19 / 23
第1章
第19話 九死に一生
しおりを挟む
「雨が降ってきましたねマスター」
「バブ~」
雨は嫌いだな~。僕はハイハイでしか歩けないからどうしても汚れてしまうんだ。
農場の横に作られた僕らの家から窓の外をダークに抱かれて覗く。
お母さんとお父さんも一緒に夕食の準備中だ。
今日はオークのシチュー、牛型の魔物からミルクもたんまりとれているので美味しいシチューが食べられる。バターとかチーズってまだ見たことがないけど、この世界ではまだないのかな? あったらほしいんだけどな、トーストにバターやお肉にチーズ、最強です。
「ん? マスター外に馬車が」
「ダブ?」
ダークが指さすほうを見るとランタンで明かりを灯した馬車が五台、凄いスピードで町の門へと向かっていくのが見える。何をそんなに急いでいるんだろう?
「少し気になりますね」
「ギャウギャウ!」
「ん? ワイバーンが」
僕らが気になって首を傾げていると外でワイバーンが吠え出した。
僕を抱いたまま外へと出るダーク。濡れるからやめてほしいんだけども。
「ブモ~」
「他の魔物も鳴きだした」
外へ出ると一斉に鳴きだす魔物や動物。まるで何かに怯えているような鳴き声。ワイバーンが鳴くほどだからかなりの恐怖なのかもしれないな。
「馬車の走ってきた方向に眷属を走らせます」
「バブ!」
ダークが提案をしてきたので大きく丸をジェスチャーして肯定すると影から複数の狼が現れて駆けだしていった。
「視覚も共有できるのですぐに結果がわかりますよ」
ダークの眷属はかなり便利。目を共有できるのですぐに何があったのかわかる。
「紫の光? 雷か、木が燃えていますね」
しばらく走らせた眷属が紫の閃光をとらえたようでダークが実況してる。雷って言ったらシデンさんかな?
ってことはシデンさんが戦闘しているってこと?
「シデンですね。戦闘しながらこちらに向かってきているようです。かなりの速度で走っているようですがそれだけ相手が早いということですね。あっ! 眷属に気づいて足を止めてしまいました」
思っていた通りシデンさんみたいだ。戦闘しているみたいで相手が同じくらいの強さだという感じをうけた。
「シデンが『狼! 仲間か! 厄介だ』といって眷属に剣を向けています。あっ! ワーウルフが背後に迫っている。危機一髪避けていますが危なそうですね。鎧が壊されています」
「バブ! バブバブ!」
「えっ? 助けろって? わかりました。眷属で時間稼ぎましょう。その間に私達が行って倒しましょうか」
シデンさんが危ないみたいなので助けるように言うと眷属を動かしてくれるみたい。その間に僕たちが行って倒す、夕食はもう少し待ってもらおう。
「アーリー、お前はまだ赤ん坊なんだからな。無理せずにダークさんに倒してもらうんだぞ」
「気をつけてね。絶対に怪我しちゃだめよ」
「バブバブ~!」
大丈夫大丈夫と両親に答えて走り出した。もちろんダークに抱かれているのでらくちんらくちん。
「やばい。囲まれています。変身を解いて急ぎます」
ダークがそういうと僕をおんぶして形態を変えていく。元の四足獣の狼に変わり風よりも早く走り出す。
◇
「ハァハァ。私はここで死ぬのか……」
ワーウルフの群れに囲まれて絶望に天を仰ぐ。雨が降り握る剣が手から零れ落ちそうになる。
雷撃で十匹は倒しただろうワーウルフから嫌なにおいがしてくるが雨により一瞬で消え失せる。
地形が森というのも彼らに優位に働いている。木陰から襲い来るワーウルフは影に潜む暗殺者。一瞬の隙も見せられない。それなのに剣を握る手があまく何匹か打ち損じている。
鎧はやつらの手で壊れた。おかげで軽くなったかと思ったがどんどん体が重くなっていく。よく見るとワーウルフシャーマンもいるようで呪術を唱えてきているのが見える。
あれは私のステータスを下げる魔法を使っているようだ。それでも何とか戦えているのはやつらが油断しているからだろう。というより、遊んでいるようにも見える。
ワーウルフロードがニヤニヤと笑いこちらを見ているからな。
いい死に方しないぞあれは。
「私は冒険者だ! 最後まであきらめん!【ライトニングケープ】」
雷の外套を召喚して纏う。防御と反撃をになってくれるケープ、雨の日のこれは無敵だ。
「そらそら! どうした! 私を倒すんじゃないのか!」
ケープを纏うとなぜかワーウルフ達が距離を取り始めた。それを追うように私が何匹か切りつけて倒すとロードが叫んだ。耳をつんざく叫び、思わず耳を抑えると息ができなくなっていった。
「ゴボッ! ボボバ!」
目の前が揺れる! なんだこれは!
浮く体をねじり周りを見ると私は宙に浮いていた。正確には球体の水の中に入れられてその球体が宙に浮いていたんだ。
これは【ウォータープリズン】という魔法だ。雨の日ならば並の魔法使いでも使える魔法。盲点だった。
こんな戦略的な魔法を使ってくるとは思わなかった。疲弊している私にこの水の牢獄は破れない。
「……」
水の中で息のできない私は目を瞑り走馬灯が走る。
『シデン! ここのお店美味しいし!』
『ん、私たちはシデンだからついてきた。あきらめないで』
冒険者になったばかりの記憶だ。ソラとロロ、二人との思いで。ソラは本当に食べ物が好きだったな。ロロはいつも腕に引っ付いてきてた。ロロのおかげで嫁に行き遅れたとソラに言われたっけ。あ~何もかもが懐かしい。
『ああ、未練ばかりだ』
Sランクになりクランを作りウラスの1番まで上りつめた。上るだけで部下たちに何もしてやれなかったな。
一人一人の顔が思い浮かぶ。あの子は剣を、あの子は弓を。誰もが強くなろうと目を輝かせていた。
そのどれもが綺麗でいつも私は微笑んでいたっけ、自然とみんなも笑顔になって……私が死んだらみんな泣いてしまうだろうな。
みんなの泣き顔が浮かぶ。そのどれもが私の胸を締め付ける。
『死にたくない! 死にたくないよ!』
目を開こうとするけど私の視界には真っ暗な世界だけ。
私が死にたくないと思っていてもそれは無駄だった。そう、救えなかった人たちと一緒、運命だから。助からないんだ。
静かに私の体からスッと何かが抜けていく。これが死ぬってことなのかな。私はあきらめて目を瞑る。だけどその時。
「バブ~!」
「ゴホッ! ゴホ!」
金色の輝きと共に私は勢いよく【ウォータープリズン】から抜け出した。体が一気に軽くなっていく、この金色の輝きは回復魔法! 私を持ち上げているこの赤ん坊から魔法を感じる。
ってこの子はアーリー? 来てくれたのか……私は九死に一生を得たようだ。
「バブ~」
雨は嫌いだな~。僕はハイハイでしか歩けないからどうしても汚れてしまうんだ。
農場の横に作られた僕らの家から窓の外をダークに抱かれて覗く。
お母さんとお父さんも一緒に夕食の準備中だ。
今日はオークのシチュー、牛型の魔物からミルクもたんまりとれているので美味しいシチューが食べられる。バターとかチーズってまだ見たことがないけど、この世界ではまだないのかな? あったらほしいんだけどな、トーストにバターやお肉にチーズ、最強です。
「ん? マスター外に馬車が」
「ダブ?」
ダークが指さすほうを見るとランタンで明かりを灯した馬車が五台、凄いスピードで町の門へと向かっていくのが見える。何をそんなに急いでいるんだろう?
「少し気になりますね」
「ギャウギャウ!」
「ん? ワイバーンが」
僕らが気になって首を傾げていると外でワイバーンが吠え出した。
僕を抱いたまま外へと出るダーク。濡れるからやめてほしいんだけども。
「ブモ~」
「他の魔物も鳴きだした」
外へ出ると一斉に鳴きだす魔物や動物。まるで何かに怯えているような鳴き声。ワイバーンが鳴くほどだからかなりの恐怖なのかもしれないな。
「馬車の走ってきた方向に眷属を走らせます」
「バブ!」
ダークが提案をしてきたので大きく丸をジェスチャーして肯定すると影から複数の狼が現れて駆けだしていった。
「視覚も共有できるのですぐに結果がわかりますよ」
ダークの眷属はかなり便利。目を共有できるのですぐに何があったのかわかる。
「紫の光? 雷か、木が燃えていますね」
しばらく走らせた眷属が紫の閃光をとらえたようでダークが実況してる。雷って言ったらシデンさんかな?
ってことはシデンさんが戦闘しているってこと?
「シデンですね。戦闘しながらこちらに向かってきているようです。かなりの速度で走っているようですがそれだけ相手が早いということですね。あっ! 眷属に気づいて足を止めてしまいました」
思っていた通りシデンさんみたいだ。戦闘しているみたいで相手が同じくらいの強さだという感じをうけた。
「シデンが『狼! 仲間か! 厄介だ』といって眷属に剣を向けています。あっ! ワーウルフが背後に迫っている。危機一髪避けていますが危なそうですね。鎧が壊されています」
「バブ! バブバブ!」
「えっ? 助けろって? わかりました。眷属で時間稼ぎましょう。その間に私達が行って倒しましょうか」
シデンさんが危ないみたいなので助けるように言うと眷属を動かしてくれるみたい。その間に僕たちが行って倒す、夕食はもう少し待ってもらおう。
「アーリー、お前はまだ赤ん坊なんだからな。無理せずにダークさんに倒してもらうんだぞ」
「気をつけてね。絶対に怪我しちゃだめよ」
「バブバブ~!」
大丈夫大丈夫と両親に答えて走り出した。もちろんダークに抱かれているのでらくちんらくちん。
「やばい。囲まれています。変身を解いて急ぎます」
ダークがそういうと僕をおんぶして形態を変えていく。元の四足獣の狼に変わり風よりも早く走り出す。
◇
「ハァハァ。私はここで死ぬのか……」
ワーウルフの群れに囲まれて絶望に天を仰ぐ。雨が降り握る剣が手から零れ落ちそうになる。
雷撃で十匹は倒しただろうワーウルフから嫌なにおいがしてくるが雨により一瞬で消え失せる。
地形が森というのも彼らに優位に働いている。木陰から襲い来るワーウルフは影に潜む暗殺者。一瞬の隙も見せられない。それなのに剣を握る手があまく何匹か打ち損じている。
鎧はやつらの手で壊れた。おかげで軽くなったかと思ったがどんどん体が重くなっていく。よく見るとワーウルフシャーマンもいるようで呪術を唱えてきているのが見える。
あれは私のステータスを下げる魔法を使っているようだ。それでも何とか戦えているのはやつらが油断しているからだろう。というより、遊んでいるようにも見える。
ワーウルフロードがニヤニヤと笑いこちらを見ているからな。
いい死に方しないぞあれは。
「私は冒険者だ! 最後まであきらめん!【ライトニングケープ】」
雷の外套を召喚して纏う。防御と反撃をになってくれるケープ、雨の日のこれは無敵だ。
「そらそら! どうした! 私を倒すんじゃないのか!」
ケープを纏うとなぜかワーウルフ達が距離を取り始めた。それを追うように私が何匹か切りつけて倒すとロードが叫んだ。耳をつんざく叫び、思わず耳を抑えると息ができなくなっていった。
「ゴボッ! ボボバ!」
目の前が揺れる! なんだこれは!
浮く体をねじり周りを見ると私は宙に浮いていた。正確には球体の水の中に入れられてその球体が宙に浮いていたんだ。
これは【ウォータープリズン】という魔法だ。雨の日ならば並の魔法使いでも使える魔法。盲点だった。
こんな戦略的な魔法を使ってくるとは思わなかった。疲弊している私にこの水の牢獄は破れない。
「……」
水の中で息のできない私は目を瞑り走馬灯が走る。
『シデン! ここのお店美味しいし!』
『ん、私たちはシデンだからついてきた。あきらめないで』
冒険者になったばかりの記憶だ。ソラとロロ、二人との思いで。ソラは本当に食べ物が好きだったな。ロロはいつも腕に引っ付いてきてた。ロロのおかげで嫁に行き遅れたとソラに言われたっけ。あ~何もかもが懐かしい。
『ああ、未練ばかりだ』
Sランクになりクランを作りウラスの1番まで上りつめた。上るだけで部下たちに何もしてやれなかったな。
一人一人の顔が思い浮かぶ。あの子は剣を、あの子は弓を。誰もが強くなろうと目を輝かせていた。
そのどれもが綺麗でいつも私は微笑んでいたっけ、自然とみんなも笑顔になって……私が死んだらみんな泣いてしまうだろうな。
みんなの泣き顔が浮かぶ。そのどれもが私の胸を締め付ける。
『死にたくない! 死にたくないよ!』
目を開こうとするけど私の視界には真っ暗な世界だけ。
私が死にたくないと思っていてもそれは無駄だった。そう、救えなかった人たちと一緒、運命だから。助からないんだ。
静かに私の体からスッと何かが抜けていく。これが死ぬってことなのかな。私はあきらめて目を瞑る。だけどその時。
「バブ~!」
「ゴホッ! ゴホ!」
金色の輝きと共に私は勢いよく【ウォータープリズン】から抜け出した。体が一気に軽くなっていく、この金色の輝きは回復魔法! 私を持ち上げているこの赤ん坊から魔法を感じる。
ってこの子はアーリー? 来てくれたのか……私は九死に一生を得たようだ。
568
あなたにおすすめの小説
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜
橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました
竹桜
ファンタジー
誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。
その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。
男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。
自らの憧れを叶える為に。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる