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第2章 国
第67話 追跡?
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「よう」
「ケビンさん……?」
ラッドがラッセルの元に行くのを見送って依頼を受けた。私とレイブンは依頼を受けるとすぐに城門でラッドを待つことにしたんだけど。
そこには私達を待っていた様子のケビンさんがいた。
「クランに入れてくれないなら依頼を手伝おうと思ってね。ポイント稼ぎって奴だ」
そういってケビンさんはニカッと笑う。
彼はそんなことをしてでも私達のクランに入りたい? 変な人だ。
「あなたのことを全然知らない。ランスさんが言っていたように私達はあなたをクランに入れるつもりはありません」
「すぐに入れてくれとは言ってないんだけどな~。まあ、手伝わさせてくれ」
「それもいりません。オークを狩るのに人の手はいらないんです」
「そこをなんとか」
私が彼を否定すると頑なに手伝うと言ってくる。
城門前でケビンさんにしつこくされていると、ガストンさんが気が付いてくれて声をかけてきてくれる。
「ファムちゃん? どうしたんだ? 困りごとか?」
「はい、少し困ってます」
ガストンさんの声に答えて、ケビンさんを睨みつける。
ガストンさんは私の視線に気が付いて一緒に睨みつけてくれる。
「君は最近町に入った人だね。名前は確か?」
「ケビンだよ。兵士が声をかけてくるんじゃねえ」
「ん? あまり素行がよくないな」
ガストンさんに名前を名乗ったケビン、私達と話すときと違う雰囲気をかもし出す。
まるでチンピラ。補導されている少年のような雰囲気。少し怖い。
「王族の指示に悪いことでも従う兵士。反吐が出る。お前達は罪のない人も簡単に傷つけるんだ。いつもいつも」
ケビンはガストンさんを睨みつけて、そう吐き捨てる。それをされたことがあるように吐き捨てる言葉。重みがある。
「……まるでされてきたような言葉だな。だが、嫌がっている相手に無理強いをしていたお前と兵士。違うがあるように感じない。お前も”悪いこと”をしていたんだぞ」
「……ちぃ。偉そうに言いやがる」
ガストンさんの言葉にケビンは唾を吐き捨てると城門の外へと出て行った。
私はほっと胸を撫でおろした。
「あの人嫌い。裏表を使い分けてる。ラッドと違う」
「そうね。彼とは違う。いい感じがしないね」
レイブンの呟きに答えてガストンさんを見上げる。彼はニッコリと微笑んでくれる。
「ありがとうございますガストンさん。あの人しつこくて」
「ははは、いいってことよ。ジャーメイノの星、ファムちゃんの役に立てるならなんでもするさ。娘にファムちゃんの話をしたら大はしゃぎしてな。今回の話をしたら『お父さん凄い』なんて言われるだろうな! ははは」
ガストンさんにお礼を言うと嬉しそうに話してくれる。娘さんに話してるのね。少し恥ずかしいな~。
「しかし、気をつけるんだぞ」
「え? ケビンさんのことですか?」
「ああ、あの目は人を殺したことのある目をしてる。あの話を聞くに、兵士に誰かを殺され、兵士を殺したのかもしれないな」
ガストンさんは黒い瞳でケビンさんの消えていった方向を見つめる。
やっぱり、あの話は本当にあった話ってことね。兵士に恨みを持っているってことか。
「お~い! ラッセルに知らせてきたぞ~」
「あ、ラッド」
ガストンさんの話を聞いているとラッドがやってきた。ラッセルにはしっかりと知らせてくれたみたいね。
「ケビンについて少しでも情報得られた?」
「あ、いや。全然わからなかった。これから調べさせるって言ってた」
「そう……」
ラッセルが知らないなんておかしいわね。
だって、あれだけの弓の腕があれば噂くらいにはなっているでしょ?
500メートル先の人の頭に矢を当てられるほどの腕前。普通なら話題になるはず。
「オークの依頼を受けたんだな! 今回はダンジョンに行かずに近くの森か」
「ん、危険だからね。森が安全になるまで、しばらくは外かな」
ラッドがレイブンの持っていた羊皮紙を見つめてくる。イーターのダンジョンで戦った方が安全なんだけど、外で目撃されてるから普通の人が危険なんだよ。間引きはしていかないと。
「それじゃ、あの男には気をつけるんだぞ」
「あ、はい。ありがとうございましたガストンさん」
ガストンさんが詰所の方へと入っていく。
「あの男って? ケビンか? 断ったのに声をかけてきたのか?」
「しつこい」
「……絶対何かあるだろ」
ラッドがガストンさんの声で気が付いて声を上げる。レイブンの声に彼は顎に手を当てて考え込みながら呟く。
「ラッセルの知らせを待ちましょ」
私がそういうと二人は険しい顔で頷く。
「オークの依頼は3匹だったっけ?」
「うん。目撃されたのが3匹。集落があるようなら報告に戻るか殲滅だってさ」
近くの森に入ってラッドが呟く。レイブンが答えて、武器を構えた。
「聞こえる」
レイブンは警戒して木の影に隠れて前方を指さす。
「一匹か。でも……」
「でけぇ」
木よりは小さいけれど、大きな体のオーク。片目が傷ついていて風格がある。
「ジェネラル?」
レイブンが呟く。オークでも強さで名前が変わる。ジェネラルは上位の個体だ。
他にはウォーリアやマジシャンなどの職業を持った者もいる。相手がどんな攻撃をしてくるかをそれで予想できるから、こういう情報は持っておいた方がいい。
「どうする?」
「とりあえず、3匹倒そう。それからどうするか考える」
「「了解」」
ラッドの問いに答えると二人は頷いて答えた。
私達が木の影から一歩踏み出すと風が頬をかすめる。するとジェネラルオークがその場に倒れた。
ジェネラルオークの額に矢が刺さっているのが見える。
私達は矢が射かけられた背後を見るとケビンが誇らしげに立っていた。
「ケビンさん……?」
ラッドがラッセルの元に行くのを見送って依頼を受けた。私とレイブンは依頼を受けるとすぐに城門でラッドを待つことにしたんだけど。
そこには私達を待っていた様子のケビンさんがいた。
「クランに入れてくれないなら依頼を手伝おうと思ってね。ポイント稼ぎって奴だ」
そういってケビンさんはニカッと笑う。
彼はそんなことをしてでも私達のクランに入りたい? 変な人だ。
「あなたのことを全然知らない。ランスさんが言っていたように私達はあなたをクランに入れるつもりはありません」
「すぐに入れてくれとは言ってないんだけどな~。まあ、手伝わさせてくれ」
「それもいりません。オークを狩るのに人の手はいらないんです」
「そこをなんとか」
私が彼を否定すると頑なに手伝うと言ってくる。
城門前でケビンさんにしつこくされていると、ガストンさんが気が付いてくれて声をかけてきてくれる。
「ファムちゃん? どうしたんだ? 困りごとか?」
「はい、少し困ってます」
ガストンさんの声に答えて、ケビンさんを睨みつける。
ガストンさんは私の視線に気が付いて一緒に睨みつけてくれる。
「君は最近町に入った人だね。名前は確か?」
「ケビンだよ。兵士が声をかけてくるんじゃねえ」
「ん? あまり素行がよくないな」
ガストンさんに名前を名乗ったケビン、私達と話すときと違う雰囲気をかもし出す。
まるでチンピラ。補導されている少年のような雰囲気。少し怖い。
「王族の指示に悪いことでも従う兵士。反吐が出る。お前達は罪のない人も簡単に傷つけるんだ。いつもいつも」
ケビンはガストンさんを睨みつけて、そう吐き捨てる。それをされたことがあるように吐き捨てる言葉。重みがある。
「……まるでされてきたような言葉だな。だが、嫌がっている相手に無理強いをしていたお前と兵士。違うがあるように感じない。お前も”悪いこと”をしていたんだぞ」
「……ちぃ。偉そうに言いやがる」
ガストンさんの言葉にケビンは唾を吐き捨てると城門の外へと出て行った。
私はほっと胸を撫でおろした。
「あの人嫌い。裏表を使い分けてる。ラッドと違う」
「そうね。彼とは違う。いい感じがしないね」
レイブンの呟きに答えてガストンさんを見上げる。彼はニッコリと微笑んでくれる。
「ありがとうございますガストンさん。あの人しつこくて」
「ははは、いいってことよ。ジャーメイノの星、ファムちゃんの役に立てるならなんでもするさ。娘にファムちゃんの話をしたら大はしゃぎしてな。今回の話をしたら『お父さん凄い』なんて言われるだろうな! ははは」
ガストンさんにお礼を言うと嬉しそうに話してくれる。娘さんに話してるのね。少し恥ずかしいな~。
「しかし、気をつけるんだぞ」
「え? ケビンさんのことですか?」
「ああ、あの目は人を殺したことのある目をしてる。あの話を聞くに、兵士に誰かを殺され、兵士を殺したのかもしれないな」
ガストンさんは黒い瞳でケビンさんの消えていった方向を見つめる。
やっぱり、あの話は本当にあった話ってことね。兵士に恨みを持っているってことか。
「お~い! ラッセルに知らせてきたぞ~」
「あ、ラッド」
ガストンさんの話を聞いているとラッドがやってきた。ラッセルにはしっかりと知らせてくれたみたいね。
「ケビンについて少しでも情報得られた?」
「あ、いや。全然わからなかった。これから調べさせるって言ってた」
「そう……」
ラッセルが知らないなんておかしいわね。
だって、あれだけの弓の腕があれば噂くらいにはなっているでしょ?
500メートル先の人の頭に矢を当てられるほどの腕前。普通なら話題になるはず。
「オークの依頼を受けたんだな! 今回はダンジョンに行かずに近くの森か」
「ん、危険だからね。森が安全になるまで、しばらくは外かな」
ラッドがレイブンの持っていた羊皮紙を見つめてくる。イーターのダンジョンで戦った方が安全なんだけど、外で目撃されてるから普通の人が危険なんだよ。間引きはしていかないと。
「それじゃ、あの男には気をつけるんだぞ」
「あ、はい。ありがとうございましたガストンさん」
ガストンさんが詰所の方へと入っていく。
「あの男って? ケビンか? 断ったのに声をかけてきたのか?」
「しつこい」
「……絶対何かあるだろ」
ラッドがガストンさんの声で気が付いて声を上げる。レイブンの声に彼は顎に手を当てて考え込みながら呟く。
「ラッセルの知らせを待ちましょ」
私がそういうと二人は険しい顔で頷く。
「オークの依頼は3匹だったっけ?」
「うん。目撃されたのが3匹。集落があるようなら報告に戻るか殲滅だってさ」
近くの森に入ってラッドが呟く。レイブンが答えて、武器を構えた。
「聞こえる」
レイブンは警戒して木の影に隠れて前方を指さす。
「一匹か。でも……」
「でけぇ」
木よりは小さいけれど、大きな体のオーク。片目が傷ついていて風格がある。
「ジェネラル?」
レイブンが呟く。オークでも強さで名前が変わる。ジェネラルは上位の個体だ。
他にはウォーリアやマジシャンなどの職業を持った者もいる。相手がどんな攻撃をしてくるかをそれで予想できるから、こういう情報は持っておいた方がいい。
「どうする?」
「とりあえず、3匹倒そう。それからどうするか考える」
「「了解」」
ラッドの問いに答えると二人は頷いて答えた。
私達が木の影から一歩踏み出すと風が頬をかすめる。するとジェネラルオークがその場に倒れた。
ジェネラルオークの額に矢が刺さっているのが見える。
私達は矢が射かけられた背後を見るとケビンが誇らしげに立っていた。
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