47 / 59
第2章 国
第47話 説教
しおりを挟む
「おお、ヒフミ。今日は朝から来てくれたのか?」
「ああ、ガンジさん。おすすめを人数分」
「了解。今日はおごりで良いぜ」
レストランに入って、ガンジさんに迎えられた。適当におすすめを頼むと親指を立てておごると言ってくれた。
おごってもらうのも悪いと思っていいって言ったんだけど、そこはガンジさんも頑なでお金は受け取ってくれなかったよ。しょうがないからまたチップを弾むか。
「それで? 説明してくれ」
席についてザイバツに説明を求める。ザイバツはホールで働く子供達を見つめた。
「聞いてる?」
「ああ……このレストランではよく食事をするんだ」
ザイバツはなおも子供を見つめる。子供を見る目はとても純粋でまるで親のような輝きがある。
「ここの子供達の素性は知っているか?」
「ん? ああ、聞いてるよ。親を亡くしたんだろ?」
「そうだ……」
質問に答えるとザイバツは俯いて一つの短剣を取り出した。短剣は銀色に輝いていて、高価そうに思える。
「それは?」
「俺の親友の形見さ。お前達と同じように親子で冒険者をしていたんだ……」
形見か……って事は親友は死んでいるんだな。
「それと俺達に絡んだ理由が関係しているのか?」
「ああ、親子でのダンジョンの利用を控えてもらおうと思って絡んだのさ。今思えば、馬鹿なやり方だと思うよ」
ザイバツは俺達に死んでほしくなくて、ここの子供達のように孤児にしないようにしたかったって事か。確かに、あんなサンドワームとの戦闘になったら普通の人たちは死んでしまうかもしれないな。
この世界の人たちはレベルが低いのはザイバツで分かったし、思ってみれば、レイグランド達の兵士を一掃できたのもレベルが低い相手だったからって事なんだよな。
ザイバツは馬鹿なりに心配して、力づくてやめさせようとしたって事か。いい奴だな、やり方は間違ったけどな。
「あいよ! 朝はさっぱり芋のスープとラム肉のサラダだ」
ガンジさんが料理を運んできてくれた。子供達も一緒に持ってきたので全員に行き渡る。朝なのでそれほど客がいないからいっぺんに用意できたみたいだな。
「ありがとう」
「どういたしまして」
ガンジさん達にお礼を言うとニカっと笑って席から離れていった。子供たちはザイバツを見て笑いかけてくれたよ。落ち込んでいる人を元気づけることもできるなんて、できた子供達だ。
「いい子達だな」
「ああ、本当にすまなかった」
「もういいよ。誤解だったんだろ」
「あんたは強かった。それなら心配はいらないよな」
ザイバツは少し元気になってサラダを一口頬張った。人に忠告するのに暴力しか思い浮かばないような馬鹿だけど、悪い奴じゃないんだろうな。
「あなた! やり方が下手! お兄ちゃんならもっと話し合うよ!」
「うっ。それを言われるとなんも言えねえ」
アイリにズバッと突っ込まれてたじたじになるザイバツ。この子の言う通りなので俺は何も言わずに芋のスープを口に入れた。
芋のスープは俗にいうビシソワーズだ。冷たくてさらっさらのスープでかなり美味しい。胡椒が少し入っているみたいでいい香りが鼻にかおる。
「朝にぴったりのスープですね」
「ああ、美味しいな」
「美味しいですね」
マイルも美味しいと言ってスープを口に入れていく。美味しいと返すとリックも美味しそうに呟いた。
冷たい飲み物って久しぶりだから何だかうれしいな。どうやって作ってるんだ?
「これってどうやって作るのかな?」
「えっとね~……。親方~」
「はは、まだわからねえか。魔法使いに氷魔法使ってもらって氷を手に入れるんだよ。それで鉄で作ったボールでスープを作って冷やしながら作るんだよ」
ホールで掃除をしていた子供に料理の事を聞いたら親方に助けを呼んだ。親方はガハハと笑って説明してくれた。聞いておいてなんだけど、レシピをそんな簡単に教えていいのか?
「マイルは氷魔法できるのか?」
「私もできますし、ヒフミ様の精霊様でもできますよ」
あ~、そうだった。杖達は万能だから、大抵の魔法は出来るんだよな。
「俺だけ場違いだな」
ザイバツが狼狽えながら食事を進める。家族団らんみたいな空気に引け目を感じているようだ。
「ザイバツはもっと対話を大事にしろよな。そんな怖い顔で脅したら、ただの恐喝にしかならないだろ」
「すまねえ……。今度からはちゃんと話してみるよ」
思ってみれば、冒険者ギルドでのヤジもやめさせようとして言ってきていたんだな。ギルドの人達が無視するだけで、文句を言わなかったのは事情を知っていたからなのか。ゼーレンもちゃんと言ってくれればよかったのにな。
「ああ、ガンジさん。おすすめを人数分」
「了解。今日はおごりで良いぜ」
レストランに入って、ガンジさんに迎えられた。適当におすすめを頼むと親指を立てておごると言ってくれた。
おごってもらうのも悪いと思っていいって言ったんだけど、そこはガンジさんも頑なでお金は受け取ってくれなかったよ。しょうがないからまたチップを弾むか。
「それで? 説明してくれ」
席についてザイバツに説明を求める。ザイバツはホールで働く子供達を見つめた。
「聞いてる?」
「ああ……このレストランではよく食事をするんだ」
ザイバツはなおも子供を見つめる。子供を見る目はとても純粋でまるで親のような輝きがある。
「ここの子供達の素性は知っているか?」
「ん? ああ、聞いてるよ。親を亡くしたんだろ?」
「そうだ……」
質問に答えるとザイバツは俯いて一つの短剣を取り出した。短剣は銀色に輝いていて、高価そうに思える。
「それは?」
「俺の親友の形見さ。お前達と同じように親子で冒険者をしていたんだ……」
形見か……って事は親友は死んでいるんだな。
「それと俺達に絡んだ理由が関係しているのか?」
「ああ、親子でのダンジョンの利用を控えてもらおうと思って絡んだのさ。今思えば、馬鹿なやり方だと思うよ」
ザイバツは俺達に死んでほしくなくて、ここの子供達のように孤児にしないようにしたかったって事か。確かに、あんなサンドワームとの戦闘になったら普通の人たちは死んでしまうかもしれないな。
この世界の人たちはレベルが低いのはザイバツで分かったし、思ってみれば、レイグランド達の兵士を一掃できたのもレベルが低い相手だったからって事なんだよな。
ザイバツは馬鹿なりに心配して、力づくてやめさせようとしたって事か。いい奴だな、やり方は間違ったけどな。
「あいよ! 朝はさっぱり芋のスープとラム肉のサラダだ」
ガンジさんが料理を運んできてくれた。子供達も一緒に持ってきたので全員に行き渡る。朝なのでそれほど客がいないからいっぺんに用意できたみたいだな。
「ありがとう」
「どういたしまして」
ガンジさん達にお礼を言うとニカっと笑って席から離れていった。子供たちはザイバツを見て笑いかけてくれたよ。落ち込んでいる人を元気づけることもできるなんて、できた子供達だ。
「いい子達だな」
「ああ、本当にすまなかった」
「もういいよ。誤解だったんだろ」
「あんたは強かった。それなら心配はいらないよな」
ザイバツは少し元気になってサラダを一口頬張った。人に忠告するのに暴力しか思い浮かばないような馬鹿だけど、悪い奴じゃないんだろうな。
「あなた! やり方が下手! お兄ちゃんならもっと話し合うよ!」
「うっ。それを言われるとなんも言えねえ」
アイリにズバッと突っ込まれてたじたじになるザイバツ。この子の言う通りなので俺は何も言わずに芋のスープを口に入れた。
芋のスープは俗にいうビシソワーズだ。冷たくてさらっさらのスープでかなり美味しい。胡椒が少し入っているみたいでいい香りが鼻にかおる。
「朝にぴったりのスープですね」
「ああ、美味しいな」
「美味しいですね」
マイルも美味しいと言ってスープを口に入れていく。美味しいと返すとリックも美味しそうに呟いた。
冷たい飲み物って久しぶりだから何だかうれしいな。どうやって作ってるんだ?
「これってどうやって作るのかな?」
「えっとね~……。親方~」
「はは、まだわからねえか。魔法使いに氷魔法使ってもらって氷を手に入れるんだよ。それで鉄で作ったボールでスープを作って冷やしながら作るんだよ」
ホールで掃除をしていた子供に料理の事を聞いたら親方に助けを呼んだ。親方はガハハと笑って説明してくれた。聞いておいてなんだけど、レシピをそんな簡単に教えていいのか?
「マイルは氷魔法できるのか?」
「私もできますし、ヒフミ様の精霊様でもできますよ」
あ~、そうだった。杖達は万能だから、大抵の魔法は出来るんだよな。
「俺だけ場違いだな」
ザイバツが狼狽えながら食事を進める。家族団らんみたいな空気に引け目を感じているようだ。
「ザイバツはもっと対話を大事にしろよな。そんな怖い顔で脅したら、ただの恐喝にしかならないだろ」
「すまねえ……。今度からはちゃんと話してみるよ」
思ってみれば、冒険者ギルドでのヤジもやめさせようとして言ってきていたんだな。ギルドの人達が無視するだけで、文句を言わなかったのは事情を知っていたからなのか。ゼーレンもちゃんと言ってくれればよかったのにな。
0
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる