40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 異世界旅行

第29話 ルドラの咆哮

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「魔物の群れだ! 戦えるものは城門へ! 弓矢や魔法の使えるものは城壁上へあがれ~」

 支度をして外へ出るとそんな声が聞こえてくる。なんとも物騒な声でしょうか。

「私も一緒に戦います。ギルド職員とか今は関係ないので」

「わかりました。一緒に行きましょう」

 リリスさんは剣と盾を持って声を上げる。彼女は私よりも強い、心強いです。
 ルッソ君達も加えて私たちは城門の前へとやってきた。城門前は屈強な人達が並んでいました。男も女も関係なく、とても強そうな人たちです。

「お! 来た来た! 待っていたぞシゲル!」

「え? ガルドさん?」

 屈強な戦士に釘付けになっていると声がかけられる。振り返るとガルドさんが黒いマントのような服をもって待っていました。

「もしや、それがワーウルフの?」

「おうよ! 裏地にミスリルのチェーンメイルを仕込んだもんだ! どんな斬撃や魔法も防いでくれるぜ! 役立ててくれ!」

 ガルドさんはそう言って手渡してくる。私は銀貨の入った革袋を手渡す。

「こんなにいいのか?」

「これから稼ぎますから」

「はは、ちげぇねえな。そんな大層な矛を持っているんだ。考えられないほどの戦果をあげちまうんだろうな」

 両手に持つ矛を見てガルドさんはにっこりと微笑む。ベノムの矛は目立ち過ぎますね。ですが遠慮をするほど余裕はありません。

「私は先に城壁上へ」

「はい! 頑張ってください!」

「シゲルおじちゃん頑張れ~!」

 私は皆さんに声を上げて城壁上へと駆けあがる。リリスさんとエチルちゃんは城門で出番を待つのでしょう。

「私も、ルッソ無理しないでね」

「わかってる。ここで命を落としたら村を再興できないからな」

 ミラちゃんも城壁上で矢を射るようです。私の後ろをついてきました。

「「え!?」」

 城壁上へと上ったのを後悔するような光景が目の前に広がる。
 黒い波と言ったらいいのでしょうか? 魔物の群れがユラユラと近づいてきていて、それが黒い波に見えます。恐ろしい数の魔物がいるのがうかがえます。これはこの世界の常識を知らない私でも異常なのが分かります。

「おかしいよ! こんなの!」

「ええ、そうですよね」

 ミラちゃんが体を震わせて声を上げる。彼女の手を取り元気づけますが、私も震えているのに気が付きました。よく見ると城壁上に登っているほかの方々も不安で顔を青ざめさせています。

「……よっしゃぁぁぁ~~~~~!」

 恐怖で静寂が生まれていると急に気合を入れる声が聞こえてくる。天へも届くであろう叫び声。声の主を見るとルドラさんが体から湯気を出して叫んでいました。

「お前らも声出せ! 魔物どもにいいように黙らされるな!」

「ふふ、ルドラさんって凄いですね。よし!」

 ルドラさんの声にクスクスと笑みがこぼれる。私は彼のように声を荒らげる。すると端々で気合を入れる声が上がる。

「俺たちは負けねえぞ! 弓! 魔法! 準備だ!」

『応っ!』

 ルドラさんの声に呼応して武器を、魔法を構える音が響く。私も遠慮はしません。

「撃てぇぇ!」

 ルドラさんの声で黒い波へと矢が放たれる。
 魔法も4色の色とりどりな魔法が飛び交う。【ファイアボール】【ウォーターボール】【アースボルト】【ライトニングボルト】の魔法が主な魔法のようです。
 広範囲への魔法は唱えられていませんね。ここは私が。

「【雷の雨】【雷の雨】!」

 使い慣れている魔法を使った方がいいと判断していつも通りの雷の雨を使います。手をかざした方向に真っ黒な雲から雷が雨のように降り注ぐ。黒い波が何か所も動かなくなり進撃がやみます。

「で、でたらめな火力だな」

 ルドラさんが私に気が付いて呆れた声をかけてきます。思わず照れていると彼は私の腰を叩いてきて、『頼りになるな』と言ってくれました。

「シゲル! もういっちょ唱えてくれ、そうしたら城門を上げて進軍する!」

「わかりました。私も行きます」

「おう! 無理すんなよ!」

 ルドラさんの声に答えると彼は城壁上から降りて城門の前にて声掛けてしています。先ほどのように気合を入れる声を皆さんに届けています。頼れる兄貴といった感じですね。
 私は言われた通り、雷の雨を再度降らせる。黒い波が弱弱しく波を打っています。明らかに小さくなってる? それでも千や二千の魔物がいるでしょう。

「合図だ! 行くぞ! 声出せ! のまれるなよ!」

 城門が開いていく。私も急いで城壁を降りる。リリスさんとエチルちゃんの横につくと皆さんと顔を見あう。

「ルドラおじちゃんカッコいいね」

「そうですね。頼りになります」

「シゲルおじちゃんも! おじちゃんと一緒にいると負ける気しない!」

 エチルちゃんがニッコニコでルドラさんを褒める。私のこともほめてくれて気遣いが出来るいい子ですね。本当に優しい。

「危なくなったら下がりますよ」

 エチルちゃんに笑顔を向けているとリリスさんが真剣な表情で指示してくれる。私は頷いて答える。

「わかっています。ルッソ君は離れないようにしてくださいね」

「あ、はい……」

 ルッソ君にも声をかけると彼はガチガチと体を震わせています。
 彼は魔物と何度か戦っていましたが、戦争といった数の魔物との戦いは初めて。私もそうですが城壁上のルドラさんのおかげで覚悟ができました。震えはまったくありません。
 
「声をあげましょう! やってやる、と!」

「は、はい! やってやる!」

「もう一度! はい!」

「やってやるぞ!」

 緊張している様子のルッソ君に声を上げる。
 ガチガチだった彼の体から湯気が出る程の気合が生まれてくる。感化されて周りの人達も声が上がっていく。
 そして、城門が開ききるとルドラさんが先頭を走っていき、すぐに並んでいた人たちが声と共に走り出す。
 私も声を追い越すように飛び出す。やらせませんよ。この町はこの世界での私の故郷なのですから!
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