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第2章 国
第32話 子供達
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「おかえり、どうだった?」
冒険者ギルドを出て、馬車に帰るとレイニーが迎えてくれた。レイニーは荷物を全部卸終わっていて、お金の入った革袋も馬車の中に入っていた。
「登録は終わったんだけどね」
「変な人がいたんだよレイニーお姉ちゃん」
「変な人?」
頭を掻きながら報告するとアイリが代わりに説明してくれた。指で顔を変形させてザイバツの顔に似せて話している。子供は正直なので仕方ない。
レイニーは苛立ちを募らせて拳を握りしめた。
「何だいその女が腐ったような男は! 女々しいったらありゃしないね~。いっちょ私が行って話をつけてやろうか!」
「レイニー。ヒフミ様が困るだけだから!」
レイニーが今にも走っていきそうなくらい憤っているとマイルが抱き着いて止めている。レイニーは結構仲間思いなんだな。
俺も引き留めないとやばそうなので両肩を抑えると治まってくれた。
「二人がいいならいいけどさ~……。それで? すぐに帰るのかい?」
「そうだな~……」
「お兄さん!」
「ん?」
帰るのかとレイニーに聞かれてレストランに行こうと言おうと思ったら子供に声をかけられた。煤で汚れたような服を着ている子で、前回、馬車を拭いてくれた子だ。スタミナポーションを一個ずつあげたんだよな。
「お兄さんありがとう。ずっとポーション配ってくれて~」
歯抜けでニカっと笑う子供。ポーションのおかげで体は元気みたいだな。
貿易に越させていた鉄騎士に、子供たちにポーションをあげるように言っておいたんだよな。力があるのに見過ごすのも罰が当たりそうだから、助けられるうちは助けていこうと思う。子供たちが俺達の街に来たいというのなら連れていくのもやぶさかではないけど、一向に言ってこないんだよな。そういえば、言っていなかったか? 伝えていなかったら言えるはずないよな。余裕があるし言ってみるか。
「喜んでくれてよかったよ。それで他の子達は? 話があるんだけど」
「お兄ちゃん達は市場にいると思うよ……。体が元気になったから仕事してるの。お兄ちゃんのおかげ~」
どうせなら全員連れて行きたいが……、仕事か~、邪魔になっちゃうか?
「仕事してるなんて偉いな~。どんな仕事してるんだ?」
「えっとね~……、荷物運びだよ~」
気になったから仕事内容を聞いてみた。少し考えた後に答えてくれたが間が気になるな。まさか、泥棒しているんじゃないだろうな……。
「このクソガキ! 品物返せ!」
変な心配をしているとそんな声が聞こえてきた。やっぱり……仕事ってそっちなのか……。
「逃げるぞ!」
「お兄ちゃん!」
「待て待て待てっと」
「わあ、離せよ! 捕まっちゃうだろ」
話していた子を引っ張っていこうとした少年を引き留める。泥棒なんてもう終わりだよ。
「あんた、ありがてえ。このクソガキ!」
「おっと、それはこっちでやるんで。それで、この子が盗んだものはいくらしますか?」
追いかけてきたおっさんが子供を殴ろうとしてきたので止める。子供の盗んだものの料金を聞くとおっさんは怪訝な顔をした。普通は盗人を庇う事はないだろうな。
「そのガキは長い間盗みを働いてたんだ。これだけじゃ許せねえな」
「そうか、ならいくらほしい?」
「そうだな~……大金貨一枚ってところかな」
「そんなに盗んでねえよ!」
おっさんはこっちの足元を見てくるくそ親父だったか。仕方ない、犯罪をしていたのだからしょうがない。
「一枚でいいんだな。ほら、これでいいだろ?」
「うほ~。確かに!」
「もういいだろ?」
「ああ、俺からは何もない。別の奴が来るかもしれないから早く街から出た方がいいぞ。じゃあな坊主!」
「うっせ~。死んじまえ」
大金貨を受け取ったおっさんは満面の笑みで帰っていった。大金貨はかなりの大金だからな。
その笑顔で子供たちに話しかけるものだから子供は苛立っているよ。
「なんてことするんだよ! あんな奴に」
「盗んだ方が悪いんだよ。これでお前達が許されるなら安いだろ」
「でも……それじゃあんちゃんが……」
盗んだ子供たちは申し訳なさそうにうつむいた。盗みはいけないことだと分かっているんだな。生きていくにはいけない事をしなくちゃいけない。子供にそれをさせてしまっているこの街がいけないよな。
「さて、しがらみもなくなったことで……。俺の街に来ないか?」
「へっ?」
少年は俺の誘いの言葉を聞いて気の抜けた声をあげた。
冒険者ギルドを出て、馬車に帰るとレイニーが迎えてくれた。レイニーは荷物を全部卸終わっていて、お金の入った革袋も馬車の中に入っていた。
「登録は終わったんだけどね」
「変な人がいたんだよレイニーお姉ちゃん」
「変な人?」
頭を掻きながら報告するとアイリが代わりに説明してくれた。指で顔を変形させてザイバツの顔に似せて話している。子供は正直なので仕方ない。
レイニーは苛立ちを募らせて拳を握りしめた。
「何だいその女が腐ったような男は! 女々しいったらありゃしないね~。いっちょ私が行って話をつけてやろうか!」
「レイニー。ヒフミ様が困るだけだから!」
レイニーが今にも走っていきそうなくらい憤っているとマイルが抱き着いて止めている。レイニーは結構仲間思いなんだな。
俺も引き留めないとやばそうなので両肩を抑えると治まってくれた。
「二人がいいならいいけどさ~……。それで? すぐに帰るのかい?」
「そうだな~……」
「お兄さん!」
「ん?」
帰るのかとレイニーに聞かれてレストランに行こうと言おうと思ったら子供に声をかけられた。煤で汚れたような服を着ている子で、前回、馬車を拭いてくれた子だ。スタミナポーションを一個ずつあげたんだよな。
「お兄さんありがとう。ずっとポーション配ってくれて~」
歯抜けでニカっと笑う子供。ポーションのおかげで体は元気みたいだな。
貿易に越させていた鉄騎士に、子供たちにポーションをあげるように言っておいたんだよな。力があるのに見過ごすのも罰が当たりそうだから、助けられるうちは助けていこうと思う。子供たちが俺達の街に来たいというのなら連れていくのもやぶさかではないけど、一向に言ってこないんだよな。そういえば、言っていなかったか? 伝えていなかったら言えるはずないよな。余裕があるし言ってみるか。
「喜んでくれてよかったよ。それで他の子達は? 話があるんだけど」
「お兄ちゃん達は市場にいると思うよ……。体が元気になったから仕事してるの。お兄ちゃんのおかげ~」
どうせなら全員連れて行きたいが……、仕事か~、邪魔になっちゃうか?
「仕事してるなんて偉いな~。どんな仕事してるんだ?」
「えっとね~……、荷物運びだよ~」
気になったから仕事内容を聞いてみた。少し考えた後に答えてくれたが間が気になるな。まさか、泥棒しているんじゃないだろうな……。
「このクソガキ! 品物返せ!」
変な心配をしているとそんな声が聞こえてきた。やっぱり……仕事ってそっちなのか……。
「逃げるぞ!」
「お兄ちゃん!」
「待て待て待てっと」
「わあ、離せよ! 捕まっちゃうだろ」
話していた子を引っ張っていこうとした少年を引き留める。泥棒なんてもう終わりだよ。
「あんた、ありがてえ。このクソガキ!」
「おっと、それはこっちでやるんで。それで、この子が盗んだものはいくらしますか?」
追いかけてきたおっさんが子供を殴ろうとしてきたので止める。子供の盗んだものの料金を聞くとおっさんは怪訝な顔をした。普通は盗人を庇う事はないだろうな。
「そのガキは長い間盗みを働いてたんだ。これだけじゃ許せねえな」
「そうか、ならいくらほしい?」
「そうだな~……大金貨一枚ってところかな」
「そんなに盗んでねえよ!」
おっさんはこっちの足元を見てくるくそ親父だったか。仕方ない、犯罪をしていたのだからしょうがない。
「一枚でいいんだな。ほら、これでいいだろ?」
「うほ~。確かに!」
「もういいだろ?」
「ああ、俺からは何もない。別の奴が来るかもしれないから早く街から出た方がいいぞ。じゃあな坊主!」
「うっせ~。死んじまえ」
大金貨を受け取ったおっさんは満面の笑みで帰っていった。大金貨はかなりの大金だからな。
その笑顔で子供たちに話しかけるものだから子供は苛立っているよ。
「なんてことするんだよ! あんな奴に」
「盗んだ方が悪いんだよ。これでお前達が許されるなら安いだろ」
「でも……それじゃあんちゃんが……」
盗んだ子供たちは申し訳なさそうにうつむいた。盗みはいけないことだと分かっているんだな。生きていくにはいけない事をしなくちゃいけない。子供にそれをさせてしまっているこの街がいけないよな。
「さて、しがらみもなくなったことで……。俺の街に来ないか?」
「へっ?」
少年は俺の誘いの言葉を聞いて気の抜けた声をあげた。
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