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第一章
第6話 九死に一生
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黒いワーウルフと対峙して、静寂があたりを包む。実際の時間よりも長く感じたその静寂の間、それが崩れると一気に耳を塞ぎたくなるほどの咆哮と剣が音を響かせた。
「ぐ! 強いな」
一瞬にしてワーウルフに切り込み押し返されたグレンさん。両者ともに互角といった様相だ。
僕がどう動くかによって勝敗が決するといっても過言じゃない状況。
僕はすぐに目を瞑って転生を行った。
名前 ティル 僧侶
レベル 1/5
HP 200
MP 290
STR 125
DEF 130
DEX 130
AGI 110
INT 129
MND 129
スキル
【解体中級】【剣士下級】【魔法使い下級】【僧侶下級】
僧侶に転生した。
魔法を試していないけどこれで回復魔法の【ヒール】が使えればかなり有利になるはずだ。
グレンさんが被弾を気にしなくて済むから、大胆に攻めることが出来るはずだ。
出来なかったら困るからグレンさんに言う前に。
「【ヒール】! 出来た」
魔法の詠唱を知らないから魔法名だけ言ってみた。すると光が手から出た。
回復魔法は冒険者ギルドで何度か見たことがある。間違いなくヒールだ。
「ティル!」
「グ、グレンさん……」
ヒールに感動しているとワーウルフが僕に迫ってきてた。一瞬の出来事で何が起こったのかわかった時にはグレンさんが口から血を流してた。
「グレンさん!?」
「へへ、へましちまった」
違う、グレンさんが悪いんじゃない。僕がよそ見をしていたからだ、ワーウルフはそれを見て僕を襲ったんだ。
庇う様にグレンさんは飛び出して傷ついてしまった……僕のせいだ。
「ヒール!」
「おい、ティル。いつの間に回復魔法を……」
傷ついたグレンさんに回復魔法をかける。驚くグレンさんがみるみる回復していく。
その様子を見ていたワーウルフはすぐに攻撃してきた。
「ぐ! やらせるかよ!」
傷の痛みが和らいだグレンさんがすぐに起き上がってワーウルフの爪を素手で受け止める。大剣と槍を持つ暇はなかったみたいだ。
「グレンさん!」
「今だ! 攻撃しろティル!」
「はい!」
太刀を振り上げてグレンさんが動きを止めているワーウルフに振り下ろした。
太刀は何の抵抗もなくワーウルフの腕を切り落とす。
「ガルルル……」
逃げ出そうと洞窟へと振り返るワーウルフ、逃がすわけにはいかない、つかさず、
「【ライトニング】!」
追いつける気がしなかったから雷撃の魔法を放った。
ライトニングは見事にワーウルフに当たって、ダメージと同時に動きを鈍くさせた。
「とどめだ!」
グレンさんも走り出して、ワーウルフに大剣を振り下ろした。縦に真っ二つになったワーウルフ、声も出す暇もなく絶命していった。
「ハァハァ。何とかなったな」
「はい」
息を整えて、お互いの無事を確認する。
何とか生き残れたけどかなりやばかったな。
僕のせいでグレンさんが死んじゃうところだった。
「いや~助かったよティル。魔法が使えたなんてな」
「いえ、お礼を言うのは僕の方ですよグレンさん。身をていして守ってくれてありがとうございます」
あの時僕がやられてたら死んでた。僕のステータスとグレンさんのステータスじゃかなりの違いがある。
そんなグレンさんにダメージを負わせたワーウルフの攻撃を無防備に僕が喰らっていたら即死していたと思うよ。
少しは強くなったとは思うけど、グレンさんにはまだまだ届かないかな。
「ふう、今回はこのくらいにしておくか」
「そうですね」
九死に一生を得たのでかなり疲れた。転生も三回出来たし上出来でしょう。
まあ、まだ三回目の転生はしていないけどね。次は何にしようかな。
無事に僕らはエリクトンに帰還する。一日でどれだけレベルが上がったんだろう。
グレンさんのパワーレベリングのおかげで強くなれたな~。
「お帰りなさいティル君」
「ただいま戻りましたシーラさん」
ギルドに帰ってくるとシーラさんが迎えてくれた。
「何だよシーラ、俺も帰ってきてるんだけど?」
「ああグレンもお帰りなさい」
「もってなんだよもって」
「そんなことよりもティル君。一緒にご飯にしましょ。初めての討伐の話を聞きたいわ」
「お、おい!」
シーラさんに引っ張られてギルドに併設されている酒場へ。
机をはさんで向かい合わせに座って今回の話をする。
彼女は嬉しそうに褒めてくれた。
「凄いじゃない。魔法も使えるようになったのね」
「はい」
「ん~。もうちょっとグレンに優しくしておくべきだったかしら、失敗したわ」
「ははは」
今回の闘いの事を全部言ったから後悔してるシーラさん。
グレンさんとシーラさんはなぜか仲が悪いからな~。見かけるといつも言い合いになっているんだよね。
その話がいつも僕の話だったが気になるけどね。
「おう、ティル。これが今回の討伐報酬だ」
「あっすみませんグレンさん。報告までさせちゃって」
「ああ、いいんだよ。シーラのせいだからな」
グレンさんは椅子に座ってシーラさんを睨みつける。シーラさんはそっぽを向いてジュースを一口飲み込んだ。無視してるね。仲良くしてほしいけどな。
「それにしても大量ですね……」
「おう。ワーウルフでも討伐報酬は高いのに、ジェネラルワーウルフだったからな」
「ジェネラル! それってAランクの魔物じゃない。よく無事だったわね」
報酬が多かったから驚いて聞くとグレンさんは自慢げに話してくれた。
ジェネラルと聞くとシーラさんが思わず立ち上がって驚いてる。
支配者級とは聞いていたけど、ジェネラルだったのか~。王冠がなかったからキングではないと思ったけど。
「鑑定で見た時は死を覚悟したけどな。ティルのおかげで何とか勝てたよ」
「そ、そんな。僕は何も」
「ははは、謙遜するなよ。回復や攻撃の魔法が使えるのはかなり凄いことだぞ。両方使えるのは稀なんだ」
グレンさんが頭を撫でながら褒めてくる。すっごい褒めるもんだから恥ずかしくなってくるよ。
「本当に凄いわティル君」
グレンさんに続いてシーラさんも撫でてくる。二人が僕の頭の上を取りあいしてる。バチバチ音が聞こえるよ。
「ぐ! 強いな」
一瞬にしてワーウルフに切り込み押し返されたグレンさん。両者ともに互角といった様相だ。
僕がどう動くかによって勝敗が決するといっても過言じゃない状況。
僕はすぐに目を瞑って転生を行った。
名前 ティル 僧侶
レベル 1/5
HP 200
MP 290
STR 125
DEF 130
DEX 130
AGI 110
INT 129
MND 129
スキル
【解体中級】【剣士下級】【魔法使い下級】【僧侶下級】
僧侶に転生した。
魔法を試していないけどこれで回復魔法の【ヒール】が使えればかなり有利になるはずだ。
グレンさんが被弾を気にしなくて済むから、大胆に攻めることが出来るはずだ。
出来なかったら困るからグレンさんに言う前に。
「【ヒール】! 出来た」
魔法の詠唱を知らないから魔法名だけ言ってみた。すると光が手から出た。
回復魔法は冒険者ギルドで何度か見たことがある。間違いなくヒールだ。
「ティル!」
「グ、グレンさん……」
ヒールに感動しているとワーウルフが僕に迫ってきてた。一瞬の出来事で何が起こったのかわかった時にはグレンさんが口から血を流してた。
「グレンさん!?」
「へへ、へましちまった」
違う、グレンさんが悪いんじゃない。僕がよそ見をしていたからだ、ワーウルフはそれを見て僕を襲ったんだ。
庇う様にグレンさんは飛び出して傷ついてしまった……僕のせいだ。
「ヒール!」
「おい、ティル。いつの間に回復魔法を……」
傷ついたグレンさんに回復魔法をかける。驚くグレンさんがみるみる回復していく。
その様子を見ていたワーウルフはすぐに攻撃してきた。
「ぐ! やらせるかよ!」
傷の痛みが和らいだグレンさんがすぐに起き上がってワーウルフの爪を素手で受け止める。大剣と槍を持つ暇はなかったみたいだ。
「グレンさん!」
「今だ! 攻撃しろティル!」
「はい!」
太刀を振り上げてグレンさんが動きを止めているワーウルフに振り下ろした。
太刀は何の抵抗もなくワーウルフの腕を切り落とす。
「ガルルル……」
逃げ出そうと洞窟へと振り返るワーウルフ、逃がすわけにはいかない、つかさず、
「【ライトニング】!」
追いつける気がしなかったから雷撃の魔法を放った。
ライトニングは見事にワーウルフに当たって、ダメージと同時に動きを鈍くさせた。
「とどめだ!」
グレンさんも走り出して、ワーウルフに大剣を振り下ろした。縦に真っ二つになったワーウルフ、声も出す暇もなく絶命していった。
「ハァハァ。何とかなったな」
「はい」
息を整えて、お互いの無事を確認する。
何とか生き残れたけどかなりやばかったな。
僕のせいでグレンさんが死んじゃうところだった。
「いや~助かったよティル。魔法が使えたなんてな」
「いえ、お礼を言うのは僕の方ですよグレンさん。身をていして守ってくれてありがとうございます」
あの時僕がやられてたら死んでた。僕のステータスとグレンさんのステータスじゃかなりの違いがある。
そんなグレンさんにダメージを負わせたワーウルフの攻撃を無防備に僕が喰らっていたら即死していたと思うよ。
少しは強くなったとは思うけど、グレンさんにはまだまだ届かないかな。
「ふう、今回はこのくらいにしておくか」
「そうですね」
九死に一生を得たのでかなり疲れた。転生も三回出来たし上出来でしょう。
まあ、まだ三回目の転生はしていないけどね。次は何にしようかな。
無事に僕らはエリクトンに帰還する。一日でどれだけレベルが上がったんだろう。
グレンさんのパワーレベリングのおかげで強くなれたな~。
「お帰りなさいティル君」
「ただいま戻りましたシーラさん」
ギルドに帰ってくるとシーラさんが迎えてくれた。
「何だよシーラ、俺も帰ってきてるんだけど?」
「ああグレンもお帰りなさい」
「もってなんだよもって」
「そんなことよりもティル君。一緒にご飯にしましょ。初めての討伐の話を聞きたいわ」
「お、おい!」
シーラさんに引っ張られてギルドに併設されている酒場へ。
机をはさんで向かい合わせに座って今回の話をする。
彼女は嬉しそうに褒めてくれた。
「凄いじゃない。魔法も使えるようになったのね」
「はい」
「ん~。もうちょっとグレンに優しくしておくべきだったかしら、失敗したわ」
「ははは」
今回の闘いの事を全部言ったから後悔してるシーラさん。
グレンさんとシーラさんはなぜか仲が悪いからな~。見かけるといつも言い合いになっているんだよね。
その話がいつも僕の話だったが気になるけどね。
「おう、ティル。これが今回の討伐報酬だ」
「あっすみませんグレンさん。報告までさせちゃって」
「ああ、いいんだよ。シーラのせいだからな」
グレンさんは椅子に座ってシーラさんを睨みつける。シーラさんはそっぽを向いてジュースを一口飲み込んだ。無視してるね。仲良くしてほしいけどな。
「それにしても大量ですね……」
「おう。ワーウルフでも討伐報酬は高いのに、ジェネラルワーウルフだったからな」
「ジェネラル! それってAランクの魔物じゃない。よく無事だったわね」
報酬が多かったから驚いて聞くとグレンさんは自慢げに話してくれた。
ジェネラルと聞くとシーラさんが思わず立ち上がって驚いてる。
支配者級とは聞いていたけど、ジェネラルだったのか~。王冠がなかったからキングではないと思ったけど。
「鑑定で見た時は死を覚悟したけどな。ティルのおかげで何とか勝てたよ」
「そ、そんな。僕は何も」
「ははは、謙遜するなよ。回復や攻撃の魔法が使えるのはかなり凄いことだぞ。両方使えるのは稀なんだ」
グレンさんが頭を撫でながら褒めてくる。すっごい褒めるもんだから恥ずかしくなってくるよ。
「本当に凄いわティル君」
グレンさんに続いてシーラさんも撫でてくる。二人が僕の頭の上を取りあいしてる。バチバチ音が聞こえるよ。
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