26 / 50
第26話 夜会
しおりを挟む
その部屋は白と金で統一されていた。
華奢で優美な猫脚の鏡台も白で、金の渦巻きのような飾りが施されている。
鏡台の上に飾られた小さな肖像画には、赤い髪を豊かに結い上げた女性が緑色のドレスに身を包んだ姿が描かれている。
赤い髪、猫のように丸く吊り上がり気味の明るい茶色の目。白い肌に豊かに盛り上がった胸。
目の色こそ異なるが、肖像画の女性は、鏡台の前に座っている若い女性に、よく似ていた。
アレキサンドラ・オブライエン。オブライエン公爵のたった1人の愛娘。
有名な歌姫だった女性を正妻として娶ったオブライエン公爵の娘として生まれたアレキサンドラは、母譲りの美貌と、父から受け継いだ貴族最高位の令嬢の地位に恵まれ、いつも華やかな光に包まれているような女性だった。
赤いバラを愛する彼女は、『ランスの赤いバラ』と呼ばれ、社交界では彼女を知らない者はいない。
アレキサンドラはドレスにも赤いバラの紋様を使っていた。
「あのドレスを今度の夜会でお召しになるのですか?」
1人の侍女が、アレキサンドラの長い髪に香油をすり込みながら言った。
視線の先には、トルソーに着せつけたエメラルドグリーンのドレスがあった。
豪華なタフタ地は艶やかでたっぷりとひだが取られ、ドレスに施された赤いバラの刺繍が華やかに目を引く。
まさに最高級の職人の手仕事を感じさせる、ゴージャスなドレスだ。
「そうよ。皇帝陛下のために、最高に美しく装わなければ」
アレキサンドラが唇をふっと釣り上げた。
もう1人の侍女はアレキサンドラの腕を取り、滑らかなクリームを伸ばしながら、首から肩、腕へとマッサージを施していた。
「ドレスに合わせて、亡きお母様のエメラルドの首飾りを付けるつもりよ。肌が艶々と輝くように、しっかり手入れをしてちょうだい」
「かしこまりました」
2人の侍女が声を揃えた。
「あの姫巫女とは、いまだに正式に結婚式を挙げていないわ。帝国に到着した時には、陛下は見るからにイライラとして不機嫌なご様子だったと父から聞いているし。本当に皇后になるとは思えない。いつも神殿に行っていて、陛下を放りっぱなしで、お妃教育すら受けていないわ。それに、彼女が着ている、粗末な白い服は何なの? いつもいつも同じ服だわ。まともなドレスの1枚も陛下から贈られていないなんて、哀れとしか言いようがないわね。ともかく、わたくしはしっかりと陛下に自分の気持ちをお伝えするつもりよ」
侍女はうなづいた。
「それがよろしゅうございます、お嬢様。お嬢様を無視できる殿方など、いないのですから」
「ふふ……」
アレキサンドラは笑った。
笑顔のまま、目の前の小箱に並べられた、まるでキャンディのような口紅を物色していく。
ほっそりとした白い指に選ばれた赤い紅が、侍女の手でアレキサンドラの唇に塗られていく。
アレキサンドラは鏡の前で、口角を上げて微笑んだ。
それは、自分の勝利を確信する、そんな微笑みだった。
コンコン、と軽いノックの音に続いてアレシアの自室に現れたのは、カイルの補佐官であるエドアルドだった。
エドアルドはアレシアとネティに、夜会への出席について話をしに来たのだった。
「夜会ですか? それは、どのような」
ネティの声に、エドアルドがふと考えるような仕草を見せた。
「季節毎に行われている、定例の会になります。特に、何かの題目があるわけではないので、陛下の主催ではありますが、気楽な会とお考えください。陛下も出席されるかわかりませんし……。アレシア様は、陛下との正式な結婚式がまだなので、婚約者の姫君としてのご出席となります。アレシア様の正式なお披露目がまだとはいえ、お輿入れの話はすでに貴族社会に伝わっています。アレシア様にご挨拶したいという貴族達も多いでしょう。身分については、女性の中では、アレシア様は最高位として遇されます。その次が、宰相であるオブライエン公爵のご息女、アレキサンドラ様となります」
ネティも何か考えながら、うなづいている。
「アレシア様のお支度については?」
「ネティ、わたしは姫巫女よ。いつも通りの格好で行くわ」
柔らかくネティの質問を遮って、アレシアが声をかけた。
「それで構いません。姫巫女様としての正装ですから。出席者はサラが把握しています。当日は女官として夜会に同行しますので、サラがお会いになる方々についてご紹介いたします」
そこでエドアルドは声を潜めた。
「夜会には出席した、という事実ができればそれで十分です。カイル様もアレシア様のエスコートはなさらないでしょう。特別扱いをすることはアレシア様にとって危険になるとお考えです。夜会で適宜他の出席者とご歓談いただき、後は途中で退出なさっていただいて構いません」
アレシアは微笑んだ。
「わかりましたわ。ありがとう」
エドアルドはネティをまっすぐに見つめた。
ネティはどきりとして、エドアルドの茶色の目を見つめた。
茶色の目と茶色の目が出会う。
「アレシア様のことがご心配でしょうが、わたしも会場におります。どうぞ、サラとわたしにお任せを」
ネティはうなづいた。
その様子を、エドアルドはどこか気恥ずかしそうに眺め、部屋から辞去していった。
エスコートもなしで、帝国での初めての夜会に姫巫女の正装で臨むアレシアを誰よりも心配していたのは、ネティだった。
その理由の1つは、エドアルドも言ったように、アレシアの次に位の高い女性となる、アレキサンドラ・オブライエンの存在がある。
アレキサンドラの父親は、あの宰相、オブライエン公爵である。皇帝の婚約者であるアレシアの目の前で、娘から預かったという贈り物をカイルに手渡し、アレシアに向かってはリオベルデに帰るなら便宜をはかろう、と臆面もなく言ってのけた男の娘だ。
もちろん、オブライエンはそこまであけすけな言い方ではなかったが、要はそういう意味である。
ネティは彼女の大切な女主人を軽く扱うオブライエンに我慢がならないのだった。
リオベルデでは、誰もがアレシアに敬意を表し、大切に扱った。そして何よりも、アレシアは愛される存在だったのだ。
アレシアの兄であるクルスはもとより、アレシアを知る誰もが、この美しい王女を敬愛し、人々の想いに寄り添い、神殿で共に祈るアレシアを尊敬していた。
ところが、ランス帝国では、アレシアは小国の1王女に過ぎず、皇帝であるカイルも、止むを得ないのはわかっているが、アレシアを大切には扱ってくれていない。
「大丈夫よ、ネティ」
アレシアがネティをあやすように声を掛ける。
まるで、ネティの心の中の声が、聞こえたようだった。
「は、申し訳ありません」
ネティは頭を切り替えて、アレシアの美しい長い銀髪を手に取った。
アレシアには、帝国風の美しいドレスの1枚も与えられていなかった。しかし、アレシアの美しさがそれで削がれるようなものでないことを、ネティは示そうとしていた。
ネティは注意深くアレシアの髪を小さな束にすると、白い真珠のビーズを嵌め入れながら、丁寧に編み込み始めた。
「そろそろ集まり始めましたね」
執務室の窓から、煌びやかに装った紳士淑女が宮殿の大広間に入っていく姿が見える。
すでに外は暗くなり始めているが、宮殿内は明るく照らされ、車寄せも赤々と松明がいくつも灯り、華やかさを加えている。
エドアルドは少し疲れた様子のカイルを見ると、そっと言った。
「カイル様はこのまま、参加はされないご予定ですか?」
カイルはそっとため息をつくと、こめかみを軽く指で押した。
「途中で様子を見に行こうかとは思っている」
エドアルドはうなづいた。
「アレシア様も大体の状況はおわかりだと思います。サラも付いていますし、状況次第ではすぐ、アレシア様を夜会から連れ出すように言っておきました」
その時、白馬に引かせた、一際大きく華やかな馬車が到着した。
馬車から降りてきたのは、豪華なエメラルドグリーンのドレスを身に纏った、アレキサンドラ・オブライエンだった。
アレキサンドラは、顎をつんと上げ、まるで主役のような堂々とした態度で大広間に向かって行った。
その頃、アレシアはサラを伴って、すでに会場入りしていた。
皇帝主催の夜会。しかし、アレシアの装いはいつもと変わらない。
純白の麻の長衣に、同じく白の絹の丈の長いチュニックを重ねている。
いつもの服装だったが、普段と違うのは、アレシアの長い銀色の髪が、ネティの手によって、細かく編み上げられていることだった。
ハーフアップのように、髪の半分をまとめて結い上げ、所々に真珠のビーズが編み込まれていて、それが照明の光を受けて、キラキラと輝いていた。
そしてもちろん、アレシアの細い腰には、カイルから贈られた金刺繍入りの絹の飾り帯が巻かれていた。
アレシアの傍には、紺色の襟の詰まったシンプルなドレスを着たサラが付き添っていた。
アレシアは華やかなドレス姿ではなく、姫巫女としての正装だ。
神殿では違和感のない装いだったが、宮殿での夜会では、ドレス姿の女性達の中で、一際異質に映ってしまう。
姫巫女としてのアレシアが認識されているリオベルデの王宮とは全く違う。
会場でも、人々はアレシアに目を留めると、一瞬、ぎょっとしたように目を見開いている。
それでも、アレシア自身の持つ、清楚な美しさは鮮烈で、人目を引いた。
やがて、アレシアは柔らかな微笑を湛えたまま、近くにいた女性達に話しかけ始めた。
ランス帝国の公式の席では、身分が高いものには身分が低いものから話しかけることはできない。先の皇后がいない今、最高位となる女性は皇帝の婚約者であるアレシアか公爵家の令嬢アレキサンドラとなる。
身分の低い女性達は、身分の高い女性の近くに立ち、話しかけられるのを待つのだ。
皇帝はまだ姿を現してはおらず、アレシアはお付きの女官役を務めてくれているサラとともに、華やかな女性達の元へと回っていた。
1人ずつ会う度に、サラが女性の名前を教えてくれるが、アレシアの挨拶を受け、女性達は皆、版で押したように「ごきげんよう」としか言わない。サラの顔色が次第に青ざめていく。
一方、アレシアの方は穏やかな表情が崩れることはない。
アレキサンドラが会場に入ってきたのは、そんな時だった。
エメラルドグリーンのたっぷりとしたひだのドレスがまず目を引く。
ランスの赤いバラと呼ばれる彼女は、その名前の通り、豪華な赤いバラをモチーフにしたドレスを身に纏っていた。
アレキサンドラ・オブライエンは、自信に満ちた姿で、会場となっている大広間に足を踏み入れたのだった。
「アレシア様、こちらはスペイシク子爵夫人、メアリー様でございます」
「アレシア・リオベルデです。初めまして、メアリー様」
「こちらはランカスター伯爵のご令嬢、セシリア様でございます」
「アレシア・リオベルデです。初めまして、セシリア様」
「……こちらはジョハンソン侯爵夫人アランナ様とご令嬢ハンナ様でございます」
「アレシア・リオベルデです。初めまして、アランナ様、ハンナ様」
すでに会場入りしていたアレシアは、サラを伴って、大広間で談笑する人々に順に声を掛けていた。
「アレシア様、こちらはベリーズ子爵、ヘンリー様と子爵夫人、ローズマリー様です」
「アレシア・リオベルデです。初めまして、ヘンリー様、ローズマリー様」
アレシアが近づくと、誰もが行儀の良い笑顔を浮かべて、アレシアに礼を取った。
しかし、アレシアが自己紹介をしても、誰もがぎこちなく、まるで判で押したように「ごきげんよう」としか言わなかった。
気のせいか、と最初アレシアは思った。しかし、隣に立つサラの顔色がだんだん青ざめていく様子を見て、それが偶然ではないことを悟った。
「サラ、大丈夫よ」
人の波が途切れた時に、アレシアはその穏やかな表情を崩すことなく、そっと言った。
アレキサンドラが会場に到着したのは、そんな時だった。
宰相の愛娘であり、公爵令嬢であるアレキサンドラの登場に、年頃の近い有力貴族の令嬢達がすぐに集まってくる。
その中には、先ほどアレシアと会ったジョハンソン侯爵令嬢ハンナの姿もあった。
「皆様、良い夜ですわね」
アレキサンドラがにこやかに女性達に声をかけた。
「アレキサンドラ様、今日もとても素敵に装っていらっしゃって」
「本当、まるで輝くようですわ」
「さすがアレキサンドラ様」
「ありがとう、皆様」
アレキサンドラは優雅に微笑みながら、会場を見渡した。
「陛下はまだお見えではないのね。リオベルデの姫巫女様はもう?」
一同がうなづいた。
「先ほどからいらしていますわ。お1人で、女官を連れていらっしゃいますの。わたしに声をかけられましたのよ」
ハンナが言った。
アレキサンドラは会場の中に、アレシアの姿を探した。
アレシアを見つけるのは、難しくなかった。
色とりどりの花のような、華やかなドレスをまとった女性達の中で、ただ1人、白一色の、簡素な服を身に付けていたからだ。
アレシアは彼女のそばに立っていた令嬢に、ちょうど声を掛けているところだった。
(あれはサマランカ男爵令嬢だわ)
アレシアは一言二言声を掛けて、相手の言葉に何やら耳を傾けた後、微笑みを浮かべたまま、そばにいた年配の女性に声を掛けた。
落ち着いたえんじ色のドレスを着たその女性とは、アレシアはもう少し長く話していた。
アレキサンドラは目を見開く。
(珍しいわね。あの方が社交の場においでとは。あれは……もう年だから、と領地にほぼ引退のように引き込まれてしまった、サリヴァン公爵夫人)
その時、アレキサンドラは不思議なことに気づく。
アレシアは全員に声をかけているのだ。有力な貴族のみではなく。近くにいる人々からシンプルに順番に声をかけている様子だった。
アレキサンドラは困惑して、眉を顰める。
高位貴族の令嬢であるアレキサンドラの元には、機会あればお近づきになろう、と多くの人々が寄ってくる。
不要な問題を引き起こさないためにも、アレキサンドラは気心も知れて、普段からお付き合いもある同じく高位貴族の人々と交わるのが普通だったからだ。
仮に下位貴族の人々と交流するにしても、身分の高い順に声をかけていく。
アレキサンドラには理解できなかったが、姫巫女であるアレシアにとっては、その場にいる全ての人、彼女を必要としている人と話すのは当たり前のこと。身分で区別もしないし、誰とでも話すのは、当然のことなのだった。
やがて、アレシアはアレキサンドラの元にやって来た。
アレキサンドラがアレシアから離れて立っていたために、彼女のところにやってくるのはだいぶ遅くなっていた。
アレシアの動きを何気なく追っていたアレキサンドラは、身分の順番に挨拶をしないアレシアに呆れ、困惑していた。
そして、この場でもっとも身分の高い人間の1人である自分にすぐ挨拶に来なかったことにも、気分を害していたのだった。
「アレシア様、こちらは宰相であるオブライエン公爵のご令嬢で、アレキサンドラ様です」
アレシアに付いている女官らしい若い女性が、アレシアに声をかけた。
アレキサンドラは扇を開き、顎のあたりにかざしながら、アレシアを見つめた。
「アレシア・リオベルデです。初めまして、アレキサンドラ様」
アレシアは品よく、アレキサンドラに挨拶をした。
アレシアとアレキサンドラは、互いに見つめ合った。
アレキサンドラの目には、アレシアは整った顔立ちはしているけれど、不思議な白の衣装を着て、体の線を隠したアレシアは、そのほっそりとした体型もあって、成人したばかりという年齢よりも幼く見えた。
彼女が唯一及第点を付けたのは、アレシアの珍しい銀色の髪だった。
まるで銀色の糸のようなその髪は腰に届くほど長いのだろう、小さな真珠のビーズを編み込んで、複雑な形に結い上げられていた。
一方、アレキサンドラを静かに見つめるアレシアの目には、どんな表情も浮かんでいなかった。
姫巫女アレシアと公爵令嬢アレキサンドラ。
アレシアはリオベルデから来た、皇帝の婚約者であるが、アレキサンドラはそれでも皇帝の妃となることを望んでいるのを、誰もが知っていた。
夜会で最も身分の高い2人の女性に、注目も集まる。周囲は自然と場所を開け、2人の動向を見守るような形になっていた。
鮮やかなエメラルドグリーンのドレスに身を包んだ、圧倒的な存在感。
背が高く、色が白い。そして目を引く、真っ赤な長い髪。
華やかに装ったアレキサンドラはアレシアの服を不思議そうに見た。
「巫女様らしいお衣装ですわね。カイル様がドレスをお贈りになられたかと思っていましたのに。そちらが正装になりますの? わたくし、目にするのは初めてですわ。先の皇后様は……そういったお衣装ではなかったように思いますの」
アレキサンドラはアレシアを辱めるといった意図はなく、ただ思ったままのことを言っているだけなのだが、周囲の女性達がクスクスと笑い始める。
誰かが、「まあ、婚約者なのに、初めての夜会で陛下のエスコートもなければ、ドレスの贈り物もないだなんて……」と言い、同意するかのように笑いが広がったのをサラは感じた。
アレキサンドラには、アレシアを前にして、圧倒的な自信があった。
だからこそ、自分が思ったままのことを言葉にすることができるのだった。
「わたくしも神殿に参りますのよ。特に、願掛けをする時には、重宝しておりますわ。巫女様がわたくし達のお願いを女神様に取り次いでくださるとか……。直接、お願いする方が良いような気もいたしますけれど……、そうそう、お願いといえば、姫巫女様は数え切れないほどのお願いを女神様に取り次いでいらっしゃいますでしょう? 例えば、少々はしたない言葉で言えば、誰かを蹴落としたい、そういったお祈りや願いも女神様に取り次がれますの? 1人の殿方に多くの女性が想いを寄せる、そんなこともよくありますのよ。そして女神様は叶えてくださるのかしら?」
アレキサンドラは小首を傾げて、じっとアレシアを眺めた。
1人の殿方に多くの女性……。
それはまるで、皇帝であるカイルと、アレシア、アレキサンドラのようではないか?
今や、女性達の視線は興味深く、王国から来た姫巫女であるアレシアと、帝国随一の令嬢であるアレキサンドラへと向かっている。そして、扇の下でアレシアを眺めてクスクスと笑っている女性達の声は、今や無視できないほどの大きさへと高まっているのだった。
アレシアは柔らかな表情でアレキサンドラを見つめた。
「どのような状況であれ、その方の願いが何であれ、わたしが願うことは変わりません。その方にとって、そして関係する方にとっても、最善を祈るのです」
アレシアの深い青の瞳は穏やかで澄んでいた。
「あなたがある人を蹴落として、何かを手に入れたいと望まれたとしても、わたしはその方にとって、そして関係する方にとっても最善を女神に祈ります。あなたは望んだものを手に入れるかもしれない。あるいは、手に入れることはできないかもしれません。しかしそれは、女神が最善と判断されたこと。いずれその理由がわかるでしょう」
アレシアは静かにそう言った。
華奢で優美な猫脚の鏡台も白で、金の渦巻きのような飾りが施されている。
鏡台の上に飾られた小さな肖像画には、赤い髪を豊かに結い上げた女性が緑色のドレスに身を包んだ姿が描かれている。
赤い髪、猫のように丸く吊り上がり気味の明るい茶色の目。白い肌に豊かに盛り上がった胸。
目の色こそ異なるが、肖像画の女性は、鏡台の前に座っている若い女性に、よく似ていた。
アレキサンドラ・オブライエン。オブライエン公爵のたった1人の愛娘。
有名な歌姫だった女性を正妻として娶ったオブライエン公爵の娘として生まれたアレキサンドラは、母譲りの美貌と、父から受け継いだ貴族最高位の令嬢の地位に恵まれ、いつも華やかな光に包まれているような女性だった。
赤いバラを愛する彼女は、『ランスの赤いバラ』と呼ばれ、社交界では彼女を知らない者はいない。
アレキサンドラはドレスにも赤いバラの紋様を使っていた。
「あのドレスを今度の夜会でお召しになるのですか?」
1人の侍女が、アレキサンドラの長い髪に香油をすり込みながら言った。
視線の先には、トルソーに着せつけたエメラルドグリーンのドレスがあった。
豪華なタフタ地は艶やかでたっぷりとひだが取られ、ドレスに施された赤いバラの刺繍が華やかに目を引く。
まさに最高級の職人の手仕事を感じさせる、ゴージャスなドレスだ。
「そうよ。皇帝陛下のために、最高に美しく装わなければ」
アレキサンドラが唇をふっと釣り上げた。
もう1人の侍女はアレキサンドラの腕を取り、滑らかなクリームを伸ばしながら、首から肩、腕へとマッサージを施していた。
「ドレスに合わせて、亡きお母様のエメラルドの首飾りを付けるつもりよ。肌が艶々と輝くように、しっかり手入れをしてちょうだい」
「かしこまりました」
2人の侍女が声を揃えた。
「あの姫巫女とは、いまだに正式に結婚式を挙げていないわ。帝国に到着した時には、陛下は見るからにイライラとして不機嫌なご様子だったと父から聞いているし。本当に皇后になるとは思えない。いつも神殿に行っていて、陛下を放りっぱなしで、お妃教育すら受けていないわ。それに、彼女が着ている、粗末な白い服は何なの? いつもいつも同じ服だわ。まともなドレスの1枚も陛下から贈られていないなんて、哀れとしか言いようがないわね。ともかく、わたくしはしっかりと陛下に自分の気持ちをお伝えするつもりよ」
侍女はうなづいた。
「それがよろしゅうございます、お嬢様。お嬢様を無視できる殿方など、いないのですから」
「ふふ……」
アレキサンドラは笑った。
笑顔のまま、目の前の小箱に並べられた、まるでキャンディのような口紅を物色していく。
ほっそりとした白い指に選ばれた赤い紅が、侍女の手でアレキサンドラの唇に塗られていく。
アレキサンドラは鏡の前で、口角を上げて微笑んだ。
それは、自分の勝利を確信する、そんな微笑みだった。
コンコン、と軽いノックの音に続いてアレシアの自室に現れたのは、カイルの補佐官であるエドアルドだった。
エドアルドはアレシアとネティに、夜会への出席について話をしに来たのだった。
「夜会ですか? それは、どのような」
ネティの声に、エドアルドがふと考えるような仕草を見せた。
「季節毎に行われている、定例の会になります。特に、何かの題目があるわけではないので、陛下の主催ではありますが、気楽な会とお考えください。陛下も出席されるかわかりませんし……。アレシア様は、陛下との正式な結婚式がまだなので、婚約者の姫君としてのご出席となります。アレシア様の正式なお披露目がまだとはいえ、お輿入れの話はすでに貴族社会に伝わっています。アレシア様にご挨拶したいという貴族達も多いでしょう。身分については、女性の中では、アレシア様は最高位として遇されます。その次が、宰相であるオブライエン公爵のご息女、アレキサンドラ様となります」
ネティも何か考えながら、うなづいている。
「アレシア様のお支度については?」
「ネティ、わたしは姫巫女よ。いつも通りの格好で行くわ」
柔らかくネティの質問を遮って、アレシアが声をかけた。
「それで構いません。姫巫女様としての正装ですから。出席者はサラが把握しています。当日は女官として夜会に同行しますので、サラがお会いになる方々についてご紹介いたします」
そこでエドアルドは声を潜めた。
「夜会には出席した、という事実ができればそれで十分です。カイル様もアレシア様のエスコートはなさらないでしょう。特別扱いをすることはアレシア様にとって危険になるとお考えです。夜会で適宜他の出席者とご歓談いただき、後は途中で退出なさっていただいて構いません」
アレシアは微笑んだ。
「わかりましたわ。ありがとう」
エドアルドはネティをまっすぐに見つめた。
ネティはどきりとして、エドアルドの茶色の目を見つめた。
茶色の目と茶色の目が出会う。
「アレシア様のことがご心配でしょうが、わたしも会場におります。どうぞ、サラとわたしにお任せを」
ネティはうなづいた。
その様子を、エドアルドはどこか気恥ずかしそうに眺め、部屋から辞去していった。
エスコートもなしで、帝国での初めての夜会に姫巫女の正装で臨むアレシアを誰よりも心配していたのは、ネティだった。
その理由の1つは、エドアルドも言ったように、アレシアの次に位の高い女性となる、アレキサンドラ・オブライエンの存在がある。
アレキサンドラの父親は、あの宰相、オブライエン公爵である。皇帝の婚約者であるアレシアの目の前で、娘から預かったという贈り物をカイルに手渡し、アレシアに向かってはリオベルデに帰るなら便宜をはかろう、と臆面もなく言ってのけた男の娘だ。
もちろん、オブライエンはそこまであけすけな言い方ではなかったが、要はそういう意味である。
ネティは彼女の大切な女主人を軽く扱うオブライエンに我慢がならないのだった。
リオベルデでは、誰もがアレシアに敬意を表し、大切に扱った。そして何よりも、アレシアは愛される存在だったのだ。
アレシアの兄であるクルスはもとより、アレシアを知る誰もが、この美しい王女を敬愛し、人々の想いに寄り添い、神殿で共に祈るアレシアを尊敬していた。
ところが、ランス帝国では、アレシアは小国の1王女に過ぎず、皇帝であるカイルも、止むを得ないのはわかっているが、アレシアを大切には扱ってくれていない。
「大丈夫よ、ネティ」
アレシアがネティをあやすように声を掛ける。
まるで、ネティの心の中の声が、聞こえたようだった。
「は、申し訳ありません」
ネティは頭を切り替えて、アレシアの美しい長い銀髪を手に取った。
アレシアには、帝国風の美しいドレスの1枚も与えられていなかった。しかし、アレシアの美しさがそれで削がれるようなものでないことを、ネティは示そうとしていた。
ネティは注意深くアレシアの髪を小さな束にすると、白い真珠のビーズを嵌め入れながら、丁寧に編み込み始めた。
「そろそろ集まり始めましたね」
執務室の窓から、煌びやかに装った紳士淑女が宮殿の大広間に入っていく姿が見える。
すでに外は暗くなり始めているが、宮殿内は明るく照らされ、車寄せも赤々と松明がいくつも灯り、華やかさを加えている。
エドアルドは少し疲れた様子のカイルを見ると、そっと言った。
「カイル様はこのまま、参加はされないご予定ですか?」
カイルはそっとため息をつくと、こめかみを軽く指で押した。
「途中で様子を見に行こうかとは思っている」
エドアルドはうなづいた。
「アレシア様も大体の状況はおわかりだと思います。サラも付いていますし、状況次第ではすぐ、アレシア様を夜会から連れ出すように言っておきました」
その時、白馬に引かせた、一際大きく華やかな馬車が到着した。
馬車から降りてきたのは、豪華なエメラルドグリーンのドレスを身に纏った、アレキサンドラ・オブライエンだった。
アレキサンドラは、顎をつんと上げ、まるで主役のような堂々とした態度で大広間に向かって行った。
その頃、アレシアはサラを伴って、すでに会場入りしていた。
皇帝主催の夜会。しかし、アレシアの装いはいつもと変わらない。
純白の麻の長衣に、同じく白の絹の丈の長いチュニックを重ねている。
いつもの服装だったが、普段と違うのは、アレシアの長い銀色の髪が、ネティの手によって、細かく編み上げられていることだった。
ハーフアップのように、髪の半分をまとめて結い上げ、所々に真珠のビーズが編み込まれていて、それが照明の光を受けて、キラキラと輝いていた。
そしてもちろん、アレシアの細い腰には、カイルから贈られた金刺繍入りの絹の飾り帯が巻かれていた。
アレシアの傍には、紺色の襟の詰まったシンプルなドレスを着たサラが付き添っていた。
アレシアは華やかなドレス姿ではなく、姫巫女としての正装だ。
神殿では違和感のない装いだったが、宮殿での夜会では、ドレス姿の女性達の中で、一際異質に映ってしまう。
姫巫女としてのアレシアが認識されているリオベルデの王宮とは全く違う。
会場でも、人々はアレシアに目を留めると、一瞬、ぎょっとしたように目を見開いている。
それでも、アレシア自身の持つ、清楚な美しさは鮮烈で、人目を引いた。
やがて、アレシアは柔らかな微笑を湛えたまま、近くにいた女性達に話しかけ始めた。
ランス帝国の公式の席では、身分が高いものには身分が低いものから話しかけることはできない。先の皇后がいない今、最高位となる女性は皇帝の婚約者であるアレシアか公爵家の令嬢アレキサンドラとなる。
身分の低い女性達は、身分の高い女性の近くに立ち、話しかけられるのを待つのだ。
皇帝はまだ姿を現してはおらず、アレシアはお付きの女官役を務めてくれているサラとともに、華やかな女性達の元へと回っていた。
1人ずつ会う度に、サラが女性の名前を教えてくれるが、アレシアの挨拶を受け、女性達は皆、版で押したように「ごきげんよう」としか言わない。サラの顔色が次第に青ざめていく。
一方、アレシアの方は穏やかな表情が崩れることはない。
アレキサンドラが会場に入ってきたのは、そんな時だった。
エメラルドグリーンのたっぷりとしたひだのドレスがまず目を引く。
ランスの赤いバラと呼ばれる彼女は、その名前の通り、豪華な赤いバラをモチーフにしたドレスを身に纏っていた。
アレキサンドラ・オブライエンは、自信に満ちた姿で、会場となっている大広間に足を踏み入れたのだった。
「アレシア様、こちらはスペイシク子爵夫人、メアリー様でございます」
「アレシア・リオベルデです。初めまして、メアリー様」
「こちらはランカスター伯爵のご令嬢、セシリア様でございます」
「アレシア・リオベルデです。初めまして、セシリア様」
「……こちらはジョハンソン侯爵夫人アランナ様とご令嬢ハンナ様でございます」
「アレシア・リオベルデです。初めまして、アランナ様、ハンナ様」
すでに会場入りしていたアレシアは、サラを伴って、大広間で談笑する人々に順に声を掛けていた。
「アレシア様、こちらはベリーズ子爵、ヘンリー様と子爵夫人、ローズマリー様です」
「アレシア・リオベルデです。初めまして、ヘンリー様、ローズマリー様」
アレシアが近づくと、誰もが行儀の良い笑顔を浮かべて、アレシアに礼を取った。
しかし、アレシアが自己紹介をしても、誰もがぎこちなく、まるで判で押したように「ごきげんよう」としか言わなかった。
気のせいか、と最初アレシアは思った。しかし、隣に立つサラの顔色がだんだん青ざめていく様子を見て、それが偶然ではないことを悟った。
「サラ、大丈夫よ」
人の波が途切れた時に、アレシアはその穏やかな表情を崩すことなく、そっと言った。
アレキサンドラが会場に到着したのは、そんな時だった。
宰相の愛娘であり、公爵令嬢であるアレキサンドラの登場に、年頃の近い有力貴族の令嬢達がすぐに集まってくる。
その中には、先ほどアレシアと会ったジョハンソン侯爵令嬢ハンナの姿もあった。
「皆様、良い夜ですわね」
アレキサンドラがにこやかに女性達に声をかけた。
「アレキサンドラ様、今日もとても素敵に装っていらっしゃって」
「本当、まるで輝くようですわ」
「さすがアレキサンドラ様」
「ありがとう、皆様」
アレキサンドラは優雅に微笑みながら、会場を見渡した。
「陛下はまだお見えではないのね。リオベルデの姫巫女様はもう?」
一同がうなづいた。
「先ほどからいらしていますわ。お1人で、女官を連れていらっしゃいますの。わたしに声をかけられましたのよ」
ハンナが言った。
アレキサンドラは会場の中に、アレシアの姿を探した。
アレシアを見つけるのは、難しくなかった。
色とりどりの花のような、華やかなドレスをまとった女性達の中で、ただ1人、白一色の、簡素な服を身に付けていたからだ。
アレシアは彼女のそばに立っていた令嬢に、ちょうど声を掛けているところだった。
(あれはサマランカ男爵令嬢だわ)
アレシアは一言二言声を掛けて、相手の言葉に何やら耳を傾けた後、微笑みを浮かべたまま、そばにいた年配の女性に声を掛けた。
落ち着いたえんじ色のドレスを着たその女性とは、アレシアはもう少し長く話していた。
アレキサンドラは目を見開く。
(珍しいわね。あの方が社交の場においでとは。あれは……もう年だから、と領地にほぼ引退のように引き込まれてしまった、サリヴァン公爵夫人)
その時、アレキサンドラは不思議なことに気づく。
アレシアは全員に声をかけているのだ。有力な貴族のみではなく。近くにいる人々からシンプルに順番に声をかけている様子だった。
アレキサンドラは困惑して、眉を顰める。
高位貴族の令嬢であるアレキサンドラの元には、機会あればお近づきになろう、と多くの人々が寄ってくる。
不要な問題を引き起こさないためにも、アレキサンドラは気心も知れて、普段からお付き合いもある同じく高位貴族の人々と交わるのが普通だったからだ。
仮に下位貴族の人々と交流するにしても、身分の高い順に声をかけていく。
アレキサンドラには理解できなかったが、姫巫女であるアレシアにとっては、その場にいる全ての人、彼女を必要としている人と話すのは当たり前のこと。身分で区別もしないし、誰とでも話すのは、当然のことなのだった。
やがて、アレシアはアレキサンドラの元にやって来た。
アレキサンドラがアレシアから離れて立っていたために、彼女のところにやってくるのはだいぶ遅くなっていた。
アレシアの動きを何気なく追っていたアレキサンドラは、身分の順番に挨拶をしないアレシアに呆れ、困惑していた。
そして、この場でもっとも身分の高い人間の1人である自分にすぐ挨拶に来なかったことにも、気分を害していたのだった。
「アレシア様、こちらは宰相であるオブライエン公爵のご令嬢で、アレキサンドラ様です」
アレシアに付いている女官らしい若い女性が、アレシアに声をかけた。
アレキサンドラは扇を開き、顎のあたりにかざしながら、アレシアを見つめた。
「アレシア・リオベルデです。初めまして、アレキサンドラ様」
アレシアは品よく、アレキサンドラに挨拶をした。
アレシアとアレキサンドラは、互いに見つめ合った。
アレキサンドラの目には、アレシアは整った顔立ちはしているけれど、不思議な白の衣装を着て、体の線を隠したアレシアは、そのほっそりとした体型もあって、成人したばかりという年齢よりも幼く見えた。
彼女が唯一及第点を付けたのは、アレシアの珍しい銀色の髪だった。
まるで銀色の糸のようなその髪は腰に届くほど長いのだろう、小さな真珠のビーズを編み込んで、複雑な形に結い上げられていた。
一方、アレキサンドラを静かに見つめるアレシアの目には、どんな表情も浮かんでいなかった。
姫巫女アレシアと公爵令嬢アレキサンドラ。
アレシアはリオベルデから来た、皇帝の婚約者であるが、アレキサンドラはそれでも皇帝の妃となることを望んでいるのを、誰もが知っていた。
夜会で最も身分の高い2人の女性に、注目も集まる。周囲は自然と場所を開け、2人の動向を見守るような形になっていた。
鮮やかなエメラルドグリーンのドレスに身を包んだ、圧倒的な存在感。
背が高く、色が白い。そして目を引く、真っ赤な長い髪。
華やかに装ったアレキサンドラはアレシアの服を不思議そうに見た。
「巫女様らしいお衣装ですわね。カイル様がドレスをお贈りになられたかと思っていましたのに。そちらが正装になりますの? わたくし、目にするのは初めてですわ。先の皇后様は……そういったお衣装ではなかったように思いますの」
アレキサンドラはアレシアを辱めるといった意図はなく、ただ思ったままのことを言っているだけなのだが、周囲の女性達がクスクスと笑い始める。
誰かが、「まあ、婚約者なのに、初めての夜会で陛下のエスコートもなければ、ドレスの贈り物もないだなんて……」と言い、同意するかのように笑いが広がったのをサラは感じた。
アレキサンドラには、アレシアを前にして、圧倒的な自信があった。
だからこそ、自分が思ったままのことを言葉にすることができるのだった。
「わたくしも神殿に参りますのよ。特に、願掛けをする時には、重宝しておりますわ。巫女様がわたくし達のお願いを女神様に取り次いでくださるとか……。直接、お願いする方が良いような気もいたしますけれど……、そうそう、お願いといえば、姫巫女様は数え切れないほどのお願いを女神様に取り次いでいらっしゃいますでしょう? 例えば、少々はしたない言葉で言えば、誰かを蹴落としたい、そういったお祈りや願いも女神様に取り次がれますの? 1人の殿方に多くの女性が想いを寄せる、そんなこともよくありますのよ。そして女神様は叶えてくださるのかしら?」
アレキサンドラは小首を傾げて、じっとアレシアを眺めた。
1人の殿方に多くの女性……。
それはまるで、皇帝であるカイルと、アレシア、アレキサンドラのようではないか?
今や、女性達の視線は興味深く、王国から来た姫巫女であるアレシアと、帝国随一の令嬢であるアレキサンドラへと向かっている。そして、扇の下でアレシアを眺めてクスクスと笑っている女性達の声は、今や無視できないほどの大きさへと高まっているのだった。
アレシアは柔らかな表情でアレキサンドラを見つめた。
「どのような状況であれ、その方の願いが何であれ、わたしが願うことは変わりません。その方にとって、そして関係する方にとっても、最善を祈るのです」
アレシアの深い青の瞳は穏やかで澄んでいた。
「あなたがある人を蹴落として、何かを手に入れたいと望まれたとしても、わたしはその方にとって、そして関係する方にとっても最善を女神に祈ります。あなたは望んだものを手に入れるかもしれない。あるいは、手に入れることはできないかもしれません。しかしそれは、女神が最善と判断されたこと。いずれその理由がわかるでしょう」
アレシアは静かにそう言った。
0
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
ブサイク令嬢は、眼鏡を外せば国一番の美女でして。
みこと。
恋愛
伯爵家のひとり娘、アルドンサ・リブレは"人の死期"がわかる。
死が近づいた人間の体が、色あせて見えるからだ。
母に気味悪がれた彼女は、「眼鏡をかけていれば見えない」と主張し、大きな眼鏡を外さなくなった。
無骨な眼鏡で"ブサ令嬢"と蔑まれるアルドンサだが、そんな彼女にも憧れの人がいた。
王女の婚約者、公爵家次男のファビアン公子である。彼に助けられて以降、想いを密かに閉じ込めて、ただ姿が見れるだけで満足していたある日、ファビアンの全身が薄く見え?
「ファビアン様に死期が迫ってる!」
王女に新しい恋人が出来たため、ファビアンとの仲が危ぶまれる昨今。まさか王女に断罪される? それとも失恋を嘆いて命を絶つ?
慌てるアルドンサだったが、さらに彼女の目は、とんでもないものをとらえてしまう──。
不思議な力に悩まされてきた令嬢が、初恋相手と結ばれるハッピーエンドな物語。
幸せな結末を、ぜひご確認ください!!
(※本編はヒロイン視点、全5話完結)
(※番外編は第6話から、他のキャラ視点でお届けします)
※この作品は「小説家になろう」様でも掲載しています。第6~12話は「なろう」様では『浅はかな王女の末路』、第13~15話『「わたくしは身勝手な第一王女なの」〜ざまぁ後王女の見た景色〜』、第16~17話『氷砂糖の王女様』というタイトルです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
厄災烙印の令嬢は貧乏辺境伯領に嫁がされるようです
あおまる三行
恋愛
王都の洗礼式で「厄災をもたらす」という烙印を持っていることを公表された令嬢・ルーチェ。
社交界では腫れ物扱い、家族からも厄介者として距離を置かれ、心がすり減るような日々を送ってきた彼女は、家の事情で辺境伯ダリウスのもとへ嫁ぐことになる。
辺境伯領は「貧乏」で知られている、魔獣のせいで荒廃しきった領地。
冷たい仕打ちには慣れてしまっていたルーチェは抵抗することなくそこへ向かい、辺境の生活にも身を縮める覚悟をしていた。
けれど、実際に待っていたのは──想像とはまるで違う、温かくて優しい人々と、穏やかで心が満たされていくような暮らし。
そして、誰より誠実なダリウスの隣で、ルーチェは少しずつ自分の居場所を取り戻していく。
静かな辺境から始まる、甘く優しい逆転マリッジラブ物語。
【追記】完結保証タグ追加しました
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる