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第1章 新たな始まり
第1話 苦しみ
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「アキラ君、今日の調子はどう?」
「……あまり」
白い部屋、病室で看護師さんに聞かれて答える。
僕の名前は新井 晃(アライ アキラ)。
三歳の頃からこの病室が僕の世界。TVで外の世界はみる事は出来るけど、この部屋から出ることは出来ずにいる。
「ハァハァ。ごめんねアキラ。遅くなっちゃった」
看護婦さんと他愛のない話をして待って居るとおかあさんがやってくる。お母さんは僕を女で一つで育ててくれてる。この病院のお金だって一人で作ってくれてる。
夜遅くまで働いて、10歳まで育ててくれた……。それなのに僕は。
「お母さん、無理しなくていいよ」
思わずそんな言葉が出てしまう。お母さんはそれを聞いて僕の頭を撫でてくれる。
「何言ってるの。あなたが外に出れるまで頑張る。あの人にも約束したしね」
お母さんはそう言ってガシガシと頭を撫でてくれる。あの人っていうのはお父さんのことだ。お父さんは僕が生まれて少しした時に事故で無くなったんだ。
その時にお父さんは僕のことを頼んで死んでしまったらしい。お父さんの顔は写真でしか見たことがない。
「替えの服を置いて行くからね。高橋さん、よろしくお願いします」
「はい。任せてください」
お母さんはニッコリと微笑んで看護師の高橋さんに声を掛ける。高橋さんとも長い付き合い、もう3年くらいになるかな。
お母さんが部屋を出ると僕はベッドに横たわる。
「ふぅ……」
「体起こすのもきつい?」
「あ、はい……」
高橋さんが心配してくれる。胸の真ん中あたりが痛い、僕はもう……長くないんだろう。そう思わせてくる。
「今日もいい天気ね、アキラ」
それから次の日。いつも通り、高橋さんの次にお母さんが入ってきて声を掛けてくれる。今日の僕は体を起こすことも出来ずにいる。
「お母さん」
「どうしたのアキラ?」
布団の中にいるのに体が冷えていくのを感じる。僕は体が冷えるのを感じながら声をあげる。ベッドの横の椅子に腰かけたお母さんに僕は精一杯の笑顔を向ける。
「今日は夜来ないでいいからね」
「ん? どうして?」
僕の言葉に首を傾げるお母さん。
「今日は調子がいいから……大丈夫だから来なくて大丈夫だよ。お母さんには体を大事にしてほしいから」
僕はそう言って笑顔を向ける。お母さんはそんな僕を抱きしめてくれる。
「ありがとうアキラ。だけど大丈夫よ。母はつよしって言うでしょ。今日も夜来るわ」
「うん……。ごめんねお母さん」
謝るとため息をつくお母さん。頭を撫でてくれる。
「じゃあ母さん仕事に行くわね。また夜にね」
「うん。ありがとうお母さん」
部屋を後にするお母さん。高橋さんも部屋の外に出るのを確認して胸を抑える。
「苦しい顔は見せたくないのに……」
胸の痛みが引かない。薄っすらと意識が遠くなる。
「あれ? ここは?」
真っ白な病室にいたはずなのにベッドも机もない。ここはどこだろう。僕立ててる?
意識を失って目を覚ますとまったく別の景色になって驚く。周りを見回してもすべてが真っ白な世界。
「胸が痛くない。そうか、これは夢かな。体も動くし」
現実逃避の言葉を呟いて体を動かす。こんな時しか動かせないなら堪能する。
「疲れない。やっぱり夢か。ハァ~、アニメみたいに異世界に転生できたりしないかな。あ、でも、その時はお母さんも一緒に。ってお母さんには死んでほしくないな……」
異世界に転生するには死なないといけない。僕はこんな体だから死んでもいいけど、お母さんは幸せになってほしい。
でも、僕が死んだら悲しむよな……。
「まだ死ねないよ。絶対に死にたくない。例え異世界に行けるとしてもね」
真っ白な夢の世界で声をあげる。ただ虚空に消える声だけど、確かに僕が声をあげた。僕はまだ死ねない。そう思っていた。
「アキラ、来たわよ。……アキラ?」
そんな夢を見たその日に僕はそのまま目を覚ますことはなかった。病室に来たお母さんの声が聞こえてきて、そのまま白い世界のまま、僕の人生は終わりを告げていたらしい。
どうやらこの白い世界は僕の精神世界だったみたいだ。外の声はうっすらと聞こえてきてるから。
「……あまり」
白い部屋、病室で看護師さんに聞かれて答える。
僕の名前は新井 晃(アライ アキラ)。
三歳の頃からこの病室が僕の世界。TVで外の世界はみる事は出来るけど、この部屋から出ることは出来ずにいる。
「ハァハァ。ごめんねアキラ。遅くなっちゃった」
看護婦さんと他愛のない話をして待って居るとおかあさんがやってくる。お母さんは僕を女で一つで育ててくれてる。この病院のお金だって一人で作ってくれてる。
夜遅くまで働いて、10歳まで育ててくれた……。それなのに僕は。
「お母さん、無理しなくていいよ」
思わずそんな言葉が出てしまう。お母さんはそれを聞いて僕の頭を撫でてくれる。
「何言ってるの。あなたが外に出れるまで頑張る。あの人にも約束したしね」
お母さんはそう言ってガシガシと頭を撫でてくれる。あの人っていうのはお父さんのことだ。お父さんは僕が生まれて少しした時に事故で無くなったんだ。
その時にお父さんは僕のことを頼んで死んでしまったらしい。お父さんの顔は写真でしか見たことがない。
「替えの服を置いて行くからね。高橋さん、よろしくお願いします」
「はい。任せてください」
お母さんはニッコリと微笑んで看護師の高橋さんに声を掛ける。高橋さんとも長い付き合い、もう3年くらいになるかな。
お母さんが部屋を出ると僕はベッドに横たわる。
「ふぅ……」
「体起こすのもきつい?」
「あ、はい……」
高橋さんが心配してくれる。胸の真ん中あたりが痛い、僕はもう……長くないんだろう。そう思わせてくる。
「今日もいい天気ね、アキラ」
それから次の日。いつも通り、高橋さんの次にお母さんが入ってきて声を掛けてくれる。今日の僕は体を起こすことも出来ずにいる。
「お母さん」
「どうしたのアキラ?」
布団の中にいるのに体が冷えていくのを感じる。僕は体が冷えるのを感じながら声をあげる。ベッドの横の椅子に腰かけたお母さんに僕は精一杯の笑顔を向ける。
「今日は夜来ないでいいからね」
「ん? どうして?」
僕の言葉に首を傾げるお母さん。
「今日は調子がいいから……大丈夫だから来なくて大丈夫だよ。お母さんには体を大事にしてほしいから」
僕はそう言って笑顔を向ける。お母さんはそんな僕を抱きしめてくれる。
「ありがとうアキラ。だけど大丈夫よ。母はつよしって言うでしょ。今日も夜来るわ」
「うん……。ごめんねお母さん」
謝るとため息をつくお母さん。頭を撫でてくれる。
「じゃあ母さん仕事に行くわね。また夜にね」
「うん。ありがとうお母さん」
部屋を後にするお母さん。高橋さんも部屋の外に出るのを確認して胸を抑える。
「苦しい顔は見せたくないのに……」
胸の痛みが引かない。薄っすらと意識が遠くなる。
「あれ? ここは?」
真っ白な病室にいたはずなのにベッドも机もない。ここはどこだろう。僕立ててる?
意識を失って目を覚ますとまったく別の景色になって驚く。周りを見回してもすべてが真っ白な世界。
「胸が痛くない。そうか、これは夢かな。体も動くし」
現実逃避の言葉を呟いて体を動かす。こんな時しか動かせないなら堪能する。
「疲れない。やっぱり夢か。ハァ~、アニメみたいに異世界に転生できたりしないかな。あ、でも、その時はお母さんも一緒に。ってお母さんには死んでほしくないな……」
異世界に転生するには死なないといけない。僕はこんな体だから死んでもいいけど、お母さんは幸せになってほしい。
でも、僕が死んだら悲しむよな……。
「まだ死ねないよ。絶対に死にたくない。例え異世界に行けるとしてもね」
真っ白な夢の世界で声をあげる。ただ虚空に消える声だけど、確かに僕が声をあげた。僕はまだ死ねない。そう思っていた。
「アキラ、来たわよ。……アキラ?」
そんな夢を見たその日に僕はそのまま目を覚ますことはなかった。病室に来たお母さんの声が聞こえてきて、そのまま白い世界のまま、僕の人生は終わりを告げていたらしい。
どうやらこの白い世界は僕の精神世界だったみたいだ。外の声はうっすらと聞こえてきてるから。
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