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第三部第二章 ダンジョン
覚醒
しおりを挟むそれなのに、私は動けなかった。
アン一人だけ前に出していて良いのか? 相手は魔族なんだよ。
いくら、相性が合わないからって逃げて良いのか? ダメだよそんなの・・・。
年上の私が戦わないと、最前線で戦うって私は決めたでしょ? プランスが死んだあの時、絶対に負けないって誰にも。
それに仲間が戦っているのなら私が加勢しなければならないでしょう?
脚よ動け、動け、うごけーー! 脚を一歩踏み出すたびに死の恐怖とプランスと生きたまま会えないという恐怖が感じ逃げたくなってしまった。
なんでこんなにも私は弱いのだ。アンは私が戦えないことが分かっているのかずっと戦っている。しかも相手は魔族、アンもだんだん傷が増えてきている。
見るに耐えない姿だ。涙を流しそうになってしまう。
私の手には杖を握っている。実は魔法も使える。
だけど得意じゃない。かといって戦闘に特化した魔力を私は持っていない。
いや解読魔力があるでしょう。
敵の心の声を読み、そして弱点となる敵の体を解読することができるかもしれないだろう! 今までは文しか試していなかったけど、今試してみる。
鑑定魔力とはかけ離れた力だ。
私は杖を捨て全神経を、魔族に集中させた。
すると魔族の足に書かれた文字が浮かぶ。この文字をさらに解読する。
それも動きながら魔族に攻撃されないようにだ。
そしてこの文字を鑑定魔力を持つ、もう一人の自分に鑑定させた。
この文字を読むことによって敵の脚がなくなります。修復は不可能と言って良いだろう。
えっそんなに活用的なの? なら早速読ましてもらおうかな?
「リベルタ」
すると本当に、魔族の足はなくなった。どういう原理か分からない。だけど、アンが杖で魔族の剣と鍔迫り合いをしてくれていたから、読めた文字であった。
これは共同プレイだ。
「ミア、今何が起きたと思います? なんだか異質な魔力を感じてからこのような事態になったような気がするのですが・・・?」
アンが私の横に立つ。よく分からないという顔をしている。
それはさっきまで戦っていた相手が急に脚がなくなり悶絶するようなそぶりを見せるからだろう。
私だったらラッキーじゃすまないし、頭の回転が追いつかないだろう。
「そうだね・・・・・。どうしたものかな?」
私はとぼけた顔をするが、私の演技は下手だったので、アンにはすぐに気づかれてしまった。
「ミアだったんですね! どうやったんですか!? 知りたいです!」
アンの笑顔はやっぱり可愛い。さすが王国の聖騎士だ。美しい肌まで備えている。
アンの笑顔に救われた気がした。だけど、私はまだ動揺していた。魔族の脚を消し去った瞬間のことが、まるで夢のように感じられていたのだ。
「う、うん、まあ・・・ちょっと特殊な魔法を使ったの。あまり得意じゃないけどね・・・・・」
私はなるべく軽い口調で答えたが、内心は大混乱だった。魔族の足を消し去るなんて、そんなことができるなんて思ってもいなかった。鑑定魔力とも違う、自分の知らない力を使ってしまった感覚だ。
「特殊な魔法・・・それでも凄いです! ミア、いつもはあまり戦闘が得意じゃないって言ってたのに、こんな時に役立つなんて驚きです!」
アンはまるで何事もなかったかのように明るく振る舞っていた。だが、彼女の身体には無数の小さな傷がついていて、血がにじんでいる。その姿に胸が締め付けられる思いだった。私がもっと早く動けていれば、彼女にこんなに無理をさせることはなかったのに。
「アン、本当にごめんね・・・私がもっと早く何かできていれば・・・・」
私の言葉に、アンは少し首を傾げてから、笑顔で答えた。
「そんなことないですよ、ミア。あなたがいてくれて、本当に助かってるんです。私一人じゃ、ここまで来れなかったと思います。それに、あの魔族の脚を消し去ったのは、あなたしかできないことですから!」
彼女の言葉に、私の心の中で何かが変わるのを感じた。いつも自分の無力さばかりを考えていたけれど、アンは私を信じてくれている。だからこそ、私はもっと強くならなきゃいけない――自分自身を信じて、仲間のために戦わなければ。
「ありがとう、アン。私、もう少し自信を持つよ。まだできることがあるってわかったから」
そう言って、私は深く息を吸い込んだ。まだ戦いは終わっていない。魔族は脚を失ったが、完全に倒れたわけではない。彼は地面に倒れ込み、激痛に顔を歪めていたが、その瞳にはまだ戦意が残っていた。
「アン、気を抜かないで。まだ終わってない・・・!」
そう言いながら、私は再び集中し、魔族の動きを読み取ろうとした。彼の体にはまだいくつかの文字が浮かんでいた。それを読み解くことができれば、さらに彼を無力化できるかもしれない。
だが、魔族も黙ってはいなかった。彼は残った手で地面を叩きつけ、周囲に強烈な衝撃波を放った。私たちは咄嗟に防御の魔法を張ったが、それでも衝撃に耐えきれず、後退してしまった。
「くっ・・・やっぱり、強い・・・!」
私はすぐに立て直し、再び魔族に目を向けた。彼は脚を失っているが、まだ油断できない。次に何をしてくるのか、予測がつかない状況だった。
「ミア、次はどうします?」
アンが冷静に問いかけてきた。彼女も疲労が溜まっているだろうに、まだ立ち向かう意志を持っている。その姿が眩しく見えた。
「もう少しだけ・・・・待って。今、また文字が見えてきてる・・・これを読めば、次の手がわかるかもしれない」
私は再び集中し、魔族の体に浮かんだ文字を解読し始めた。前回と同じように、彼の弱点が現れるかもしれない。それに賭けるしかなかった。
そして、しばらくの間、私はその文字をじっと見つめ続けた。まるで自分がその文字と一体化するかのように、ゆっくりと意味が浮かび上がってくる。
「・・・見えた・・・・・!」
私はついに魔族の次なる弱点を読み取った。それは、彼の右腕に隠された魔力の核だった。それを破壊すれば、彼の魔力は完全に消え去るだろう。
「アン、次は右腕だ! あそこに魔力の核がある。そこを狙って、一気に仕留めるよ!」
アンは力強く頷くと、杖を構え直した。私もまた、魔力を込めた杖を握りしめた。今度こそ、最後の一撃を放つ時だ。
「一緒に行くよ、ミア!」
私たちは声を合わせて突進した。二人の魔力が重なり合い、強烈な光が魔族に向かって放たれる。
「これで・・・終わりだ・・・!」
私たちの攻撃が命中し、魔族の右腕が爆発的な閃光とともに消滅した。その瞬間、彼の体は崩れ落ち、完全に動きを止めた。
「やった・・・!」
私は肩の力が抜け、安堵のため息をついた。アンも隣で微笑んでいる。私たちはついに、この強大な敵を倒すことができたのだ。
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