女を見つめて一生懸命考える。
「レイブン……。いや、女の子っぽくないか」
「レイブン! カッコいい! それほしい!」
私の思いついた声に彼女が大いに反応を示す。カッコいいけど、女の子っぽくない。なんだか私の黒歴史になりそうなんだけど。
「私レイブン! よろしくお願いします!」
「おいらはドンタ! よろしく~」
レイブンは名前に喜んでみんなに自己紹介をしてる。嬉しいような悲しいような。複雑な気分。
子供の名づけとかってこんなに難しいんだな~。前世はそんなに考えずによしおとか、かずおとかにしていたけど、ヨーロッパの名前となると難しくなる。
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