孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
52 / 55
第二章

第52話 兄弟

しおりを挟む
「これからつらい戦いが始まる。だけど僕は君を守って戦うよ」

 手を握って決意を告げるフェリアン様。
 慰めてくれてるんだけど、僕らが行動してることは知らないんだな。

「ありがとうございますフェリアン様。ですが」

「フィル。これからは一緒に戦うともだろう。それに兄弟なんだからフェリお兄様でいいよ」

「あっ、はい。フェリお兄様」

「うん。それでどうしたんだいフィル?」

 フェリアン様がお兄様呼びを強要してきて仕方なく呼んで話す。優しく微笑んで耳を傾けてくれた。お兄様呼びは恥ずかしいな。

「大変いいにくいんですが」

「なんだいフィル? 兄弟なんだから何でも言ってくれて大丈夫だぞ」

「あの~」

「うんうん」

「たぶん、ガイアンは捕縛されてます」

「うんうん。そうかそうかガイアンは……。はぁ!?」

 耳を傾けてくれるフェリアン様に真実を告げると驚いて目を見開く。狐目のフェリアン様もこんなに目を開けるんだな。綺麗なブルーアイが僕を見据える。

「ふぃ、フィルがやったのかい?」

「はい、ジェラルド様を救出しようと思って城に潜入する際に眠らせたんですが、城の兵士も含めて全員を」

「は、ははは。アライア男爵の屋敷の時と同じようにか……なるほど、その手があったんだね~」
 
 呆れた表情で声をもらすフェリアン様。流石の現実に呆れてしまったみたいだね。

「ということはお父様はすでに?」

「はい! 孤児院に匿っています」

「そ、そうか……。ははは、ガイアンも気の毒にな。二日天下というやつか」

 敵を憐れむほど呆気ない決着にフェリアン様は天を仰いだ。それをやったのが僕みたいな少年なんだから呆れてしまっても仕方ないよな。

「フェリお兄様。戻りましょう。僕らの家に」

「ああ、戻ろう城へ」

 うなだれているフェリアン様に手を差し伸べる。テントから出た僕らに跪くフェリアン様の兵士達、お兄様はゲルグガルドを指さして、

「帰ろう。僕らの国へ!」

 と叫ぶみんな驚いていたけど、『ハッ!』て答えて陣を片付けていく。

 こうして、ガイアンの二日天下は幕を閉じていった。
 

「お帰りなさいフィル!」

「もう、また一人で行っちゃうんだから、ルリが凄い顔してたよ!」

「ちょ、ちょっとリファ……」

 孤児院にフェリアン様と一緒に帰ってくるとルリとリファに迎えられた。わざわざ屋敷の外に出てきてくれて迎えてくれてなんだか嬉しいな。

「ははは、二人とも外じゃフェリアン様に悪いでしょ。中に入ろ」

「「うん。フェリアン様もお帰りなさい」」

「ああ、ただいま。フィルのお嫁さん方」

「「ええ!? そ、そんな~」」

 二人の頭を撫でて屋敷へと促すとフェリアン様がからかい始めた。お嫁さんって二人が僕にそんな気あるわけないじゃないか。顔を赤くしてるけどそれは恥ずかしいだけでしょ。
 まったく、フェリアン様は。

「そうか、君たちがフィルのお嫁さんになったら僕の妹になるわけだな」

「そ、そんなフィルのお嫁さんなんて、私達じゃ釣り合わな……え? 妹?」

 フェリアン様が余計なことを話してしまってその場で止まってしまう二人。頭がフル回転する音が聞こえるほど考え込んでいるのが分かる二人。考えが終わって僕を振り返ると一瞬で近づいてきて顔を近づけてくる。

「やっぱり! フィルは王子様だったんだ~!」

「フィル様?」

 目を輝かせるルリと疑問符を投げかけてくるリファ。二人とも信じてはいるみたいだ。本当かどうかは分からないけど、確かに僕とフェリアン様は似てるところがあるんだよな。思ってみれば捨てられていたのに名前が分かってたのも変だしね。

「二人ともとりあえず入ろ。話はそれからだよ。ジェラルド様は起きてるかな?」

「あ、うん。ジェラルド様は気が付いたってギルベンさんが言ってたよ」

 二人の頭を撫でてあげるとルリが答えてくれた。王様はすべて知ってるはずだ。王様にすべて答えてもらおう。

 屋敷に入るとみんなが迎えてくれた。軽く挨拶をすると『王子様』とかみんなに言われて軽くからかわれる。畏まれるよりはいいけど、恥ずかしいな。
 みんながそのまま僕らについてきて二階のジェラルド様の眠る寝室へと向かう。みんなで行列を作るものだから子供達も集まってきて二階がギシギシいってる。ノームに補強をさせたほうがいいかもしれないな。

「お父様!」

「おお、フェリアン。話は聞いた居たぞ。息災で何より」

「お父様! それは僕の言葉ですよ。お元気そうで」

 涙の再会、フェリアン様は屈伸運動をしていたジェラルド様の手を取って涙した。ジェラルド様は豪快にガハガハ笑ってる。

「儂が体を壊してしまうとはな。長く生きておると不思議なことに出くわすものだな」

「まったく、長い間寝たきりだったくせに……でも、よかった。ご無事で。それにしても寝たきりだったにしては体が……」

 ガハハと話すジェラルド様に呆れて声をもらすフェリアン様。
 ムキッムキッと自己主張する筋肉。ジェラルド様は寝たきりだったのにムキムキだ。どういうこと?

「うむ、儂も不思議なんじゃがな。体が若返ったかのようでな。全盛期並みになっておる。楽しくて筋トレをしておったのじゃ」

「フォッフォッフォ。若かりし頃を思い出しますな王よ」

「うむ、ギルベンも息災で何よりだ。どうだ? 訓練でもするか?」

「いえいえ、私はすでに引退しております。鬼とは名ばかりですよ」

 不思議そうに首を傾げるジェラルド様。ギルベンさんとはやっぱり顔見知りみたいで笑いあってる。

「ん? フェリアン。あの子は?」

「あっ。フィルですよお父様。ルーシーさんとの子です」

「……ルーシーとの子」

 さっきまで豪快に話していたジェラルド様。意気消沈してベッドに座り込む。

「フェリアン。彼と二人きりにしてくれるか? ギルベンも」

「「はい」」

 意気消沈したジェラルド様の指示でみんな外に出ていく。
 扉を開けてみてきていたみんなも空気を呼んで扉を閉める。

「フィルと言ったか? 何歳だ?」

「8歳です。この間誕生日だったみたいで」

「……そうか」

 優しく頭を撫でてくるジェラルド様。目には涙が滲んでる。
しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

処理中です...