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第2章 国
第43話 焦り
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宿屋の部屋に案内されながらテセリウスの声を聞く。
『みんな頑張っているね~。一番頑張っているのは言わなくても分かっているかもだけど、カイジョウ君だ。順位は上がっていないけどね~』
テセリウスはそう言って順位を発表した。みんな、分かっているって前置きしているのはなんだ?
【一位】
エレイン・ルナティリア
【二位】
綾崎 姫子
【三位】
金山 金治
前回と同じで三位以降はずらっとクラスメイトの名前が書かれていく。一位がハジメじゃなくなっている……順位が下がったんじゃなくていなくなっているのが気になるところだ。
「こちらが四人部屋になります」
「やった~みんな一緒の部屋~」
順位を聞いて驚きながらも部屋に入る。アイリは案内された部屋を見て喜んでいるよ。宿屋が一番大きな建物なだけあって、部屋も豊富だ。四人部屋から一人部屋まで完備されている。
「私はリヴェ、主人はワースです。お湯や何か欲しいものがあったら何でも言ってね。ではごゆっくりどうぞ」
案内してくれたリヴェさんはお辞儀をして部屋を後にした。
俺は唖然としてベッドに座り込む。
まさか、ハジメは死んじまったのか?
「どうしたんですかヒフミ様?」
「いや……なんでも」
「何でもないわけありません。そんな悲しい顔初めて見ました」
マイルは俯く俺の顔を覗き込んで言ってきた。今、俺はどんな顔をしているんだ。初めての友達、最高の親友。ハジメが死んでしまったかもしれない。
『今回は誰も死ななかったね。それじゃこれからも順位報告はしていくから楽しみにしていてね~。じゃね~』
テセリウスはいつも通り、ハイテンションで順位報告を終えた。……前回は順位報告の後に死んだ人を発表していた。しかし、今回はない。って事はハジメは死んでいない?
「大丈夫ですか?」
「ありがとう。だけど、本当に大丈夫。まだまだ、希望が残ってたよ」
「そうですか……わたくしたちにできることがありましたらいつでも言ってくださいね。私達はヒフミ様の為なら何でも致しますから」
「マイル……」
マイルはそう言って抱きしめてくれた。同い年なのに凄い包容力だな。何だか、とても安心するよ。
ハジメは死んでいない。何があったのか分からないけど、とにかくそれは確実だ。テセリウスは人の死を報告して、面白がっていたように思えるからな。それが一位だった奴の報告はいち早く教えたいだろう。
意図して、死人発表をしなかったっていうのはないと思う。って事は死んでいないんだ。
しかし、順位に乗っていないのも事実。クラスメイトではない人が入っているのも可笑しな感じだ。エレイン・ルナティリア、覚えておいて損はないだろう。
ハジメの奴、俺を助けるようなことを言っていたくせに……仕方ないから俺が探し出してやる。待っていろよハジメ。
「さて、宿屋も確保したし、何か食べるか!」
「わ~い!」
食べに行こうと言うとアイリが元気よく答えた。宿屋の横に少し大きめの店があった。ここは冒険者の為の施設だけがある村だから、こういった施設は充実している。道具屋はもちろん、武器防具屋もあってギルドで買い取ってくれなかったらこっちでも行けそうだ。
レストランについて席に着くと少女がオーダーを取りに来た。アイリと同じくらいの少女なのに機敏に動いている。
「何にいたしますか?」
「何が出来ますか?」
「今日のおすすめはオーク肉のステーキとシチュー、あとは白いパンがおいしいです」
「じゃあ、それを人数分」
「かしこまりました~」
オーダーはマイルが受け持ってくれて、少女に伝えると、トテトテと厨房の方へと走っていった。厨房には数人の男の人がいて、みんなに伝えている。店はなかなかの賑わい、ここしか店がないっていうのもあると思うが繁盛していそうだ。
「お待たせいたしました~」
少女と少年が一緒に料理を運んできた。二人で数回往復して運んでいる。
「大変だね。手伝うか?」
「いえ! 僕らの仕事ですから!」
手伝おうと思ったが健気にも断ってきた。彼らの仕事を取っちゃだめだよな。目頭が熱くなってきたよ。
俺はマイルに目配せして、銀貨を二枚手渡した。マイルは、最初、首を傾げていたけど、用途が分かったようで頷いている。
「料理は揃いましたか?」
「は~い」
「では」
「ちょっと待ってね二人とも」
「「はい?」」
運び終わって帰ろうとした二人にマイルが銀貨を一枚ずつ手渡した。顔を見合った、二人は銀貨を再確認して、顔をパーっと輝かせて「「ありがとうございます」」と言って帰っていった。厨房の人達にも頭を撫でられたりして褒められているよ。温かい職場だな。
「ヒフミ様は優しいですね」
「ああいうのって放っておけないんだよな」
「ヒフミ様のそういう所……好きです」
「え?」
「いえ、何でもないです」
好き? ……あ~、隙になるって事か。マイルみたいな美人に隙ですって言われたら誰でも誤解するよな。
確かに最強の勇者が子供に化けた魔物に負ける話とか聞いたことあるからな。マイルの忠告はしかと聞いておこう。
『みんな頑張っているね~。一番頑張っているのは言わなくても分かっているかもだけど、カイジョウ君だ。順位は上がっていないけどね~』
テセリウスはそう言って順位を発表した。みんな、分かっているって前置きしているのはなんだ?
【一位】
エレイン・ルナティリア
【二位】
綾崎 姫子
【三位】
金山 金治
前回と同じで三位以降はずらっとクラスメイトの名前が書かれていく。一位がハジメじゃなくなっている……順位が下がったんじゃなくていなくなっているのが気になるところだ。
「こちらが四人部屋になります」
「やった~みんな一緒の部屋~」
順位を聞いて驚きながらも部屋に入る。アイリは案内された部屋を見て喜んでいるよ。宿屋が一番大きな建物なだけあって、部屋も豊富だ。四人部屋から一人部屋まで完備されている。
「私はリヴェ、主人はワースです。お湯や何か欲しいものがあったら何でも言ってね。ではごゆっくりどうぞ」
案内してくれたリヴェさんはお辞儀をして部屋を後にした。
俺は唖然としてベッドに座り込む。
まさか、ハジメは死んじまったのか?
「どうしたんですかヒフミ様?」
「いや……なんでも」
「何でもないわけありません。そんな悲しい顔初めて見ました」
マイルは俯く俺の顔を覗き込んで言ってきた。今、俺はどんな顔をしているんだ。初めての友達、最高の親友。ハジメが死んでしまったかもしれない。
『今回は誰も死ななかったね。それじゃこれからも順位報告はしていくから楽しみにしていてね~。じゃね~』
テセリウスはいつも通り、ハイテンションで順位報告を終えた。……前回は順位報告の後に死んだ人を発表していた。しかし、今回はない。って事はハジメは死んでいない?
「大丈夫ですか?」
「ありがとう。だけど、本当に大丈夫。まだまだ、希望が残ってたよ」
「そうですか……わたくしたちにできることがありましたらいつでも言ってくださいね。私達はヒフミ様の為なら何でも致しますから」
「マイル……」
マイルはそう言って抱きしめてくれた。同い年なのに凄い包容力だな。何だか、とても安心するよ。
ハジメは死んでいない。何があったのか分からないけど、とにかくそれは確実だ。テセリウスは人の死を報告して、面白がっていたように思えるからな。それが一位だった奴の報告はいち早く教えたいだろう。
意図して、死人発表をしなかったっていうのはないと思う。って事は死んでいないんだ。
しかし、順位に乗っていないのも事実。クラスメイトではない人が入っているのも可笑しな感じだ。エレイン・ルナティリア、覚えておいて損はないだろう。
ハジメの奴、俺を助けるようなことを言っていたくせに……仕方ないから俺が探し出してやる。待っていろよハジメ。
「さて、宿屋も確保したし、何か食べるか!」
「わ~い!」
食べに行こうと言うとアイリが元気よく答えた。宿屋の横に少し大きめの店があった。ここは冒険者の為の施設だけがある村だから、こういった施設は充実している。道具屋はもちろん、武器防具屋もあってギルドで買い取ってくれなかったらこっちでも行けそうだ。
レストランについて席に着くと少女がオーダーを取りに来た。アイリと同じくらいの少女なのに機敏に動いている。
「何にいたしますか?」
「何が出来ますか?」
「今日のおすすめはオーク肉のステーキとシチュー、あとは白いパンがおいしいです」
「じゃあ、それを人数分」
「かしこまりました~」
オーダーはマイルが受け持ってくれて、少女に伝えると、トテトテと厨房の方へと走っていった。厨房には数人の男の人がいて、みんなに伝えている。店はなかなかの賑わい、ここしか店がないっていうのもあると思うが繁盛していそうだ。
「お待たせいたしました~」
少女と少年が一緒に料理を運んできた。二人で数回往復して運んでいる。
「大変だね。手伝うか?」
「いえ! 僕らの仕事ですから!」
手伝おうと思ったが健気にも断ってきた。彼らの仕事を取っちゃだめだよな。目頭が熱くなってきたよ。
俺はマイルに目配せして、銀貨を二枚手渡した。マイルは、最初、首を傾げていたけど、用途が分かったようで頷いている。
「料理は揃いましたか?」
「は~い」
「では」
「ちょっと待ってね二人とも」
「「はい?」」
運び終わって帰ろうとした二人にマイルが銀貨を一枚ずつ手渡した。顔を見合った、二人は銀貨を再確認して、顔をパーっと輝かせて「「ありがとうございます」」と言って帰っていった。厨房の人達にも頭を撫でられたりして褒められているよ。温かい職場だな。
「ヒフミ様は優しいですね」
「ああいうのって放っておけないんだよな」
「ヒフミ様のそういう所……好きです」
「え?」
「いえ、何でもないです」
好き? ……あ~、隙になるって事か。マイルみたいな美人に隙ですって言われたら誰でも誤解するよな。
確かに最強の勇者が子供に化けた魔物に負ける話とか聞いたことあるからな。マイルの忠告はしかと聞いておこう。
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