ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章 成長

第46話 奴隷商の主

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「あ、ファム様。待っていましたよ」

「ビル? どうしたの冒険者ギルドの前で」

 レナリスさんと試合をして次の日。何度目かの薬草の納品で冒険者ギルドにやってくると、キルドの前でビルが迎えてくれる。
 ラッドとレイブンには先に冒険者ギルドに入っていてもらった。ここからは大人の話だから。

「教会での話をしてくるようにラッセルさんに言われて待っていました」

「ふふ、あなたも凄いね。奴隷になった人の下にお行儀よく座っていられるなんて。私はあなたが上になってもいいと思ってるよ」

「前にも言いましたけど、私は上に立てるような人ではないです。上に立つ者には威圧的な何かが必要なんですよ。天上人達同志の話し合いの時とかにね」

 ビルはそう言ってため息をつく。
 なるほどね。町の代表みたいな悪党のトップだったラッセルの席に着くとそれと同じくらいの人達と話をつけないといけない。そうなると確かにビルだと気圧されちゃうかもしれない。

「命も狙われたくないですしね」

 そう言って再度ため息をつく。

「おっと、愚痴はこのくらいにしておきましょう。教会で【ロンド司祭】が行方不明になって騒ぎになっているようです。ラッセルさんのところにも信者がやってきて調べていきました。ファム様のことは知られていないみたいです。流石ですね」

「そう、よかった」

 狙い通り、ロンド司祭は行方不明で終わってるみたい。目撃者もいないからそうなっちゃうよね。
 ユマ君もあれからずっと洗濯屋さんをしていないしね。彼も彼らの中では行方不明扱いされているかも。

「ユマという少年はしばらくは姿を見せないほうがいいかもしれないです。ただでさえ目立っていましたから」

「分かったわ。そうさせる。自分で自分を守れるようになるまでは」

 ビルの忠告に頷いて答える。彼の才能は私が一番よく知ってる。あの子が変な組織に入ったら大変なことになる。それは絶対に阻止しないと。
 
「あ、そうでした。店の名前も変えたので知らせておきますね」

「え? そうなの? って前の名前も知らないわ」

「そうでしたか。【ラッセル奴隷商】という名だったんですがこれからは【新生ファム奴隷商】となりました」

「……はぁ?」

 ビルの言葉に呆れて声を放つ。【新生ファム奴隷商】ってなに?

「え? 喜んでいただけませんでしたか?」

「喜ぶはずないでしょ! 私は奴隷商も嫌なのに!」

 元々奴隷自体反対派の私だよ。それで名前に使われたら怒るに決まってるでしょ。

「そ、それは申し訳ないことをしました。ですが残念ながら店の名前はすぐには変えられないんです。商人ギルドに申請を出してしまうと一年は戻せないので」

「……はぁ~、もういいよ。好きにして。どうせ、私が喜ぶと思ってラッセルが言い出したんでしょ。レイブンもそれで送ってきたもんね」

 ビルが申し訳なさそうに謝ってくれる。私の察した通りと彼は焦りながらも答えてくれる。
 あの人は一つネジが外れてるんだよな~。一般常識がない。でも、危険を察知して自分に言いに来てない。勘は良さそう、この場にいたら平手の一発くらいくらわしていたかもしれないもの。

「えっと、では。話はこれで全部です。妻を待たせているので失礼します」

「あ、うん……って妻!?」

 ビルが手を振って帰っていく。手を振って見送ると、横のお店から綺麗な金髪の女性が出てきて彼の腕に抱き着いた。思わず驚きの声を上げると恥ずかしそうにビルが振り返ってお辞儀をしてる。
 女性も気立てがよさそう。私みたいな子供にビルと一緒に頭を下げてる。私も見習ってお辞儀を返す。あんなに美人なお嫁さんがいるのに、エルフさんにも気があるのか~。いい人なのか悪い人なのかハッキリしてほしいな~。

「お~い、まだか~?」

「あ~、ごめんごめん。今行く~」

 ギルドの扉を開けて声をあげるラッド。冒険者ギルドに急いで入るとジュディーさんが手を振って迎えてくれる。

「はい、確かに薬草90個と毒消し草90個ですね。連日ありがとうね。ファムちゃん。本当はもっとランクの高い依頼をしたいでしょうね」

「いえいえ、困った時は助け合いですから」

「ありがと、そういってくれるのはファムちゃんだけよ。他の冒険者はほんと自分の手柄ばっかり考えて。強い魔物の依頼ばかり。はぁ~、もっと周りを助けようっていう人はいないかしらね~」

 ジュディーさんがため息交じりに愚痴をこぼす。私達は苦笑いで答える。

「あら、ごめんなさいね。愚痴こぼしちゃった。ギルドマスターにも言ってるんだけど、あの人って圧が低いのよね。冒険者になめられちゃうのよ」

「はっはっは。そうですか。圧が強いほうがジュディー君の好みかな?」

「はっ!? ギルドマスター!?」

 更に愚痴をこぼすとその対象のギルドマスターがいつの間にか背後にいた。私達は近づいているのが見えていたので苦笑いをしていたのだった。

「い、今のはですね~」

「いやいやいいんだよ。本当のことさ。でも、わかってほしいのは冒険者っていうのは縛られるのが嫌いなんだよ。圧で縛ってしまうと別の町に行ってしまう。そうなってしまったら困るでしょ?」

「あ、はい。わかっています。すみません」

「いやいや、攻めているんじゃないですよ。ジュディー君の気持ちもわかりますから。私も若いときは」

 謝るジュディーさんにランスさんがグチグチと昔話を始める。自分が冒険者として活躍していた時の話。ラッドとレイブンは目を輝かせて聞いてる。それを見てランスさんは嬉しそうに語り始める。
 私はジュディーさんと顔を見あう。

「(いつもこの話をするの)」

 ジュディーさんが耳打ちしてくる。楽しい話なのに嫌そうにするには理由があった。ランスさんは昔の話が好きみたいだね。まあ、過去って輝いて見えるから語りたくなっちゃうんだよね。元お年寄りなのでわかりますよ、ランスさん。
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